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老後に備える終活費用ガイド|葬儀・お墓・相続の目安と備え方

老後に備える終活費用ガイド|葬儀・お墓・相続の目安と備え方
桑田 悠子 (円満相続税理士法人 パートナー税理士)

監修者

円満相続税理士法人 パートナー税理士

桑田 悠子

祖父の死から相続のプロになることを決め、大学卒業後に税理士試験を志す。
税理士法人山田&パートナーズを経て、円満相続税理士法人のパートナーに就任し、上場会社監査役も務める。
「難しいことを、分かりやすく話す」ことをモットーとし、セミナーの対象は、一般の方からプロまで幅広い。法人の顧問は1件も持たず、生前対策・遺言・事業承継・相続税申告など、年間100件以上の資産税案件を手掛ける。
テレビ・雑誌等のメディアから取材を受け、SNSでも人気の税理士。
著書に「マンガ・図解でわかりやすい 相続超入門」。

遺された家族に負担をかけないよう、人生の終わりについて考える活動を「終活」と呼びます。葬儀やお墓はどうするか、財産はどのように相続するかなどを考えておくことは、将来の不安解消にもつながります。

この記事では、葬儀やお墓といった終活にかかるお金やその準備、相続に関する注意点などについて解説していきます。終活やそれに伴うお金の準備は早めの行動が大切です。具体的な準備方法や相談先も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

葬儀の流れや費目を確認

葬儀の流れや費目を確認

まずは葬儀の流れや種類について確認していきましょう。

葬儀社に連絡してから火葬までは一般的に2〜5日間程度とされています。その間に通夜・葬儀・告別式などを行います。

葬儀の種類は以下のようにさまざまです。

[図解]葬儀の種類と特徴
[図解]葬儀の種類と特徴

また、上記のほか、形式や宗教にとらわれず、個人の意思を反映したオリジナルの葬儀を行う、「自由葬」というスタイルもあります。

通夜や告別式を省いたり、葬儀の規模を小さくしたりすれば、そのぶん費用も抑えられます。とはいえ、遺された家族にとっては本人と過ごす最後の大切な時間でもありますから、なるべく本人の希望を叶えてあげたいと思うのが心情です。

葬儀についてあらかじめ意向を伝えておいたり、後述のエンディングノートなどに書き記したりしておくと、家族も安心できますよ

葬儀にかかる費用は大きく3つに分けられます。

  • 葬儀一式費用
  • 飲食接待費用
  • 宗教者への謝礼

葬儀一式費用に含まれるのは、式場利用料や棺、祭壇、遺影などの準備費用です。また、供花や搬送費なども発生します。

飲食接待費用とは通夜振る舞いや香典返しなど、葬儀に参列した方の接待に関する費用を指します。宗教者への謝礼は主にお布施のことです。葬儀を執り行う僧侶などにお礼として支払う必要があります。

これまで相談を受けた方の例でいうと、葬儀費用は100〜200万円が平均的でした。家族葬など小規模なものだと10万円程度で済む場合もあります。

お墓・納骨堂・樹木葬:費用の目安と注意点

お墓・納骨堂・樹木葬:費用の目安と注意点

自分のお墓をどうするか考えるのも終活の一つです。

一般的な墓石を立てる場合は次のような費用がかかります。

  • 墓石代
  • 永代使用料
  • 管理費

墓石代の目安は120〜175万円ほどといわれています。永代使用料とは墓地や霊園の土地を借りる費用のことで、地域にもよりますが30〜100万円ほど。管理費はお墓を置く墓地や霊園に定期的に払う費用で、4,000〜25,000円が目安となっています。

全体では150〜275万円くらいを見ておくといいでしょう

お墓を建てないという選択肢もあります。

例えば、遺骨を屋内施設に保管・管理して供養する「納骨堂」もその一つです。費用目安は50〜100万円程度と、墓石を建てるよりも費用を抑えやすく、また屋内施設がほとんどなので家族のお墓参りや管理の負担が減らせるのも特徴です。

近年は「樹木葬」を選ぶ方も増えています。樹木葬とは墓石の代わりに樹木や花を墓標とする比較的新しいスタイルです。自然に囲まれた環境で眠ることができるとして、近年注目を集めています。

ほかの選択肢よりも費用を抑えられるのが特徴で、複数人で1つの墓を利用する合葬型の場合だと30万円程度が目安です。

これらは、生前に自分で準備・予約することができます。

生前にお墓を手配するメリットとしては自分でお墓のスタイルを決められること、家族の負担を減らせること、相続税対策になるといったことなどが挙げられます。終活にあたって、自分でお墓を用意しておくのも選択肢の一つです。

墓地や墓石、仏壇や仏具には基本的に相続税がかかりません。購入資金を現金で残すのではなく、事前に購入しておくことで、相続税対策の一つとなる場合(※)があります。

ただし、ローン払いは避けたほうが無難といえます。残債が残った状態で亡くなってしまうと、残債分は債務としてマイナスできないので、可能なら一括払いを選びたいですね。

※具体的な税務上の取り扱いは個別事情によって異なります。詳しくは所轄税務署や税理士などの専門家にご確認ください。

相続・遺言・後見・生前整理に必要な費用

相続・遺言・後見・生前整理に必要な費用

これまで紹介してきたほかにも、終活ではさまざまな費用がかかります。

[表]終活の主な費用
[表]終活の主な費用

生前整理とは、元気で余裕のあるうちに身の回りの持ち物や財産を整理することを指します。家族に残したい大切なものとそうでないものを分別し、少しずつ片づけていけるといいですね。

また、遺言書の作成にもお金がかかります。遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言、秘密証書遺言といった種類があります。

このうち、公正証書遺言は、財産の価額に応じた手数料がかかります。手数料は遺言書に記載する財産の価額が100万円以下なら5,000円、1,000〜3,000万円では23,000円となっています。

その他に専門家(弁護士、税理士、司法書士、行政書士など)に相談して作成する場合には、専門家報酬がかかります。

参照元:日本公証人連合会「公証人手数料」

ご自身の判断力が低下することに備えて、成年後見制度や家族信託も検討しておきたいところです。

成年後見制度とは認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が低下した方の法律行為を支援する制度です。具体的には不動産や預貯金の管理、介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結といった行為が当たります。

法定後見制度と任意後見制度の2つがあり、自分で後見人を決める場合は任意後見制度を利用します。

任意後見人と契約を結ぶ際には、公正証書で契約書を作成する必要があります。自作する場合は基本手数料として11,000円、登記委託手数料として1,400円、印紙代として2,600円、その他申込手数料や切手代などがかかります。

作成を依頼する場合は別途依頼料がかかるほか、成年後見人への毎月の報酬も必要となります。

参照元:厚生労働省「任意後見制度とは(手続の流れ、費用)」

家族信託は資産の管理・処分を信頼できる家族に任せる仕組みです。成年後見制度と違い、資産の活用も家族の判断で行うことができます。家族に依頼するので、毎月の報酬もほとんどかかりません。信託財産が現金のみの場合、費用の目安はおおよそ20〜40万円となります。

参照元:一般社団法人家族信託普及協会「家族信託とは?」

自分で作成する自筆証書遺言なら費用を抑えることができますが、正しく書かないと無効になったり、トラブルの原因になったりします。基本的には専門家に任せたほうが安心といえます。

終活費用の準備方法と家族に伝える工夫

終活費用の準備方法と家族に伝える工夫

終活にはある程度まとまったお金がかかります。それまでに貯蓄してきた資産などを取り崩しながら少しずつ備えておけば、家族に負担を残すこともなく、なおかつ資産も圧縮されるので相続税対策にもつながります。

当面のお金の準備以外にも、家族のために備えておくべきことがいくつかあります。先ほど紹介した葬儀の意向もその一つです。ほかにも、口座を開いている金融機関やおおまかな資産状況も家族に伝えておきましょう。

直接伝えることに抵抗を感じる場合は、エンディングノートなどにまとめるのも一つの手です。

plw0043_円満相続のために知っておきたい資産管理術』も参考にしてください。

また、もし終活やその準備に困ったら、終活カウンセラーや弁護士、税理士といった士業など内容によってさまざまな専門家の力を借りましょう。終活カウンセラーに迷ったら、以下に登録されている方から選ぶのも選択肢の一つです。

一般社団法人終活カウンセラー協会

自分の人生や財産を任せることになる終活の相談相手や後見人は、信頼できる人にお願いすることがなによりも大切です。争いになりそうな場合は弁護士、相続税が発生する可能性がある方は税理士など、専門家の使い分けも必要です。

すぐに決める必要はありません。何回か相談したり、実際に会ったりしてみて、本当に信じられる人かどうか判断してからでも遅くはないですよ。

おわりに

終活は家族に迷惑をかけないための取り組みです。自分にもしものときがあったとき、葬儀や相続、財産の整理など残された家族にはやることがたくさん発生します。

事前に葬儀という避けられないライフイベントの準備や身の回りの整理を済ませておくことは、家族との大切な時間を守ることにもつながります。

ここまで紹介した費用はあくまで一例です。人によっては増減することもあるでしょう。数字に振り回されずに全体像を知り、早めに準備することが安心への第一歩です。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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