親の介護は、誰にとっても避けて通れない現実です。「費用が心配」「自分の生活もあるのにどうすればいいのか」と悩む方は決して少なくありません。
介護にはまとまったお金が必要になりますが、国や自治体の支援制度を正しく知れば、負担を大きく減らすことができます。
この記事では「親の介護でお金がない」という切実な悩みを抱える方のために、今すぐ使える公的制度や具体的な対策を解説します。
経済的な不安を解消し、親御さんに寄り添いながら自分自身の生活も守れる理想的な介護を実現するために、ぜひ参考にしてください。


今すぐ相談:お金が足りないときの3ステップ

親の介護が差し迫っているのに、費用の見通しが立たない……そのようなとき、すぐに取り組むべき行動は以下の3つです。
- 地域包括支援センターに電話相談する
- 家計と資産を整理する
- 使える公的制度をチェックする
この3つを押さえておけば、状況を整理しながら先の見通しを立てやすくなります。順番に見ていきましょう。
ステップ1:地域包括支援センターに電話相談する
親の介護費用が心配になったら、まずはお住まいの市区町村にある地域包括支援センターに電話で相談してみてください。
地域包括支援センターは、高齢者の生活全般を支援するための総合窓口です。
「親の介護でお金が心配」と伝えるだけで、要介護認定の流れや支援制度の申請方法などを、保健師や社会福祉士などの専門職が丁寧に案内してくれます。
インターネットで「〇〇市 地域包括支援センター」と検索すれば、最寄りの窓口がすぐに見つかります。まずは気軽に連絡してみましょう。
ステップ2:家計と資産を整理する
次に、介護に充てられる資金がどの程度あるかを把握するため、親の家計や資産状況を確認します。具体的に確認すべき項目は、以下のとおりです。
- 毎月の収入(給与、年金、その他の収入)
- 毎月の支出(生活費、医療費、家賃、ローン返済など)
- 預貯金や金融資産(定期預金、株式、投資信託など)
- 保険(医療保険、介護保険、生命保険)
- 年金の受給状況
- 不動産(家や土地など)
- その他の資産(車など換金可能なもの)
親の資産や生活費を確認するのは気が引けるものですが、今後の介護生活を支えるためには欠かせないステップです。
デリケートな話題なので「今後も安心して暮らせるように、現状を一緒に整理しておきたい」など、思いやりのある言葉で協力をお願いしましょう。
なお、持ち家がある場合は、資金調達の手段として「リースバック」や「リバースモーゲージ」といった方法もあります。詳細は後述の「親の介護でお金がない場合の資金調達方法5つ」で解説します。まずは、現状を正確に把握することから始めましょう。
ステップ3:使える公的制度をチェックする
最後に、国や自治体が設けている公的制度を活用できるか確認します。介護費の自己負担を軽減できる代表的な制度は、以下のとおりです。
- 高額介護サービス費制度
⇒介護保険法第61条に基づき、介護保険サービスの自己負担が所得区分ごとの上限を超えたとき、超過分が払い戻される制度 - 特定入所者介護サービス費
⇒所得や資産が一定基準以下である施設入所者の食費や居住費を補助する制度 - 社会福祉法人等利用者負担軽減制度
⇒低所得世帯の自己負担を軽減する制度
上記の制度を利用するためには、原則として地域包括支援センターや市区町村役場の福祉課、社会福祉協議会を通じて申請が必要です。
公的制度について詳しくは後述の「親の介護でお金がない場合に使える公的制度6つ」にて詳しく説明します。
親の介護費用はいくら必要?知っておくべき目安金額(在宅/施設)

親の介護費用がおおよそどれくらいかわかると、今後の見通しが立ちやすくなり、漠然とした不安が和らぎます。ここでは、親の介護費用について以下の2点を解説します。
- 介護費用の平均金額
- 在宅介護と施設介護の月額費用を比較
ご自身の家計と照らし合わせながら確認してみてください。
介護費用の平均金額
公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」によれば、介護にかかる費用(介護保険の自己負担分を含む)の平均は以下のとおりです。
| 平均額 | 用途 | |
|---|---|---|
| 初期費用(一時的な費用) | 47万円 | 住宅の改修の自己負担分や介護用ベッドの購入費など |
| 月額費用 | 9万円 | おむつ代や食費など介護保険の対象外費用に加え、介護サービスの自己負担分など |
また、同調査によると平均的な介護期間は4年7ヵ月(55ヵ月)とされています。これをもとに試算すると約542万円(=47万円 + 9万円 ✕ 55ヵ月)となります。
ただし、この金額はあくまで全国平均の目安です。在宅で家族が協力して介護する場合は、食費や消耗品費を含めても、毎月の費用を3万〜6万円程度に抑えられるケースもあります。
平均金額を見て不安になった方も、介護方法や利用する制度次第で負担を抑えることは十分可能です。ご自身に合った支援策を知り、前向きに準備を進めましょう。
在宅介護と施設介護の月額費用を比較
在宅で介護するか施設に入居するかで、毎月の負担は大きく変わります。生命保険に関する全国実態調査によると、それぞれの平均月額は以下のとおりです。
| 介護の形式 | 平均月額 |
|---|---|
| 在宅 | 5.2万円 |
| 施設 | 13.8万円 |
在宅と施設では、月額で2倍以上の差が生じる計算になります。施設を利用すれば家族の身体的・精神的な負担を減らせるものの、費用負担は大きく膨らみます。
介護費用は、要介護度やサービスの組み合わせ(訪問介護・デイサービス・ショートステイなど)によって大きく変動するため、無理のない方法を慎重に検討しましょう。
参照元:2024(令和6)年度生命保険に関する全国実態調査 第1編2人以上世帯
介護費用は誰が払うのか(法的原則と実態)

介護費用は、原則として要介護者である親の年金や預貯金などから支払います。親の資金でまかなえる場合、子どもなど家族が負担する必要はありません。
親の収入や貯金だけで足りない場合は、まず公的支援制度の利用を検討しましょう。介護保険や自治体の助成制度などを活用することで、自己負担を抑えられる場合があります。
それでも不足が生じる場合は、民法上の扶養義務に基づき、子や配偶者など家族が不足分を補うことになります。とはいえ、無制限に負担する必要はなく、各家庭の収入や生活状況に応じて、無理のない範囲で分担すれば問題ありません。
家計への影響が大きい場合は早めに家族で話し合い、公的制度の利用も検討しましょう。
参照元:e-Gov法令検索「民法877条・879条(扶養義務者) 」
親の介護でお金がないときにまず相談すべき3つの窓口

介護やお金について心配ごとがある場合は、まず福祉制度に詳しい窓口で相談してみましょう。公的な支援制度やサービスを紹介している主な窓口は、以下の3つです。
- 地域包括支援センター
- 市区町村役場の福祉課
- 社会福祉協議会
それぞれの窓口で受けられる具体的な支援内容を、順番に紹介します。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者支援の総合窓口です。介護が必要になったときだけでなく「介護保険を使えるか知りたい」「どんなサービスがあるか知りたい」といった、初期の段階でも相談できます。
地域包括支援センターで対応してもらえることの例は、以下のとおりです。
- 介護に関するさまざまな悩みを相談できる
- 介護保険サービスを利用するための手続きを教えてもらえる
- 要支援の場合はケアプランの作成、要介護の場合はケアマネジャーの紹介をしてもらえる
- 家族の介護負担を軽減する方法を提案してもらえる
介護で困ったことがあれば、まずは地域包括支援センターに相談してみましょう。
市区町村役場の福祉課
市区町村役場の福祉課では、生活保護や自治体独自の助成制度など、公費による支援を幅広く扱っています。介護費用の負担が難しい場合や、収入が減って生活が厳しくなった場合に利用できる窓口です。
福祉課で対応してもらえる内容の例は、以下のとおりです。
- 生活保護の申請を相談できる
- 特定の条件を満たした際に介護保険料や利用料の軽減や免除を申請できる
- 住民税非課税世帯向けの支援制度を案内してもらえる
- 住宅、医療、障害福祉など他の行政サービスを紹介してもらえる
介護だけでなく生活全般の悩みも相談できます。収入や貯金が少なく将来に不安を感じる場合は、福祉課に相談してみるとよいでしょう。
社会福祉協議会
社会福祉協議会は「社協」とも呼ばれ、地域住民の生活やお金の困りごとを支援する民間組織です。介護費用が一時的に不足した場合や、生活自体が厳しくなったときに相談に乗ってもらえる窓口です。
社会福祉協議会で対応してもらえることは、以下のとおりです。
- 介護費用の一時的な不足を補うために、低利または無利子で資金を借りられる
- 地域のボランティアや見守り活動を紹介してもらえる
- 日常生活の困りごとを相談できる
- 福祉サービスの利用手続きを手伝ってもらえる
社協の貸付制度は低所得者でも利用しやすく、低金利で借りられることが特徴です。返済が難しい場合の相談にも応じてもらえるため「借金に抵抗がある」という方も、問い合わせてみるとよいでしょう。
親の介護でお金がない場合に使える公的制度6つ

国や自治体では、介護費用の負担を軽減できるさまざまな公的制度が用意されています。ここでは、主な制度として以下の6つを紹介します。
- 高額介護サービス費制度
- 特定入所者介護サービス費
- 社会福祉法人の負担軽減制度
- 自治体独自の助成制度
- 生活福祉資金貸付制度
- 生活保護制度
ひとつずつ見ていきましょう。
高額介護サービス費制度
1ヵ月に支払った介護保険サービス(在宅・施設を問わず)の自己負担額が、所得に応じた上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。介護サービスを多く利用して費用がかさんでも、家計の状況に応じて負担が軽減されます。
ただし、介護保険の自己負担(1〜3割)が対象になるため、食費や居住費は含まれません。
年収別の月額負担上限額は以下のとおりです。
| 区分 | 負担の上限額(月額) |
|---|---|
| 年収約1,160万円以上 | 140,100円(世帯) |
| 年収約770万円~約1,160万円未満 | 93,000円(世帯) |
| 年収約770万円未満 | 44,400円(世帯) |
| 世帯の全員が市町村民税非課税 | 24,600円(世帯) |
| 世帯の全員が市町村民税非課税かつ前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80.9万円以下の方等 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
| 生活保護を受給している方等 | 15,000円(世帯) |
上の表で、自分や家族の年収がどの区分にあたるかを確認すると、おおよその自己負担の上限が把握できます。上限を超えた場合は申請して払い戻しを受けましょう。
なお、初回申請後は、次回以降の支給にあたって改めて手続きする必要はありません。
高額介護サービス費制度の概要は、以下のとおりです。
| 対象者 | 介護保険の1ヵ月の利用者負担が上限額を超えた方 |
|---|---|
| 対象サービス | 介護保険の対象となる在宅・施設サービス(例:訪問介護、通所介護、ショートステイなど) |
| 申請窓口 | 市区町村役場の介護保険担当窓口 |
特定入所者介護サービス費
介護施設を利用すると、介護サービスの自己負担(1〜3割)に加え、食費や居住費(部屋代・光熱費)なども支払う必要があります。特定入所者介護サービス費制度は、この食費と居住費を軽減する制度です。
| 対象者 | 生活保護受給者および世帯全員が住民税非課税かつ所得額・預貯金額が一定水準を下回る方 例(利用者負担段階が第2段階の場合):住民税非課税で、年金収入と合計所得額が年80万円以下、預貯金が650万円以下の単身世帯の方 |
| 対象サービス | 施設入所(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設)、ショートステイなど |
| 申請窓口 | 市区町村役場の介護保険担当窓口 |
社会福祉法人の負担軽減制度
社会福祉法人が提供する介護サービスにおいて、低所得の方の自己負担額を原則25%軽減する制度です。食費や居住費も対象となり、在宅・施設どちらでも利用可能です。
| 対象者 | 例:住民税非課税で、年金収入が年150万円、預貯金が350万円以下の単身世帯の方 |
| 対象サービス | 社会福祉法人が運営する訪問介護、通所介護、ショートステイ、特別養護老人ホームなど |
| 申請窓口 | 市区町村役場の介護保険担当窓口 |
自治体独自の助成制度
各自治体では介護費用の負担を軽減するため、独自の助成や減免制度を設けています。内容は自治体によって異なり、紙おむつ代の助成やタクシー券の交付、介護用品費の補助などが行われています。
| 対象者 | 所得が一定以下の高齢者や介護認定を受けた方など(自治体により異なる) |
| 対象サービス | 紙おむつなど介護用品の購入費、福祉タクシー利用料金、在宅介護支援費など |
| 申請窓口 | 市区町村役場の介護課など(地域の役場に確認) |
自治体が実施している主な取り組み例は次のとおりです。
| 自治体 | 取り組み内容 |
|---|---|
| 北海道赤平市 | 補聴器購入費用の助成 |
| 青森県八戸市 | 介護者慰労金の支給 |
| 栃木県宇都宮市 | 住環境整備事業(段差解消、手すり設置など) |
| 埼玉県上尾市 | 介護サービス利用者負担助成費 |
| 愛知県名古屋市 | 配食サービス利用補助 |
| 兵庫県明石市 | 居場所検索用端末機の貸与 |
| 香川県高松市 | 高齢者福祉タクシー助成券の交付 |
| 福岡県福岡市 | おむつサービス |
これらの制度は全国一律ではなく、各自治体に住民票のある方が対象になります。介護費用の負担を少しでも軽くするためにも、お住まいの市区町村のWebサイトや役場の窓口で、利用できる助成制度を確認してみてください。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、収入が少ない方や高齢の方などが安定した日常生活を送れるよう、必要な資金を借りられる仕組みです。併せて、生活再建に向けた相談や支援も受けられます。
| 対象者 | 低所得者世帯、障害者世帯、高齢者世帯などで一時的に資金が必要な方 |
| 対象サービス | 介護費用、生活資金、住宅改修費など |
| 申請窓口 | 市区町村の社会福祉協議会 |
生活保護制度
生活保護制度は、他の制度でも生活費をまかなえない場合に利用できる最後のセーフティネットです。生活費だけでなく、介護サービス利用料も支援の対象になります。
なお、持ち家など担保にできる資産がある場合は、売却やリースバックなどで活用するよう勧められることもあります。
| 対象者 | 収入や資産が生活保護基準以下で、自力で生活が困難な方 |
| 対象サービス | 生活扶助、住宅扶助、介護扶助、医療扶助など |
| 申請窓口 | 市区町村の福祉事務所(生活保護担当窓口) |
親の介護でお金がない場合に活用できる税金・社会保険の軽減策4つ(申請手順つき)

税金や社会保険の面でも、介護世帯の経済的な負担を和らげるための仕組みが用意されています。主な軽減策は、以下の4つです。
- 医療費控除
- 高額医療・高額介護合算療養費制度
- 扶養控除・障害者控除の見直し
- 世帯分離
これらの制度を知っているかどうかで思わぬ負担を抑えられる場合があるので、ひとつずつ確認していきましょう。
医療費控除
医療費控除は、1年間に支払った自分や家族の医療費が一定額を超えた場合に、超過分を所得から差し引いて税負担を軽くできる制度です。介護に関係する支出も、条件を満たせば控除の対象になります。
対象となる費用の例は、以下のとおりです。
- 介護サービス利用料のうち自己負担分
- おむつ代(寝たきり状態などで「おむつ使用証明書」がある場合のみ)
- 通院や通所時にかかった公共交通機関の運賃
医療費控除を適用するためには、上記の費用を確定申告で計上する必要があります。該当する支出の領収書はあとで確認しやすいよう整理しておくと、確定申告の手続きをスムーズに進められます。
確定申告の手順は、以下のとおりです。
【申請手順】
- 必要書類を準備する
⇒ 年間の医療費をまとめた「医療費控除の明細書」を作成する(e-Taxで申告する場合は、領収書は送付せず整理しておくだけでOK) - 確定申告書を作成・提出する
⇒ 確定申告の期間(通常2月16日〜3月15日)に所轄の税務署またはe-Taxで申告する - 還付金を受け取る
⇒ 申告内容が認められると、後日指定口座に税金の還付が行われる
高額医療・高額介護合算療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度は、医療保険と介護保険の両方を利用している世帯で、1年間(毎年8月〜翌年7月)の自己負担額が上限を超えた場合に、超過分が払い戻される仕組みです。
高齢世帯では医療費と介護費が同時にかかることが多いため、家計の負担を軽減する目的で設けられています。限度額は年額56万円を基本とし、所得や年齢などによって細かく設定されています。
【申請手順】
- 証明書の取得
⇒市区町村役場の介護保険担当窓口で「自己負担額証明書」を発行してもらう - 申請書の提出
⇒加入している医療保険(健康保険組合・国民健康保険など)の窓口に、申請書と証明書を提出する - 払い戻し
⇒審査後、自己負担の超過分が指定口座に振り込まれる
参照元:厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度について」
扶養控除・障害者控除の見直し
税法上で親を扶養に入れると、所得税や住民税の負担が軽くなる可能性があります。社会保険上の扶養に入れると、親が74歳までであれば国民健康保険料や介護保険料を支払う必要がなくなるのも大きなメリットです。
ただし、税法上・社会保険上のいずれも、親の所得が一定額を超えると扶養対象外となるほか、扶養に入れることで不利になるケースもあります。例えば、高額療養費の自己負担が大きくなる場合や、介護保険料の軽減措置が受けられなくなる場合などです。
どちらが有利になるかは、親と子の収入(所得)や資産、介護費用の状況によって異なります。事前に税務署や自治体、勤務先の健康保険組合などに相談して確認しておくとよいでしょう。
【申請手順】
- 親の所得(年金やパート収入など)を確認する
- 確定申告または年末調整で扶養控除・障害者控除の欄に記入する(必要に応じて障害者控除対象者認定書や障害者手帳の写しを添付する)
親が要介護認定を受けている場合は、障害者控除の対象になるかどうかも確認してみましょう。
ただし、要介護認定を受けていても、障害者控除の対象となるとは限りません。対象となるのは、障害者手帳を持っている場合や市区町村長などが「障害者に準ずる状態」と認定した場合など、一定の条件を満たすときに限られます。
該当する可能性がある場合は、お住まいの自治体窓口か税務署に確認してみてください。
世帯分離
世帯分離とは、同じ家に住みながら住民票上の世帯を分ける手続きのことです。この手続きを行った場合、親は以下のメリットを期待できます。
- 高額介護サービス費や高額療養費の上限が下がる
- 国民健康保険料・介護保険料が下がる(算定基準となる世帯所得が下がるため)
- 非課税世帯になった場合、公的支援が増える
また、世帯を分けても基本的には、税法上や社会保険上の扶養から自動的に外れるわけではありません。そのため、税法上の扶養控除を受けながら世帯分離の効果も得られる可能性があります。
ただし、上記のメリット1と2が適用されるのは、多くの場合で実際に生活費を別々にしていると認められた場合のみです。
あくまで自治体の判断によるため、場合によっては適用されないこともあります。事前に地域の自治体窓口で確認のうえ、慎重に判断しましょう。
【申請手順】
- お住まいの市区町村役場に必要書類を確認する(代理人が手続きする場合は委任状についても確認)
- 住民異動届(世帯変更届)や本人確認書類などの必要書類を市区町村役場の窓口に提出する
注意:世帯分離は必ずしも得策とは限りません。世帯分離を行うことで、社会保険上の扶養から外れ、国民健康保険や介護保険にそれぞれ加入する必要が生じる場合があります。その結果、保険料の負担が増えることもあるため、事前によく確認してから判断しましょう。
在宅介護で使えるサービス一覧と費用感

在宅介護では、介護保険を利用することで、費用負担を抑えながら生活支援や身体介護等のサービスを受けられます。主なサービス内容と費用の目安は、以下のとおりです。
| サービス名 | 内容 | 自己負担(1割の場合の目安) |
|---|---|---|
| 訪問介護 (ホームヘルプ) | ヘルパーが自宅を訪問し、食事・入浴・排せつなどを介助する | 1回あたり300〜1,000円程度 |
| デイサービス (通所介護) | デイサービスセンターに通い、食事・入浴の介護や機能訓練を受ける | 1日あたり700〜1,500円程度 |
| 通所リハビリテーション (デイケア) | 介護老人保健施設などで、心身機能の維持回復や自立支援を目的にリハビリを行う | 1日あたり1,000〜2,000円程度 |
| 訪問リハビリテーション | 理学療法士や作業療法士などが自宅を訪問し、機能回復や自立のためのリハビリを行う | 1回あたり400円程度 |
| 訪問入浴介護 | 自宅に浴槽を持ち込んで入浴を介助する | 1回あたり1,000〜1,500円程度 |
| 訪問看護 | 看護師などが訪問し、療養上の世話や必要な医療的ケアを行う | 1回あたり500〜1,000円程度 |
| 短期入所生活介護 (ショートステイ) | 施設に短期間入所して入浴・排せつ・食事の介護や機能訓練を受ける | 1日あたり700〜1,100円程度(食費・居住費別) |
| 福祉用具貸与 | ベッドや手すりなど、日常生活を支える用具をレンタルする | ベッドの場合月1,000〜1,500円程度 |
利用料は所在地やサービスの提供体制、時間帯などによって異なります。詳しくは、市区町村の介護保険課や地域包括支援センターにお問い合わせください。
介護保険制度を利用した場合の自己負担の割合は、所得に応じて1~3割に定められており、多くの方が1割負担となっています。
また、要介護度に応じて、ひと月に利用できる上限額(区分支給限度額)が設定されています。
【区分支給限度額(ひと月あたりの上限)】
| 要介護度 | 利用限度額 |
|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 |
| 要支援2 | 105,310円 |
| 要介護1 | 167,650円 |
| 要介護2 | 197,050円 |
| 要介護3 | 270,480円 |
| 要介護4 | 309,380円 |
| 要介護5 | 362,170円 |
この上限額を超えてサービスを利用した場合は、超過分が全額自己負担となります。
介護度や利用回数によって費用は変動するものの、多様なサービスを上限額の範囲内で組み合わせることで、家族の負担を軽減しながら在宅介護を続けやすくなるはずです。
低所得でも入居できる施設の選び方(特養・ケアハウス等)

費用を抑えて入居できる介護施設は、低所得者でも利用しやすい選択肢です。ここでは、経済的に厳しい状況でも利用しやすい施設の種類や探し方、その際の注意点について解説します。
低額で入居できる施設の種類
費用を抑えて入居できる代表的な施設は、以下の3種類です。
| 施設 | 入居対象 | 概要 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム (特養) | 要介護3以上 | 寝たきりや認知症など常時介護が必要な方向け。入所希望者が多いが先着順ではなく、必要度の高い方が優先される。 | 月額7万〜17万円程度(施設サービス費の自己負担、居住費、食費などの合計) |
| 軽費老人ホーム (ケアハウス) | 一般型:自立に不安のある60歳以上/介護型:65歳以上で要介護1以上 | 一般型は、食事や掃除、洗濯の支援が受けられる。介護型はそれに加えて入浴、排せつ、機能訓練なども受けられる。 | 入居時は0~数百万円。月額は一般型で7~20万円程度、介護型はそれ以上必要 |
| 介護医療院 | 65歳以上で要介護認定を受けており、長期にわたり療養が必要な方 | 医療と介護を一体的に提供し、長期療養や看取りにも対応。重度の要介護者も安心して暮らせる。 | 月額9万〜18万円程度(施設介護サービス費の自己負担、居住費、食費などの合計) |
これらの施設は公的な支援制度を利用できるため、低所得でも入居しやすい環境が整っています。
低額施設の探し方と注意点
低額で入居できる施設を探す際は、まず信頼できる情報源を押さえておくことが大切です。主な探し方や注意点は、次のとおりです。
【探し方】
- 介護サービス情報公表システム(厚生労働省)のサイトで条件検索する
- 自治体の福祉課や地域包括支援センターで紹介を受ける
- ケアマネジャーや医療機関に相談する
【注意点】
- 人気のある施設は待機期間が長く、すぐに入居できない場合が多い
- 入居条件(要介護度や所得など)は施設によって異なる
- 入所時に敷金や保証金が必要な場合がある
- 医療ケアが必要な場合、受け入れが制限される場合がある
- 夫婦での同時入居が難しい場合がある
施設によって入居条件や費用の範囲が異なるため、見学時に詳細を確認しておきましょう。
施設を探す際は前もって行動することが重要

東京都が公表した「令和6年度 東京都内特別養護老人ホーム入所(居)待機者に関する実態調査」によると、特別養護老人ホームの待機者数は減少傾向にあるものの、依然として厳しい状況が続いているとされています。
これは医療的なケアが必要になり、入所対象から外れてしまう待機者も含まれているためです。
この調査は東京都の結果ですが、地方においても利用料が手ごろな施設は人気が集まりやすいため、入居までに時間がかかると考えておいた方がよいでしょう。
介護施設への入居を考え始めたら、早めに希望条件に合う施設を複数リストアップし、見学や相談を通じて情報を集めておくことが大切です。準備を早く進めるほど、希望する施設に入居できる可能性が高まります。
家族間トラブル回避!親の介護でお金がない場合に家族で決めておくこと4つ

介護費用の負担をめぐって、家族間で意見がすれ違ったり、不満が生じたりすることは少なくありません。冷静に話し合うためには、あらかじめ議題を整理しておく必要があります。
家族会議で確認が必要なポイントは、以下の4つです。
- 介護方針を話し合う
- 主な介護者を決める
- 費用分担のルール・割合を決める
- 親の財産管理について相談する
穏便に話し合う態勢を整えられるようになるため、ひとつずつ押さえておきましょう。
介護方針を話し合う
介護をどのように進めていくか、まずは全員の考えを出し合いましょう。親の希望や健康状態を軸にしつつ、現実的に続けられる方法を探ることがポイントです。
【話し合いのチェックリスト】
- 在宅介護を続けられる条件を見極める
◦ 仕事や家庭と両立できる体制が整っているか
◦ 近隣に手伝ってくれる親族や支援サービスがあるか
◦ 夜間や休日の介護は誰が担当するか
- 在宅介護から施設介護への切り替え時期を想定する
◦ 在宅介護を続けられる状態(介護者の負担・親の安全・生活リズム)を保てているか
◦ 施設入所の初期費用や月額費用を親の資産でまかなえるか
◦ 親の希望(自宅か施設か)を家族で共有できているか
あらかじめ「どの状態になったら次の段階に移るか」を決めておくことで、判断の迷いや後悔を減らせます。
主な介護者を決める
介護の中心になる方と、医療機関や施設との連絡を担当する方をあらかじめ決めておくと、情報共有がスムーズになります。誰がどの役割を担うかを明確にしておくことで、負担感を分散できます。
【話し合いのチェックリスト】
- 主な介護者を決める
◦ 日常的な介護を行うのは誰か
◦ 通院や買い物、送迎などをどのように分担するか
◦ 介護が難しいときに交替してもらえる体制があるか
- 連絡担当を決める
◦ 医療機関や施設とやり取りする窓口を誰にするか
◦ 家族間で情報共有する方法(グループLINEなど)を決めているか
介護担当者と連絡担当者を分けることで、責任が集中せず、全体を見通した冷静な判断がしやすくなるでしょう。
費用分担のルール・割合を決める
介護費用を負担する割合をあいまいにすると、あとから「誰が多く払っている」「公平ではない」といった不満が生じやすくなります。あらかじめ分担のルールを決め、全員が納得できる形で支出を管理しましょう。
【話し合いのチェックリスト】
- 分担方法を話し合う
◦ 親の年金や貯金をどの程度介護費用に充てるか
◦ 子どもが補う場合、誰がどの費用を負担するか(例:長男が施設費、次女が医療費など)
- 支払い方法と清算ルールを決める
◦ 支払いに使う口座や、領収書の管理方法は決まっているか
◦ 立て替えが発生した場合の清算方法(いつ・どのように返すか)は決まっているか
費用の分担や清算方法をあらかじめ明確にしておくことで、家族間の誤解を防ぎ、必要なときに支出の証明もしやすくなります。
親の財産管理について相談する
親の判断力が落ちたときに備えて、財産の管理方法を早めに話し合っておきましょう。「誰が」「どの範囲まで」管理するかを決めておけば、急なトラブルにも対応しやすくなります。
- 財産管理の方法を決める
◦ 親の通帳や印鑑の保管など、財産管理は誰が代表して行うか
◦ 親の財産の使い道や残高を、定期的に共有できるようにしているか
- 将来に備えた制度を検討する
◦ 成年後見制度や家族信託を利用するかどうか
◦ トラブル時や判断に迷ったときに相談できる窓口(地域包括支援センターなど)が決まっているか
財産管理の方針を共有しておけば、親の生活を守りながら、家族全員が安心して支え合える態勢を作れます。
親の介護でお金がない場合の資金調達方法5つ

介護期間が長くなると、資金が不足する事態も十分に考えられます。そのようなときには、以下5つの資金調達手段を検討してみてください。
- リースバック
- リバースモーゲージ
- マイホーム借り上げ制度
- 介護ローン
- 不動産の売却
ただし、あくまでも公的制度を活用しても資金が足りなくなった場合の最終手段です。方法を知っているといざというときに選択肢が広がるため、覚えておくことをおすすめします。
リースバック
リースバックは、自宅を売却してまとまった資金を得ながら、そのまま賃貸として住み続ける仕組みです。リースバックのメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| リースバックのメリット | リースバックのデメリット |
|---|---|
| 自宅を売却してまとまった資金を得られる | 売却額が相場より低くなる場合がある |
| 引っ越し不要で、これまでの生活を維持できる | 家賃の支払いが発生する |
| 固定資産税などの維持費が不要になる | — |
「介護費用が足りない」「でも住み慣れた家は手放したくない」そんな方は、セゾンのリースバックを選択肢のひとつとして検討してみてください。
調査費や仲介手数料などの初期費用は原則不要(※1)で、クレディセゾングループの不動産金融会社として培ったノウハウを活かし、適正な査定とスピーディーな対応(最短2週間程度)を行っています。
※1 審査内容・契約条件により一部費用が発生する場合があります。


リバースモーゲージ
リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受け、亡くなった後に自宅を売却して一括返済する制度です。利息分の支払が発生することは多いものの、元本の返済が不要なため、年金生活者でも利用しやすいのが特徴です。
代表的な例として、住宅金融支援機構の「リ・バース60」があります。満60歳以上の持ち家所有者を対象とし、自宅や土地の評価額が一定以上あれば利用できます。
ただし、地価下落や金利上昇などの影響で、融資額が減少したり、追加担保を求められたりする可能性があります。
また、相続時の返済方法や「配偶者が居住を続けられるか」なども重要な確認事項です。契約前に金融機関から十分な説明を受けましょう。
マイホーム借り上げ制度
住み替えや介護のために自宅を離れる場合「マイホーム借り上げ制度」を利用すれば、持ち家を売らずに収入を得られます。一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が家を借り上げて転貸し、安定した家賃収入を確保できる仕組みです。
契約期間中の賃貸管理はJTIが一括して行うため、空室や滞納の心配も少なく、老後資金や介護費用に充てやすい方法といえます。
介護ローン
介護費用の支払いが一時的に難しくなった場合は、「介護ローン」を検討する方法もあります。金融機関が提供する商品で、入所一時金やリフォーム費用、介護ベッドなどの購入費を対象に借り入れが可能です。
金利は一般的に年2〜6%前後、返済期間は7〜10年程度が目安です(※金融機関や審査内容によって異なります)。
契約の際は、契約書面で金利・返済総額・遅延損害金などの条件が明示されます。内容をよく確認したうえで契約しましょう。
急な費用が発生した場合や、施設入所の一時金をすぐに準備できないときなどに、一時的なつなぎ資金として利用できます。まずは取引のある銀行や信用金庫に相談してみるとよいでしょう。
不動産の売却
親が所有する不動産を売却して介護費用に充てる場合は、まず家族で合意を取り、名義人本人の意思確認を行うことが大切です。そのうえで不動産会社に査定を依頼し、媒介契約→販売活動→売買契約→引き渡しという流れで進みます。
不動産を売却したときに利益が出ると、税金(譲渡所得税)がかかる場合があります。条件を満たせば最大3,000万円まで差し引ける特例もあるため、売却前に税理士などへ相談しておくとよいでしょう。
親の介護でお金がない場合でも焦らず利用できる制度や資金調達法を探そう

親の介護が差し迫っているなかで費用の見通しが立たないときは、まず地域包括支援センターに電話をかけて相談してみましょう。そのうえで家計と資産を整理し、介護保険や自治体の支援制度など、利用できる公的制度をひとつずつ確認していきます。
介護費用の悩みは、制度を知り、現状を整理することで必ず道筋が見えてきます。焦らず段階を踏みながら、制度を活用し、家族で支え合う形を見つけていきましょう。
経済的な負担を減らし、親御さんにもご自身にも安心の介護環境を整えることができます。
制度や助成を活用しても、なお資金が不足する場合は、住み慣れた家を活かす選択肢「セゾンのリースバック」を視野に入れてみてください。
セゾンファンデックスでは、専門スタッフが資金計画や制度活用のご相談を承っています。介護の負担を軽くし、親御さんの生活とご自身の暮らしを両立させるための一助として、こうした仕組みも活用してみましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。