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負のスパイラルを断ち切る思考再構築ガイド

負のスパイラルを断ち切る思考再構築ガイド
斉藤 恵一 セルフマネジメントプロデューサー

執筆者

セルフマネジメントプロデューサー/日本心理学協会 認定心理士

斉藤恵一

大学時代に歌舞伎町のホストの世界に飛び込むも半年間売り上げゼロ。そこから心理学を学びセルフブランディングに取り組み、約6年間売上げNO.1となる。現在は企業向けのコンサルティングやメンタリング、人材育成に取り組む一方、「ナカイの窓」や「ダウンタウンDX」等テレビ出演及び書籍やコラムの執筆等で活動中。

仕事やプライベートで何か上手くいかないことがあると気分が落ち込みますよね。気持ちが落ち込んだままでいると、さらに負の現象を引き寄せてしまいそうな気持ちになりませんか?人は、気分が落ち込むとすぐに元気になりたくなるものです。そんな時、直感的に気分を良くする方法を探してしまうのは、人としての自然な反応です。

気分を良くする方法として、多くの人がアルコールや食べ物、テレビやSNSへと向かいます。確かに、その瞬間は気分が上がるかもしれません。しかし、その気晴らしは一時的で、終わった後には元の気分に戻ってしまいます。そして、このようなパターンを繰り返すことで、気分はさらに悪くなってしまいます。気分を上げる本当の方法を見つけるためには、自分の過去の対処法を振り返り、短期的な方法よりも長期的な視点での対策が必要であることを理解する必要があります。この考え方は、根気のいることに思えるかもしれませんが、実際には非常に重要なことになります。今回は負のスパイラルを断ち切り、長期的に効果が期待されている具体的な方法をお伝えいたします。

負のスパイラルの特徴とその影響

負のスパイラルの特徴とその影響

はじめに、私たちが日常生活の中で陥りやすい「負のスパイラル」という現象について掘り下げていきます。誰しもが一度は体験したことがある負のスパイラルというこの感覚と上手く向き合うための第一歩として理解していきましょう。以下の状況を想像してみてください。

ある日、朝起きると雨が降っていて、あなたは気分が少し落ち込んでいました。そして、通勤途中で電車に遅延が発生してしまいます。遅れて会社に到着すると、重要な会議の資料を家に忘れてしまったことに気がつきました…

ひとつの小さなネガティブな出来事が、次々と負の出来事を引き寄せるかのように感じませんか?このように、負の出来事や感情が連鎖的に増幅されていくことを「負のスパイラル」といいます。この現象は、ネガティブな出来事や感情が次々と増幅していくことを指し、私たちの心のエネルギーやモチベーションを奪ってしまいます。負のスパイラルに陥ると、私たちの心は暗いトンネルの中で閉じ込められたように感じることがあります。

例えば、友人たちとの食事の約束が突然キャンセルになったとします。通常なら「また次回会えばいいか」と気軽に考えることができるのに対して、負のスパイラルの中では「もしかして、自分が嫌われてしまっているのでは?」と過度に心配してしまうことがあるかもしれません。自己肯定感が低いと、ひとつのネガティブな出来事が、自分の価値や能力を疑う大きな理由として捉えられがちです。

例えば、小さな失敗にもかかわらず「自分はダメだ…」と、自分の行動の一部を自省するのではなく、主語を大きくし、問題を一般化してしまうことがあります。皆さんも少なからず経験があるのではないでしょうか?

大丈夫。心配無用です。今回はそのような負のスパイラルを断ち切る方法や考え方をシフトするヒントをお伝えしていきます。

負のスパイラルに陥ってしまう原因

負のスパイラルに陥ってしまう原因

次に、私たちがなぜ負の思考に陥りやすいのか、その背景や原因について考えてみます。重要な点として、思考と感情は互いに影響を及ぼす関係にあります。つまり、感情が思考を左右するとともに、逆に思考も感情を左右します。気分が落ち込むと、思考のバイアスが生じやすくなります。バイアスとは、自分の思い込みや周囲の環境といった要因により、非合理的な判断をしてしまう心理現象のことです。このバイアスは、特に気分や感情が不安定なときに顕著に現れますが、そこに気づくだけで、そのバイアスの力を減少させることが可能です。

例えば、気分が落ち込んでいたりすると、自分の推測を真実だと思い込みやすくなりますので、友だちからの視線を感じただけで「友だちから変な目で見られるので、自分は嫌われているに違いない」というように思い込み、悩んでしまいます。さらに、周囲の人に励ましや安心感を求めるようになり、それらが得られなかった場合、無意識のうちに「相手は自分のことを良く思っていない」と決めつけ、さらに自己肯定感を下げてしまうということも起こるわけです。

たったひとつの失敗が原因で何もかもうまくいかなくなり、一日が台無しになることがあります。たとえば朝コーヒーをこぼし、それがあちこちに飛び散る。そのせいで遅刻しそうになって、イライラし、ストレスを感じる。そんな日もあると思いますが、このようなたったひとつの失敗や出来事を、「今日が最悪な日になるサイン」とみなすことを、「過度の一般化」といいます。

「過度の一般化」とは、外部からの情報を瞬時に判断しようとし、その情報が例外的だったり、特殊なものだったりする可能性を無視して、普遍的なもの、絶対的なものだと決めつけてしまう私たちの心の傾向のことを指します。

自分の思考の癖を理解する

自分の思考の癖を理解する

原因がわかるようになったら、次は自分の思考の癖を見つけましょう。思考の癖とは、繰り返される習慣的な考え方のことを意味します。これは育った環境や過去の経験、周囲の影響などから形成されますので、良いものもあれば、自分を制限してしまうものまで多種多様です。人は自分の信念を真実と捉えがちです。そのため、信念と異なる情報に接すると驚くこともあり、受け入れたくない感情が湧き上がることもあります。

「自分はダメな人間だ」と思っていると、心はフィルターのような働きをして、他のことを示唆するような情報は全て却下し、自分がダメな人間だという証拠を集め、それを正当化しようとします。

例えば、SNSに写真をアップしたとします。多くのフォロワーが「いいね!」をしてくれても、ひとつだけ悪いコメントがあると、そのコメントばかり気になってしまうことがありませんか?それによって落ち込んだり自信を無くしたりすることがあると思います。

その思考の癖、自分ではなかなか気づきにくいものです。しかし、日常の中で自分の言葉や行動に注目することで、少しずつ自分の思考の癖を探ることができますのでご紹介します。

自分の思考の癖を理解する方法のひとつとして、日記を書くことをおすすめします。自分の日常や感じたこと、思ったことを素直に書き留めることで、自分の思考のパターンに気づく手がかりとなります。

思考の癖を理解したら、次はそれをポジティブなものへと変えていきましょう。これは一夜にしてできるものではありませんが、少しずつ意識を変えることで、大きな変化をもたらすことができます。少しずつ意識を変えるというのは、例えば「私はダメだ」と思った時、「今回はうまくいかなかったけど、次回はもっと頑張ろう」と前向きに捉えるように心がけることです。そして自分を褒めることも大切です。自分の成功体験や頑張った瞬間を思い返し、自分を労ってみましょう。

負のスパイラルを断ち切る具体的な方法

負のスパイラルとは、ひとつのネガティブな出来事が連鎖的に大きな問題へと発展する現象を指します。小さな失敗をきっかけに、自己評価が低下し、次の行動にも悪影響を及ぼすことがあります。

この負のスパイラルを断ち切るにはどうしたらいいのかというと、前述のような思考サイクルを理解することが重要です。ネガティブな出来事が発生したときに、その初期段階で負のスパイラルを止めるためのアクションを取ることができるからです。負のスパイラルを止めるための具体的な方法は以下の通りです。

①物理的、時間的距離を置く

感情が高ぶっている時には明瞭に考えることは難しいため、感情が落ち着いてから、思考を振り返るようにすると良いでしょう。そうすることで自分のバイアスに気づくことができ、それを繰り返すことで徐々にリアルタイムで思考バイアスに気づけるようになります。

②ポジティブアフィメーションの実践

「私は強い」「私は成長している」など、自分に向けての肯定的な言葉を日常的に繰り返すことで、自己肯定感を高める方法です。このようなアファメーションを習慣的に行うことで、心の中の声をポジティブに変えることができます。負のスパイラルが始まりそうな時、このアファメーションを思い出して、自分を励ましましょう。

③サポートシステムの構築

一人で戦うのは大変です。信頼できる友人や家族、専門家とのつながりを持つことで、負のスパイラルから脱出する手助けとなるでしょう。彼らの意見やアドバイス、時にはただ一緒に過ごす時間が、自分を支える大きな力となります。

持続的な思考へのポジティブシフト

私たちの行動や思考は習慣でできています。感謝の時間を持ったり、気持ちが前向きになる本を読んだり、前向きな人と話すことで、自分をポジティブに保つことができます。過去の成功を思い出すこともいいでしょう。自分を信じる力が湧いてきます。新しいことに挑戦するときのモチベーションにもなります。

そして、毎日の終わりに、その日の出来事を思い返してみることで、その日の感謝すべきことや、自分の成長を感じることができます。その事実に気づくだけで思考の習慣は修正されてきます。大切なことは自分を信じるということです。「自信」とは、まさに「自分を信じる」と書きますが、誰がなんと言おうと、過去がどうであろうと、今の自信を信じて、未来に期待することです。根拠は求めず、ただ自分を疑わず、「信じること」を習慣化してみてください。

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