「形見分けの適切な時期はいつ?」「形見分けと遺品整理は何が違うのだろう」「面倒なトラブルになったらどうしよう」このような悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。形見分けは、亡くなった方の供養として行われてきた日本の伝統です。しかし、形見分けの正しい知識がなければ、思わぬトラブルを招いてしまうかもしれません。
このコラムでは、形見分けに関する悩みを解決するために以下について解説します。初めての方も安心して形見分けを行えるように、マナーやトラブル回避法をしっかりと確認しておきましょう。
- そもそも形見分けとは?
- 形見分けの適切な時期や品物
- 形見分けのマナーやトラブル回避法
形見分けについて解説
形見分けは、亡くなった方の供養として古くから行われてきた日本のしきたりです。日本では亡くなった方の魂が「遺品に宿る」と、昔から語られてきました。しかし「遺品整理とは、何が違うのだろう」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。トラブルを招かないためにも、形見分けについて正しく理解しておくことが大切です。
形見分けの意味
形見分けは、亡くなった方の日用品や愛用していた品を、親しい方に分け与えることです。形見を身近におき、大切に使い続けることが供養につながります。
しかし近年、思わぬトラブルを招く可能性があることから、形見分けを行わない遺族も増えています。形見分けは、決して義務ではありません。「形見分けは負担が大きい」「トラブルを招きたくない」と感じる方は、無理して形見分けを行う必要はないでしょう。
遺品整理との違い
形見分けと遺品整理は、目的が異なります。それぞれの目的は以下のとおりです。
- 遺品整理:亡くなった方が残された遺品をそのまま残すか、処分するかを整理すること
- 形見分け:相続後、親しかった方に品を贈ること
形見分けの適切な時期
形見分けを行うには、適切な時期があります。形見分けの適切な時期は、地域の文化や宗教によっても異なりますが、一般的に忌明けに行うのが良いとされています。マナー違反にならないように、正しく理解しておきましょう。
忌明け
形見分けの適切な時期は、忌明けといわれています。忌明けとは、忌中の期間を終えた時期のことで、一般的に、亡くなってから49日です。四十九日の法要が終わると「忌明け」といわれています。忌中とは、身内の死に身を慎み「喪に服する」といわれる期間を指します。
忌明けは、宗教や地域の文化によって、時期が異なります。仏教の場合、宗派や地域の文化によって、35日の法要を忌明けとしているケースもあります。
遺産分割の後
形見分けは、遺産分割の後に行うことが大切です。遺産分割とは、相続財産を相続人で分けることです。相続開始前に、形見分けを行った品が、実は財産価値がある品だったと判明した場合、相続トラブルになる可能性が高くなりますので注意しましょう。
例えば、財産価値のあるものとして以下のようなものが挙げられます。
- アクセサリーや宝石などの貴金属
- 骨董品
- 着物
- 時計
しかし「財産価値はどのように判断するのか」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。財産価値の評価は、原則として時価で決まります。正しい時価を調べるためには、専門家に鑑定を依頼するのが一般的です。買取の専門店や、宝石鑑定士に鑑定書を作成してもらうことで、財産価値の評価ができます。
形見分けの対象者【ルールはない】
形見分けの対象者に、明確なルールはありません。一般的には、亡くなった方と生前親しくしていた方や近親者に対して、形見分けは行われます。エンディングノートや遺言などに、「形見分けを行ってほしい」「〇〇さんに渡してほしい」などと書かれていた場合は、亡くなった方の意向を尊重して形見分けを行いましょう。
近年、形見分けが思わぬトラブルを招く可能性があることから、生前に形見分けを行う相手を決めておく方が増えています。形見分けの対象者にルールはありませんが、供養が目的であるという意味を忘れず、亡くなった方の意向を尊重しましょう。
形見分けする品物を3つ紹介
形見分けを行う時「どんな品を選んだら良いのだろうか」と悩む方が多いのではないでしょうか。形見分けに選ぶ品は、喜んでもらえることが大前提です。あまりに古い品や壊れている品を選んでしまうと、受け取る側も困ってしまいますので注意しましょう。
衣類
衣類は、形見分けに良く選ばれる品です。形見分けとして贈られる衣類には、以下のようなものがあります。
- スーツ
- ジャケット
- 着物
- コート
- ワンピース
衣類は、リメイクしやすい品です。受け取った方の生活スタイルに合わせてリメイクできることは、衣類ならではのメリットではないでしょうか。例えば、着物を小物ケースや鞄などにリメイクしてから贈ることもおすすめです。またジャケットは、自身のサイズに仕立て直すこともできます。
日用品
文房具や万年筆など、どなたでも使いやすい日用品は、形見分けに選ばれやすい品です。また、将棋盤や囲碁盤セット、愛読書など趣味として使っていた品も、亡くなった方との思い出を共有できることから、人気が高い品です。
服飾雑貨
服飾雑貨は、形見分けによく選ばれる品です。形見分けとして贈られる服飾雑貨には、以下のようなものがあります。
- 時計
- 靴
- ベルト
- アクセサリー
しかし貴金属類の形見分けを行う際は、財産価値があるのかどうかの判断が必要です。年間で110万円以上の財産価値がある品を受け取った方は、贈与税を負担する義務が発生します。高価な品は、受け取り側に贈与税を負担させてしまい、金銭トラブルになりかねません。財産価値が不明な品は、専門家に鑑定を依頼してから形見分けを行うことをおすすめします。
形見分けでおさえておくべき3つのマナー
形見分けには、気を付けておくべきマナーがあります。ご自身に悪気がなくても、失礼に当たる可能性があるので、しっかりと確認しておきましょう。
亡くなられた方より目上の方に贈らない?
形見分けをする相手に関するルールはなく、亡くなられた方の近親者や故人様と特に親しかった方に対して行われるのが一般的です。形見分けをする相手は、亡くなられた方の遺志がある際は、それに従いましょう。
かつては、亡くなられた方より目上の方には失礼にあたると、贈ることがマナー違反とされていましたが、最近では亡くなられた方と特に親しかった方であれば形見分けを行うことが多くなってきています。
梱包・ラッピングしない
形見分けは、梱包やラッピングはしないというマナーがあります。梱包やラッピングは、喜ばしい出来事に対するお祝いの品やプレゼントにするものだからです。
形見は、お祝いの品ではないので梱包やラッピングはしません。のしや水引なども必要ないです。しかし、形見分けの品をそのまま贈るのが気になる方もいるでしょう。その場合は、はん紙で包むのがおすすめです。
すぐに使える状態にしてから贈る
形見分けの品は、きちんとお手入れし、すぐに使える状態にして贈りましょう。形見は、大切に使うことが供養につながります。あまりに古く使えない品は、贈るのを控えた方がが良いでしょう。壊れた時計やアクセサリーは修理し、すぐに使える状態で贈ることが大切です。衣類は、クリーニングに出してから贈りましょう。
形見分けでトラブルを避ける3つの注意点
形見分けは、思わぬトラブルを招く可能性があります。贈った方に贈与税の負担を与えてしまったり、換金目当ての方が形見をもらいに来たりと、金銭トラブルに発展するかもしれません。ここでは、形見分けでトラブルを避けるポイントを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
高価な品は贈与税に注意する
高価な品を贈る際は、贈与税に注意しましょう。贈与税とは、財産の価値がある品を受け取った方が負担する税金のことです。贈与税の基礎控除額は、110万円です。年間110万円を超える財産を受け取った場合は、贈与税を負担する義務が発生します。
例えば、130万円の骨董品を形見分けした場合、110万円を超える金額は20万円です。基礎控除額を超えた20万円に対し、贈与税が課税されます。高額な品を贈る際は、受け取った方が贈与税を負担する可能性があることを認識しておきましょう。
参照元:国税庁|財産をもらったとき
亡くなられた方との関係を確認する
形見分けを行う際は、亡くなられた方との関係を確認しましょう。亡くなられた方との関係が不明な方に「形見がほしい」と要求されることは、よくあるトラブルの1つです。中には、換金が目当てで形見分けを要求してくる方もいます。
亡くなられた方との関係が不明な場合「親族だけで形見分けを行う」などと理由を説明し、丁寧にお断りしましょう。
無理に押しつけない
形見分けは、決して無理に押しつけてはいけません。形見を勝手に郵送してしまった結果、トラブルに発展する場合もあります。相手の気持ちを尊重し、お互いに気持ちの良い形見分けが行えるよう注意しましょう。
形見分けのマナーを守りトラブルにならないよう注意しましょう
形見分けは、供養を目的とする日本のすてきな伝統です。しかし、マナーを知らずに形見分けを行うと、金銭トラブルや受け取る側に負担をかけてしまうことになりかねません。お互いにとって気持ちの良いと思える形見分けが行えるように、しっかりマナーを守ることが大切です。