近年、日本では高齢者のおひとりさま世帯が増加しています。自由気ままなおひとりさまの老後生活は魅力的ですが、ひとりならではの不安やリスクがあるのも現実です。
今回は、おひとりさまの老後について、老後資金が大切な理由やさまざまなリスクについてまとめました。リスクへの対策や、おひとりさまにおすすめの老後や死後への備えについても解説しているので、今後のことが気になっている方はぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- 2022年の家計調査報告における高齢者のおひとりさま世帯では、月134,915円の実収入に対して支出が143,139円と赤字になっている
- 家計調査報告から試算した場合、おひとりさま世帯の老後資金目安は約740万円以上必要である
- おひとりさまの老後には経済面・健康面・孤独死の3つのリスクが考えられ、それぞれ対策が必要である
- おひとりさまは老後や死後に備えて、管理や手続きなどを代理で行ってくれる契約をしておくのがおすすめ
おひとりさま老後の今
医療技術が進むにつれ、男女ともに平均寿命が延びて、老後をおひとりさまで過ごす方は増加傾向にあります。内閣府が公表している高齢者のおひとりさまは、1980年の時点で男性4.3%、女性11.2%でした。それが、2020年には男性15.0%、女性22.1%にまで増加しています。
長生きする分だけ老後の生活や健康状態、自分が亡くなった後のことなど、さまざまな不安要素があるでしょう。老後には、長い方で30年間ほどのセカンドライフが待っています。そのため、早い段階から老後についてしっかり考えておくことが重要です。
おひとりさま世帯の支出と収入
総務省統計局による2022年の家計調査報告では、65歳以上で働いていないおひとりさま世帯の平均実収入は、月134,915円になっています。ここから税金や保険料を引いた可処分所得は122,559円です。一方で、平均支出は月143,139円と平均実収入を上回っており、生活が苦しい世帯も多いでしょう。
おひとりさま世帯の生活費の内訳
支出の内訳は住居にかかる費用や食費、光熱費など生活に欠かせない出費がほとんどです。食費が26.2%と全体の4分の1を占め、住居にかかる費用が8.9%、光熱費が10.3%となっています。
その他の出費は日用品や衣類の購入費、保険医療、通信費、交際費、教養娯楽費など。普通の生活を送るだけでも、これだけの出費が必要となっています。
参照元:内閣府│3 家族と世帯|令和5年版高齢社会白書(全体版)
参照元:総務省統計局『家計調査報告2022年(令和4年)平均結果の概要』(18P)
おひとりさま老後に必要な資金は?
先ほどの総務省統計局による2022年の家計調査報告をもとに、老後資金を試算します。実収入134,915円のうち税金などを引いた122,559円から平均支出である143,139円を差し引きしょう。
そうすると、毎月20,580円の赤字になることがわかります。この20,580円は貯金を切り崩してまかなっていく必要があるため、老後30年で最低でも約740万円の貯金が必要です。
さらに病気やケガ、住宅の修復費などまとまったお金が必要になるケースも考えられるため、老後資金の貯蓄は必要不可欠といえるでしょう。
参照元:総務省統計局『家計調査報告2022年(令和4年)平均結果の概要』(18P、19P)
おひとりさま老後のさまざまなリスク
自分のペースで快適に過ごせて、自由に時間やお金が使えるおひとりさまですが、老後にはさまざまなリスクがついてまわります。ここでは、おひとりさまの老後で陥りやすい3つのリスクについて解説しましょう。
経済面のリスク
総務省統計局による2019年の全国家計構造調査では、無職で65歳以上のおひとりさまは、男女共に収入よりも支出の方が多いという結果になっています。
前述したとおり、支出の内訳は食費や住宅にかかる費用、光熱費、日用品など生活に欠かせないものがほとんどで、決して無駄遣いが多いわけではありません。普通に生活をしていても、経済的に厳しくなるリスクがあります。
健康面のリスク
加齢に伴って体力や筋力も落ちているため、健康面にもさまざまなリスクがあるでしょう。筋力の低下や運動不足で転倒しやすくなったり、通院が億劫になって体調の異変に気づかなかったりするケースも考えられます。
さらに何か症状が出た場合でも、ひとり暮らしの場合、病気の発覚が遅れてしまうこともあるでしょう。
孤独死のリスク
ひとり暮らしで誰にも気づかれることなく、死後時間が経過してから発見される孤独死。おひとりさまの老後において、孤独死は重大な不安要素といえるでしょう。東京都監察医務院によるデータでは、東京23区において、自宅で死去する高齢者が年々増加しています。
孤独死は、経済的に余裕がなく体調不良でも病院に行けないことや、自宅にひきこもりがちで何かあったときに周囲を頼れないことなど、考えられる原因もさまざまです。
参照元:2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果 結果の概要(14P)
参照元:東京都保健医療局|東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(平成29年~令和2年)
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おひとりさま老後のリスクへの対策
おひとりさまの老後は、さまざまなリスクと向き合い、しっかりと対策することが重要です。ここからはそれぞれのリスクへの対策方法についてご紹介します。
「経済面のリスク」への対策
まずは、経済面のリスクへの対策方法です。老後の資金は早く対策しておくに越したことはありません。
貯蓄する
記事冒頭でご紹介したとおり、65歳以上のおひとりさま世帯は、支出が収入よりも上回るケースが多いのが特徴です。年金の受給額だけでは、生活を維持することは難しいでしょう。そのため、生活費をまかなうために若いうちから貯蓄をすることが大切です。居住にかかる費用や受け取る年金額は人によって異なるため、計画的に資金を蓄えていきましょう。
年金受給を遅らせる
年金は公的年金・企業年金問わず65歳からですが、1ヵ月遅らせるごとに0.7%受給額がアップする仕組みになっています。そのため、年金の受給を遅らせることで、1回あたりの年金受給額を増やすことが可能です。さらに、65歳で定年を迎えても、再就職をして働き続けることで安定した収入を得ながら、年金受給額をアップさせることができます。
投資する
投資と聞くとお金の動きが不安定で心配という方も多いでしょう。確かに投資にはリスクがつきものですが、預貯金の利息率が低い現在、投資による資産運用は老後の資金づくりに不可欠です。例えば50歳から始めて、長期的に投資を行うことができれば、リスクを抑えながら資金づくりができます。
「健康面のリスク」への対策
次に健康面のリスク対策をご紹介します。
かかりつけの病院を決めておく
老後を健康に過ごすためにも、かかりつけ医の定期的な診察は欠かせません。その際、些細な症状から、大きな病気の早期発見にもつながります。いつもと違う身体の様子に気づけることや、通院するなかで医師との信頼が生まれ、身体の不調を訴えやすいケースも考えられるため、かかりつけの病院を決めておくことは重要です。
入院バッグの準備をする
万が一の入院に備えて、数日分の着替えが入った入院バッグの準備をしておくと安心です。健康保険証やお薬手帳、診察券などをひとまとめにして、緊急連絡先を入れておけば、いざというときに慌てずに済むでしょう。また、入院時には身元保証人や身元引受人が必要なため、あらかじめ決めておくとスムーズです。
人との関わりを持つ
認知症を患うと、理解力や判断力が低下したり、記憶障害を引き起こしたりするケースもあります。おひとりさまのセカンドライフを快適に過ごすためにも、認知症予防を意識した生活が大切です。誰かと会話をすることは認知症予防に大きな影響を与えるといわれているため、日常的に外出し、コミュニティなどへ積極的に参加しましょう。
老後の施設について調べておく
加齢に伴い、脳卒中や転倒のリスクが高まります。たった一度の転倒で、寝たきりの状態になってしまうこともあるでしょう。症状が軽度の場合でも手足が不自由になったり、ひとりでの生活が難しくなったりするケースも珍しくありません。そのため、万が一に備えて、老人ホームや介護施設の費用、入居できる条件などについて調べておくことが重要です。
「孤独死のリスク」への対策
最後に孤独死のリスク対策について解説します。
見守りサービスを利用する
ひとり暮らしでは、家のなかで、もしものことがあった場合、発見してもらえないことが懸念されます。そこでおすすめなのが、民間企業の見守りサービスです。
見守りサービスを利用すると、ドアや冷蔵庫などの開閉をセンサーで察知し、登録者にお知らせを送ってくれます。遠方で暮らしている親の見守りに利用されるケースもありますが、おひとりさまでも通知先を交友のある近隣の方や親しい友人に設定しておけば安心です。
訪問サービスを利用する
定期的に利用できる訪問サービスでも、ひとりで亡くなってしまった場合に発見できる可能性が高まります。そのため、定期便の宅配サービスや、ホームヘルパーが来てくれる訪問サービスの利用がおすすめです。
また、宅配サービスは水やお米など重いものも家まで運んでくれるため利便性もよく、老後を快適に過ごすためにも役立ちます。
おひとりさまにおすすめの老後や死後への備え
ここまでご紹介したとおり、おひとりさまの老後はさまざまなリスク対策をしておくことが大切です。ここからは、急な死亡や判断能力の低下に備え、おひとりさまにおすすめの手続きを解説します。
財産管理等委任契約
財産管理等委任契約とは、本人に代わって財産の管理や福祉サービス、医療機関などの手続きを行ってもらうための契約です。本人に判断する能力はあるが、事故や病気などで身体や手が不自由になり、文字の記入が難しい場合などに代理で手続きを行ってもらうことができます。
役所で書類を取得したいときや、銀行でお金を引き出したいときも代理権を与えられるので、車椅子や寝たきりなどで移動が難しい場合でも安心です。
任意後見契約
任意後見契約は、判断能力があるうちに、将来のために備えておく契約です。病気や認知症などで判断能力が欠けてきたとき、あらかじめ選んだ任意後見人に生活で必要な事務や医療・介護・財産管理などを任せられます。
本人の判断能力が低下したら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てることで任意後見契約の効力が発生します。その後、任意後見監督人の監督のもと、契約で定めた手続きや管理を任意後見人が代理で行うことができます。
死後事務委任契約
死後事務委任契約とは、亡くなった後に必要な手続きや葬儀などに関する事務等を第三者に委任する契約です。第三者であれば個人・法人は問わないため、信頼できる家族や、死後事務委任契約を請け負っている司法書士などに依頼できます。
死後の書類管理、医療機関や賃貸住宅への支払いなど多様な手続きをサポートしてもらえるので、おひとりさまにもおすすめです。
永代供養の契約
永代供養の契約をしておけば、永代にわたって寺院が供養や管理を行ってくれます。お墓の掃除や修復などの手間や費用もかからないため、お墓を受け継ぐ人がいない方や、遺族になるべく負担をかけたくない方は検討してみましょう。
永代供養のお墓には個別埋葬型と、複数を埋葬する合葬型の2種類があります。個別埋葬型は決められた安置期間を過ぎたら、合葬となって供養されていくのが一般的です。
遺言書の作成
配偶者や子ども、兄弟姉妹や姪甥がいないおひとりさまの場合、遺産は国に納められることになります。そのため、財産を譲りたい方がいる場合は、あらかじめ遺言書を作成しておかなければなりません。民法968条に基づき遺言書を自筆で作成した場合、申請が通れば法務局の遺言書保管所での保管が可能です。
参照元:民法 | e-Gov法令検索(第九百六十八条)
おわりに
誰かに気を遣う必要もなく、自分らしい生活が送れるおひとりさまですが、老後はさまざまなリスクがついてまわります。老後の不安を軽減するためにも、経済面や健康面、死後のリスク対策が大切です。早い段階でしっかり老後に備えて、ゆとりのある素敵なセカンドライフを楽しみましょう。
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