事業を営むためには、金融機関からの融資が欠かせません。「主に取引する金融機関=メインバンク」を決め、密接な関係を保っているケースも多いでしょう。メインバンクは融資先の事業の存続に最後まで付き合う役回りを果たしますが、それでも融資を断られることは往々にしてあります。
このコラムでは、メインバンクから融資を断られる理由と対策について、詳しく解説します。
- メインバンクとは、企業が主に取引する金融機関を1行に定め、密接な関係を保つという日本独自の金融慣行
- 可能な限り融資を断らないのがメインバンクの役回りだが、断られるケースは一定数ある
- 重要なのは理由を突き止め、それに合った対策を早い段階で講じること
- 問題が解決しない場合は、融資先の変更や融資以外での資金調達も視野に入れるべき
メインバンクとは何か?通常の銀行取引との違い
メインバンクとは、企業が主に取引する金融機関を1行に定め、密接な関係を保つという日本独自の金融慣行のことです。
業績が悪化して資金の調達が思うようにいかない、どこの取引銀行も相手にしてくれない場合でも、メインバンクは融資先の資金繰りが破綻しないように可能な限りの支援を行うのが大きな特徴です。いわば、融資先の事業の存続に最後まで付き合う役回りを果たす銀行といえるでしょう。
メインバンクに融資を断られる理由・NGポイント
メインバンクはいわば「企業と一蓮托生の立場にある銀行」です。よほどのことがないと融資は断りませんが、それでも断られるケースもあります。メインバンクに融資を断られる具体的な理由は、以下の8つです。
【メインバンクに融資を断られる理由】
- 銀行側がメインバンクだと思っていない
- 他行が融資を断った情報をキャッチされた
- 2期以上の決算の赤字が続いている
- 業績改善の見込みがないと判断されている
- 不正な会計処理が発覚した
- 資金使途を守らなかった
- 融資の限度額を超えてしまった
- 税金や公共料金の未払いが発覚した
銀行側がメインバンクだと思っていない
事業者側がメインバンクだと思っていたとしても、銀行側がそうは思っていないことが往々にしてあります。原因のひとつが、多くの金融機関に融資が分散していることです。メインバンクと呼べる存在がないため、すべての金融機関が「ほかの金融機関をあたってください」と尻込みする状況に陥ってしまうでしょう。
本来であれば、メインバンクから多めに事業資金の融資を受け、他の金融機関からは足りない部分を補う程度に借りるのが望ましいです。
例えば、A銀行・B銀行・C銀行の3行と取引をしていた場合、それぞれの金融機関から借りる比率を6:3:1にするなど、差を付けましょう。これにより、各銀行との関係性に優劣が付き、どこがメインバンクなのかわかりやすくなります。
他行が融資を断った情報をキャッチされた
他行が融資を断った情報をキャッチされた場合も、メインバンクからの融資が断られる傾向にあります。
銀行や信用金庫など、その地域に拠点を構える金融機関は、独自の情報ネットワークを持っているのが一般的です。「B銀行があの会社の融資を断ったらしい」と噂が流れれば、他の銀行も追随するでしょう。自行に極端にリスクが偏る、つまり自行が多めに貸したとしても返済が滞る状態に陥ることを嫌うからです。
2期以上の決算の赤字が続いている
2期連続赤字が発生すると、融資姿勢は厳しくなります。慢性的な赤字体質ととらえられ、貸したお金の回収可能性が下がると判断されるためです。
前提として、銀行などの金融機関は、1期だけ赤字になったとしても、それだけで融資を断るとは限りません。一過性の赤字、もしくは企業努力により黒字化する余地があると判断されれば、融資を受けられる可能性は残っています。
しかし、2期赤字が続いてしまうと、一過性のものとはいえず、黒字化するための努力もしなかったととらえられるでしょう。
業績改善の見込みがないと判断されている
業績・資金繰りが悪いにもかかわらず、その状況を打開するための計画書を提示できない会社は、融資を断られやすくなります。業績改善の見込みがない以上、近い将来収益が得られなくなり、いずれ資金ショートなどの深刻な事態に陥る可能性が高いからです。
不正な会計処理が発覚した
「不正な会計処理=粉飾決算」が発覚した場合も、ほぼ融資は断られると考えてください。
例えば、本当は赤字だったにもかかわらず、売上や経費に関する経理操作を行い、黒字として決算を出していた場合などが該当します。粉飾決算が発覚すると銀行は裏切られたと感じ、経営者に対して不信感を持つため、態度を硬化させてくるでしょう。
どのように態度を硬化させてくるのかは、粉飾の程度によります。軽度の粉飾であれば、回収・訴訟など強い措置に出る可能性は低いです。粉飾以外のことを理由にして新規融資を断られる程度にとどまるかもしれません。
一方、数期にわたって粉飾をするのが常態化していたなど、重大な事態と判断された場合は、新規融資を断られるだけでは済みません。一括返済や損害賠償、刑事告発などさらに深刻な事態に発展します。
加えて、詐欺罪に該当すると判断された場合は10年以下の懲役に処される点にも注意が必要です(刑法第246条)。
資金使途を守らなかった
融資により得た資金の使途が守られていない場合も、融資を断られるので注意してください。
銀行は、融資審査で「資金使途(融資金の使いみち)」を重視します。貸した後も、資金使途が守られているかチェックするので、目的外使用をした場合はいずれ発覚するでしょう。
具体的なチェック方法は、以下のとおりです。
- 決算書の固定資産明細をチェックする
- 現物を写真撮影に来る
- 領収書の提出を求められる
融資の限度額を超えてしまった
ここまで列挙したような問題がなかったとしても、融資限度額に達すると新規融資は難しくなります。「貴社の融資限度額は●円ですので」など、何かしらの形で示唆されると、融資限度額が近づいている可能性があるので注意しましょう。
早いうちに他行からの借入を行うなど、別の形で資金調達をする必要があります。
税金や公共料金の未払いが発覚した
税金や公共料金の未納がある場合、支払い能力に懸念があるとみなされ、審査に落ちてしまいます。本来支払うべきものを支払っていない以上「この会社にはお金がない」と判断されても致し方ありません。
メインバンクから融資を受けられない時にとるべき対応方法
メインバンクから融資を受けられない場合でも、落ち着いて適切に対応しましょう。具体的な対応方法は、以下の4つです。
【メインバンクから融資を受けられない時にとるべき対応方法】
- メインバンクを明確に定める
- 事業計画書を作成し、業績改善が見込めることを示す
- 滞納している税金や公共料金を支払う
- 他行に融資の相談をする
メインバンクを明確に定める
複数の金融機関から融資を受けているものの、メインバンクと呼べる存在がない場合は、明確に定めましょう。
今後継続的に関係構築をしてもらえそうな先をメインバンクとして定めて売上入金口座、給与振込口座、個人取引(クレジットカード契約、投資信託購入等)といった付帯取引を集約させることが重要です。
例えば、日本政策金融公庫から融資を受けた場合、振込先の口座をメインバンクに指定するのも有効な対策のひとつです。
事業計画書を作成し、業績改善が見込めることを示す
事業計画書を作成し、業績改善が見込めることを示しましょう。悪化しつつある指標が今後改善していくことを、さまざまな形で示す必要があります。
具体的には、以下のポイントを意識してください。
- 具体的で実現可能なプランである
- 金額・数値に根拠がある
- 誰がみてもわかるように書かれている
- 競合優位性や独自の強みがある
- 事業に対する熱意が伝わる
滞納している税金や公共料金を支払う
滞納している税金や公共料金があれば、優先的に支払いましょう。仮に会社が倒産した場合、債権者は破産手続き内での弁済・配当によって一部でも回収することを目指します。
しかし、債権のうち、滞納している税金や社会保険料は他の債権よりも優先的な地位を有しています(破産法第2条7項)。滞納している税金や社会保険料が多額だった場合、銀行などの金融機関が回収できる部分がその分減る計算です。
この点も含め、税金や公共料金の滞納はマイナス要因になるため、できるだけ早い段階で解決しておくことが大切です。
他行に融資の相談をする
普段取引のない他行に融資の相談をしてみることも、メインバンクから融資を受けられないときに有効な方法です。金融機関が一番関心を持つのは、融資した資金が確実に回収できるかどうかなので、問題がないと判断されれば融資を受けられる可能性があります。条件次第では、メインバンクを変更することも検討しましょう。
関連記事:補助金でつなぎ融資が必要となるワケ。どうする?新規事業の資金繰り
また、他行に融資の相談をする前に、銀行以外の方法で資金調達をするのもひとつの方法です。セゾンファンデックスの「事業者向け不動産担保ローン」は、銀行で融資を断られた場合でもお申し込みいただけます。短期間での資金調達が必要な場合は、ぜひ一度ご検討ください。
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再度メインバンクに融資を申し込む際のポイント
一度断られたとしても、再度メインバンクに融資を申し込む際は、返済実績を積むために半年から1年程度はクールダウン期間をおいた方が無難です。借入金の返済をリスケしたり、支払遅延を起こしていたりしたことが原因で融資を断られた場合は、どうしても心証が悪くなります。
また、状況に応じて融資元の銀行を変更することも検討してみてください。
融資元を変更する必要があるかどうか確認する
税金・保険料・公共料金を滞納している、借入金の返済に遅れが生じているなどの理由で融資を断られた場合は、思い切って融資元を変更することも検討しましょう。
ただし、融資元の変更により、これまでのメインバンクとの信頼関係を捨てざるを得ないことも考えられます。仮に、新しい融資元と関係が悪化しても、元には戻せません。あくまで、他の方法を試しても状況が好転しない場合の最終手段として考えましょう。
融資元を変更する場合は各金融機関の特徴を理解しておく
融資元を変更する場合は、各金融機関の特徴を理解しておきましょう。融資の基準は金融機関によってまったく異なります。
中小企業、小規模事業者の支援に力を入れているなど、それぞれの特徴を踏まえ、審査に通過できるよう、税理士などの専門家とも相談しながら準備を進めましょう。
おわりに
一口にメインバンクからの融資を断られるといっても、背景にはさまざまな理由があります。再度メインバンクから融資を受けるためには、理由に応じた対策を練ることが重要です。短期的に講じられる対策ではない場合は、つなぎ資金として不動産担保ローンなどでの資金調達も検討しましょう。
また、最終手段ではありますが、融資元の変更も有効な対策にはなります。「融資が受けられない」と困っているだけでは状況は改善しませんので、専門家のアドバイスも受けつつ行動に移すことが重要です。