「運転資金が足りない」と悩んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか。業績が好調で売上や利益が出ていたとしても、運転資金が底をつくと仕入費などが支払えず、黒字倒産してしまうことがあります。安定した事業運営を続けるためには、運転資金を十分に確保することが重要です。
このコラムでは、運転資金が足りない事態を招く原因と対策、資金調達方法について解説します。
(本記事は2024年9月5日時点の情報です)
- 運転資金が足りなくなる原因は「キャッシュフローの把握が不十分」「売上の減少・増加」など
- 運転資金とは、事業運営において恒常的に発生する各種費用の支払いに充てるためのお金
- 運転資金の調達先は、「銀行」「金融機関の事業用ローン」「日本政策金融公庫」など
- 運転資金不足を防ぐには「資金繰り表の作成」「売掛金・買掛金のサイクルの見直し」などが有効
運転資金が足りない事態を招く5つの原因
運転資金が足りない事態を招く主な原因は、以下の5つです。
【運転資金が足りない事態を招く主な原因】
- キャッシュフローの把握が不十分
- 売上の減少・増加
- 過剰在庫や不良在庫の増加
- 売掛金の割引による影響
- 自然災害や設備故障など想定外の出費
まずは、それぞれの原因について確認しておきましょう。
キャッシュフローの把握が不十分
キャッシュフローとは、事業運営における現金(キャッシュ)の流れ(フロー)のことです。
事業活動では、売掛金の入金や仕入費や人件費の支払いなど、毎日のようにキャッシュの出入りがあります。キャッシュフローを適切に管理しないと、支払いに必要な現金を確保できず、資金ショートにより黒字倒産という事態に陥るかもしれません。
運転資金不足を回避するためには、キャッシュフローを適切に管理する必要があります。
売上の減少・増加
急激な売上の減少・増加も、運転資金不足につながることがあります。
売上が減少すると、会社に入ってくるお金も減るため、各種支払いに必要な資金が足りなくなる恐れがあります。
売上の増加は会社にとって良いことではありますが、連動して仕入費や人件費なども増えることになります。売上の計上と売掛金の入金には、タイムラグがあるのが一般的です。売掛金の入金前に仕入費や人件費の支払期日が到来し、資金がショートしてしまうことがあるため注意しなければなりません。
過剰在庫や不良在庫の増加
過剰在庫や不良在庫の増加も、運転資金不足を招く原因のひとつです。
仕入れた商品がなかなか売れずに在庫が増えると、仕入費の支払いが生じる一方で、売上につながりません。売上に対して仕入が過剰な状態となり、結果としてキャッシュフローが悪化してしまいます。特に不良在庫は売れる見込みが少なく、値引きや廃棄などが生じて業績に悪影響を及ぼす恐れがあるでしょう。
売掛金の割引による影響
売掛金の割引とは、支払期日を迎える前に売掛金を現金化できる方法です。売掛金は入金が数カ月先になることもあるため、割引を利用して早期に現金化している会社もあります。
売掛金の割引はスピーディーに資金を調達できる反面、手数料分が割り引かれてしまいます。売掛金の割引が常態化すると、運転資金に影響が出るリスクがあるため注意が必要です。
自然災害や設備故障など想定外の出費
事業運営では、地震や台風といった自然災害で建物や商品に被害が出たり、設備が突然壊れたりする可能性もあります。
このような事態に遭遇すると、修繕や買い換えなどの費用がかかります。十分な運転資金を確保しておかないと想定外の出費が発生したときに対応できず、資金がショートしてしまう恐れがあるでしょう。
そもそも運転資金とは?定義や種類をおさらい
そもそも運転資金とは、事業運営において恒常的に発生する各種費用の支払いに充てるためのお金です。会社の手元資金が少ないと支払いができず、経営を続けられなくなる恐れがあるため、運転資金は非常に重要だといえるでしょう。ここでは、運転資金の種類について解説します。
運転資金の主な種類
運転資金には主に次の5種類があります。
- 経常運転資金
- 季節運転資金
- 増加運転資金
- 減少運転資金
- その他の運転資金
それぞれの特徴を見ていきましょう。
経常運転資金
経常運転資金とは、一般的にイメージする運転資金のことです。仕入費や事務所の家賃、人件費など、会社が日常的に事業運営をする上で必要な資金を指します。
経常運転資金は、以下の要素から構成されています。
- 売上債権:顧客への売掛金など
- 棚卸資産:商品や原材料の在庫など
- 仕入債務:仕入先への買掛金など
これらの要素を用いて、経常運転資金は次のように計算できます。
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 – 仕入債務
例えば、1カ月の売上債権が600万円、棚卸資産が300万円、仕入債務が400万円の場合、必要な運転資金は次のようになります。
600万円 + 300万円 – 400万円 = 500万円
この計算により、この企業には500万円の経常運転資金が必要であることがわかります。
季節運転資金
季節運転資金とは、クリスマスなど特定の時期に増える資金です。業種や事業内容によっては、毎年決まった時期にまとまった資金が必要になります。
例えば、ハロウィンに需要が高い商品を扱っている場合、ほかの時期よりも仕入費用がかかります。
増加する売上代金で支払いに対応できる場合は問題ありません。しかし、売上代金の入金より先に支払いが生じる場合は、運転資金が底をつくことがないように資金計画を立てておくことが大切です。
増加運転資金
増加運転資金とは、売上増加に伴って増える資金です。
新規受注など事業を大きくする際は、仕入や材料費、スタッフの増員などにお金がかかります。また、短期間で増収を実現できるとは限りません。実際に売上が増えたとしても、入金されるまでに時間がかかることもあります。
運転資金が不足しないように、キャッシュフローを管理することが重要です。
減少運転資金
減少運転資金とは、売上が落ち込んだときに、経常運転資金だけでは足りない部分を補填する資金です。
売上が減っても、家賃や人件費の支払いなど、事業を維持するための資金は必要です。また、事業を縮小する際は、事務所の閉鎖や人員削減などで費用がかかることもあるでしょう。
このように、売上が減少したときも、追加で運転資金が必要になるケースがあります。
その他の運転資金
ここまでご紹介した4種類のほか、従業員に支払うボーナスや納税、株主に支払う配当などのために運転資金を確保しておく必要があります。これらは発生時期が決まっているため、そのタイミングに合わせて資金を準備しておくことが重要です。
運転資金と設備資金は別もの
設備資金とは、事業運営に必要な設備を購入するための資金です。例えば、事業用機械の購入や工場の増築などが該当します。混同されがちですが、運転資金と設備資金は別ものです。
運転資金は、継続的に確保する必要があります。一方、設備資金は、設備購入のタイミングで一時的に必要となる資金です。
設備資金が必要な場合は、運転資金とは別に資金調達を行います。設備資金として借り入れた資金を運転資金に充てると資金使途違反となり、金融機関から一括返済などを求められる可能性があるので注意してください。
運転資金不足を乗り切るための資金調達方法
運転資金不足が見込まれる場合は、早めに資金調達することが大切です。ここでは、運転資金が足りないときの資金調達方法をご紹介します。
【運転資金不足を乗り切るための資金調達方法】
- 銀行に融資してもらう
- 金融機関の事業用ローンを利用する
- 日本政策金融公庫に融資してもらう
- 国や地方自治体の補助金・助成金を活用する
- ファクタリングの利用を検討する
銀行に融資してもらう
運転資金の調達先としてまず挙げられるのが、銀行です。都市銀行のほか、地方銀行や信用金庫などがあります。
銀行融資のメリットは、金利が比較的低く、まとまった金額の借り入れが可能であることです。一方で、融資審査は厳しい傾向にあり、赤字経営の場合は資金調達が難しいかもしれません。
都市銀行は大手企業が中心のため、中小企業や個人事業主の場合は地方銀行や信用金庫に相談すると良いでしょう。
金融機関の事業用ローンを利用する
運転資金調達のために、金融機関の事業用ローン(ビジネスローン)を利用する方法もあります。「売上代金が入金される前に仕入費を支払う必要がある」など、短期間で資金を調達したい場合に最適です。金利は一般的な銀行より高めですが、融資スピードが早く、柔軟な対応が期待できます。
金融機関の事業用ローンは、急ぎで運転資金が必要な場合や銀行で融資を受けるのが難しい場合におすすめです。
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日本政策金融公庫に融資してもらう
日本政策金融公庫は、政府系金融機関のひとつです。創業・スタートアップ支援や事業資金の融資を行っており、中小企業や個人事業主でも運転資金の調達先として利用しやすい特徴があります。一般的な銀行に比べると低金利で融資を受けられ、条件によっては無担保・無保証での融資も可能です。
ただし、日本政策金融公庫の融資は、返済期間が比較的短いため注意してください。
国や地方自治体の補助金・助成金を活用する
運転資金が足りないときは、国や地方自治体の補助金・助成金を活用するのも選択肢のひとつです。
例えば、「小規模事業者持続化補助金」は、小規模事業者が自ら経営計画を策定したうえで行う販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。取り組みに必要な経費の一部補助を受けられます。原則として返済不要ですが、申請が必要で、支出した後に入金される仕組みである点がデメリットです。
東京都では、東京都、東京信用保証協会、金融機関の三者が協調して資金を供給する「東京都中小企業制度融資」を提供しています。都内に事務所があるなどの要件を満たすと、新規の創業資金や創業後の事業資金の融資を受けることが可能です。
ファクタリングの利用を検討する
ファクタリングとは、売掛債権(売掛金など)を買い取ってくれるサービスです。入金予定日より早く売掛債権を現金化できるため、運転資金不足を回避できる可能性があります。融資とは異なり、受け取った資金の返済は不要です。
ただし、ファクタリングで売掛債権を売却すると、手数料が差し引かれます。事業者によって異なりますが、ファクタリング手数料は割高になることもあるため、無計画に利用するとかえって運転資金不足を招きかねず、注意が必要です。
運転資金ショートを予防する方法
運転資金がショートするのを防ぐには、次の3つに取り組むのが有効です。
【運転資金ショートを予防する方法】
- 資金繰り表を作成する
- 売掛金と買掛金のサイクルを見直す
- 固定費と変動費の無駄をなくす
それぞれ詳しく解説します。
資金繰り表を作成する
資金繰り表とは、現金の収支をまとめた表のことです。勘定科目などに基づいて、一定期間のすべての現金収入と現金支出を分類・集計します。
資金繰り表を作成することで、会社の運営資金の流れを視覚的に把握できるようになります。資金不足となるタイミングを予測できるため、運転資金が足りなくなる前に「事業用ローンを活用して融資を受ける」などの対応が可能です。
資金繰り表は、エクセルやソフトウェアを使って作成できます。
売掛金と買掛金のサイクルを見直す
運転資金ショートを防止するには、売掛金と買掛金のサイクルを見直すのも有効です。売掛金はできるだけ早く回収し、買掛金のサイクルを長期にすると、運転資金に余裕が生まれやすくなります。取引先から伝えられた支払条件をそのまま受け入れるのではなく、可能な範囲で交渉を行うと良いでしょう。
固定費と変動費の無駄をなくす
固定費とは、売上の増減に関係なく定期的に一定額がかかる費用です。設備のリース代や事務所の家賃、広告費、人件費などが該当します。
固定費を削減するためには、「より安いサービスを探す」「効果が期待できないものは解約する」などの対策が考えられます。
変動費は、仕入費や物流費、残業代のように、売上の増減に伴って変動する費用です。変動費については、売上に対して過大な費用がないかを確認し、必要に応じて「仕入量を減らす」などの対応を検討しましょう。
おわりに
運転資金が足りない原因として、キャッシュフローを把握できていないこと、急激に売上が増加・減少していることなどが挙げられます。資金ショートを防止するためには、資金繰り表を作成したり、固定費・変動費の無駄をなくしたりすると有効です。急に運転資金が必要になった場合は、金融機関の事業用ローンなどをうまく活用して資金調達を行いましょう。