「平日は都会で便利に暮らし、週末は自然の中でゆっくり過ごす」。そうした「2拠点生活(にきょてんせいかつ)」という暮らし方に注目が集まっています。しかし、いざ始めようとすると、「家は買うべきか」「借りるべきか」「費用はどの程度かかるのか」といった疑問も出てきます。
後悔のない選択をするために、まずは拠点の選び方から、費用を抑える賢い工夫、意外と重要な住民票の扱いまで、おさえておきたい基本的なポイントを紹介します。
「2拠点生活」ってどんな暮らし?

「2拠点生活」とは、都会と郊外といったように、異なる場所に2つの生活拠点を持ち、行き来しながら暮らすスタイルのことです。近年、新しい暮らし方の選択肢の一つとして注目されています。
このスタイルが選ばれる背景には、「現在の仕事や生活基盤は大きく変えられないものの、自然豊かな郊外でゆっくりと過ごす時間も持ちたい」「都会に自宅はあるものの、介護のために週末は郊外にある実家で過ごしたい」といった多様なニーズがあります。
最も一般的なのは、平日は通勤に便利な都心部に拠点を置き、週末は郊外の家でリラックスして過ごすというパターンですが、近年ではリモートワークの普及などを背景に、平日の多くを自然豊かな郊外で過ごし、週末だけ都会の拠点に戻るというケースも増えています。
特にシニア層にとっては、定年後の時間を豊かにするための選択肢となり得ます。
日常とは異なる環境に身を置くことで精神的なリフレッシュ効果が期待できることに加え、最近では、地震をはじめとした災害への備えとして、リスク分散の観点から郊外にもう一つの拠点を持つというシニア層も見られます。
かつて流行した別荘を持つ暮らしも、こうした2拠点生活の一形態といえるでしょう。
2つ目の拠点、「買う」と「借りる」でどう違う?

2拠点生活を始める際、2つ目の拠点を「購入」するか「賃貸」にするか悩む方も多いと思います。
購入する場合
拠点を「購入」する大きなメリットは、自分の資産になる点です。
将来的に売却できる可能性もありますし、リノベーションやDIYが自由にできるため、理想の空間を追求できます。
また、物件を所有することで「ここに定住する」という意思が伝わり、地域の方たちと信頼関係を築きやすいという利点もあります。
自治体によっては、移住者向けの補助金やリフォーム支援制度が利用できる場合も多いです。
ただし、初期費用はもちろん大きくなりますし、固定資産税や修繕費といった維持費が継続的にかかることは、あらかじめ考えておく必要があります。
以前は「地方の空き家はなかなか手放せない」のが課題でしたが、最近は空き家専門の仲介会社も増え、地方の物件も流通しやすくなっています。
借りる場合
一方、「借りる」場合は、購入に比べて初期費用を大幅に抑えられる点が魅力です。
資産にはなりませんが、維持費の心配が少なく、万が一トラブルが発生したり、その土地が合わないと感じたりした場合でも、比較的容易に住み替えられます。まずは「お試し移住」として始められる手軽さもあります。
ただし、長期間借り続けると、総額が購入よりも割高になる可能性には注意が必要です。また、ペットの飼育や物件の用途に制限が設けられていることもあります。
購入を考えている場合でも、まずはその土地で一度暮らしてみるのがおすすめです。
最近は、短期賃貸や別荘を気軽に借りられるサブスク、それに「移住体験住宅」といった、気軽にお試し移住ができる選択肢が増えています。
この「移住体験住宅」というのは、自治体などが運営しているもので、生活に必要な家具や家電がひととおりそろっています。
なお、将来その地域への移住を考えている方に向けた制度のため、旅行目的では使用できません。
利用料金は1泊1,000円から2,000円程度と安価に設定されているものも多く、中には無料で利用できるものもあります。
また、利用期間は数日から半年ほど利用できるものまで、自治体によりさまざまですので、事前に確認が必要です。
2拠点生活ならではのコストと費用を抑える賢い工夫

2拠点生活を始める場合、現在の生活費に加えて費用が発生します。
できるだけ費用を抑える工夫や、注意点を紹介します。
かかる費用の概要
現在の生活費に加え、2つ目の拠点にかかる「住居費」や「水道光熱費」、拠点間を移動する「交通費」が新たに発生します。
生活費の総額は1.5倍から2倍程度になるといわれますが、これは選ぶ場所や過ごし方で大きく変わるため、あくまで目安です。
もちろん、こうした費用負担を軽くするための工夫もあります。
例えば、自治体によっては「二地域居住促進補助金」といった支援制度を設けている場合があります。
これは、2拠点生活を始める方を対象に、住宅の購入費やリフォーム費用、あるいは拠点間の交通費の一部などを支援する制度です(制度の有無や内容は自治体によって異なります)。
エリアによって変わる住宅費と交通費
物件選びの段階では、希望するエリアから少し範囲を広げて探したり、本拠地の家が充分な広さなら、2つ目の拠点はコンパクトな物件を選んだりするのも方法の1つです。
一方で、注意点もあります。とくに「交通費」は継続的にかかる費用なので、アクセス面は慎重に検討する必要があります。拠点間のアクセスが不便だと、移動の負担だけでなく交通費もかさんでしまいます。
将来、車の運転が難しくなった場合の移動手段についても、あらかじめ考えておくとよいでしょう。
物件は放置期間で見極める
拠点を「購入」する場合には、物件の見極めが必要です。
物件の状態を見極めるには、築年数よりも「空き家であった期間」、さらにいえば「適切に管理されず放置されていた期間」を重視する必要があります。建物は、人が住まなくなると傷みやすくなるためです。
購入金額そのものよりも、入居までにどれくらいの修繕費が必要になるか、という視点で総費用を判断することが大切です。
まずは現地へ足を運び、物件の状態を自分の目で直接確認しましょう。
住民票は郊外に移す
2拠点生活で意外と見落としがちなのが「住民票」をどこに置くかです。
これまでは、平日の滞在が長い都内などに住民票を置いたまま、週末だけ郊外で過ごすのが一般的でした。しかし、現在は郊外に住民票を移す人も増えています。
住民票を移すことには、金銭的なメリットに加え、地域コミュニティに関わる重要な利点があります。
私は、住民票を郊外へ移すことを推奨しています。
住民票を移すことで、その自治体が提供する住宅購入やリフォーム等の助成金の対象になる場合があります。さらに重要なのは地域との関係性です。
住民票がないと「一時的に滞在している人」と見なされ、町内会への加入が難しかったり、ゴミ出しのルールなどで地域住民と摩擦が生じたりするケースも見られます。
住民票を移すことで「定住する人」として認識され、コミュニティに受け入れられやすくなり、こうしたトラブルを未然に防ぐ効果も期待できます。滞在日数の長短に関わらず、住民票の所在は、地域コミュニティに溶け込む上で大きな意味を持ちます。
2拠点生活って大体どのくらいお金がかかる?

2拠点生活にかかる費用は、その人の生活スタイルによるため一概にはいえませんが、ここでは例として2つのパターンを紹介します。
ケース①週末往来型(別荘・サブスク型)
東京に住み、週末は関東近郊で趣味を楽しむために2拠点をかまえるケースです。サブスクリプションサービスの利用でコストを抑えながら、手軽に非日常を味わえます。
家族構成:夫婦
場所:東京から千葉へ週末移住
目的:大好きなサーフィンを満喫する
特徴:サブスクリプションサービスで別荘を利用

現在は、手軽に別荘を借りられる「別荘サブスクリプションサービス」があるため、週末だけ活用するのも一つの方法です。
ケース② 2拠点目定住型(空き家購入型)
東京に住み、月に2回は鹿児島へ移動し、持ち家のセカンドハウスで過ごすケースです。空き家を購入・リフォームすることで、本格的な拠点で普段通りの生活を送れます。
家族構成:夫婦
場所:東京と鹿児島を月に2回移動
目的:地方に戸建てのセカンドハウスがほしい。家庭菜園を楽しみたい
特徴:空き家を購入し、リフォーム

生活費は2拠点分必要になりますが、その分、2拠点目でも普段通りの生活ができます。また、住民票を移すことで、自治体からの助成金を活用することができます。
おわりに
憧れの2拠点生活を長く楽しむためには、無理のない資金計画が何よりも大切です。
計画の第一歩は、2拠点生活の「目的」を明確にすることです。目的が定まれば、必要な拠点のスタイルや距離感も決まり、予算の目安が見えてきます。次に、現在の家計全体を見直し、通信費やサブスクリプションサービスといった既存の固定費を削減できないか検討してみましょう。
資金計画を立てるうえでの理想は、2拠点生活にかかる費用を、年金など毎月の定期的な収入の範囲内でまかなうことです。もし退職金を充てる場合でも、老後の生活費や万が一の備えはしっかり確保した上で、あくまで余裕資金の範囲で計画することがとても大切です。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。