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介護はいつまで続くもの?在宅介護の平均年数や負担を減らす方法を解説

介護はいつまで続くもの?在宅介護の平均年数や負担を減らす方法を解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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セゾンのくらし大研究 編集部

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親や家族の介護がいつまで続くのか、先の見えない不安を抱えている方は多いでしょう。本記事では、在宅介護の平均期間や費用、身体的・精神的負担について解説します。介護疲れのサインや負担軽減の対処法を紹介し、持続可能な介護生活を送るためのヒントをお届けします。

この記事を読んでわかること
  • 介護の平均期間は5年1カ月で、月々の在宅介護費用は約4.8万円
  • 介護が大変な理由は体力的負担、精神的ストレス、経済的負担、先の見えなさ
  • 介護サービスや施設入居、民間サポートなど状況に合わせた選択肢がある

在宅介護はいつまで続く?平均介護年数・介護費用を解説

在宅介護はいつまで続く?平均介護年数・介護費用を解説

介護はどのくらいの期間続き、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。ここでは、介護の平均期間や施設・在宅介護の選択状況、在宅介護にかかる費用について、生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」のデータに基づいて解説します。将来の準備や心構えに役立ててください。

介護を行っている人の平均期間は5年1か月

生命保険文化センターの調査によると、介護を行った期間の平均は5年1ヵ月(61.1ヵ月)。注目すべきは、4年を超えて介護をした人が全体の約半数にのぼる点です。さらに、10年以上にわたって介護を続けている人も全体の17.6%と、約6人に1人の割合でいることがわかります。

介護期間は、認知症や脳卒中など、要介護者の状態や疾患によって大きく異なりますが、医療技術の進歩により寿命が延びる中で、介護期間も長期化する傾向にあります。

施設と在宅で比べると在宅介護を受けている人の割合が大きい

同じく生命保険文化センターの調査によると、自宅や親・親族の家など在宅で介護を行っている人は56.8%と半数を超え、多くの人が施設介護ではなく在宅介護を選んでいることがわかりました。

在宅介護が多い主な理由としては、住み慣れた家で過ごしたいという本人の意向、施設の待機者が多い現状、施設入所にかかる費用の問題、そして特別養護老人ホームなどは原則として要介護3以上が対象といった制限があることなどが挙げられます。

ただし、在宅介護は介護する家族の負担が大きく、介護離職や介護うつなど社会問題化している事例も少なくありません。よって、介護保険サービスを上手に活用することが重要です。

在宅介護でかかる月々の平均介護費用は約4.8万円

こちらも生命保険文化センターの調査結果によるものですが、在宅介護にかかる月々の平均費用は約4.8万円となっています。一方、施設介護の場合は月平均12.2万円と、およそ2.5倍の費用がかかります。

在宅介護の費用の内訳としては、介護保険サービスの自己負担分(1〜3割)、おむつなどの介護用品費、住宅改修や福祉用具のレンタル・購入費、食費や医療費など日常生活にかかる費用、介護保険適用外のサービス利用料などが挙げられます。

平均介護期間の5年1ヵ月に月額4.8万円をかけると、総額では約290万円の費用がかかる計算になります。介護度が重くなるにつれて必要なサービスも増え、費用も増加する傾向にあるため、計画的な資金準備が重要です。

在宅介護が大変な理由とは

在宅介護が大変な理由とは

在宅介護を担う方々はさまざまな困難に直面します。日常的な介助による体力的消耗、休む時間がないことによる精神的ストレス、サービス利用などの経済的負担、そして介護がいつまで続くかわからない不安など、あらゆる負担が重なります。

体力面が持たない

在宅介護では、日常的に体力を使う介助が繰り返され、介護者の身体に大きな負担がかかります。また、排せつ介助はにおいや汚物処理に抵抗がある方も多く、最も大変な介助のひとつです。

入浴介助では、要介護者の身体を支える場面もあり、腰や肩に負担がかかります。食事介助や移乗介助も同様に体力を要し、特に要介護度が高くなるほど介護者の負担は増します。加えて、夜間の介助や認知症の徘徊への対応による睡眠不足も、体力的な消耗に拍車をかけます。

これらの身体的負担が長期間続くことで、介護者自身が健康問題を抱えるリスクも高まります。

精神的な辛さ・ストレスがある

在宅介護における精神的負担は、身体的疲労以上に介護者を苦しめることがあります。ある調査でも「体力や気力が持たない」「精神的な辛さやストレスを感じた」との回答が多数を占めています。

最大の要因は、自分の時間が持てないことです。介護は24時間365日休みなく続くため、常に要介護者のことを気にかける必要があります。外出や趣味の時間が制限され、社会的な活動も減少することで、孤立感を抱きやすくなります。

また、要介護者とのコミュニケーションの難しさもストレスになります。特に認知症の場合、理解力の低下や被害妄想、時には暴言・暴力などの対応に苦慮することもあります。

経済的な負担が大きい

在宅介護には予想以上の経済的負担がかかる可能性があります。介護サービスの利用者負担は所得によって1~3割となりますが、それだけでなく、公的介護保険適用外の出費も多くあります。

例えば、食事代や紙おむつなどの消耗品、介護用品の購入費、住宅改修費などは自己負担となります。在宅での平均的な介護費用は先述のとおり月額4.8万円とされていますが、要介護度が上がるほど必要なサービスも増え、費用も増加する傾向にあります。

また、介護のために仕事を辞めたり働く時間を減らしたりすることで、収入が減少するケースも少なくありません。こうした「ダブルパンチ」が経済面での大きな負担となり、将来への不安をさらに深めることになります。

先が見えないつらさ

在宅介護の最も大きな精神的負担のひとつは、「いつまで続くかわからない」という先の見えない不安です。仕事であれば定時や休日があり、プロジェクトにも終わりがありますが、介護は明確な終わりが見えません。

平均介護期間は5年1ヵ月ですが、個人差が大きく、10年以上続くケースも珍しくありません。この長期間、常に緊張状態が続くことで、介護者は疲労を蓄積していきます。

また、「何をすればよいかわからない」「将来が見えず、この先どうなるのかわからない」といった不安も大きな負担となります。状況をコントロールできないという無力感が、さらに精神的な疲弊を招いてしまうのです。

介護を頑張り過ぎて限界を迎えたサインとは

介護を頑張り過ぎて限界を迎えたサインとは

在宅介護を続けていると、心身の限界に近づくサインが現れます。常にネガティブな感情が湧く精神状態などが主な兆候です。これらのサインを見逃さず、早めに対処することが重要です。

介護疲れからネガティブな考えばかり浮かぶとき

介護疲れが蓄積すると、精神面に変化が現れます。要介護者に対してイライラしやすくなったり、「なぜ私ばかりが」という気持ちが湧いてきたり、「いつまで続くのだろう」という絶望感が頭から離れなくなったりします。

このような感情が続くと、要介護者への態度が冷たくなり、時には暴言や虐待のリスクも高まります。自分でも驚くような感情が頻繁に湧いてくる場合は、限界のサインです。

さらに、食欲不振や不眠、頭痛などの身体症状を伴うこともあり、放置すると介護うつに発展する可能性があります。休息時間の確保や周囲への助けの要請を検討しましょう。

介護と自分の生活の両立が難しいとき

介護の負担が増大すると、自分の生活維持が困難になります。家事や育児との両立ができず、日常生活が乱れることも少なくありません。特に深刻なのは仕事との両立です。

介護のために頻繁に休暇を取ったり、勤務時間短縮を余儀なくされたりすることがあり、最終的には「介護離職」という選択を迫られるケースも少なくありません。

このような状況は経済面にも大きな影響をもたらし、将来的な生活不安につながります。介護保険サービスを活用したり、家族間での役割分担を見直したりするタイミングかもしれません。

要介護者の症状が悪化したとき

要介護者の状態悪化も、在宅介護の限界を示すサインです。認知症が進行して徘徊が頻繁になったりするケースは特に危険を伴います。

また、医療的ケアが必要になった場合も負担が増大します。例えば、頻繁な吸引や注射、夜間の体位交換などが必要になると、介護者の休息時間が確保できなくなります。

排泄介助の頻度や方法が変わり、より複雑になることも大きな負担増です。また、入浴介助も要介護者の体重を支える必要があり、介護者の身体的負担が急増します。こうした状況では、施設入所や入院を含めた新たな選択肢を検討すべきでしょう。

介護がいつまで続くか不安なときの対処法を解説

介護がいつまで続くか不安なときの対処法を解説

介護の先が見えない不安には、介護系のサービスを利用することが重要です。訪問系や通所・短期入所サービスの利用、施設入居の検討、民間サービスの活用など、状況に応じた対応策で負担を軽減できるでしょう。

在宅で利用できる介護保険サービスを利用する

介護の負担や不安を少しでも減らすためにも、自治体の福祉窓口や地域包括支援センターに相談し、以下のような介護サービスを利用しましょう。

訪問介護

ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事・入浴・排泄などの身体介護や、掃除・洗濯・買い物などの生活援助を行います。要介護者の状態に合わせて必要な支援を受けることで、在宅生活の継続をサポートします。

訪問看護

看護師などが自宅を訪問して、健康状態の観察や医療処置、療養上の世話を行うサービスです。主治医の指示に基づき、医療的ケアやアドバイスを提供し、要介護者と家族の不安を軽減します。

訪問入浴介護

専用の浴槽を持ち込み、介護スタッフが自宅で入浴の介助を行います。看護師も同行し、入浴前後の健康チェックも実施。寝たきりの方でも安全に清潔を保つことができる貴重なサービスです。

訪問リハビリテーション

理学療法士や作業療法士などが自宅を訪問し、日常生活の自立を目指したリハビリを行います。住み慣れた環境で受けられるため、実生活に即した機能訓練が可能で、要介護者の生活の質向上に役立ちます。

通所で利用できる介護保険サービスを検討する

要介護認定を受けた方は、自宅で生活しながら日帰りで施設に通ってさまざまなサービスを受けることができます。これらのサービスは、介護者の休息時間を確保する「レスパイトケア」としても重要な役割を果たします。

通所介護

日中、介護施設で食事や入浴などの介護サービスやレクリエーション活動を受けるサービスです。集団での活動を通じて社会性を維持でき、介護者の負担軽減にもつながります。多くの施設では自宅と施設間の送迎も行っています。

通所リハビリテーション

介護老人保健施設や病院などで、専門スタッフによるリハビリテーションを受けるサービスです。医学的管理のもとで、機能訓練や日常動作の改善を目指します。身体機能の維持・回復と社会参加の促進が目的です。

短期入所生活介護

特別養護老人ホームなどに短期間入所して介護サービスを受けるものです。介護者の病気や冠婚葬祭、休養などの際に利用でき、1日から最大30日まで連続利用が可能です。日常生活上の世話と機能訓練を提供します。

短期入所療養介護

介護老人保健施設や医療機関などで短期入所しながら、医療ケアを含む介護サービスを受けられます。医学的管理のもとでの看護やリハビリテーションが特徴で、医療ニーズの高い方に適しています。

施設入居を検討する

在宅介護に限界を感じたときは、施設入居も選択肢のひとつです。介護の長期化や要介護度の重度化、介護者自身の体調悪化などにより、在宅での介護が難しくなることもあります。

施設には特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホームなどさまざまな種類があり、状況に応じて選択できます。調査によると、施設入居の大きな理由は認知症の症状であることが多く、24時間体制の専門的なケア、社会的交流の機会、適切な栄養管理や生活リズムの調整など、在宅では難しいサポートを受けられるというメリットがあります。

民間の介護保険外サービスの利用を検討する

 介護保険サービスではさまざまなサポートが受けられますが、利用範囲には制限があります。例えば、庭の手入れや大掃除など、幅広い生活支援は対象外です。また、事前計画に基づくことが基本のため、急な依頼には対応しきれないこともあります。

このように介護保険でカバーしきれないニーズには、民間の介護保険外サービスの活用を検討するとよいでしょう。民間サービスは要介護認定の有無に関わらず利用でき、買い物代行や食事準備、通院付き添い、緊急時の対応など、必要な時に必要なだけ柔軟にサポートを依頼できる点が特徴です。

おわりに

介護が長期化するなかで直面する体力面や精神面の負担、経済的な不安、そして将来への漠然とした不安に対処するためには、早めに適切なサポートを活用することが重要です。

介護保険サービスや施設入居の検討、介護保険外の民間サービスの活用など、状況に応じた選択肢を組み合わせることで、介護者と要介護者双方の負担軽減につながります。介護の限界を示すサインを見逃さず、早めに対策を講じることが、持続可能な介護環境を整える鍵となります。

人生100年時代といわれる現代では、介護も長期戦になりがちです。ひとりで抱え込まず、適切なサポートを受けながら、介護者自身の心身の健康も大切にしていきましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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