「人生100年時代」日本人の平均寿命は年々伸び、私たちはかつてないほどの長い時間を老後として過ごすようになりました。一方で、核家族化や生涯未婚率の上昇といった社会構造の変化により、頼れる親族が近くにいない、いわゆる「おひとりさま」が増えています。
「おひとりさま」が老後を心穏やかにそして安心して過ごすためには、相続対策はもちろんのこと身元保証や生活支援など、幅広い視点からの備えが不可欠となります。
この記事では、60代からのライフステージの変化を見据え、皆さまが直面するお困りごとやお悩みごと、それを解決するための具体的な対策についてお伝えします。特に、遺言の重要性と身元保証会社の選び方について、後悔のない選択をしていただくために必要なことを、おひとりさま支援の専門家でもある行政書士が解説します。
60代からのライフイベントとお悩み、考えるべきこと

老後のライフイベントを考え始める年齢として、60代は多くの方にとって節目となる年代だと思います。最近は還暦を迎えても若々しい方が多く、人生の終盤に向けた対策を始めることに違和感のある方もいらっしゃるかもしれません。しかし、定年退職や子どもの独立などをきっかけに、現在の生活を見直し、これからの生き方を意識される方も多いです。
長年勤めた会社を定年退職した後も再雇用や新天地で仕事を続ける方、趣味を楽しんだり、友人との時間を大切に過ごされる方もいます。また、子育てが終わったところで、親の介護が必要になり、新たな責任を担う方も少なくありません。
60代は自由な時間が増える方が多い一方で、収入や社会とのつながりの減少に不安を覚える方も少なくありません。これまで一所懸命に仕事をしてこられた方は、「やりたいことをやれ」といわれても何をして良いかわからないという方もいるので、そういう方には趣味やボランティア活動をおすすめすることもあります。
ただ、私の知る限りでは、やりたいことはしっかり描いているけれども、お金や健康、あるいは家族が抱える問題が気がかりで、踏み出せないという方が多いように思います。
人生の悩みの多くは、「お金のこと」「健康のこと」「家族のこと」に分けられるといいます。60代からの悩みもまさにこの3つであり、考えなければならないことでもあります。どのようなことで悩む方が多いのか、具体例を挙げてみましょう。
お金のこと
まず気になるのは「生活費」という方が大半です。「老後2,000万問題」が物議をかもしましたが、実際には必要な資金は5,000万円ともいわれており、生活する場所やスタイルによっても開きがあります。
特に金銭面で予想しづらいのが、病院への入院、診察代や薬代などの「医療費」、介護施設に入居する場合の利用料や在宅で介護サービスを利用する場合の費用などの「介護費」です。人生100年時代という言葉のとおり、介護施設に入ってから亡くなるまでの間、長く入居することになったらお金が足りなくなるかもしれない、という考えが多くの人を不安にさせるのです。
とはいえ、いきいきと生活して健康寿命を延ばすことは医療費を減らすことにもつながりますし、さまざまな価格帯で自分らしい生活を叶えてくれる介護施設もあります。
ご自分の資産を棚卸しして、これからの生活資金の計算をしたり、介護施設についてよく知ることが、不安を和らげることにつながります。
健康のこと
次に、健康も悩ましい問題です。60代の時点では元気な方も多く、ご自身が悩みの渦中にいる方ばかりではありませんが、親の介護や親を見送ったりする中で、病気になったときの生活を助けてくれる方の存在、どこまで治療するかを決断することの大変さなどを意識することになります。
ご家族やご自身の入院を経験して、入院生活をサポートしてくれる方や、身元保証人が必要になることを知ったという方も多いです。
また、長生きするほど、認知症についても考える必要があります。認知症は誰にでも起こりうる病気です。認知症になると、判断能力が低下し、財産管理や契約行為が困難になる場合があります。成年後見制度の利用など、元気なうちから備えておくことが大切です。
家族のこと
家族関係の悩みは、お金や健康とも関連することが多く、3つの悩みの中でも特に頭を悩ませる方が多いことでしょう。
- 子どもとは仲が悪くほぼ没交渉である。
- 子どもがおらず、夫婦二人で生活している。一人残された後の生活が不安。
- 配偶者の介護をしており、自分が先に死んでしまったらと思うと夜も眠れない。
- 親戚付き合いがなく、誰にも頼れない。反対に、金銭面などで頼られたくない。
- 親の介護を巡り、兄弟姉妹と仲違いをした。
- 独身でひとりっ子。親を見送ったらひとりぼっちになる。自分より若い親戚がいない。
他にもさまざまな悩みがあると思いますが、これらに共通するのは、「おひとりさま」になる可能性が高いということと、健康状態が悪化したときに家族や親族に助けを求めることが難しくなるということです。
では、どのように対策すれば良いのでしょうか?今回は、同じようなお悩みを抱えていたAさんのご相談事例をもとに、一緒に考えていきましょう。
おひとりさまの準備~相続対策から生涯の対策へ~

【相談事例】Aさんの場合
Aさん(65歳)は、定年退職を機に、老後の生活に漠然とした不安を感じ始めました。Aさんは妻と二人で暮らしており、子どもはいません。妻はひとりっ子で、Aさんの兄弟も遠方に住んでいるため、夫婦そろって身近に頼れる親族がいない状況です。
現在、Aさんは健康ですが、10年前には父親の介護を経験しました。Aさんの父は80歳で認知症になり、90歳で亡くなるまで、Aさんが介護を続けていました。
父が認知症になるまでは健康そのものであり、終活といえるようなことは何もしていませんでした。85歳のときに介護施設に入居した際、通帳の印鑑がわからず、本人以外では印鑑の変更もできなかったため、口座からお金を引き出すことができませんでした。その結果、施設の利用料はAさんが自らの貯蓄から支払っていました。
さらに、Aさんの母が急に亡くなったことでAさんは父の介護を一人で担うことになりましたが、遠方に住む兄弟が手伝ってくれることはありませんでした。それにもかかわらず、父の相続の場面では、その兄弟も遺産の分配を主張してきたのです。
最近では、妻(65歳)も介護疲れやストレスの影響で寝込みがちになりAさんはで父の死後の手続きに追われながら妻の通院に付き添う日々に、強い疲れと不安を感じるようになっています。
【Aさんに提案する対策】
Aさんには、まず、亡くなったお父様の相続手続きをご依頼いただくことをおすすめしました。Aさんの兄弟も法定相続人であるため、遺産を相続する権利は持っています。お父様の財産を整理し、法定相続人としての相続の権利を尊重しながら話し合いを進めた結果、Aさんが長年担ってきた介護について兄弟も理解を示し、争うこと無く遺産が分割されました。
しかし、相続手続きが無事に終わっても、その大変さはAさんの心に色濃く残りました。さらに、Aさん夫妻には子供がいないため、将来Aさんが亡くなった際には、妻だけでなくAさんの兄弟も法定相続人となります。
自分でさえ苦労した手続きを、今度は妻がAさんの兄弟と交渉しながら進めていくのは大きな負担になると感じたAさんは、自分の財産はすべて妻に遺したいと考えるようになりました。
そこで、まずは遺言書の作成をおすすめしました。「どちらが先に亡くなるかわからないから」という理由で、奥様も一緒に遺言書を作成され、お互いに全ての財産を遺す内容とあわせて、お二人とも亡くなった後の財産の行き先についても記載しました。最終的には、介護を支援する団体への寄附を選ばれました。
遺言書の作成を通じて、Aさんは自分が亡くなった後のことを具体的にイメージできるようになりました。
そして、財産の相続だけでなく、葬儀や納骨、遺品の整理などの手続きが必要になることもお伝えし、これらを専門家に依頼できる「死後事務委任契約」も締結されました。
さらに、万が一認知症になった場合に備えて、財産管理を任せるための「任意後見契約」も締結し、あわせて入院や高齢者施設入居時の身元保証、見守り、日常生活の支援など、生涯にわたるサポートが受けられる「身元保証会社」との契約も検討し始めています。
Aさんは、相続手続きをきっかけに、これからの人生をどのように歩んでいくかを見つめ直し、生涯にわたる包括的な備えへと視野を広げていきました。
身元保証会社の選び方~信頼できるパートナーを見つけるために~

健康に不安があって入院が必要な方や、すぐに施設に入居する必要がある方で、身元保証人を頼める人が思いつかない場合は、身元保証会社を決めることが喫緊の課題になります。
生涯関わることになるパートナーとも呼ぶべき会社ですから、自分の迎えたい最期について考え、イメージを膨らませ、その会社で本当に実現できるかを見極めることが大切です。
身元保証会社は、おひとりさまにとって、老後の安心を支える重要なパートナーとなり得ます。しかし、数多くの身元保証会社の中から、自分に合った会社を選ぶことは容易ではありません。選び方のポイントとして、主に下記の4つをご紹介します。
専門家が携わっていること
弁護士、司法書士、行政書士などの専門家が関わっていることは、一回限りの身元保証ではなく、自分の判断能力が低下した後や亡くなった後の対応を依頼する上で、法的に適切な形で支援がなされるかという点で非常に重要なことです。
費用と業務内容が明確か確認する
契約内容や費用体系が明確で、納得できる説明を受けられるか確認しましょう。不明な点があれば、遠慮なく質問することが大切です。
会社の規模や実績を確認する
長期的なサポートになることを考えると、安定した経営基盤を持つ法人を選ぶことが望ましいです。会社の規模や実績、設立からの年数などを確認しましょう。
生涯のサポートを受けられるか確認する
身元保証だけでなく、生活支援、財産管理、死後事務など、幅広いサービスを提供しているか確認しましょう。さまざまなニーズに対応できる会社を選ぶことで、安心感が高まります。
おわりに
おひとりさまの老後は、決して寂しいものではありません。事前の準備と適切なサポートがあれば、安心して豊かな生活を送ることができます。この記事が、あなたの未来を切り拓く一助となれば幸いです。
クレディセゾングループが提供する、おひとりさま総合支援サービス「ひとりのミカタ」は、入院や高齢者施設への入居時に必要な【身元保証】、万が一の際の【緊急連絡先】、そしてご逝去後の【エンディングサポート(死後事務手続き)】など、日々の暮らしから終活まで、さまざまなお困りごとに寄り添います。ご家族や知人に頼りづらい状況の方も、これからの備えを考えたい方も、安心してご相談ください。
ただいま「エンディングメモ付きパンフレット」を無料でお届けしています!

