マネーリテラシーを上げよう(その3):預貯金について

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マネーリテラシーを上げよう(その3):預貯金について

マネーリテラシーを上げよう(その2):リスクとリターンについて」では「リスク」についてご説明しました。ご理解していただけましたでしょうか。このコラムでは、前回より一歩進んだ預貯金のリスクについてお伝えします。

1.預金と貯金

早速ですが、あなたに質問です。預貯金にはリスクはあるでしょうか?

目次をご覧になられた方、察しの良い方でしたら、「こういう質問をするということは、預貯金にもリスクがある」とお考えのことと思います。そうです、預貯金にもリスクはあります。ではどんなリスクがあるのでしょうか?

以下で、預貯金のリスクについてみていきましょう。

その前に、「預貯金」は「預金」と「貯金」を合わせた言葉ですが、この2つの違いについて確認しましょう。

銀行で取り扱うもの(ゆうちょ銀行を除く)が「預金」で、郵便局(ゆうちょ銀行)、JAバンク(農業協同組合)、JFマリンバンク(漁業協同組合)で取り扱うものが「貯金」です。取り扱う金融機関による呼び方の違いは、制度ができた当初の目的や集金の対象者、金融機関に集まったお金の使途が異なったためです。貯金は、集金の対象者が庶民、目的は庶民にお金を貯める思想をもたせる、使途は国債や政策実行の原資であり、預金は、集金の対象者が都市部の商人などの事業者、目的は成長している企業にお金を預けてもらいそれを別の企業に融資させお金を循環し経済を発展させるため、使途は企業への融資です。

2. 預貯金安全神話

日本では、資産形成の手法というと、今でも「預貯金」を挙げる方が多いです。それは「マネーリテラシーを上げよう(その1):マネーリテラシーについて」でご紹介した、日本証券業協会が公表している「証券投資に関する全国調査(個人調査)」からも明らかです。これは預貯金の過去と関係しているでしょう。

「無駄遣いをしないで貯金しなさい」、このように親を含め身内からいわれたことのある方も多いでしょう。なぜ「貯金しなさい」だったのかお分かりですか?それは、「ただお金を預けているだけ」という、金融の世界では「貯蓄」といわれる方法で以前はお金が増えていったからです。低金利時代の今からは考えられないことですが、1980年頃は郵便貯金の定期預金の金利が12%という時代もあったのです。100万円を預けたら、1年後には利息が12万円も付きます。銀行の預金金利も高く、また銀行の倒産ということもありませんでした。これにより預貯金に対する安全神話が確立され、それが根強く染みついていると思われます。

ところが1990年代にバブルが崩壊し、大手金融機関の相次ぐ破綻がありました。そもそも預金については預金保護制度が設けられており、預金保険法によって元金1,000万円までが保護の対象となっていたのですが、このときは金融システムの崩壊を防ぐため預金の全額保全措置(俗にいう「ペイオフ凍結」)がとられました。その後預金保険法が改正され2002年4月以降は元金1,000万円までとその利息が保護の対象となり、預金保険機構によって保護されます。貯金についても郵便局時代は政府が全額保証、民営化後は預金保険機構により保護されますし、農業協同組合と漁業協同組合は、「農水産業協同組合貯金保険制度」により保護されます。

金額の上限はあるものの、元本およびその利息が保護されるということで、預貯金安全神話は保たれているといえるでしょう。資産形成の手法というと、今でも「預貯金」を挙げる方が多い理由は、この安全神話に基づくものと考えられます。

3.預貯金のリスク(1)

マネーリテラシー

さて、預貯金のリスクについてご説明します。

まず、低金利下においてはお金が増えないというリスクです。これは、多くの方が実感をもってお分かりいただけるかと思います。これだけ低金利時代が続いている現在、よほどやりくりを上手くしていかない限り、預貯金だけで資産を増やすことは難しいといえます。2021年12月現在、1年物定期預金の金利は高いところでも0.25%ですので、100万円を預けても1年後に受け取れる利息はたった2,500円です。

話は少しそれますが、外貨預金は日本国内預金より金利が高く設定されているものがあります。ただし、金利が高いからといって飛びつかないでください。「マネーリテラシーを上げよう(その2):リスクとリターンについて」をお読みくださった方はもうお分かりですよね。外貨預金には、「為替リスク」や「カントリーリスク」があります。購入時より換金時に円安になると為替差益を得ることができますが、円高になると円での手取り額が減り為替差損を被ります。

円安と円高についてお分かりになられない方のためにご説明します。1個100円のリンゴがあったとします。このリンゴが120円になるとリンゴの価値が上がり、お金の価値はリンゴとの関係では下がる、ということはおわかりでしょうか。片方の価値が上がれば、もう片方の価値は下がるのです。これを為替におきかえると、1米ドル=100円だったものが、1米ドル=120円になると米ドルの価値は上がり、円の価値は下がります。この円の価値が下がることを「円安」といいます。この逆、つまり1米ドルが100円未満になった場合を「円高」といいます。

「外国為替市場での円相場」という言葉を見たり聞いたりされたことがあると思いますが、通貨も株式と同様に日々取引され値段が変わります。1年物外貨預金にお金を預け入れる際、1米ドル100円でしたら100米ドルを預けるためには1万円が必要です。この時の金利を仮に5%としましょう。1年後満期を迎えると105ドルになりますが、このとき1米ドル=110円と預け入れた時より円安になっていたら、110円×105米ドル=で利益が出たことになりますが、もし1米ドル=95円24銭と預け入れた時より円高になっていたら、105米ドルは円に換金すると95.24円×105米ドル=10,000円です。利息が付いて増えたはずなのに、円で受け取ると1年経っても増えていないということになります。これが為替リスクということです。

4.預貯金のリスク(2)

預貯金のリスク(1)でご説明したもの以外に重要なリスクがあります。それはインフレリスクです。

「インフレ」はお分かりでしょうか。正式には「インフレーション」といいます。インフレとは、経済が成長していくうえでモノやサービスの値段が上がり続けることです。これは言い換えると「お金の価値が下がる」ということになります。例えばそれまで100円で買えていたジュースが2倍の200円になったとすると、同じジュースを手に入れるのに以前の2倍のお金が必要になるので、相対的にお金の価値は2分の1になったということになるのです。先程、円高、円安についてご説明しましたが、原理はインフレと同じです。

1,000万円の預貯金についてインフレになっても1,000万円あることには変わりはありませんが、インフレ率が2%だとすると、預貯金の価値は実質約980万円に下がってしまいます。これが預貯金でのインフレリスクです。現在の日本では考えにくいことですが、インフレ率が毎月50%を超える、いわゆるハイパーインフレが起きた場合、預貯金はあっという間になくなります。

2013年日本銀行はインフレ目標政策の導入を決定しました。これは2012年に当時野党だった自由民主党の安倍晋三総裁の金融政策に関する発言が発端となっています。安倍総裁は、デフレ脱却や過度な円高を是正するためにインフレ目標や無制限の金融緩和などによる大胆な金融緩和の実施を主張しました。この年12月の衆議院総選挙で自由民主党が勝利して第2次安倍政権が発足し、インフレ目標政策の導入に向けた動きが進展しました。これを受けて日本銀行が「あらゆる政策を総動員して、2%の物価安定の目標について、2年程度を念頭に置いて実現する」としたのです。現在に至るまでこの目標は達成されていませんが、2018年は+1.0%、2019年は+0.5%と物価は少しずつ上昇している状況です(2020年は新型コロナウィルスの影響などもあり前年比±0%)。

「物価が上昇すればその分金利も上がるのでインフレリスクはない」と反論される方もいらっしゃいます。これはどういうことでしょうか。

物価が上昇する理由は2つあります。1つは、最近よく目にする原油価格の高騰など、製品を作るための原材料が値上がりする場合です。もう1つは、景気が拡大する場合です。物価が上昇するということはモノに対する需要が増えるからであり、そうなると企業は設備投資によって生産力を増強しようと考えます。設備投資には資金が必要ですのでお金に対する需要が高まり、需給の関係で金利が上がることになります。この後者の方をとらえて「物価が上昇すればその分金利も上がる」と主張されるのです。確かにそれには一理あります。物価上昇に連動して金利も上昇していればお金の価値は下がりません。ところが、2018年からの預金の金利は物価上昇に伴って上がっていません。つまり、お金の価値はこの3年でも下がっているといえます。

どちらの説を信じるかは自由です。ただし世の中でどのようなことがいわれているかを知り理解する、それが大切なことといえるでしょう。

おわりに

世の中には絶対に安全なものはありません。預貯金もその例外ではない、リスクはあるのだということを認識していただけたらと思います。これを認識するだけでもマネーリテラシーは少し上がったことになります。

マネーリテラシーを上げていくためには、学ぶことが色々とあります。中には、段階を踏まないとわからないこともあります。1度に多くのことをお伝えすると学ぶだけでお腹いっぱいとなってしまいますが、少しずつでも理解し、マネーリテラシーを上げる参考になれば幸いです。