主に高齢者を対象に、自己が所有する不動産を担保に資金を調達する方法として提供されている商品にリバースモーゲージがあります。自宅を有効活用できるという点で魅力的に感じるリバースモーゲージですが、利用にあたってはその仕組みをしっかりと理解しておく必要があります。
今回はリバースモーゲージの概要を解説するとともに、メリットやデメリット、さらには住宅ローンとの違いなどについても紹介します。リバースモーゲージの利用を検討している方はぜひ参考にしてください。
1.リバースモーゲージとは?

リバースモーゲージとは、自宅を担保にすることでまとまった金額の融資が受けられる、主に高齢者に対して提供されている商品です。
担保とする自宅の評価額を基準に、融資枠の範囲で融資を受け、元本の返済は契約者が亡くなった後に行われます。ただし、利息分の返済は生存中に行う仕組みとなっています。
リバースモーゲージには民間企業が提供するものと、公的機関が提供するものがあります。民間企業が提供するものとして代表的なものが、住宅金融支援機構が金融機関と提携して行う「リ・バース60」です。
それに対して公的機関が提供するものには各自治体や社会福祉協議会などが提供する「不動産担保型生活資金貸付」があります。ただし、公的機関が提供するものは低所得者などに向けたもので、利用できる条件や審査基準が厳しいという特徴があります。
2.リバースモーゲージの資金使途

リバースモーゲージの資金使途は原則自由です。老後の生活資金として利用するだけでなく、住宅ローンの借り換えや、自宅のリフォーム費用、さらには老人ホームへの入居一時金に充てることもできます。ただし、事業性資金などには利用できないとしている商品も多くみられます。
3.リースバックとの違いとは

リースバックとは、自宅を売却してまとまった資金を得た後、賃料を支払うことで売却した自宅に住み続けられる仕組みです。
つまり、リバースモーゲージは融資であるのに対し、リースバックは売却という不動産取引の1つである点が大きく異なります。そして、リースバックの場合は自宅を売却することから所有権がなくなるため、売却後の固定資産税の負担が不要になります。
また、リースバックの場合は売却した額が一括で振り込まれますが、リバースモーゲージの場合は決められた極度額までであれば何度も借り入れることができるという違いもあります。
4.リバースモーゲージと住宅ローンの違い

住宅ローンは住宅の購入資金を一括で借り入れ、契約時に取り決めた金利と返済期間に応じた返済額を毎月返済していくローンです。毎月の返済額は元本と利息の合計額です。
一方、リバースモーゲージの場合、生存中は利息分のみの返済でよく、元本部分については契約者が亡くなった後に返済する仕組みで、住宅ローンの逆の形になっている点が異なっているといえます。
5.リバースモーゲージのデメリット
リバースモーゲージを利用する際には以下のデメリットに注意しましょう。
5-1.借りられる金額が一般的な不動産売買の金額より少なくなることが多い
リバースモーゲージは融資という性質から、担保となる不動産評価額の50%~70%が上限の目安です。そのため、普通に売却するよりも融資金額が少なくなります。
5-2.長期に渡るため不測のリスクが複数ある
融資期間が長期にわたり、かつ正確な期間が把握できないため、想定以上に長生きした場合に融資限度額を上限まで使い切ってしまう可能性があります。また、担保となる不動産の評価額が定期的に見直されるため、評価額が下がった場合などは融資限度額の上限が引き下げられる可能性があります。さらに、生存中の利息の支払いについては変動金利が適用されるため、金利上昇局面においては、毎月の利息返済額が増加する可能性があります。
5-3.相続人と揉めやすい
一般的にリバースモーゲージの元本の返済は、担保としている自宅を売却することで行われます。そうなると、その物件を相続できると思っていた相続人が物件を相続できない他、売却してもなお残債が残る場合は相続人が返済義務を負わなければなりません。
そのため、リバースモーゲージの利用にあたっては、全ての推定相続人の同意を得なければならないとされています。
6.リバースモーゲージのメリット
リバースモーゲージを利用することで以下のメリットを享受できます。前述したデメリットと合わせて、利用を検討するようにしましょう。
6-1.居住の維持と資金調達を両立できる
自宅に住み続けながら資金調達が可能になる点はリバースモーゲージの大きなメリットです。
6-2.支払いは毎月利息分のみ
生存中の返済は利息分のみですので、返済の負担を低減できます。
6-3.引っ越しが不要
自宅に住み続けられるため、引っ越しの手間や費用が不要です。
6-4.高齢でも借り入れが可能
リバースモーゲージの商品の多くが高齢者を対象にしているため、高齢でも融資を受けられます。
6-5.借り入れた資金使途は自由
リバースモーゲージで借り入れた資金の使途は老後の生活資金とする金融機関が多く、原則自由とする金融機関でも投資目的や事業性資金などには利用できないケースもあります。
6-6.売却前提のため、スムーズに遺産整理できる
契約者が亡くなった後は元本を一括返済する必要がありますが、その方法として自宅を売却し、その金額を返済に充てるケースが多く見られます。そのため、相続人に負担をかけることなく遺産の整理が可能です。
6-7.元金の返済を死亡後まで延長することが可能
リバースモーゲージで借り入れた元本の返済は基本的に契約者の死亡後に行われるので、捉え方によっては、死亡時まで元金の返済を繰り延していることになるでしょう。
7.リバースモーゲージの利用が向いている方
では、どのような方がリバースモーゲージの利用に向いているのでしょうか。リバースモーゲージの利用に向いているのは、以下に当てはまる方です。
7-1.現在まで残っている住宅ローンの返済の見通しがつかない
住宅ローンの残債があり、その返済の見通しがつかない方は、リバースモーゲージを利用して融資を受けて住宅ローンの完済に充てることができます。
7-2.現金など不動産以外の資産があまりなく、老後の生活に資金面で不安がある
不動産以外の手持ち資金がなく、老後生活を送るにあたって資金面で不安を感じている方もリバースモーゲージの利用が向いています。自身の資産の1つである不動産を担保に融資を受けられるため、老後の生活費を確保できます。
7-3.すでにある老後資金は安心のためにできるだけとっておきたい
現在すでに老後資金は確保しているものの、いざという時のためにとっておきたいと考えている場合には、リバースモーゲージを利用して融資を受け、生活費などの費用に充てることができます。
7-4.自宅を残さず、その分豊かな老後生活を過ごしたい
自宅を相続する方がいないなど、自宅を残す必要がない場合、リバースモーゲージを利用することで融資を受け、その資金で豊かな老後生活を送ることもできます。
7-5.ゆくゆくは老人ホームでの生活を検討している
将来的に老人ホームへの入居を考えているなら、リバースモーゲージで得た融資金額を老人ホームへの入居資金に充てることができます。
おわりに

リバースモーゲージは所有している不動産を担保に老後資金を調達できる方法ですが、利用するうえでの注意点をしっかりと理解しておく必要があります。
また、同じように不動産を利用した資金調達方法にリースバックがありますが、リースバックにはリバースモーゲージのような年齢の制限もなく、資金使途もリバースモーゲージと比べ自由度が高くなっています。
さらに、リバースモーゲージは利用できるエリアや自宅の種類が限定されるなど、全ての不動産に利用できるわけではない点も知っておきましょう。
人によってはリバースモーゲージよりもリースバックの方が向いている可能性もありますので、それぞれの特徴を知ったうえで最終的な資金調達方法を選ぶことをおすすめします。