投資について調べるなかで、アクティブ運用とは何か疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。アクティブ運用とは、目安となる指数(ベンチマーク)を上回る成績を目指して運用する方法です。
本記事では、アクティブ運用の概要とメリット・デメリット、ファンドの選び方を解説します。本記事を読んでいただければ、ご自身がアクティブ運用に向いているかどうかが分かり、運用手法を判断できるでしょう。
この記事を読んでわかること
- アクティブ運用とは、日経平均株価やアメリカのS&P500などの相場の動きを示す指数以上の運用益を狙う方法
- 将来性が高く、成長が期待される対象に投資するグロース投資と、現在の企業価値に比べ、株価が割安な場合に投資するバリュー投資の2種類がある
- アクティブ運用のメリットは、市場平均よりも大きな利益が得られる可能性があることや、世界経済が良くないときでも利益が狙えること
- デメリットはコストがかかることに加え、市場平均を必ず上回るわけではないこと
- アクティブ運用のファンドを選ぶ際には、運用成績・手数料・総資産額の推移を確認すること
アクティブ運用について
投資手法を決める際に重要なのは、ご自身の投資資金や目指したい利益率に応じて運用手段を固めることです。本章では、積極的な運用であるアクティブ運用について分かりやすく解説します。
また、運用の種類はアクティブ運用以外にも、パッシブ運用やインデックス運用があります。それぞれの運用方法の違いについても押さえておきましょう。
アクティブ運用とは?
アクティブ運用とは、インデックス(指数)を上回る成績を目指す投資手法です。インデックスとは相場の動きを示す指数であり、代表的なものには日本経済新聞社が公表している日経平均株価や、アメリカのS&P500などがあります。アクティブ運用では投資のプロであるファンドマネージャーが、相場や企業を独自の視点で調査・分析した上で、組込銘柄を選びます。
アクティブ運用の代表的な投資手法は、グロース投資とバリュー投資です。グロース投資とは、将来性が高く、成長が期待される金融商品に投資する方法です。
企業利益の上昇率や売上高の成長率を見て、ファンドマネージャーが銘柄を選定します。今後、大きな株価上昇の可能性を秘めている一方で、予測が外れると大きく値下がりする恐れもあります。
バリュー投資とは現在の企業価値に比べ、株価が割安な場合に投資する方法です。PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、配当利回りなどの投資指標を基準としたファンダメンタルズ分析をもとに、割安な銘柄が選ばれます。
保有資産や業績をもとに割安さをチェックするため、バリュー投資の値下がりリスクは小さいといえます。
アクティブ運用VSパッシブ運用
パッシブ運用とは、日経平均株価や東京証券取引所の一部上場している株式銘柄を対象に算出したTOPIXなどの指数を使い、マーケット全体に連動することを目指す運用方法を指します。パッシブ運用のメリットは、低コストで運用方法の透明性がある点です。
パッシブ運用には、完全法とサンプル法の2種類があります。完全法とは、ベンチマークとなる金融商品をすべて購入する運用方法です。一方、サンプル法とは、ベンチマークとなる銘柄からピックアップして購入し、ベンチマークに沿った運用を目指す方法を指します。
パッシブ運用はベンチマークに連動することを目標にしているため、アクティブ運用と比べると大きな利益は得にくいでしょう。ただし、ベンチマークの指数と連動しているため、状況の変化などを判断しやすく、安定感が高い手法です。
アクティブ運用VSインデックス運用
インデックス運用とは、特定の指数に連動することを目指す運用方法です。日経平均株価やTOPIXなどの指数を構成する銘柄を購入し、運用します。
インデックス運用のメリットは、銘柄調査・分析の手間がかからないため、ファンドマネージャーの手間が削減され、コストが抑えられる点です。また、指数と連動しているため、元になった指数を見るだけで値動きが分かることもメリットのひとつです。
インデックス運用で使用されている指数は、市場全体の動きを数値化しているものであり、穏やかな値動きをする傾向があります。そのため、アクティブ運用に比べると短期間で大きなリターンを得るのは難しいでしょう。
しかし、指数を構成する株式の銘柄を複数保有するため、幅広く分散投資ができ、大きな損失を被るリスクを軽減できます。
アクティブ運用のメリット
積極的に投資を行うアクティブ運用には、3つのメリットがあります。
- 市場平均よりも大きな利益を得られるケースがある
- 世界経済が良くないときでも利益を得られるケースがある
- 種類が多くテーマ性も高い
それぞれ順番に解説します。
市場平均よりも大きな利益を得られるケースがある
アクティブ運用はベンチマークを上回る成績を目指しているため、市場平均利回りよりも大きい利益を得られるケースがあります。パッシブ運用やインデックス運用は、数多くの銘柄で構成されている指数や市場に合わせて運用するため、価格があがる銘柄だけでなく下がる銘柄にも投資してしまいます。
アクティブ運用はベンチマーク以上の投資を目指し、成長率が高い銘柄のみ投資しているため、大きなリターンを獲得できる可能性があるのです。
インデックス運用に比べて構成する銘柄数が少なく、成長する銘柄の影響を受けやすいのもメリットのひとつです。リスクがある一方で、大きなリターンを狙える投資方法です。
世界経済が良くないときでも利益を得られるケースがある
市場の平均利回りとは関係なく運用するため、世界経済が悪化しても投資戦略が優れていれば、利益を得られる可能性があります。
ベンチマークに連動するパッシブ運用やインデックス運用では、相場下落時に指数を追いかけるように運用成績がマイナスになります。一方、アクティブ運用では、相場下落時でも投資銘柄によってはプラスになる可能性があるのです。
また、ファンドマネージャーが市場の調査・分析をして運用しているため、市場が急落した際に、ベンチマークよりも大きく下がらないように制御される可能性があります。例えば、ファンド内に保有している現金比率を引き上げて、相場下落に備えるのも対策のひとつです。
種類が多くテーマ性も高い
アクティブ運用のファンドはインデックス運用のファンドに比べると、種類が多く、投資家のニーズや好みに合わせて選択可能です。例えば、金融庁の調査によると積立NISAの株式型・資産複合型投資信託3,088本のうち、アクティブ運用の投資信託は2,707本、インデックス運用の投資信託は381本でした。
具体的には脱炭素や健康、ブロックチェーン、宇宙など、さまざまな分野から投資対象を絞るテーマ型と呼ばれるファンドがあります。
アクティブ運用されているファンドの方針は割安銘柄のみ、新興国のみなどそれぞれ異なります。例えば「ダイワ・グローバルIoT関連株ファンド-AI新時代-」は、世界のIoT関連企業の株式に投資するファンドです。
また「SBIグローバルESGバランス・ファンド」は、ロンバー・オディエが運用するESGファンドに投資します。ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの頭文字をとった言葉です。近年この3つの観点が、企業の長期的な成長において重要であるとされています。
アクティブ運用のデメリット
アクティブ運用には市場平均よりも大きな利益が取れる一方で、以下のデメリットがあります。
- コストがかかる
- ファンドマネージャーの手腕が試される
- 市場平均を上回る確証はない
- 商品の仕組みが複雑な場合がある
それぞれのデメリットについて解説します。
コストがかかる
アクティブ運用は、インデックス運用やパッシブ運用に比べるとコストがかかるデメリットがあります。市場平均を上回る運用成果を目指すため、ファンドマネージャーによる市場の情報収集や分析に加えて、積極的に銘柄を入れ替える手数料がかかるためです。
投資信託を購入する際は、販売(買い付け)手数料や信託報酬などがかかります。インデックス運用のファンドでは、販売手数料無料のノーロードとして売り出す商品も少なくありません。一方で、アクティブ運用のファンドは販売手数料が3%を超える場合もあります。
また、ファンドを保有する期間は、投資信託を運用管理する手数料である信託報酬を払わなければなりません。この信託報酬は、保有している資産から毎日差し引かれます。
代表的なインデックスファンド・アクティブファンドの信託報酬は以下のとおりです。
銘柄 | 種類 | 信託報酬(年) |
eMAXIS SLim 全世界株式(オール・カントリー) | インデックス | 0.1133% |
eMAXIS SLim 米国株式(S&P500) | インデックス | 0.09240% |
アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 | アクティブ | 1.727% |
ベトナム・ロータス・ファンド | アクティブ | 1.97% |
インデックス運用のファンドの信託報酬は年間0.2%程度に低く抑えられているものが一般的ですが、アクティブ運用のファンドは1~2%程かかることがあります。
ファンドマネージャーの手腕が試される
アクティブ運用はファンドマネージャーが市場分析した結果をもとに銘柄を選び、リスクヘッジや売買タイミングなどの管理を行うため、担当者の手腕によって運用成績が左右されます。ファンドを選ぶ際は、投資したいファンドを担当しているファンドマネージャーが運用している他のファンドの成績を確認しましょう。
注意すべき点は、ファンドやファンドマネージャーの過去の実績を過信しないことです。過去に相場が大きく変動した際に良いパフォーマンスを出していたとしても、今回も同様に良い実績を出すとは限りません。できる限り、現在運用している他のファンドの成績を確認しましょう。
市場平均を上回る確証はない
どんな凄腕のファンドマネージャーでも、投資は100%勝てるものではありません。アクティブ運用はあくまで市場平均以上の利益を目標にしているだけであり、上回る確証はありません。例えば「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」の為替ヘッジがないBコースは、2021年に42.9%の年間収益率に達しているのに対し、2022年には-18.9%に留まりました。
銘柄を積極的に入れ替え、高いリターンを求めると価格変動のリスクも大きく、負ける恐れがあると理解しておきましょう。
商品の仕組みが複雑な場合がある
アクティブ運用されているファンドのうち、仕組みが複雑で分かりにくい商品があります。さまざまな国や商品に投資をしているため、為替リスクやレバレッジなど商品が複雑になるほど、どのようなリスクが含まれているのか判断が難しくなるでしょう。
例えば、通貨選択型のアクティブファンドは、投資対象の株式や投資信託以外に自ら選択した通貨の金利差や為替取引で利益を上げる投資です。正しくシステムを理解していなければ、為替リスクを考慮せずにハイリスクな取引をする恐れがあります。
アクティブ運用のファンドを選ぶ際のコツについて
アクティブ運用を投資信託で始めようと思っていても、ファンドの選び方を誤ってしまうと、ご自身が目標とした利益を獲得できない恐れがあります。本章では、覚えておきたいアクティブ運用ファンドを選ぶ際のコツを3つ解説します。
- 運用成績をチェック
- 手数料をチェック
- 純資産総額の推移をチェック
それぞれのポイントを解説します。
運用成績をチェック
アクティブ運用のファンドを選ぶ際は、必ず運用成績を確認しましょう。ファンドマネージャーの実績や運用リスクに見合ったリターンを得ているのかなどを細かく分析する必要があります。
運用実績は、投資信託商品の公式ホームページに掲載されている運用レポートや、交付目論見書で確認可能です。この書類には、基準価額推移や価格が変動した要因などが記載されています。直近の動きだけでなく、長期の運用成績を確認すれば、そのファンドに投資して良いかの判断要因の1つになります。
また、運用リスクに見合うリターンを得たかどうかを数値化した「シャープレシオ」も運用成績を図る重要な指標のひとつです。
手数料をチェック
前述のとおりアクティブ運用は、手数料が高く設定されている傾向があります。目論見書で購入手数料や信託報酬、監査費用などの手数料をチェックし、他の商品と比較しましょう。
必ずしも手数料の高いファンドが悪いファンドではありません。その商品に投資する価値があるのか、過去のリターン比率や投資対象の伸び率をチェックし、手数料以上の利益が見込めるか考えましょう。
純資産総額の推移をチェック
純資産総額は、ファンドが保有する資産の合計金額を指します。純資産総額が増加して推移していれば、多くの投資家が注目している人気のあるファンドだと判断可能です。
純資産総額が少な過ぎると繰り上げ償還され、運用目標を達しない恐れがあるため、長期保有には適していないといえるでしょう。
また、総資産が少ない場合は、運用効率が低下するケースも珍しくありません。運用資金が大きくなるほど、1単位あたりのコストが軽減する規模によるメリットが働かないためです。ファンドによって異なりますが、投資信託の運用効率は運用レポートや証券会社の公式ホームページで確認可能です。
投資におすすめのネット証券2選
気軽に投資を始めたい場合は、手数料が低くスピーディに始められるネット証券での口座開設をおすすめします。本章では、おすすめのネット証券会社を2つ紹介します。
- SBI証券
- auカブコム証券
それぞれの証券会社について詳しく説明します。
SBI証券
SBI証券は、2023年度に国内株式個人取引シェアNo.1を獲得した証券会社です。SBIグループとして、国内で初めて1,000万口座を突破しました。
国内株式の現物取引であれば2種類の手数料プランを活用すると、業界最安値の手数料で取引可能です。1注文当たり手数料がかかるスタンダードプランと、1日の注文数によって手数料がかかるアクティブプランがあり、ご自身の投資スタイルによって使い分けられます。
また、クレジットカードでの積立を設定すると、自動的に決済が可能です。TポイントやPontaポイントを投資信託の購入代金に利用できるサービスもあります。
機能性に優れたスマホアプリや、資産管理ツール「My資産」など、使用しやすいシステムが多く導入されています。
auカブコム証券
auカブコム証券は、三菱UFJフィナンシャルグループとKDDIが手を組んで運用する、手数料が安い証券会社です。auユーザーやKDDI株主は、販売手数料が割引されます。
例えば株主の場合、現物株式手数料が最大15%割引になります。電話相談やAIチャットなどの投資家サポートが充実しているため、初心者でも安心して口座開設できるでしょう。
2023年3月に取引アプリがアップデートされ、以前よりも使いやすくなりました。シンプルなデザインに一新され、総資産や投資成績も一目見ただけで分かるビジュアルに変わりました。
また、「プチ株」として取引単位の1単元を満たさない単元未満株を取引できます。一般的な株式投資では、100株1単元からの売買となるため数万〜数十万円の資金が必要ですが、プチ株であれば数百〜数千円で取引を始められます。
おわりに
アクティブ運用は、運用のプロであるファンドマネージャーがベンチマーク以上の運用益を狙う投資手法です。
世界経済が悪い状況でも利益が得られる可能性があることに加え、ファンドの種類が多く、テーマ性も高いというメリットがあります。しかし、取引を繰り返す分コストがかかる点に注意が必要です。
また、ファンドマネージャーの手腕によって成績が変動すると考えましょう。アクティブ運用のファンドを選ぶ際は、運用成績や手数料、総資産額の推移をチェックして、ご自身の資産を預けても大丈夫かを確認する必要があります。