資産運用をする際には、リスク許容度を知っておく必要があります。ただし、リスク許容度をどうやって見極めるのか、よくわからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、リスク許容度の考え方や見極めるポイントなどを詳しく解説します。初心者の方でもリスク許容度の診断ができるツールも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を読んでわかること
- リスク許容度を見極めないと損をしたり利益を逃すことなる
- リスク許容度は、投資経験や年齢など7つのポイントで判断する
- 診断テストで簡単にリスク許容度がわかる
リスク許容度とは
リスク許容度とは、投資をする際にいくらの損失までなら受け入れることができるかを表すものです。どのくらいのリスクを許容できるかは、投資する方によって異なります。
なぜなら、投資をする際にリスクが高くても大きなリターンを狙いたい方もいれば、リターンは少なくても良いので損失は抑えたいと考えている方もいるからです。リスク許容度が低い方は、ハイリスクハイリターンの方法を選んではいけません。
また、リスク許容度には以下のような目安があります。
- 日常生活に影響がない程度
- 精神的に負担にならない程度
- 老後資金に影響のない程度
どの目安でリスク許容度を判断するにしても、投資をする方の年齢や資産状況によって異なることは覚えておきましょう。
リスク許容度を見極めないとどうなるのか
リスク許容度を見極めずに資産運用をすることは、リスクをあまり取りたくない方はもちろん、それなりのリスクを取りたい方にとってもおすすめできません。
リスク許容度を見極めておかないと、以下のような事態に陥ります。
- 身の丈に合わないハイリスク商品に手を出してしまう
- より高いリターンを得るチャンスを失う
- 複利効果など充分な恩恵を受ける前に投資をやめてしまう
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
身の丈に合わないハイリスク商品に手を出してしまう
リスク許容度がわかっていないと、損失がいくら発生するのかわからない状態で資産運用をすることになりかねません。高い目標を達成するためにハイリスクハイリターンな株や高いレバレッジをかけられるFXに投資した場合、大きな損失を被る可能性が高くなります。
資産運用では、目標達成のためには必ずしも高いリスクを取る必要はありません。例えば、年間で投資額が1〜2%増えれば良いと考えている方なら、ローリスクローリターンの債券やインデックス投資でも十分目標を達成できます。
身の丈に合わないハイリスクな商品に手を出して大事なお金を失わないためにも、リスク許容度は把握しておくべきです。
より高いリターンを得るチャンスを失う
資産運用をする方の多くは、老後の資産形成や子どもの教育費の準備など、何らかの目的のために資産を増やそうと考えているのではないでしょうか。資産運用が怖いと考えてリスクをまったく取らなければ、ほとんど利益を得られません。
例えば、日経平均株価は2013〜2023年の直近10年で14,000円台から31,000円台まで上昇しました。この期間に株式や投資信託に投資をしていれば、多くのリターンを得られた可能性があります。
しかし、リスクを恐れるあまり、この期間に定期預金しかしていなかった場合、1,000万円を預けても増える資産はわずか20,000円程度です。
資産運用で利益を得るためには、いくらまでならリスクを取っても良いのか把握しておくことも重要です。
参照:Googleファイナンス|日経平均株価、楽天銀行|定期預金 利息シミュレーション
複利効果など充分な恩恵を受ける前に投資をやめてしまう
資産運用では、常に商品の価格が上昇するわけではありません。長期間の運用を続けている際、値上がりすることもあれば値下がりすることもあります。
しかし、長期投資では、損失を恐れて途中で投資をやめるのは良くありません。一時的に値下がりしたタイミングで売却してしまうと、損失が確定してしまいます。長期間の投資では、一度値下がりしても、何年か経てば価格が回復することも珍しくありません。
また、長期投資の醍醐味は、運用により得た利益を元本に含めて再度投資することで、より多くの利益が得やすくなる点です。
例えば、毎月5万円ずつ積み立てて年利2%で10年間資産運用をした場合、63万3,481円の利益(税引前)を得ることができます。一度長期投資をはじめたら、途中で止めるのはおすすめできません。
リスク許容度を決める7つのポイント
リスク許容度の判断の仕方が良くわからない方も多いのではないでしょうか。リスク許容度を決める際は、以下の7つのポイントも踏まえて総合的に判断してください。
- 投資経験が充分にあるかどうか
- リスクが取れる年齢かどうか
- 将来の支出が想定される家族構成かどうか
- 損失をカバーできる年収かどうか
- 余力がある資産状況かどうか
- リスクに左右されやすい性格かどうか
- 将来必要な金額がまかなえる目標設定かどうか
それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
投資経験が充分にあるかどうか
リスク許容度を判断するにあたって、投資経験が充分にあるかどうかは重要なポイントです。投資経験がある方ほど高いリスクを取ることができるからです。
特にリーマンショックのような世界的な金融危機を経験している方は、リスクを取り過ぎると大きな損失を被ることを実体験として知っています。金融危機の可能性は低くても、万が一のケースを考えて、リスク許容度を厳しく設定する傾向が見られます。
一方で、投資初心者の方は利益を得たい気持ちが強いため、リスク許容度を高く設定しがちです。最初はリスク許容度を低く設定する方が良いでしょう。
リスクが取れる年齢かどうか
年齢も重要なポイントの1つです。年齢が若い方は、一度大きな失敗をしても老後まで期間が長いので、再度挑戦して資産を増やせる可能性があります。よって多少リスク許容度を高く設定しても良いかもしれません。
一方で、定年間近の方が定年を迎えるとほぼ年金に頼ることになるので年収が大幅に下がります。資産運用で大きな失敗をすると、損失を取り戻せるほどの収入を確保しにくいため、生活に支障をきたしかねません。
退職金を一括投資しようとする方がいますが、危険な行為なので絶対に避けてください。
将来の支出が想定される家族構成かどうか
リスク許容度を決めるにあたり、配偶者や子どもの有無といった家族構成も重要なポイントです。
特に子どもの人数が多い場合は教育費がかかります。リスク許容度を小さくしておかなければ、大きな損失を被ったときに、子どもの教育費の支払いに苦労するかもしれません。
また、共働きなのか、配偶者が専業主婦(主夫)なのかも重要です。共働き家庭は世帯収入が多くなるので、多少リスク許容度を高く設定できます。しかし、夫婦の片方しか働いていない場合は、年収が高くない限り、リスク許容度を低くしましょう。
損失をカバーできる年収かどうか
資産運用で損失を被った際にカバーできる年収があるかどうかも重要です。
基本的に、年収が多い方ほどリスク許容度を高くできる理由は、年収の少ない方に比べて、損失を被っても生活に与える影響が低いからです。例えば、資産運用で50万円の損失を出した場合、年収1,000万円の方と400万円の方では、生活に与える影響度も異なりますし、精神的な痛みも違います。
ただし、年収が高くても出費が多い場合は、資産運用で失敗した時に生活に与える影響が大きいため、リスク許容額を低くする必要があります。
余力がある資産状況かどうか
余力がある資産状況かどうかも重要なポイントです。
基本的に、所有している資産が多いほど投資に回せるお金も多いので、リスク許容度を高くできます。特に、資産のほとんどを預貯金・現金・債券などで保有している場合、よほどのことがない限りは大きな損失を被ることはありません。また、投資で多少の損失が出ても保有資産でカバーでき生活に支障が出にくいので、多少リスクを取っても良いでしょう。
一方、資産のほとんどを株式や投資信託といった金融資産で保有している場合は、世界的に不景気になった場合、これらの金融商品は大きく値下がりする可能性があります。このように保有資産の構成に片寄りがある場合は、リスク許容度は低くしておきましょう。
リスクに左右されやすい性格かどうか
リスク許容度にはご自身の性格も関わってきます。なぜなら、多額の資産を保有していても少しでも資産が減ることに抵抗感がある方がいる一方で、大きな損失を被ってもあまり気にしない方もいるからです。
例えば、同じ年収500万円の方が1万円の損失を出した場合でも、また挑戦して増やせば良いと考える方もいれば、嫌な気分になる方もいます。冷静な判断をするために、少ない損失が怖い方はリスク許容度を抑えておきましょう。
将来必要な金額がまかなえる目標設定かどうか
リスク許容度は、将来いくらの資産が必要かによっても変わります。同じ目標でも、年収が高い方は少ない利益率でも目標を達成できる可能性が高いため、無理して大きな損失を被るリスクを負う必要はありません。
しかし、年収が低い方の場合はどうでしょうか。目標金額に遠く及んでいない場合は、リスク許容度を踏まえることなく多少リスクを取ってでも利益を増やしたいと考える方もいます。
ただし、資産運用がはじめてなのに、いきなり年20.0%のように高過ぎる目標を掲げるのは危険です。ハイリターンを狙い過ぎると、失敗したときに大きな損失を被るので、生活に支障が出る可能性があります。
リスク許容度の計算方法は?便利な計算ツールを活用しよう
年収や資産、家族構成、性格などリスク許容度で見るべきポイントは多いため、全て自分で判断するには知識が必要で手間もかかります。
以下のツールを活用すれば、資産運用の経験があまりない方でも簡単にリスク許容度を計算できます。
- 全国銀行協会『リスク許容度診断テスト』
- ウェルスナビ『リスク許容度無料診断』
- フィデリティ証券『ポートフォリオナビツール』
いくつかの質問に回答するだけで、適切なリスク許容度や推奨される金融商品もわかります。それぞれのツールについて詳しく見ていきましょう。
全国銀行協会『リスク許容度診断テスト』
全国銀行協会『リスク許容度診断テスト』は、リスク許容度を診断してくれるテストです。
10問の診断テストに回答すると、リスク許容度と安全性・流動性・収益性を配分化した自分のタイプが以下の4タイプのどれに該当するか教えてくれます。
- 安全性重視タイプ
- 安定成長タイプ
- バランス運用タイプ
- 積極運用タイプ
加えて、それぞれのポートフォリオごとに推奨する金融商品もわかります。例えば、安定成長タイプであれば、リスクの低いMMFなどの公社債投信タイプが推奨される商品です。
【特徴】
- タイプは4種類
- ポートフォリオ構築に適した商品を推奨してくれる
設問数 | 10問 |
ポートフォリオの提案 | あり |
商品の提案 | あり |
URL | https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-c/diagnosis/risktest/ |
参照:全国銀行協会|タイプ別リスク許容度一覧 ~あなたのタイプは?~
ウェルスナビ『リスク許容度無料診断』
ウェルスナビのリスク許容度無料診断は、リスク許容度と将来予想・過去分析・アセットロケーションを診断するツールです。
目標金額、投資予定額、毎月の積立額などを自分で設定して診断します。
将来予想は、資産をどのくらいの確率でいくらまで増やせそうかわかります。過去分析は2008〜2023年まで運用したケースの資産推移がわかる分析方法です。リーマンショックやアベノミクスといった相場で資産がどうなるのかがわかります。
アセットアロケーションは、米国株・日欧株・新興国株・債券・金・不動産など資産クラスごとの配分比率を決めることです。その資産クラス毎に具体的な商品による推奨のポートフォリオを診断する機能です。詳しい診断をしたい方におすすめします。
【特徴】
- 目標金額や毎月の積立額などを自分で設定してシミュレーション可能
- 将来予想や過去分析などを細かく分析してくれる
設問数 | 6問 |
ポートフォリオの提案 | あり |
商品の提案 | なし |
URL | https://invest.wealthnavi.com/simulation |
参照:ウェルスナビ|無料診断
フィデリティ証券『ポートフォリオナビツール』
フィデリティ証券のポートフォリオナビツールは、計画設計・診断・最適なポートフォリオがわかるツールです。
インデックスファンドのみに投資するケースとアクティブファンドにも投資するケースのいずれかを選んで診断ができます。
投資が成功した例と失敗した例の合計5つの評価損益がわかる点が他のツールとの大きな違いです。
また、アセットロケーションだけでなく、ポートフォリオ構成に向けたおすすめのファンドまで細かく診断してくれるので、商品選びにも困らないでしょう。
【特徴】
- 成功例と失敗例の評価損益がわかる
- おすすめのファンドも教えてくれる
設問数 | 10問 |
ポートフォリオの提案 | あり |
商品の提案 | あり |
URL | https://www.fidelity.jp/fund-guide/portfolio-creation-tool/planning/ |
おわりに
資産運用をする際にリスク許容度を把握していなかった場合、リスクを取り過ぎて想定外の損失を被ることがあります。リスク許容度は、年齢、年収、資産などさまざまなポイントを踏まえて判断しなければならないので注意が必要です。リスク許容度の診断ツールで診断をしてみましょう。