大切にしているペットが旅立ってしまったとき、どのようにお別れすれば良いのでしょうか。ペット供養については法的な決まりはありませんが「後悔がないようにしたい」と考える飼い主さんが多いでしょう。
ここでは、ペットの火葬や供養の方法について解説していきます。ペットが旅立ったあとの流れや、やってあげられるケアなどについてもご紹介しますので、ペット供養について知りたい方は参考にしてください。
ペットと過ごした日々を良い思い出として整理するためには、人間と同じようにしっかりと供養するのがおすすめです。
ペットが旅立ったあとは、エンゼルケア、火葬、遺骨の供養という流れとなります。火葬方法には個別火葬・合同火葬・立会火葬・移動火葬、そして供養方法には納骨・手元供養・散骨・埋骨などがあります。どのように見送りたいか、どのように供養したいかを考えて、ご自身が納得できる方法を選択しましょう。
火葬費用は、個別火葬の場合で21,000〜50,000円程度となっており、ペットの体重によっても前後します。また供養にかかる費用は、動物霊園の個別墓で100,000〜300,000円程度です。
ペットも人間と同じように供養を
ペットを亡くしたときに「しっかりと供養してあげたい」と考える飼い主さんは多いでしょう。飼い主さんにとって、ペットは大切な家族の一員です。
ペットと一緒に行ける場所が増えたことや核家族化などにより、ひと昔前よりもペットとの距離はより近くなっています。しかし大切な存在であるからこそ、失ったことで気持ちが大きく落ち込み、ペットロス症候群になってしまう方が増加しているのも事実です。
ペット供養は、法律で決められているものではありません。しかし、ペットをしっかりと供養してあげることは、飼い主さんの心を癒して日常に戻る手助けとなります。
また、ペットの死にしっかりと向き合うことで、一緒に過ごした日々を良い思い出として整理することもできるでしょう。このことからペット供養は、ペットだけでなく飼い主さんにとっても重要なものであるといえます。
ペットの火葬方法
ペットの火葬方法には、主に4つの種類があります。どのように見送りたいかを考えて、ご自身が納得できる方法を選択することが重要です。
個別火葬
ペットを一体ずつ火葬する方法で、一任火葬とも呼ばれています。ペットの火葬場への移動は、ペット葬儀会社が行う場合と、飼い主さん自身が行う場合があります。個別火葬の場合、飼い主さんは基本的に立ち会いできません。
また、葬儀会社が拾骨(しゅうこつ:遺骨を骨壺に納めること)を行い、自宅に遺骨を返却します。個別火葬は「立ち会いするのが辛いけれど遺骨をとっておきたい」という方や、車がない、あるいは車移動が難しい方などにおすすめの火葬方法です。
火葬費用はペットの体重にもよりますが、5kgまでの超小型犬や猫などで21,000~25,000円程度、20~40kgの大型犬で45,000~50,000円程度となっています。
合同火葬
合同火葬は、他のペットと一緒に火葬をするスタイルの火葬方法です。立ち会いや拾骨はできませんが、他の火葬方法と比べると費用が安いため、火葬による出費を抑えたい方におすすめです。
ただし、遺骨が返ってこないことから「ペットがいた証を骨として残したい」という方には向きません。「合同火葬にしたいけれど何かを残したい」という場合は、火葬前に足形や毛の一部を残しておくと良いでしょう。
合同火葬の費用は、超小型犬や猫で12,000〜15,000円程度、大型犬で26,000~40,000円程度です。
立会火葬
飼い主さんの立ち会いのもとに行う火葬を、立会火葬といいます。火葬後は、飼い主さんが葬儀場で拾骨します。段階を踏んだお別れができて気持ちの整理をつけやすいことから、立会火葬は「人間と同じ方法で火葬してあげたい」という方におすすめです。
ただし、立会火葬の費用相場は個別火葬・合同火葬と比べるとやや高めです。超小型犬や猫で23,000〜35,000円程度、大型犬で47,000〜50,000円程度となっています。
移動火葬
ペット専用の火葬車が自宅に来て、自宅駐車場や近隣で火葬してくれるスタイルです。24時間対応していることが多く、拾骨できるプランを用意している移動火葬会社もあります。
移動火葬の大きなメリットは、飼い主さん自身がペットを移動させる必要がないこと、プランによってはペットが慣れ親しんだ場所でお別れができることです。
また「仕事で日中の都合をつけにくい」という方も、24時間対応の移動火葬会社を選べば早朝や夜にお別れすることができます。ただし、大型犬の火葬には対応していない移動火葬車もあるため確認が必要です。
移動火葬にかかる費用は、小型犬や猫の場合で10,000〜25,000円程度となっています。比較的安いですが、葬儀まで依頼する場合は50,000円を超えることもあります。
遺骨の供養方法
火葬だけでなく遺骨の供養の仕方にも、さまざまなものがあります。
お寺に納骨する
遺骨を供養する方法のひとつが、お寺の個別墓・合祀墓・納骨堂への納骨です。お寺で供養する場合は、毎日住職が読経してくれることもあります。
個別墓は、ペットのみが入るタイプだけでなく、ペットと飼い主さんが一緒に入れるタイプのものもあります。近年では、お寺の一角に樹木を植えて、その周りに遺骨を埋葬する樹木葬も人気です。ただし、宗教上の理由からペットの遺骨を納骨できない寺院もあるため、確認してみましょう。
費用は、飼い主さんと一緒の個別墓の場合で300,000〜2,000,000円程度、合祀墓の場合で10,000~30,000円程度です。なお個別型の樹木葬は、ペットのみの場合で100,000〜300,000円程度、飼い主さんと一緒の場合で400,000〜1,000,000円程度となっています。
飼い主さんとペットが一緒にお墓に入りたいというケースでは、場合によっては樹木葬のほうがコストを抑えられる可能性があります。
お寺で葬儀をする場合は「お布施も必要なのでは」と思う方が多いかもしれません。気持ちとして渡す方もいますが、一般的にプランに含まれているため不要です。
動物霊園に納骨する
ペットだけが眠る動物霊園に遺骨を納骨する方法もあります。近年、動物霊園は民間だけでなくお寺や神社が運営するところも増えています。
種類としては個別墓・合同供養塔・納骨堂などがありますが、お寺が運営している動物霊園は合同のお墓のみとなっており、永代供養であるところがほとんどです。
永代供養の場合は、お墓の管理を霊園が行ってくれるため「定期的に管理するのが難しい」「子孫がペットのお墓を管理してくれるのが不安」という方におすすめです。
なお動物霊園で納骨するときにかかる費用は、個別墓で100,000〜300,000円程度、納骨堂で年間10,000円程度からとなっています。
手元供養
手元供養とは、遺骨を骨壺などに入れて手元に置き、自宅で供養する方法のことをいいます。手元供養では、自宅で小さいサイズの仏壇や写真立てなどを飾ってペットを祀ります。ただし、遺骨を自宅で保管するため、大型犬などの供養には向きません。
手元供養は、ペットが亡くなったあとも一緒に過ごせる一方で、手元にあるからこそペットロスが長引いてしまう可能性もあります。また、飼い主さんが入院した際や亡くなった際などに、無縁仏になる可能性も否定できません。
散骨する
遺骨を粉砕し粉状にしてから撒く方法で、宗派・宗教にとらわれず誰でも行えます。ただし、遺骨はどこでも撒けるわけではありません。撒ける場所が限られているため、しっかりと調べることが重要です。
専門会社による海洋散骨などもあります。海洋散骨は、遠洋に船で出て遺骨を撒く方法です。費用相場は、飼い主さんも乗船する個別散骨で100,000〜300,000円程度、代理散骨サービスを利用する場合で5,000〜10,000円程度となっています。これらの他に、粉骨費用がかかることも念頭に置いておきましょう。
埋骨する
火葬後、土の中に遺骨を埋める方法です。費用はそれほどかかりませんが、原則として自宅の庭など飼い主さんが所有する土地にしか埋められません。
注意が必要なのは、臭いや菌の発生です。臭いや菌が発生すると、動物や虫が寄ってきて近隣に被害を及ぼす可能性があります。また、引っ越しの際には、遺骨を掘り起こして一緒に連れて行くことも必要となります。
ペットが旅立ったあとの流れ
「実際に亡くなってしまったときにどうすれば良いのかわからない」という飼い主さんも多いでしょう。ここからは、ペットが旅立ったあとにやってあげられるケアや、供養の流れについてご紹介していきます。
まずはエンゼルケア
ペットの死後は、お見送りの準備をするエンゼルケアを行います。エンゼルケアは飼い主さんが最初にできる供養のひとつで、ペットの死を受け入れるためにも重要です。エンゼルケアの内容や方法について、以下にまとめました。
目を閉じて体勢を整えてあげる
ペットが亡くなったあと、数時間程度で体の硬直が始まります。硬直が始まる前に、目を閉じて体勢を整えてあげましょう。目を閉じるときは、手でまぶたを優しく押さえます。どうしても目を閉じられない場合は、安らかに休めるように顔に布をかけてあげても良いでしょう。
前足や後ろ足が伸びた状態で硬直してしまうと、棺に納まらなくなってしまうことがあります。伸びた前足と後ろ足の関節を胸のほうに優しく近づけ、曲げてあげましょう。
詰めものをする
亡くなってから時間が経つと、口や肛門から体液や排泄物が出てくるため、脱脂綿で詰めものをします。尿は、お腹を優しく圧迫して排出を促してあげると良いでしょう。
体液が多い場合は、適宜脱脂綿の交換が必要です。また、体液が漏れ出てしまった場合に備えて、体の下に大きめのタオルやシーツを敷いておきましょう。
全身をきれいにする
全身がきれいな状態で送り出してあげることも大切です。固く絞った温かいタオルで全身の汚れを拭き取り、毛の流れに沿ってブラッシングをします。
ブラッシングは、飼い主さんがペットに対して日常的に行ってきたケアのひとつではないでしょうか。普段のように声をかけたり、感謝の気持ちを伝えたりしながらブラッシングしてあげるのも良いかもしれません。
体を冷やす
生きているときに近い姿でお別れできるように、体を冷やしてあげましょう。エアコンの温度を低く設定したり頭やお腹を保冷剤で冷やしたりすることで、腐敗が進むのを防止します。保冷剤で体が濡れないように、間にタオルを挟んであげると良いでしょう。
また、日の当たらない涼しい場所に安置して、体を温めないための工夫も重要です。
お供えをする
お花やおやつなどをペットの周りに置いて、寂しくないようにしてあげます。使っていたリードや、好きだったおもちゃなどのグッズを一緒に置くのもおすすめです。そして、家族で思い出話をするなど最後のお別れをしましょう。
火葬する
火葬はいつまでにするという決まりはありませんが、腐敗してしまう前が望ましいでしょう。しっかり冷却した場合であっても、夏場は3日以内程度での火葬がおすすめです。「すぐに火葬してしまうのは寂しい」と感じるかもしれませんが、早めに火葬方法を決めて、火葬会社とスケジュールを調整しましょう。
火葬会社に依頼する際は、あとでトラブルにならないように料金のこともしっかりと確認してください。また、おもちゃやリード、金属製のフードボウルなどは棺に入れられないため、お供えしている場合は火葬前に取り出す必要があります。
拾骨する
立会火葬や移動火葬の拾骨ありのプランを選択した場合は、拾骨します。骨壺に入れる順番は、前足・後ろ足・しっぽ・大腿骨(だいたいこつ)・背骨・あばら骨・頚椎(けいつい)・顎骨(がくこつ)・頭蓋骨、最後に喉仏となります。
遺骨を供養する
火葬後に遺骨が戻ってきた場合は供養します。一旦手元供養にして四十九日を目途に納骨する方が多いですが、そのまま手元で供養する方もいます。
散骨を選ぶ場合は粉骨も必要になりますが、粉骨作業を個人で行うのは難しいため、専門会社に依頼すると良いでしょう。
犬は自治体に死亡届を提出
犬が亡くなった場合は、死後30日以内に自治体に死亡の届出をしましょう。犬の場合は狂犬病予防接種の際に自治体に登録されているため、その登録を抹消する必要があります。
手続きの際は、死亡届の他に犬鑑札と狂犬病予防注射済票が必要となります。「愛犬が生きた証や思い出として犬鑑札を残しておきたい」という場合は、届出をするときに相談してみましょう。なお、猫など他の動物の場合、亡くなった際の届出は不要です。
また、血統書のある犬が亡くなった場合には血統書の返却が必要ですので、登録している団体に連絡を入れましょう。記念として残したい場合は、相談すれば対応してもらえます。
おわりに
ペットが亡くなったときに「お別れしたくない」「何も考えられない」という飼い主さんもいるかもしれません。
しかし、ペットをしっかりと供養することが、ご自身の気持ちを整理することにつながります。火葬方法や供養方法にはさまざまなものがありますが、どの方法を選ぶ場合も飼い主さんが納得できるものであることが重要です。ペットが安心して眠れるように、ご自身とペットに合う方法を検討してみましょう。