住宅ローンを抱えながら、新たな資金需要に直面する方は少なくありません。家族の成長に伴う住宅のリフォーム、事業拡大の機会、子どもの教育費など、予期せぬ大きな支出に備える必要が出てくることもあるでしょう。このような状況において、多くの方が疑問に思うのは、「住宅ローンの返済中に、さらに借入が可能かどうか」という点ではないでしょうか。
実は、住宅ローンの返済中でも、不動産担保ローンを利用できる可能性があります。
本記事では、この意外に知られていない資金調達オプション「不動産担保ローン」について、その利用条件や審査のポイント、利用時の注意点などをわかりやすく解説します。さらに、ローンをより効果的に活用するための具体的な戦略についても触れていきます。
新たな資金調達方法を模索されている方は、ぜひ本記事をご一読ください。住宅ローンと不動産担保ローンの関係性、そしてその活用方法を理解することで、より柔軟な資金計画を立てることができるはずです。
- 頭金を多く支払って不動産を購入した人、繰り上げ返済を行っている人、返済期間を短く設定している人など、具体的な条件をクリアすれば、住宅ローンが残っていても不動産担保ローンは利用可能
- 住宅ローン返済中に不動産担保ローンを利用する際に重視される審査ポイントは、返済能力と信用・担保不動産の価値・担保余力の有無など
- 住宅ローン返済中に不動産担保ローンを組む際のリスクや注意点、返済負担を増やさないための対策や計画を立てる方法
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住宅ローンが残っていても利用できる不動産担保ローン
不動産担保ローンとは、不動産を担保に入れて事業資金などを借りることです。住宅ローンが残っていると、不動産担保ローンを利用できないと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。不動産の価値が住宅ローンの残高よりも高ければ、担保に余裕があるとみなされ、不動産担保ローンを組むことが可能です。
不動産担保ローンの借入可能額は、以下の式で求められます。
不動産担保ローン借入可能額=物件の評価額×担保掛目(60~80%)-住宅ローンの残高
ここで使用される「担保掛目」とは、金融機関が物件の価値に対してどれだけ融資可能かを示す割合のことで、一般的には60~80%の範囲です。この割合が高いほど、より多くの資金を借りることが可能です。
例えば、住宅ローンの残高が3,000万円、物件の評価額が5,000万円、担保掛目を70%とすると、不動産担保ローン借入可能額は「5,000万円×70%-3,000万円=500万円」です。500万円の担保余力があるとみなされ、500万円なら融資を受けられることになります。
担保掛目は金融機関が独自に設定しますので重要なのは物件の評価額と住宅ローンの残高だといえるでしょう。
住宅ローン残高がある人でも不動産担保ローンが組める人の条件
以下の条件を満たす人は、住宅ローンが残っていても不動産担保ローンを組める可能性が高くなります。
- 頭金を多く用意して不動産を購入した人
- 住宅ローンの繰り上げ返済を行っている人
- 住宅ローンの返済期間を短く設定している人
- 購入後に不動産価格が大幅に上がった人
ただし、これらの条件を満たしていても、審査をクリアする必要があります。各金融機関の基準や個人の状況により、結果は異なる場合があります。
頭金を多く用意して不動産を購入した人
頭金が多いほど、住宅ローンの残高は少なくなります。例えば、5,000万円の物件で3,000万円の頭金を用意した場合、住宅ローンの残高は2,000万円になります。これにより、不動産担保ローンの借入可能額が増加する可能性があります。
住宅ローンの繰り上げ返済をしている人
繰り上げ返済により住宅ローンの残高が減少すると、不動産担保ローンの借入可能額が増加します。例えば、当初3,000万円の住宅ローンに対して1,000万円の繰り上げ返済を行った場合、残高は2,000万円となり、担保余力が増加します。
住宅ローンの返済期間を短く設定している人
短い返済期間では月々の返済額は大きくなりますが、住宅ローンの残高が早く減少します。例えば、35年ローンと20年ローンを比較すると、20年ローンの方が10年間で約1,000万円多く返済することになり、担保余力が早く増加します。
購入後に不動産価格が大幅に上がった人
物件の評価額が上昇すると、担保余力が増加します。例えば、購入時に5,000万円だった物件が8,000万円に値上がりした場合、3,000万円分の担保余力が新たに生まれる可能性があります。
住宅ローンがある場合の不動産担保ローン審査のポイント
住宅ローンが残っている場合に不動産担保ローンを組む際にはどのような点が審査されるのか、以下3つの観点で解説します。
- 申し込み者の返済能力と信用
- 担保にする不動産の価値
- 担保余力の有無
申し込み者の返済能力と信用
住宅ローンが残っている場合、不動産担保ローンの審査では申し込み者の返済能力と信用を非常に重視します。例えば、以下の項目がチェックされるでしょう。
- 借入時の年齢と完済時の年齢
- 年収
- 雇用先
- 勤続年数
- 信用情報
- 連帯保証人
借入時の年齢と完済時の年齢
住宅ローンの審査基準には、借入時の年齢や完済時の年齢が設定されており、完済時の年齢は満80歳未満と設定している金融機関が少なくありません。返済までの期間の長短に関わってくる項目です。
年収や雇用先
年収については、たとえ前年度の年収が高くても一過性とみなされれば高く評価されません。一般社員であっても雇用先が大手企業や公務員など安定した年収が見込まれる方が、創業間もないベンチャー企業の役員や個人事業主に比べて審査で優遇される傾向があります。
勤続年数
勤続年数が短いと転職を繰り返すのではないかという懸念が生じかねません。年収が安定しないと見なされれば、評価は下がってしまうでしょう。
信用情報
ローン審査にあたって、金融機関は信用情報機関に信用情報を照会します。信用情報機関とは、個人のクレジットやローンの利用履歴などの情報を収集・管理している機関です。 例えば、携帯電話の分割払いを滞納すると、信用情報に傷がつき、将来住宅ローンを組む際に不利になる可能性があります。
信用情報機関には、KSC(全国銀行個人信用情報センター)、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、JICC(株式会社日本信用情報機構)があります。3ヶ月以上のローン返済の延滞や携帯端末の分割払い未払い、債務整理等があると信用情報に傷があるとみなされ、不利に働くのが一般的です。短期間に複数のクレジットカードやキャッシングへの申込みなどがあった場合にも登録される可能性があるので注意してください。
これらの信用情報機関は、個人の返済能力を客観的に評価するために重要な役割を果たしており、健全な金融システムの維持に貢献しています。逆に、きちんと返済を続けることで、信用情報が積み重なり、より良い条件でローンを組める可能性も高まります。
連帯保証人
なお、連帯保証人は原則不要とする金融機関も増えてきましたが、法人融資の場合に代表者の連帯保証を要求するローン商品もあります。各金融機関に確認しておきましょう。
担保にする不動産の価値
不動産の評価方法には、原価法・取引事例比較法・収益還元法の3つがあります。状況により適切な方法が異なるため、2つ以上の方法で評価することが多いです。
原価法
対象の不動産の再調達原価(もう一度建築・造成するといくらになるか)を割り出し、そこから減価修正(経過年数による価値の低下を割引く)を行って現在の価値を推定します。対象不動産が建物または建物と土地の場合、再調達原価の把握や減価修正を適切に行えるため有効です。
なお、対象不動産が土地の場合でも、新規造成地など再調達原価が適切に求められる場合に活用できるでしょう。建築や造成にかかる費用が大きい物件の評価が高くなる傾向があります。
取引事例比較法
対象不動産と条件が近い物件の取引事例を収集し、各取引価格から必要に応じて対象物件の事情補正や時点修正を行い、地域要因や個別的要因を含めて比較評価する方法です。売り急いだ物件や投機的な物件などは事例から排除されます。近隣地域か同一需給圏内の類似地域などで、対象不動産と似た不動産の取引が多い場合に有効です。
ただし、評価する人により内容に差が生じること、駅近くや高層マンションの上層階など、利便性や希少価値が高い物件の評価が高くなる傾向がある点に注意してください。
収益還元法
収益還元法は、賃貸不動産、賃貸以外の事業用不動産の評価に特に有効です。取引事例比較法や原価法と比べ、合理性が高くなります。ただし、過去の運用履歴など数字の信頼性が前提となるので、対象の不動産について、販売会社などからの提出資料が妥当であるか精査しなければなりません。
家賃、空室率、修繕費用など、過去の運用内容が良く多くの収益が見込める物件、対象の不動産を売却した時に多くの収益を見込める物件の評価が高くなる傾向があります。
担保余力の有無
担保余力とは、担保の目的物の評価額と担保設定額との差額のことです。不動産の評価額が借入金額を上回っている場合には、その不動産を他の借入れのための担保にできます。つまり、評価額と借入金額との差額が担保余力だと考えてください。
住宅ローンの残高が3,000万円あり、担保評価額が5,000万円、担保掛目が70%の場合、担保余力は「5,000万円×70%−3,000万円=500万円」です。そのため、500万円までなら融資可能といえるでしょう。
住宅ローン返済中に不動産担保ローンを利用する際の注意事項
ローンには審査がありますので、必ず借入可能とはいえませんが、住宅ローン返済中でも条件を満たせば不動産担保ローンを組むことは可能です。ただし、以下の点に注意してください。
- 住宅ローンが残っているとNGな金融機関が多い
- 金利が高くなる傾向がある
- 借入上限額が低い傾向がある
- 返済の負担が増える
住宅ローンが残っているとNGな金融機関が多い
すべての金融機関が、住宅ローンが残っていてもOKという商品を用意しているわけではありません。そのため、住宅ローンが残っていても不動産担保ローンが組める金融機関の選択肢は限られてきます。
また、住宅ローンを他の金融機関で組んでいないことが条件であることも多く、実質的に取り扱いがないといえるかもしれません。比較的規模の小さな金融機関で取り扱っていることが多いようです。
とくに、メガバンク系などでは、住宅ローンなどの借入れがないことを不動産担保ローンを組む条件としているケースが多いので、住宅ローンが残っていると難しいのが実情です。
金利が高くなる傾向がある
不動産担保ローンの一般的な金利は、住宅ローンの金利と比べて高くなる傾向があります。仮に15%近い金利が設定され、返済が長期間続くとキャッシュフローを悪化させかねません。
住宅ローンが残っている状況で不動産担保ローンを組む場合、1番抵当は住宅ローンを組んだ金融機関が設定しているため、不動産担保ローンを組む金融機関は回収できないリスクを負う可能性があります。このリスクを回避するために、金利が高くなる傾向があるといえるでしょう。
借入上限額が低い傾向がある
住宅ローン返済中に不動産担保ローンを組む場合、借入上限額は物件の評価額より担保余力に左右されるため、借入上限額が低くなる傾向があります。
また、一番抵当ではないことから金融機関がリスクを負うため、借入金額の減額という形でリスクを回避するケースもあります。
こうした事情から、希望どおりの金額を借入できる可能性は低いでしょう。担保余力を大幅に超えた額を希望した場合、そもそも資金計画や返済計画が不適切であると判断され、審査に落ちる可能性もあります。
なお、年収に対する年間返済額の割合である返済負担率は20~25%までが目安とされ、35%を超えると返済は厳しいと判断される傾向にある点にも注意してください。
返済の負担が増える
住宅ローン返済中に不動産担保ローンを組むと、住宅ローンを月々返済しながら、新たな借入に対する返済を行うことになりますので、当然ながら月々の返済負担額が大きくなります。
返済期間を長期に設定し、月々の返済額を抑えることは可能ですが、利息を多く支払うことになり、返済総額が大きくなるため、安易に考えるべきではありません。
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おわりに
この記事では、住宅ローンを返済中でも不動産担保ローンを利用できる可能性について詳しく説明しました。以下に重要なポイントをまとめます。
不動産担保ローンの可能性
住宅ローンが残っている場合でも、条件を満たせば不動産担保ローンを組めることがあります。ただし、金融機関ごとに基準が異なるため、複数の金融機関に相談することをお勧めします。
審査時の重要ポイント
返済能力、信用情報、担保不動産の価値、そして担保余力が審査の重要なポイントとなります。特に、安定した収入を確保し、良好な信用情報を維持することが重要です。
注意すべき点
- 金利が住宅ローンより高くなることが多いです。
- 借入上限額が低くなる可能性があります。
- 毎月の返済負担が増える可能性があります。
慎重な検討の必要性
不動産担保ローンは有効な資金調達手段ですが、長期的な返済計画が必要です。金利の上昇リスクや将来の収入・支出の変動を考慮に入れ、慎重に判断しましょう。
専門家への相談
不動産担保ローンを検討する際には、ファイナンシャルプランナーや税理士など専門家に相談することをお勧めします。それぞれの状況に応じた最適な選択ができるよう、専門家のアドバイスを受けると良いでしょう。
代替手段の検討
不動産担保ローン以外にも、リフォームローンや目的別ローンなど、状況に応じた資金調達方法があります。これらの選択肢も併せて考慮し、最適な方法を選びましょう。
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