「iDeCoの掛金の限度額はいくら?」
「限度額が引き上げられるって本当?」
「iDeCoの限度額以上に運用したいけどどうすれば良い?」
老後2,000万円問題が話題になって久しいですが、老後の資金を増やすため、iDeCoの利用をお考えではありませんか。iDeCoの制度を調べていくと職業や勤務先の企業によって限度額の条件が異なるので、毎月いくら積み立てできるか分かりづらいですよね。
このコラムでは2022年・2024年の制度改正を含めて、以下のポイントについて解説しますので、参考にしてください。
- 掛金を設定する前に覚えておきたいポイント
- 限度額以上に運用したいならNISAと併用がおすすめ
- よくある質問への回答
ご自身にとってベストな運用方法を知ったうえで、今後の資産運用に役立てましょう。
※本記事は、2023年以前のNISA制度について記載しています。新NISA制度については以下の記事をご確認ください。
iDeCoの限度額を解説
iDeCoの掛金は毎月ご自身で設定した金額が積み立てられます。掛金は最低5,000円から投資できますが、上限額は職業などの条件によって異なっています。iDeCoの限度額は、以下表のとおりです。
職業 | 掛金の限度額 | |
自営業 フリーランス(個人事業主) |
年間816,000円 (月間68,000円) ※1 | |
会社員 | 勤務先の企業に年金制度がない | 年間276,000円 (月間23,000円) |
企業型DCに加入している ※2 | 年間240,000円 (月間20,000円) | |
DBに加入している ※3 | 年間144,000円 (月間12,000円) |
|
企業型DCとDBに加入している | ||
公務員 | 年間144,000円 (月間12,000円) | |
専業主婦(主夫) | 年間276,000円 (月間23,000円) |
※1:国民年金基金の掛金や国民年金の付加保険料と合わせて年間816,000円が限度額
※2:企業型DC:企業型確定拠出年金
※3:DB:確定給付企業年金・厚生年金基金など
iDeCoは企業年金を持つ会社員と比べて年金保障の少ないフリーランスや自営業者のために拡充された経緯があるため、その限度額は他の職業と比べると多くなっています。また、企業型DCのある会社に勤めている方は、事業主掛金の上限引下げの労使合意や規約の変更が必要であり、条件を満たしていないとiDeCoへ加入できません。
しかし、今年10月1日の改正により、事業主掛金とiDeCoの掛金の合計額が一定額を超えなければ新たに加入できるようになります。新制度の詳細は、下表のとおりです。
企業型DCのある会社員 | 企業型DC+DBのある会社員 | |
①事業主掛金 | 最大55,000円まで | 最大27,500円まで |
②iDeCoの掛金 | 月額55,000円 -各月の企業型DCの事業主掛金額 (ただし、月額2万円を上限) | 月額27,500円 -各月の企業型DCの事業主掛金額 (ただし、月額12,000円を上限) |
①と②の合計 | 55,000円以下 | 27,500円以下 |
企業型DC制度を採用されているところにお勤めの会社員の方、企業型DCとDB(確定給付企業年金)等が併用されている会社員の方は、現在の掛金がいくらなのかは給与明細等で確認できます。給与明細等で分からない場合には、人事部の給与担当に確認してください。制度改正によって加入しやすくなりますので、資産形成に役立てましょう。
2024年の改正により限度額が増える人も
今まで月額12,000円までしかiDeCoの運用に回せなかった会社員や公務員の方は、2024年12月の改正により月額20,000円まで拠出できるようになります。掛金の計算も、以下のとおり変わります。
月額55,000円 − (企業型DC+DB)=iDeCoでの掛金限度額(月額20,000円まで)
あくまでも月の限度額は55,000円から変わりませんので、企業型DCとDBの合計が35,000円を超えると、iDeCoの掛金の上限は20,000円ではなくなりますので、勤め先の企業型DCやDBの条件は確認しておきましょう。
参照元:厚生労働省
iDeCoの掛金を設定する前に覚えておきたい4つのポイント
iDeCoは限度額まで増やしたほうが、非課税になる分を含めてリターンを得られる可能性があります。さらに、以下4つのポイントを踏まえて掛金を設定することで今後のライフプランが充実したものになりますので、参考にしてください。
原則60歳まで引き出せない
iDeCoは原則60歳になるまで運用した資産の引き出しはできません。病気やケガ、結婚など急なお金が必要なときでもiDeCoの資金を充てられないので、預金など他の貯蓄から支払う必要があります。急な出費に対応できるよう、掛金は無理のない範囲に設定しましょう。
掛金は1年に1回変更可能
iDeCoの掛金は1年に1回変更が可能です。20代の方であれば、5,000円~10,000円と少ない額から始めてみて、給与等の増加に合わせて無理のない範囲で増額すると良いでしょう。
50代以降の方は運用できる期間が限られることもありますので、生活に必要な資金を確保したうえでまとまった金額を投資して、老後の資産運用に活用していきましょう。
掛金の拠出が難しいときは拠出の停止もできる
iDeCoの掛金を捻出することが難しくなってしまっても、口座開設した金融機関に手続きをすれば、いつでも引き落としを停止することができます。
なお、停止したあとは、いつでも再開できます。もしも、病気やケガなどで働けなくなったときでも停止や再開ができるという柔軟な対応が可能です。
掛金の拠出は月単位で管理できる
掛金の拠出は、年間の上限額を超えなければ月単位で設定できます。毎月の設定額を低めに設定したうえで、ボーナスが入るタイミングで多めに拠出すれば、無理のない形でiDeCoのメリットを最大限享受することができます。
参照元:iDeCo公式
iDeCoの限度額以上に運用したいならNISAと併用しよう
iDeCoの限度額は決まっているので、資産運用のために多くのお金を投資に回したいなら、NISAと併用がおすすめです。NISAとは、少額投資非課税制度のことです。「一般NISA」と「つみたてNISA」の2つの制度があり、特徴は以下のとおりです。
一般NISA | つみたてNISA | |
利用できる人 | 国内に住む20歳以上の方※ | 国内に住む20歳以上の方※ |
投資方法 | 積み立て・一括投資 | 積み立て |
年間の投資上限 | 120万円 | 40万円 |
非課税期間 | 5年 ※ロールオーバーによる延長は可能 | 20年 |
途中引き出し | 自由 | 自由 |
所得控除 | なし | なし |
参照元:金融庁
iDeCoとの最大の違いは、引き出しの自由さと非課税の対象期間です。iDeCoは原則60歳まで解約できませんが、NISAなら運用資金をいつでも必要な分引き出せます。
iDeCoと同様に運用で増えた利益に対して課税されません。ただし、iDeCoは掛金の所得控除を受けられますが、一般NISA、つみたてNISAともに掛金の所得控除はありません。
一般NISAとつみたてNISAの併用はできないため、運用期間や扱う金融商品を比べてどちらに加入するか選びましょう。
これからiDeCoを始めるならサービスの手厚い大和証券がおすすめ
iDeCoを始めるにあたって金融機関を選ぶポイントは、手数料の安さと投資信託のラインナップです。金融機関によって毎月数百円の手数料を取られることがあり、その分が運用に回す資金から引かれます。
また、投資信託のラインナップが多ければ、安定的に資産を増やしたり、多少リスクを取ってリターンが狙える投資先を選んだりして、目的に合わせて商品を選ぶことが可能です。
iDeCoを始めるときによくある3つの質問
こちらでは、iDeCoを始めるときによくある3つの質問へ回答しますので、参考にしてください。
Q1 50代から加入するのは遅いですか?
A:これから加入しても決して遅くはありません。この5月から制度が改正され、加入できる期間が60歳から65歳まで延長されました。55歳で加入した場合でも、10年間積み立てができます。また、受け取り可能な期間は70歳から75歳へ延長になるため、65歳以降も引き続き運用が可能です。
参照元:厚生労働省
Q2 金融機関の変更はできますか?
A:金融機関の変更は可能です。ただし、以下の点に注意しましょう。
- 運営機関によっては移換手数料がかかる
- 運用した商品は一度現金化される
金融機関の移換は時間がかかり、その間投資商品の入替等ができません。天災や戦争などを含め期間中にマーケットが下落した場合、思わぬ形で損失が発生してしまう可能性があります。また、移換手数料は金融機関ごとに異なるため変更前に確認しましょう。
Q3 どのように受け取るのが、税金を節約できますか?
A:年金形式と一時金を選べますが、一般的に税金を節約できる方法は一時金を選択することです。
年金形式の受け取りですと、定年後の公的年金や他の収入に合算されるため、課税される可能性が高いです。また、受け取りごとに数百円の手数料がかかるため、その分、受取額が減ってしまいます。
一時金の注意点は、退職金と合算して税額が算出されることです。この合算金額から退職所得控除の枠を超えた分が課税されます。退職所得控除の金額は、iDeCoの加入期間と勤続年数のうち、どちらか長いほうで計算されます。計算式は、以下のとおりです(1年未満については切り上げて計算)。
- 20年以下:40万円 × 勤続年数
- 20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数-20年)
例えば勤続30年の場合、退職所得控除額は1,500万円です。一時金の受け取りで課税を避ける方法としては、iDeCoを60歳で受け取ったあと、65歳以降に退職金を受け取ることが挙げられます。この場合、別々の退職所得として計算されるので税金はかかりません。ただし、転職をされている方は退職所得控除額が少なくなる場合もありますので、一時金で受け取るのか年金で受け取るのかはしっかり検討した方が良いでしょう。
参考元:国税庁
おわりに
iDeCoの限度額は職業や勤め先の年金制度によって異なりますが、2024年の制度改正によって、今まで上限12,000円だった会社員や公務員の方は、条件が揃えば毎月20,000円まで拠出できます。
また、iDeCoの掛金の限度額以上に資産運用を利用したい方は、NISAと併用すれば、非課税枠を利用しながら長期の積み立て投資ができるでしょう。このコラムを参考に、今後の資産運用の参考にしてみてください。