創業や事業拡大のために日本政策金融公庫へ融資を申し込んで、断られた経験のある方もいるかもしれません。日本政策金融公庫は中小企業や個人事業主を支援する公的な金融機関として、比較的審査に通りやすいといわれています。しかし、それでも断られるケースもあるので注意が必要です。
このコラムでは、日本政策金融公庫から融資を断られた場合の4つの対処法をご紹介します。融資を断られる原因についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
- 日本政策金融公庫の融資は一般の金融機関より通りやすいといわれるが、審査落ちする場合もある
- 税金の滞納があると日本政策金融公庫の融資審査を通過するのは難しい
- 日本政策金融公庫に審査を申し込む場合、説得力ある事業計画書を作成する必要がある
日本政策金融公庫に断られた場合の対処法4選
日本政策金融公庫からの融資を受けられない場合、何らかの対策を考えなければなりません。ここでは、日本政策金融公庫に断られた場合の対処法を4つご紹介します。
【日本政策金融公庫の融資を断られた場合の対処法】
- 自己資金を増やす
- 創業計画書や決算書の作成を専門家へ外注する
- 他社から借入れしている場合は返済負担を軽減する
- 信用情報に傷がある場合は消えるまで待つ
自己資金を増やす
自己資金が不足していて融資を受けられない場合、自己資金を増やす必要があります。自己資金が多いほど返済能力があると評価され、融資を受けやすくなるためです。
日本政策金融公庫の融資で、必要とされる自己資金の目安は公表されていません。日本政策金融公庫の2022年度「新規開業実態調査」のデータによると、創業資金の調達元ごとの割合の平均は以下のとおりです。
資金調達元 | 金額(計:1,274万円) | 割合 |
自己資金 | 271万円 | 21.27% |
親族 | 49万円 | 3.84% |
知人・友人 | 52万円 | 4.08% |
金融機関 | 882万円 | 69.23% |
その他 | 20万円 | 1.56% |
出典:日本政策金融公庫「2022年度新規開業実態調査」より
上記のデータでは金融機関の融資額は、自己資金の約3.25倍です。このことから、一般的に創業融資で借りられる金額は、自己資金の2~3倍と考えられます。
自己資金として認められるのは、現預金・退職金・株式・投資信託・保険の解約返戻金などです。
創業計画書や決算書の作成を専門家へ外注する
創業計画書の内容に問題があって融資を断られた場合、創業計画書や決算書の作成を専門家へ外注するほうが良いでしょう。
日本政策金融公庫は融資の審査において、創業計画書や決算書などの内容を重視します。しかし、審査に通る創業計画書の作成は簡単ではありません。創業計画書は事業内容や市場分析、収支予測などを詳細に記述する必要があります。
自力での作成が難しい場合、創業計画書の作成を税理士や中小企業診断士、経営コンサルタントへ外注する方法もあります。専門家に書類を作成してもらえば、融資の審査に通る可能性も高くなるでしょう。
他社から借入れしている場合は返済負担を軽減する
他社からの借入れがあり、返済能力に不安があると判断されて融資の審査に落ちた場合は、返済負担を軽減させましょう。特に、カードローンや消費者金融からの借入れは審査に影響があると考えられるため、できれば完済させするのが望ましいです。
返済能力は新規の借入れと既存の借入れを含めた全額で判断されるため、他の借入れがないほうが審査に通りやすくなります。
信用情報に傷がある場合は消えるまで待つ
クレジットやローンの返済での滞納や延滞のように信用情報に傷がある場合、消えるまで融資の申し込みを待ちましょう。
日本政策金融公庫は融資の審査において、信用情報機関から提供される信用情報を確認します。信用情報とは、過去に借入れや返済などを行った履歴のことです。延滞や滞納の情報も記録されますが、このような記録があると、審査に通るのは難しくなるでしょう。
ただし、それらの記録は永久に残るわけではありません。信用情報に傷がついてから消えるまでの期間は、一般的には5年程度です。信用情報の傷が消えれば、日本政策金融公庫から融資を受けられる可能性が高まります。
信用情報機関ごとの返済に関する情報の保有期間(消えるまでの期間)は、以下のとおりです。
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC):契約期間中および契約終了後5年以内
- 株式会社日本信用情報機構(JICC):契約継続中および契約終了後5年以内
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC):契約期間中および契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間
延滞などの情報が消えたかどうかを確認するためには、上記の各信用情報機関へ情報開示請求をする方法があります。いずれも手数料1,000円程度で信用情報がどのように登録されているか確認することが可能です。
日本政策金融公庫の審査で落ちる原因
日本政策金融公庫で融資を断られた場合、審査に落ちた原因を知っておく必要があります。まずは、日本政策金融公庫の担当者に理由を尋ねてみましょう。
明確な理由を答えてもらえない場合は、金融庁の監督指針によって説明を受けられる旨を伝えてみてください。金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な指針」では、可能な範囲で断る理由を説明しなければならないと定められています。
ここからは、日本政策金融公庫の融資の審査に落ちる原因を紹介します。
【日本政策金融公庫の審査で落ちる理由】
- 自己資金が足りない
- 信用情報に傷がある
- 創業計画書や決算書に信ぴょう性がない
- 税金の滞納がある
- 他社からの借入額が多い
自己資金が足りない
自己資金が少ない場合、審査で返済能力や経営意欲を疑われる可能性があります。審査では自己資金の額だけでなく、出どころも見られます。審査に通るために、一時的にカードローンなどでお金を借りるのは避けましょう。
自己資金は事業資金の2割以上が望ましいとされています。
信用情報に傷がある
過去に延滞歴のようなマイナスの信用情報がある場合、審査で信用力や返済能力が低いとみなされます。
信用情報とは、個人のクレジットカードやローンに関する客観的な取引事実の記録です。信用情報は信用情報機関によって管理され、金融機関などに提供されます。
マイナスの信用情報がある場合、融資の審査で不利に働きます。
創業計画書や決算書に信ぴょう性がない
日本政策金融公庫に提出した創業計画書や決算書に信ぴょう性がない場合、経営能力や事業の将来性を疑われる可能性があります。創業計画書では事業の収支や将来見通しを明確にまとめることが大切です。
そのためには、市場調査や競合分析などを行って、客観的なデータや事実に基づく計画を作成する必要があります。創業計画書を作成するなら、審査の担当者が納得するだけの正当な根拠を盛り込まなくてはなりません。
税金の滞納がある
日本政策金融公庫の審査で落ちる原因のひとつに、税金の滞納が挙げられます。
税金の滞納は事業主の信用力や経営能力に疑問を持たれるだけでなく、国民の義務を果たす責任感がないとみなされる恐れがあります。日本政策金融公庫は政府が出資する公的な機関ですので、税金の滞納には厳しい目が向けられるでしょう。
税金の滞納がある場合は速やかに納付する、あるいは納付猶予の申請手続きなどを行う必要があります。
他社からの借入額が多い
日本政策金融公庫に融資の申し込みをした時点で他社からの多額の借入れがある場合、審査に落ちる可能性があります。
融資の審査では、収益に対する返済額の割合がチェックされます。返済額とは、新規の借入れ分と既存の借入れ分の合計である点に注意が必要です。
融資の申し込みをする場合、住宅ローンや教育ローン以外の借入れは完済しておいたほうが賢明です。
審査に通過するためには会社の財務状況の健全化が必要
日本政策金融公庫の融資で審査を通過するためには、財務状況を健全にすることが大切です。一般的に、金融機関は貸し出す相手の信用度や返済能力を重視します。そのため、会社の財務状況の健全化が審査通過のためには欠かせません。
具体的には、以下のポイントに注意してください。
- 売上高や利益率を向上させる
- 自己資本比率を上げる
- キャッシュフローを改善する
- 信用情報に傷をつけない
これらのポイントを実践すると会社の経営状態が安定し、金融機関からの信頼につながります。
日本政策金融公庫の審査に通るのは簡単ではありませんが、会社の財務状況を健全化できれば審査通過の可能性は高まります。
日本政策金融公庫の審査でよくある質問
日本政策金融公庫の審査でよくある質問と回答をご紹介します。
日本政策金融公庫の審査の通過率は?
日本政策金融公庫の審査は他の金融機関に比べて通りやすいという話を聞いたことがあるかもしれません。実際の審査通過率は公表されていませんが、おおむね50~60%程度といわれています。つまり、銀行のような金融機関より審査に通りやすいとしても、申請した約半数が審査落ちしているわけです。
審査に通りやすいからといって事業計画書の作成に手を抜いたり、税金を滞納したりすれば、審査を通過できなくなるでしょう。自己資金を貯めておく、見込み客を確保して売上げの見通しを立てるなど事業への意欲や将来の展望を持って審査に臨むことが大切です。
日本政策金融公庫の審査にかかる期間はどれくらい?
日本政策金融公庫の審査にかかる期間は、一般的には申し込みから契約までに平均で約2週間程度(土日、祝日を含む)です。ただし、状況によっては追加資料の提出などが必要になる場合もあり、期間が延びる可能性があります。
特に、創業したばかりで決算を終えていない場合は、時間がかかると考えられます。融資決定までに1ヵ月程度見ておきましょう。
日本政策金融公庫の審査で落ちたら再申請できる?
日本政策金融公庫の融資の審査に落ちてしまっても、再申請は可能です。落ちた原因を分析して、事業計画書を練り直したり、自己資金を増やしたりなどの準備をしましょう。
これらの取り組みは、融資だけでなく、事業を進めていくうえでもプラスになります。
おわりに
日本政策金融公庫から融資を断られた場合、まずは落ちた原因の把握が大切です。原因を把握したら、それに応じた対策を講じましょう。資金調達を急ぎたい場合、他の融資を利用する選択肢もあります。
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