2024年の離婚総件数は185,895件と、一定の水準で推移しています。そのうち、同居期間20年以上の離婚件数は40,686件と、全体の約20%を占めています。婚姻中に築いた財産は夫婦共有のものと捉えるため、離婚時にはそれぞれに財産を分けることとなります。
実は離婚時には厚生年金も分割の対象となります。これを年金分割と呼びます。この記事では、年金分割の基本や注意点、実際の手続きの流れについて解説します。
参考:厚生労働省「令和6年人口動態統計月報年計(概数)の概況」
年金分割とは?老後の格差を調整する制度

夫が会社員、妻が専業主婦というような夫婦が離婚した場合、夫は厚生年金を受け取れますが、専業主婦であった妻は原則として国民年金しか受け取れません。そのため、離婚後の老後生活に不安を感じるケースも少なくありません。
こうした離婚後の年金額の差を調整するために設けられている制度が「年金分割」です。
年金分割とは、離婚時に夫婦の厚生年金の納付記録を分け合う仕組みのことです。
年金自体を分割するわけではなく、あくまで厚生年金の加入記録(報酬に基づく記録)を按分します。実際に年金額へ反映されるのはそれぞれが65歳になり、老齢年金を受け取る段階です。
例えば、夫が会社員として厚生年金に加入し、妻は専業主婦であった場合、婚姻期間中の夫の厚生年金加入記録を夫婦で分け合うことになります。
仮にその期間の標準報酬月額が40万円相当であった場合、その期間の厚生年金の報酬比例部分について、夫婦それぞれが20万円相当で加入していたものとして按分されるイメージです。
妻は、その分割された記録をもとに、65歳以降に老齢年金を受け取ることになります。
分割できるのは厚生年金の報酬比例部分(年金の加入期間や過去の報酬などに応じて決まる部分)のみで、国民年金は対象外となっています。
配偶者が自営業などで夫婦のいずれも厚生年金に加入していない場合は年金分割できません。
また、共働きの場合は「双方の厚生年金の加入記録を合算・按分」することになります。具体的には、厚生年金の加入記録の多い方から少ない方へ、記録が移動します。

年金分割の件数は年々増加傾向にあります。現に、2019年度は29,391件でしたが、2023年度は32,642件にまで増加しました。
参考:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
年金分割は専業主婦が一般的だったころ、離婚時の不公平感を払拭する目的で生まれた制度といえます。件数は増えてきたとはいえ、認知度はまだまだといった印象です。
とくに第3号被保険者(厚生年金加入者に扶養されている配偶者)の方は、自分の老後にかかわる制度ですので、知っておきたいところですね。
「合意分割」と「3号分割」の違いを整理

年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2つの制度があります。
合意分割は当事者同士の話し合いなどで分割割合を決め、婚姻期間中の標準報酬月額等(標準報酬月額及び標準賞与額)を分け合う制度です。
分割割合は最大で50%で、上限内であれば当事者同士で自由に設定できます。ただし、合意分割はその名のとおり夫婦間の合意が必要となります。もし、当事者間で合意に至らない場合は、話し合いによる分割は成立しません。
3号分割は夫婦の合意がなくても年金を分割できる制度です。
第3号被保険者として扶養されていた側が申請することで、扶養期間中の標準報酬月額等(標準報酬月額及び標準賞与額)の2分の1が自動で分割されます。なお、分割対象となるのは2008年4月1日以降の期間について。それ以前の記録については対象外となります。

婚姻期間中に、共働きの時期と第3号被保険者として扶養されていた時期の両方がある方は、2つの分割を併用できます。とはいえ、実際には合意のいらない3号分割だけを行う方のほうが多い印象です。なお、分割後の年金額は毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」などで確認できます。
年金分割の手続きの流れと注意点

年金分割はおおまかに
- 情報通知書の取得
- 分割割合を決定
- 請求手続き
といった流れで進めます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
情報通知書の取得
離婚後、年金分割を希望する場合はまず「情報通知書」を取得します(通知書は離婚前でも請求が可能です)。
情報通知書には保険料の納付状況など、年金分割のために必要な情報が記載されています。取得するには、以下の書類を最寄りの年金事務所に持参または郵送する必要があります。
- 年金分割のための情報提供請求書
- マイナンバーカードまたは年金手帳
- 戸籍謄本
- 住民票など(事実婚の場合)
情報通知書は必要書類の提出後、おおよそ2〜3週間後に交付されます。
分割割合を決定
情報通知書の取得後、合意分割を行う場合は夫婦間で分割割合を決めます。厚生年金の記録の50%までであれば、自由に設定可能です。
どうしても合意分割をしたいのに、話がまとまらなかったり配偶者が応じてくれなかったりする場合は、家庭裁判所に対して分割割合を決める審判、または調停の申し立てをすることもできます。
- 審判:裁判官が申立ての際に提出した書類などに基づいて、年金分割の割合を判断する
- 調停:裁判官と2人以上の民間から選ばれた調停委員が、話し合いによる解決をサポートする
3号分割の場合は自動的に対象期間の2分の1が分割されるため、分割割合を決める工程は不要となります。
請求手続き
合意分割であれば分割割合の合意後、3号分割であれば情報通知書を取得したあと、年金事務所で請求の手続きを行います。その際、以下の書類も必要となります。
- 標準報酬改定請求書
- 基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにすることができる書類
- 婚姻期間などを明らかにすることができる書類(戸籍謄本など)
- 請求日1ヵ月以内に交付された2人の生存を証明できる書類
- 年金分割の割合を明らかにすることができる書類
3号分割の場合は5の「年金分割の割合を明らかにすることができる書類」は不要です。もし離婚の届け出をしておらず、事実上の離婚状態にある場合は、同様の事情にあることを明らかにすることができる書類(住民票など)および双方が当該事情を認めている旨の申立書が必要となります。
なお、年金分割の請求は離婚後2年以内に行う必要があります(2026年4月1日からは5年以内に延長)。
年金分割の結果はすぐに反映されるわけではなく、実際に恩恵を受けられるのは年金の受給が始まる65歳以降であることも念頭にいれておきましょう。また、再婚すると分割も解消されると思う人もいるかもしれませんが、一度分割した年金記録は再婚後も維持されます。
おわりに
夫婦間の年金の不公平感をなくす年金分割は、第3号被保険者や見込みの厚生年金受給額が配偶者より低い方にとって、老後の生活設計を考えるうえで、一定の役割を果たす制度といえます。
ただし、自動で行われることはないため、希望する場合は申請を忘れないように。
もし手続きについてわからないことがあったら、年金事務所や社会保険労務士に相談してみてください。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。