ご自分で財産目録を作成しておくと、財産トラブルを防止し、遺産分割協議をスムーズに進めることが可能です。相続人の負担を軽減するためにも、生前に作成しておくことが望ましいでしょう。
この記事では、財産目録を作成するメリットや作成時の注意点、記載するべき項目についてご紹介します。遺産相続について考えている方、ご家族の方はぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- 財産目録とは、保有する資産だけではなく負債も含めて記載する必要がある
- 財産目録のメリットは、遺産分割協議を進めやすくなる、相続税の申告に役立つ、相続トラブルの回避に役立つ、遺言書作成の助けとなること
- 財産目録を作成する義務はなく、項目も特に定められていない
財産目録とは?
財産目録とは、保有する資産や負債を一覧にしたものです。建物や土地、預貯金などのプラスの財産から、負債や保証責務や税金、家賃などマイナスの財産まで調査して作成します。
財産目録は、被相続人が生前に作成する場合と、相続発生後に相続人が作成する場合があります。法律上作成の義務があるわけではありませんが、財産目録があると相続の手続きがスムーズに進むでしょう。
財産目録を作成するメリット4選
財産目録を作成することで得られるメリットは以下のとおりです。
【財産目録を作成する4つのメリット】
- 遺産分割協議を進めやすくなる
- 相続税の申告に役立つ
- 相続トラブルの回避に役立つ
- 遺言書作成の助けとなる
それぞれのメリットについて解説します。
遺産分割協議を進めやすくなる
遺産分割協議をする前に相続財産の調査をしなければなりません。資産や負債を全て把握するための調査は大きな負担です。
遺産分割協議の前に財産の全体像を把握できていないと、後から見つかった財産について再度遺産分割協議が必要になるリスクが発生します。そうすると、相続人の間で「遺産を隠したのではないか」などと疑いが生じ、トラブルに発展しかねません。
生前に財産目録を作成しておくことで、相続財産の把握が容易になり遺産分割協議や相続放棄をするか否かの判断などもスムーズに進めることができ、相続人の負担を軽減させることが可能です。
相続税の申告に役立つ
遺産相続の際、相続税がかかる場合とかからない場合があります。
相続税は、法定相続分に応じた相続金額によって税率と控除額が決まる仕組みです。相続財産を正しく把握できていないと、相続税を納付する必要があるのに誤って申告をしない事態に陥り、税務署の調査を受ける可能性があります。
相続税の課税対象となる財産、課税対象にならない財産、相続税の課税対象から差し引く財産の内、主なものは以下のとおりです。
【相続税の課税対象となる財産】
- 現金・預貯金、株式や債券等の有価証券
- 土地・建物等の不動産
- 書画骨董品、車、ゴルフ会員権等
- 死亡保険金、死亡退職金等
- 相続税の課税額への加算期間内に贈与された財産
- 相続時精算課税制度を適用して贈与された財産
【相続税の課税対象にならない財産】
- 墓地や墓石、仏壇、仏具等祭祀関係の物
- 公益事業を目的としている財産
- 条例による給付金受給の権利等
- 取得した生命保険金のうち「500万円×法定相続人数」の金額
- 個人経営の幼稚園事業で使っていた財産
- 公益事業を目的とする特定の法人に寄付した財産等
【相続税の課税対象から差し引く財産】
- 借金等の債務
- 未払金(公共料金、病院費用等)
- 葬式費用
これら多岐にわたる相続財産を整理するためにも、財産目録を作成することは非常に重要です。
参考:相続税の税率
関連記事:相続税申告は自分でできる?手続きの流れと注意点を解説
相続トラブルの回避に役立つ
生前に財産目録を作成することにより、相続人が遺産の全体像を客観的に把握することが可能です。
相続人のひとりが調査して相続財産を一覧に整理しても、他の相続人からすると「意図的に一部の財産を隠しているのでは」と疑いを抱いてしまう可能性があります。
生前に財産目録を作成しておけば、どの財産を誰に相続させるか詳細に決めることもでき、トラブルの回避に役立つでしょう。
遺言書作成の助けとなる
遺言書とは別に財産目録を作成することには、遺言書を作成する被相続人にとって、どの財産を誰に相続させるか詳細に検討できるメリットがあります。
また、財産を調査することにより被相続人が忘れていた財産が見つかるケースもあるため、より正確かつ被相続人の意思に沿った遺言書作成に役立つでしょう。
関連記事:自筆証書遺言とは?守るべき要件や正しい書き方・保管方法まで詳しく解説
財産目録作成時の注意点2つ
財産目録を作成する際の注意点は、大きく分けて以下の2つです。
【財産目録作成時の2つの注意点】
- 財産目録の書式が決まっていない
- 財産の詳細情報まで記入する
それぞれの注意点について以下で解説します。
財産目録の書式は決まっていない
財産目録を作成するための書式は特に決まっていません。手書きで作成する方法や、Excel等のツールを用いて作成する方法が考えられます。
なお、裁判所が財産目録ひな形を用意しているので、ダウンロードして作成することも可能です。
参考:相続財産目録フォーマット(Excel)
財産の詳細情報まで記入する
財産目録にはプラスの財産もマイナスの財産も記載してください。
また、財産を特定できるように詳細に記載するようにします。
財産目録を作成する際には、各財産の金額や価値を正確に記載することが大切です。特に不動産の場合、住所はもちろん不動産の評価額には相続税評価額、実際の市場価格などさまざまな種類があるので、どの評価額を利用したか記載しておくと良いでしょう。
美術品などは価格だけでなく、特定を容易にするために写真を添付しておくこともおすすめです。
財産目録に記載する項目
財産目録に記載する主な項目について詳しく説明します。
【財産目録に記載する項目】
- 預貯金・現金
- 不動産
- 有価証券
- その他の財産
- 借金・債務
預貯金・現金
預貯金の項目で記載すべきなのは、金融機関名、支店名、種別、口座番号、残高等です。同一の金融機関で複数の口座を持っている場合もあるため、金融機関の名称や支店名だけでなく、口座番号や金額なども記載してください。
残高については、現在の残高を記載しておきます。相続時には、口座のある金融機関に死亡日の日付で残高証明書を発行してもらいます。残高証明書には、被相続人がその銀行で取引しているすべての口座についての残高が記載されています。
不動産
不動産の項目に記載する主な内容は、以下のとおりです
- 物件の所在、地番
- 地目
- 家屋番号
- 種類、構造
- 面積
- 評価額
なお、相続不動産の評価額は土地と建物でそれぞれ算出します。
建物はほぼ固定資産税評価額のとおりです。
土地は路線価方式または倍率方式のどちらかで算出します。
- 路線価方式評価額=路線価×面積×補正率
- 倍率方式評価額=固定資産税評価額×倍率表の倍率
不動産評価額の詳しい記入方法は、以下を参考にしてください。
参考:国税庁|「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」の記載のしかた
有価証券
有価証券には株式・債券・手形・小切手等があり、以下の内容を記載しましょう。
- 品目(銘柄等)
- 金融機関名
- 数量
- 支店名
- 口座番号
- 単価
- 評価額
評価額には、現在の株価を記載しておきます。相続税の申告の際には、相続開始日・その月の平均価格・前々月の平均価格・前月の平均価格のうち最も低い価格が適用されます。
その他の財産
その他の財産とは、自動車、時計、指輪等の貴金属のことです。以下の項目を記載しておきましょう。
- 名称
- 数量
- 評価額
同じ物が複数ある場合は、色や製造年等を誰にでもわかるように区別して記載する必要があります。衣類や家具等のうち特別に高価でない物については、「家財一式」としてまとめて記載しても構いません。
借金・債務
財産目録には、マイナスの財産も記載する必要があります。借金の項目で記載するのは、借入先、借入残高等の情報です。
債務の項目で記すのは、債権者、債務額等です。金融機関からの借入れはもちろん、住宅ローンの未返済額も記載しておきましょう。
相続専門家に依頼することもできる
財産目録の作成をはじめ、相続を想定した手続きは複雑でご自身だけでは手が回らないこともあるかもしれません。そのような場合は、専門家に相談するのもひとつの方法です。
「セゾンの相続 相続手続きサポート」では、相続手続きに強い司法書士と提携しているため、信頼できる専門家との無料相談や最適なプランの提案を受けることが可能です。スムーズに相続手続きを行うためにも、まずはお気軽にご相談ください。
おわりに
財産目録を作成しておくと、相続が発生した際に相続人の負担を軽減し、遺産分割協議もスムーズに進めることができます。相続財産について詳細に記しておくことで、相続人間のトラブルを回避できるでしょう。財産目録を正確に、なるべく手間をかけずに作成するためには、専門家のアドバイスを受けることも大切です。