介護保険サービスを受けるためには、お住まいの自治体に要介護認定を申請する必要があります。
しかし「要介護認定についてよくわからない」「申請するタイミングは?」など、疑問に思う方もいるでしょう。
そこで本記事では、要介護認定を申請する適切なタイミングや申請から認定までの流れを解説します。
要介護認定について知りたい方や、これから申請をしたい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- 要介護認定とは、介護サービスの必要度を客観的に判断し、数値化したもの。要支援1・2と要介護1〜5の7段階となっており、日常生活にどのくらい介助を必要とするかで決まる。
- 要介護認定を受けるためには、自治体へ申請する必要がある。申請は、本人や家族だけでなく、関係機関による代行申請も可能。申請してから認定結果がおりるまでに、1ヵ月以上かかることもあるため、介護サービスを利用する予定のある方は、早めに手続きを進めることが大切。
- 申請後、認定の結果通知と、要介護度や認定期間などが記載された介護保険被保険者証が届くと、介護サービスの利用を開始することができる。
要介護認定とはどういうもの?
はじめに、要介護認定の種類や申請すべきタイミングについて解説します。
介護サービスを受けるために必要な「要介護認定」
介護保険のサービスを利用するには 要介護認定の申請手続きが必要です。
要介護認定とは、介護サービスの必要度を客観的に判断し、数値化したものです。要介護認定により、 介護が必要な状態であることが証明されると、介護保険のサービスが利用できます。
要介護度は、日常生活の中でどれくらい介助を必要とするかを表します。そのため、本人の病気の重さと要介護度の高さは必ずしも一致しない場合があることに注意が必要です。
要介護認定の種類
要介護認定は「要支援」「要介護」の2種類があります。
ここでは、要支援と要介護の状態について説明します。
要支援状態
要支援状態とは、基本的にひとりで生活できるものの、部分的に介助を必要とする状態のことです。要介護状態の前段階であり、介助の必要度はそれほど高くありません。
例えば、立ち上がりや歩行などの基本動作は自分で行えても、家事(掃除や調理)に部分的な支援が必要な場合は、要支援状態に当たります。
介護保険では、要支援状態と認定された方は「介護予防サービス」の利用が可能です。介護予防サービスは、この先転倒や病気などによって介護が必要な状態とならないように「介護予防」をして、身体の機能を維持させることを目的としています。
要介護状態
要介護状態とは基本動作がひとりでできず、支援や介護を要する状態です。身体機能だけではなく、思考力や理解力などの認知機能が低下している場合もあります。周りからの支援なしでは、自立した生活を送ることが難しいため、介護サービスや環境整備、家族の協力などが必要です。
要介護の認定を受けた方は、これ以上悪化しないようにできる限り心身の状態を維持することを目的として、介護サービスが利用できます。
要介護認定を申請するタイミングは?
要介護認定の申請には、決まったタイミングはありません。日常生活で介助が必要になったり、心配事が増えてきたりしたタイミングで申請しましょう。
具体的な申請のタイミングは、以下のような状態のときです。
- 認知症が進行し、家族の生活に支障が出てきた
- 加齢に伴い、日常生活で介助が必要な場面が増えた
- 病気やけがで入院し、退院後の生活が不安である
入院中は介護サービスを利用できませんが、要介護認定の申請手続きは可能です。退院後の生活に不安を感じている場合は、入院中に申請をしておきましょう。
ただし、自治体によっては入院中の申請に制限を設けている場合もあります。
要介護認定の申請から認定までの流れ
次に、要介護認定の申請から認定までの流れを確認しましょう。
要介護認定の申請
要介護認定を受けるには、お住まいの自治体の窓口に申請が必要です。申請手続きは、本人が行うとスムーズですが、さまざまな事情で本人が申請に行けない場合は、家族や親族が代わりに申請できます。また、家族の協力が得られない場合には、以下の関係機関による代行申請も可能です。
- 地域包括支援センター
- 居宅介護支援事業所
- 介護保険施設(入所している場合)
- 病院(入院している場合)
地域包括支援センターや居宅介護支援事業所は、地域にある介護の相談窓口です。申請手続きのことで困ったときには、相談してみましょう。
また、病院には医療ソーシャルワーカーという専門の相談員がおり、退院後の生活に向けた相談にのってくれます。介護サービスが必要であれば、代行で申請してくれる場合があるため、確認してみましょう。
なお、要介護認定にかかる費用は、すべて公費負担のため、申請者側の負担はありません。
申請書を提出する
要介護認定の申請では、以下の書類が必要です。
- 介護保険申請書(窓口で記載もしくはホームページでダウンロードも可能)
- 介護保険被保険者証(65歳以上の方)
- 健康保険証(64歳以下の方)
- マイナンバーのわかるもの
- 主治医の氏名がわかるもの
65 歳以上の方は介護保険被保険者証が自宅に届いているため、申請時に持参します。紛失している場合でも申請できるので、窓口に申し出ましょう。
また、申請書には主治医の氏名を記載する項目があるため、あらかじめかかりつけの病院と主治医の氏名がわかるようにしておくと、スムーズに手続きできます。
主治医には、自治体から「主治医意見書」という書類の作成を依頼し、本人の心身状態に関する情報をもらいます。主治医がいない場合は、自治体の指定医の診察が必要です。
訪問調査
申請が完了すると、訪問調査の日程調整のため、自治体から連絡があります。
訪問調査は、本人の心身状況や実際に介護が必要なシーンなどを確認するために行うものです。
訪問調査の当日は、市区町村の職員もしくは委託された調査員が、自宅や入院先を訪問します。調査では、基本調査と特記事項の合わせて74項目の聞き取りが行われます。
具体的には、以下のような内容です。
身体機能および起居動作
身体機能および起居動作では、基本動作に障害があるかどうかをチェックします。
- 麻痺の有無
- 関節などの動きの制限
- 寝返り・起き上がり・立位・歩行の自立度
- 視力・聴力低下の有無
それぞれの項目で、本人の能力や介助量が細かく確認されます。例えば起き上がりの項目では「つかまらないでできる」「何かにつかまればできる」「できない」の3段階となっており、実際の状態が反映される調査内容になっています。
生活機能
生活機能では、 自立して日常生活を問題なく送れるかをチェックします。
- 移乗・移動動作の自立度
- 食事動作の自立度
- 排泄・排便状況
- 歯磨き・洗顔・整髪・衣服着脱の自立度
精神・行動障害
精神・行動障害では、直近1ヵ月の間に精神面による不適切な行動がなかったかをチェックします。
- もの忘れの程度
- 被害妄想・作り話の程度
- 昼夜逆転の有無
- 同じ話を何度も繰り返す
- 突然大声を出す、物を破壊するなどの行動があるか
認知機能
認知機能では、認知機能が保たれているかをチェックします。
- 意思伝達の可否
- 生年月日・年齢・名前を言えるか
- 今の季節やいまいる場所を理解しているか
- 短期記憶に問題がないか(今日の日付を言えるか)
- 徘徊の有無
社会生活への適応能力
社会生活への適応能力では、日常生活の管理面を主にチェックします。
- 服薬管理や金銭管理の自立度
- 集団行動の可否
- 買い物の可否
- 簡単な調理の可否
過去14日間に受けた特別な医療
過去14日間に受けた特別な医療(医師または医師の指示のもとでの看護師などによって行われる医療行為)の有無をチェックします。
具体的には、以下の項目について確認されます。
- 点滴の管理
- 中心静脈栄養
- 透析
- ストーマ(人工肛門)の処置
- 酸素療法
- レスピレーター(人工呼吸器)
- 気管切開の処置
- 疼痛の看護
- 経管栄養
- モニター測定
- 褥瘡の処置
- カテーテル
一次判定
要介護認定の一次判定では、客観的な判断をするために、コンピューターシステムを使用します。
厚生労働省が作成した要介護認定ソフトを使用し「どのくらい介護に時間を要するのか(要介護認定等基準時間)」を分析します。
要介護認定等基準時間とは
要介護認定における要介護度の判定は、厚生労働省の定めた「要介護認定等基準時間」により判断しています。
要介護認定等基準時間とは、その方の「能力」、「介助の方法」、「障害や現象の有無」から統計データに基づき推計された介護に要する時間(介護の手間)を「分」という単位で表示したものです。
これらの介護にかかる時間を以下の表に当てはめて、要支援1〜要介護5の要介護度を検討します。
要支援1 | 25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要支援2要介護1 | 32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護2 | 50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護3 | 70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護4 | 90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護5 | 110分以上又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護認定等基準時間は、各行為の介護の手間がどの程度かかっているのかを示すもので、家庭での介護時間を算出するものではありません。
ここで算出された要介護認定等基準時間と認知症加算を加えて判定したものが、一次判定の結果となります。
二次判定
二次判定では「介護認定審査会」で要介護・要支援の認定を判定します。
介護認定審査会とは、福祉・保健・医療の学識経験者により構成される審査会です。この審査会では、一次判定の結果と主治医意見書の内容をもとに、申請者の要介護度を決定します。
要介護認定の通知
二次判定が終了次第、自治体が要介護認定を行い、結果通知書と介護保険被保険者証を自宅へ郵送します。申請から認定までの期間は原則30日です。
なお、希望していた要介護度が判定されなかったときや、想定よりも低く判定された場合の救済制度として、不服申し立て(審査請求)があります。
介護サービスを受ける方法
要介護認定が下りて介護サービスを受けたい場合は、ケアマネジャーの選定や介護サービス事業者との契約が必要です。
ここでは、自宅と介護施設で介護サービスを受ける場合の手続き方法をそれぞれ解説します。
自宅で介護サービスを受ける場合
まずは、自宅で介護サービスを受ける場合の流れについて説明します。
居宅介護支援事業者と担当のケアマネジャーを決定
自宅でサービスを利用する場合は、まずは、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらう必要があります。
ケアマネジャーは「居宅介護支援事業所」「地域包括支援センター」に在籍しています。
「要介護1〜5」の方は、居宅介護支援事業所に所属している「居宅ケアマネジャー」が担当になります。ケアマネジャーを探す場合は、地域包括支援センターに相談して紹介してもらうと良いでしょう。または、知人からの紹介や、ご自分で地域の居宅介護支援事業所などを検索して探すこともできます。
「要支援1・2」の認定の方は、地域包括支援センターのケアマネジャーに担当してもらうことになりますので、最寄りの地域包括支援センターへ相談してください。
ケアプランの作成
担当のケアマネジャーが決まったら、面談をしてケアプランを作成します。ケアプランとは「どの介護サービスをどのような目的で、どのくらい使うか」をまとめたものです。
利用したい介護サービスがあるのであれば、ケアマネジャーとの面談の際に伝えて、ケアプランに記載してもらいましょう。介護保険では、ケアプランに記載されていない介護サービスは利用できないため、本人や家族の要望は必ずケアマネジャーに伝えましょう。
サービスの利用開始
ケアプランの作成後は、ヘルパーやデイサービスなどの介護サービス事業者と契約を結ぶと、実際にサービス開始となります。
契約時には、サービス内容や費用、注意事項など気になる点を確認しておきましょう。
介護施設でサービスを受ける場合
続いて、介護施設に入所してサービスを受ける場合の流れを解説します。
介護施設を選択
施設でサービスを受ける場合には、まずはご自分で介護施設を探す必要があります。
介護施設を探す際は、必ず見学をしてサービス内容やかかる費用を確認しましょう。確認せずに入所すると「イメージと違った」「希望していたサービスが受けられなかった」といった事態になりかねません。
可能であれば、体験利用なども行い自分の希望するサービスを受けられるかなども確認すると良いでしょう。
なお、要介護度によっては、入所できない施設もあるため、入所条件も併せて確認しましょう。
ケアプランの作成
介護施設に入所する場合は、施設のケアマネジャーがケアプランを作成します。
施設に入所した場合も、ケアプランに沿ってサービスが提供されるため、本人や家族の要望はしっかり伝えておきましょう。
入居してサービスの利用開始
介護施設でサービスを受ける場合は、施設に入居した日からサービスが開始されます。
要介護認定の注意点
要介護認定を受けた後の注意点について確認しましょう。
有効期限を確認すること
要介護認定には有効期限があり、定期的な更新が必要です。有効期限は、新規認定と更新認定によって以下のように異なります。
- 新規申請 認定日から原則6ヵ月
- 更新申請 認定日から原則1年間
要介護認定日は、申請が受理された日にさかのぼります。なお、有効期限は介護保険被保険者証に記載されているため、必ず確認しておきましょう。原則の有効期限よりも短期・長期の認定がされている場合もあります。
更新手続きを忘れない
要介護認定の更新手続きは、有効期限の60日前から行えます。
すでに介護サービスを利用している方であれば、担当のケアマネジャーが代行して手続きを行ってくれることもあります。
更新申請後の流れは、新規申請と同様に、再度、認定調査を受けることになります。
また、更新結果も同様に原則30日以内で届きます。
注意点として、有効期限が過ぎて利用した介護サービスの料金は、介護保険の対象外となるため全額自己負担となります。継続して介護サービスを利用したい場合は、有効期限内に必ず手続きを行いましょう。
状態が悪化したら区分変更申請を
介護サービスを利用している間に、心身の状態に変化があった場合は、要介護認定の「区分変更申請」ができます。
介護にかかる時間が増えて「介護サービスでは足りない」と感じた際には、担当のケアマネジャーに区分変更申請の相談をしてみましょう。
ただし、区分変更申請により、要介護度が上がった場合には利用料金が高くなるサービスもあることには注意が必要です。
相続の認知症対策は「セゾンの相続 家族信託サポート」がおすすめ
相続について考えた際、被相続人となる方が認知症となってしまった場合は預金口座が凍結されたり、不動産の売買ができなくなったりすることが問題となります。今話題の「家族信託」では、事前に子ども世代に財産の管理を委託しておくことで、本人が認知症となってしまった場合にも財産の活用が可能となります。家族信託を検討する場合には、専門家へのご相談をおすすめします。
「セゾンの相続 家族信託サポート」では、家族信託の経験が豊富な提携専門家のご紹介が可能です。初回のご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
おわりに
要介護認定を受けるためには、自治体への申請が必要です。申請後は認定調査が行われ、主治医意見書の内容をもとに要介護度を判定します。
要介護認定が下りるまでに1ヵ月以上かかる場合がありますので、介護サービスを利用したい方は、早めに手続きを進めることをおすすめします。申請は、本人や家族だけでなく地域包括支援センターなども代行できるため、身体状況の悪化や老化に伴う変化があった際には、一度相談してみましょう。