老後20~30年間の生活で約2,000万円 の資金が不足するともいわれている現代。老後の資金作りとして役立つiDeCoが注目されています。しかし、一方でデメリットしかないという声もあるようです。
実際はどうなのか、なぜデメリットしかないといわれているのかをこの記事で解決していきましょう。あわせて、iDeCoの基礎知識もお伝えしますので、iDeCoに興味のある方、iDeCoを始めようか検討している方はぜひ参考にしてください。
そもそもiDeCo(イデコ)とは?
iDeCo(イデコ)は、将来公的年金にプラスして受け取ることができる個人型確定拠出年金です。iDeCoは私的年金制度の1つ。公的年金制度である国民年金や厚生年金は加入の義務がありますが、私的年金のiDeCoは任意で加入できます。そのため自身で申し込みをして資産を運用することが必要です。
iDeCoは、基本的にiDeCoの老齢給付金を受け取っている方や受け取ったことがある方、老年基礎年金の受給権がある方など以外の、20歳以上65歳未満のすべての方が加入できます。60歳以降に受け取れることから、老後の生活をより豊かに送るための資産形成方法の1つとして、注目が集まっているのです。
2022年5月から!50代からでも入りやすくなったiDeCo
2022年5月から、iDeCoは50代からでも加入しやすくなったのをご存知でしょうか。2020年5月に年金制度改正法が成立したことで、2020年6月には長期化する高齢化社会の経済基盤の充実化を目的として「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が公布されました。その一環としてiDeCoも一部が改正され、2022年5月からは新たに以下の方がiDeCoの対象となったのです。
- 会社員や公務員などで60歳以上65歳未満の方
- 国民年金に任意加入している60歳以上65歳未満の方
- 国民年金に任意加入している海外居住の方
この改正により、以前は60歳未満の方のみiDeCoに加入できる決まりでしたが、加入できる年齢が65歳未満までに引きあげられました。加入できる期間が長くなったために50代からでも入りやすくなったのです。
参照元:年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました|厚生労働省
iDeCoのメリットとは?
iDeCoに対し、デメリットしかないという声もありますが、メリットもあります。以下では、iDeCoのメリットを紹介していきましょう。
節税効果が高い
iDeCoには3つの税制優遇制度があるため、節税効果が期待できます。
税制優遇制度の1つ目は、掛金の全額所得控除です。iDeCoに拠出する掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、所得税や住民税が抑えられます。
1年間のうちに積み立てた掛金を1年間の収入から差し引くことで所得控除の金額を計算可能です。例えば年収400万円の方が1ヵ月に1万円を掛金として積み立てた場合、課税対象となるのは、12万円を差し引いた388万円になります。
税制優遇制度の2つ目は、運用して得た利益が非課税であることです。株式投資などとは違い、得た利益に対して税金はかかりません。
税制優遇制度の3つ目は、積み立てた資金を受けるときにも控除の対象となることです。受け取り方法は、「年金」・「一時金」・「年金と一時金の併用」の3種類。
年金として受け取る際は公的年金等控除が適応され、一時金として受け取る際は退職所得控除が適応されます。年金と一時金を併用して受け取る場合は、公的年金等控除と退職所得控除の両方が適応されるのです。
退職や転職後も運用できる
iDeCoで積み立てたお金は、転職などで企業が変わっても今まで積み立てた原資を持ち運べるポータビリティという制度によって、退職や転職後も運用できます。
例えば、結婚して正社員から専業主婦または専業主夫になったり、転職して自営業になったりした場合でも、iDeCoの加入者として引き続き資産運用が可能です。
3-3.受け取り方が選べる
iDeCoで積み立てたお金は、加入期間が10年間以上かつ60歳以上になると、年金または一時金として受け取り方を選べます。60歳になりiDeCoで積み立てた資金を年金として受け取る場合、公的年金が支給される65歳までの5年間の生活資金に充てることも可能です。
また、65歳を過ぎてから年金として受け取る場合は、公的年金に私的年金であるiDeCoが上乗せされた金額で受け取れます。一時金はまとめて大きな金額を受け取れるため、住宅ローンの繰上げ返済や車の買い替えなどのまとまった金額が必要な際にもおすすめです。
iDeCoがデメリットしかないといわれるのはなぜ?
メリットがあるのにもかかわらず、iDeCoがデメリットしかないといわれるのはなぜなのでしょうか。以下では、iDeCoのデメリットについて見ていきましょう。
60歳になるまで受け取れない
iDeCoで積み立てたお金は、60歳になるまで受け取れないというルールがあります。例外として、加入者本人が障害を負ったまたは死亡した場合や、国民年金の納付を免除されている、個人別管理資産が25万以下であるなどの条件を満たした場合は、一時金として受け取ることが可能です。
手数料がかかる
iDeCoを利用するにはさまざまな手数料が必要です。まずはiDeCoに加入するとき、国民年金基金連合会に2,829円(税込)を支払います。加入後の運用期間中は、国民年金基金連合会に収納手数料として105円(税込)、信託銀行に事務邸宅手数料66円(税込)支払うため、合計した171円(税込)が毎月必要です。
金融機関によっては口座管理料として運用管理機関に対する手数料がかかる可能性もあるので注意しましょう。
さらに、iDeCoに積み立てたお金を受け取る際に、信託銀行に対し440円(税込)の手数料が発生します。その他、金融機関を変える場合や企業型確定拠出年金に移換する際は移換時手数料、還付される際は還付手数料などがかかる可能性もあるので、コストを踏まえたうえで加入するかどうかを充分考えましょう。
参照元:加入手続きについて|iDeCoをはじめよう|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
投資額に上限がある
iDeCoには拠出できる投資上限額が設定されています。例えば、自営業の方は月額68,000円まで、企業型DCのない会社員は月額23,000円まで、公務員の方は月額12,000円まで、専業主婦(夫)の方は月額23,000円までなどです。このように上限が決まっているので、多額の投資をしたい方にはこの上限がデメリットと感じるでしょう。この上限は個人に対して決まっている金額のため、夫婦でiDeCoに積み立てをして世帯の合計掛金を増加させることは可能です。
iDeCoの受け取り方によって課税額が変わることもデメリットの1つでしょう。前述したように、iDeCoで積み立てたお金は年金・一時金・年金と一時金の併用の3とおりの方法で受け取り可能です。その受け取り方法によって、税額が変わるので事前に確認しましょう。
元本割れで年金が減ることも
iDeCoはあくまで投資の1つであるため、リスクを負ってしまう可能性もあります。iDeCoは主に、投資信託・定期預金・保険の3つの中から投資先を選ぶことが可能です。定期預金や保険は、元本が保証されている元本確保型なので元本割れのリスクは少ないでしょう。一方で、元本が保証されていない投資信託の元本変動型を選んだ場合、元本割れが起きて資産が減ることもあります。
iDeCoのメリットを充分に受けにくい方とは?
iDeCoにメリットはありますが、中には、そのメリットを充分に受けにくい方もいます。iDeCoのメリットを充分に発揮できない方はどのような方なのかを紹介していきましょう。
無職や専業主婦の方
無職や専業主婦の方は、iDeCoの所得控除のメリットはありませんが、運用益は非課税となり、受け取り時も各種の控除が適用されます。ただし、口座管理料などのコストも発生しますので、充分に注意が必要です。
直近で使う資金を得たい方
iDeCoは60歳まで、積み立てたお金を引き出すことができません。老後の資金形成には適している制度ですが、結婚や出産、マイホームの購入などさまざまな出費がある若い世代はすぐにiDeCoのメリットを受けにくいでしょう。結婚や出産、マイホームの購入など大きなライフイベントが落ち着き、老後の資金について考え始めた頃に検討するのも1つの手です。
50代後半の方も注意が必要
50代後半からもiDeCoに加入することはできます。しかし、通算加入者等期間(企業型の確定拠出年金の掛金を積み立てていた期間やiDeCoの加入期間、運用のみを行なっていた期間)が10年以上ないと60歳で引き出すことができません。加入していた期間や運用していた期間が10年に足りないときは、次のように期間に応じて受け取れる年齢が決まっています。
60歳時点での通算加入者等期間 | 受取可能年齢 |
10年以上加入 | 60歳 |
8年以上10年未満 | 61歳 |
6年以上8年未満 | 62歳 |
4年以上6年未満 | 63歳 |
2年以上4年未満 | 64歳 |
1ヵ月以上2年未満 | 65歳 |
例えば60歳で受け取ろうと思っていたが、iDeCoに加入したのが55歳だった場合、4年以上6年未満で63歳から対象となるため、63歳からしか受け取れません。
さらに注意したいのは、口座管理料です。iDeCoへの積み立てが終わっても、毎年口座管理料が必要になります。そのため、運用期間が短く利益が少なかった場合、口座管理料で相殺してしまう可能性もあるのです。
iDeCoを活用したほうが良い方とは?
iDeCoは、「老後資金形成を行いたい自営業やフリーランスの方」「所得税や住民税の節税をしたい方」「企業型DCを退職金と一緒に受け取る方」におすすめです。以下でそれぞれの方がなぜiDeCoを活用した方が良いのかを解説していきます。
老後資金形成を行いたい自営業やフリーランスの方
自営業やフリーランスの方は厚生年金に加入しておらず、老齢基礎年金(国民年金)のみであり、会社員や公務員と比べると将来もらえる年金が少ないでしょう。そのため、自営業やフリーランスの方は、自分で加入し老後の資産形成ができるiDeCoがおすすめです。また、iDeCoの掛金が月額68,000円と会社員や公務員より大きく、課税所得が大きい方は減税も大きくなります。
所得税や住民税の節税をしたい方
iDeCoは、掛金金額の所得控除や利息・運用益が非課税に、受取時も一定額まで税制優遇となるので、所得税や住民税の節税をしたい方に向いています。
企業型DCを退職金と一緒に受け取る方
例えば60歳で定年退職し、企業型確定拠出年金と退職金を一緒に受け取った場合は、その後iDeCoへ加入可能です。2022年5月からiDeCoの加入年齢が拡大され、原則65歳未満までとなったため、65歳までの間に、第2の退職金を作ることができるようになりました。企業型確定拠出年金と退職金を一緒に受け取る方はiDeCoを活用した方が良いといえます。
iDeCoを始めるときのポイント
以下では、iDeCoを始める際に注意したいポイントを紹介していきましょう。
加入条件や受け取り条件などを確認する
iDeCoを始めるにあたり、まずは加入条件や受け取り条件を確認しましょう。iDeCoは、65歳未満の国民年金に加入している方であれば基本的に加入できます。
しかし、国民年金保険料を免除されている方・農業者年金の被保険者・企業年金や企業型確定拠出年金に加入しており、iDeCoとの併用が認められていない方などは加入不可です。また、iDeCoは基本的に60歳にならないと受け取れませんが、積み立てた期間などによって受け取れる年齢が違うため、受け取り条件もしっかり確認しておきましょう。
無理のない掛金で運用を行う
iDeCoは60歳になるまで途中で引き出すことができないため、無理のない掛金で運用を行うことが大切です。掛金には上限がありますが、上限を目一杯使う必要はありません。最低5,000円から1,000円単位で積み立てられるため、様子を見ながら積み立てるようにしましょう。
ご自身に合った金融機関を選ぶ
iDeCoを始める際に大切なのは、ご自身に合った金融機関を選ぶことです。現在、約160もの金融機関がiDeCoを取り扱っており、その中から1つの金融機関を選ばなくてはなりません。そこで、「魅力的な商品はあるか」「サービスは充実しているか」「手数料はどのくらいか」などに着目して金融機関を選ぶのがおすすめです。
おわりに
iDeCoはデメリットしかないという声もあるようですが、実際は節税できたり退職後も運用できたりなどのメリットがあります。ご紹介したようにiDeCoが向いている方と向いていない方もいるため、加入する際はしっかりと情報収集をすることが大切です。iDeCoを検討している方は、ぜひこの記事を参考に将来を見据えた選択をしてくださいね。