「要介護3とはどのような状態だろう?」「要介護3で受けられるサービスはどのようなものがある?」と疑問に思う方もいるでしょう。
そこで、本記事では、要介護3の状態を解説し、利用可能なサービスを解説します。おすすめの施設も紹介していますので、要介護3の認定を受けた方やそのご家族の方、これから要介護認定を受ける方は、ぜひ参考にしてください。
- 要介護3は、日常生活全般に介護が必要な状態で、認知症の症状がある方が多く認定されている。
- 要介護3の認定を受けると、介護保険を利用して本人や家族の状況・希望に合わせて、訪問介護や通所介護など自宅で利用するサービスと、特別養護老人ホームなどの介護施設に入居して利用するサービスの2つが受けられる。
- さらに、介護のための自宅リフォームの補助金がもらえる他、福祉用具のレンタルや、特定の福祉用具を購入することもできる。
- 介護サービスの利用は、本人が安全で充実した生活を送られるようになるだけでなく、家族の介護負担も軽減してくれる。
要介護3とは?認定基準を紹介
どのような状態を要介護3というのでしょうか?
ここでは、要介護3の状態や認定基準、要介護2と要介護4との違いを確認しましょう。
要介護3とはどんな状態?
要介護3とは、立ち上がりや歩行をはじめ、食事や排せつ、入浴、衣類の着脱など、日常生活全般に介護が必要な状態です。24時間体制の見守りやサポートが必要ですが、意思疎通は可能で、寝たきりの状態ではありません。
また、要介護3は、認知症を患っている方が多く、徘徊や妄想、大声を出すといったいくつかの問題行動や理解力の低下が見られるケースもあります。
家族にかかる負担が増えてくる段階であり、在宅介護を続けるのか、施設に入居するのかを家族で検討し始める時期になってきます。
要介護3の認定基準
要介護認定は、厚生労働省によって定められた「要介護認定等基準時間」に沿って決められています。「要介護認定等基準時間」とは、その方の「能力」、「介助の方法」、「障害や現象の有無」から統計データに基づき推計された介護に要する時間(介護の手間)を「分」という単位で表示したものです。
要介護度 | 要介護認定等基準時間 |
要支援1 | 25分以上32分未満 |
要支援2 | 32分以上50分未満 |
要介護1 | 32分以上50分未満 |
要介護2 | 50分以上70分未満 |
要介護3 | 70分以上90分未満 |
要介護4 | 90分以上110分未満 |
要介護5 | 110分以上 |
上記の通り、要介護3の方にかかる介護の時間は、「70分以上90分未満または、これに相当する状態」とされています。
要介護2との違いは?
要介護2と要介護3では、日常生活における介護の必要度が違います。
身体状況を比べると、要介護2は部分的な介助や見守りが必要であるのに対し、要介護3は日常的な動作全般に介助が必要な状態です。
具体的には、要介護2では、立ち上がりや歩行に支えを必要とする程度ですが、要介護3は自力で立ち上がったり歩いたりすることが難しくなります。
また、身だしなみや掃除、洗濯など身の回りのことでは、要介護2では、一部介助や見守りが必要な程度ですが、要介護3では、自分で行うことが難しいため、全面的な介助を必要とします。
さらに、認知機能については、要介護2は思考力や理解力の低下が見られますが、要介護3では、さらに認知機能が低下して、認知症の方が多くなります。徘徊や大声を出すといった認知症が原因の問題行動が見られる方もいます。
要介護4との違いは?
要介護4は、要介護3よりさらに能力が低下し、排せつや入浴、着替など日常生活のほとんどに介助が必要な状態です。介護なしで生活を送ることは難しく、全面的な介護を必要とするため、家族の介護負担はかなり重いレベルといえるでしょう。
身体機能では、要介護3では、支えがあれば立ったり歩いたりすることが可能ですが、要介護4では、両足で立つ、歩く、座った姿勢を保持するといった基本動作が難しくなります。
認知機能では、要介護3の状態よりさらに理解力や思考力の低下が顕著になります。認知症が進行して、徘徊や妄想、誤飲や誤食といった問題行動のある方が多くなり、意思疎通が難しくなる場合もあります。家族の介護負担が大きいため、家族が在宅介護に限界を感じて施設入居が増えるのもこの時期です。
介護保険制度における要介護3の支給限度額
介護保険では、在宅サービスを利用する場合、要介護度別に1ヵ月当たりの支給限度基準額が決められています。
要介護3の支給限度基準額は、1ヵ月当たり270,480円です。自己負担1割とすると、ひと月に27,048円まで介護保険を適用して在宅サービスが利用できます。なお、限度額の上限を超えてサービスを利用した場合は、超えた分の全額(10割)は自己負担です。
要介護3の方が支給限度額で利用できるサービスの利用回数の目安は以下のとおりです。
- 週5〜8回の訪問介護
- 週2〜3回のデイサービス
- 週1〜2回の訪問介護
- 福祉用具レンタル(車椅子、介護ベッド、認知症老人徘徊感知機器など13品目)
なお、限度支給基準額は、地域によって金額が異なるため、詳しくはお住まいの自治体へ確認が必要です。
要介護3で利用できるサービス
次に、要介護3の方が利用できる介護保険サービスを紹介します。
訪問サービス
サービス事業者が自宅に訪問して、介護や家事支援、リハビリテーションなどを行うサービスです。
昼間の利用だけでなく、夜間の時間帯に利用できるサービスもあります。
要介護3では、以下の7種類の訪問サービスが利用可能です。
- 訪問介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリ
- 訪問入浴
- 居宅療養管理指導
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 夜間対応型訪問介護
通所サービス
日帰りで施設に通って介護やリハビリを受けられるサービスです。利用時間によっては食事の提供や入浴のサービスも受けられます。
施設へ通所することで、外出や人と交流する機会を持てるため、閉じこもりや孤立の解消や、認知症の進行予防につながります。
要介護3で利用できる通所サービスは以下の5種類です。
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリ(デイケア)
- 地域密着型通所介護
- 療養通所介護
- 認知症対応型通所介護
複合サービス
複合型サービスとは、「通い」「訪問」「宿泊」のサービスを組み合わせて利用できるサービスです。
ひとつの事業所でさまざまなサービスを利用できるため「いつも会う顔なじみのスタッフからケアしてもらえる」という安心感が得られます。特に、環境の変化が苦手な認知症の方におすすめのサービスです。
要介護3の方が利用可能な複合型サービスは以下の2種類です。
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
短期入所サービス
短期入所サービスとは、自宅で暮らす高齢者が1泊2日から連続30日を上限に介護施設などに短期間入所できるサービスです。24時間体制で食事の提供や入浴、排せつなど日常生活に必要な介助を中心に、体調管理や 機能訓練などのサービスが受けられます。
要介護3の方は、以下2種類の短期入所サービスが利用できます。
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 短期入所療養介護
施設入居サービス
施設入居サービスを利用して介護を受けながら生活する方法もあります。
要介護3の方が入居できる施設は以下の8種類です。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホームなど)
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
その他
上記の他に利用できるサービスは以下の3種類です。
福祉用具をレンタル・購入するサービス
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
住環境を整備するためのサービス
- 住宅改修
要介護3で利用できるお金に関する制度
ここでは、要介護3で受けられるサービスや補助金について紹介します。
特養ホームが利用できる
要介護3になると、特別養護老人ホーム(特養)に入所できます(状況によっては要介護1・2も入所可能です)。
常に介護が必要な高齢者が生活するための施設で、一度入所すると終身で利用可能です。特養では、入浴や排せつ、食事などの介助や、機能訓練などのサービスが受けられます。看護師が配置されているので、毎日の健康管理から療養上の世話、看取りケアまで対応可能です。
特養は、社会福祉法人や地方自治体が運営する公的な施設であるため、入居一時金などの初期費用が必要なく、民間の施設と比べると費用は安く設定されています。さらに、居住費(滞在費)や食費については、所得に応じて負担を軽減できる仕組みが設けられています。
費用が安く済むことから、入所希望者が非常に多く、何年も待機する方も少なくありません。
介護リフォームの際補助金がもらえる
高齢者向けの住宅改修も介護保険の対象となるサービスです。
転倒事故などを防いで安全に暮らすために、家の中をバリアフリー化するリフォーム工事に対して最大200,000円までの補助が受けられます。この金額は、要支援・要介護に関わらず定額です。
対象となる住宅リフォームの種類は以下のとおりです。
- 手すりの設置
- 段差の解消
- すべり止め、移動を円滑にするための床材などの変更
- ドアを引き戸へ変更
- 洋式便器などへ便器の取替え
- その他、各工事に付帯する工事
なお、補助の支給は、原則1人1回限りですが、転居した場合や要介護状態区分が3段階以上重くなった場合は、再支給が受けられます。
福祉用具のレンタルが利用できる
要介護3の方は福祉用具のレンタルにも介護保険が使えます。
レンタルの対象となる福祉用具は、段差解消スロープや車いす、介護ベッドなどの13品目です。
さらに、特定の福祉用具を購入する場合も介護保険を利用できます(特定福祉用具販売)。
ただし、介護保険の給付対象となる金額は、1年間(4月〜翌年3月)に100,000円までという上限が決められています。
購入対象となるのは、利用する高齢者が直接肌に触れるポータブルトイレや簡易浴槽などの5品目です。
障害者控除が受けられる
要介護3になると、特別障害者控除(400,000円)を受けられる可能性があります。自治体によっては「障害者控除の認定基準」に要介護の状態を含めている場合があるからです。
該当する場合は、役所へ申請すると「障害者控除対象者認定証」が交付されるので、確定申告の際に提出すれば、控除が受けられます。
なお、自治体によって認定基準が異なる場合があるため、お住まいの地域の自治体に確認が必要です。
要介護3の方におすすめの施設
要介護3の方は、公的施設と民間施設のほとんどが利用可能になります。
公的施設のなかでおすすめの施設は、特別養護老人ホームと介護老人保健施設です。特養は終身で利用したい方、老健は専門的なリハビリを受けて、身体機能を回復させたい方におすすめです。
また、民間施設では、充実した介護サービスを受けられる「介護付き有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」がおすすめです。
要介護3認定の流れは
ここでは、要介護認定で要介護3と認定されるまでの流れを見ていきましょう。
認定が受けられるかどうかを確認
要介護認定を受けられるのは、第1号被保険者である65歳以上の方です。認定を受ければ、要介護度に応じて介護サービスを利用できます。
40歳〜64歳までの第2号被保険者で、国が定める「特定疾病」にかかっている方の場合も、要介護認定が受けられ、必要な介護サービスを利用できます。
申請書を提出
要介護認定を受けるためには、役所で申請手続きをする必要があります。
申請に必要なものは、以下のとおりです。
- 介護保険被保険者証(40〜64歳までの方は医療保険者の被保険者証)
- 介護保険要介護認定・要支援認定等申請書
- マイナンバーカードまたは、通知カードなど
- その他(印鑑、本人確認書類、代理人確認書類など)
申請できるのは、原則として本人または家族ですが、難しい場合は地域包括支援センターの職員やケアマネジャーが代行することもできます。
訪問調査
申請手続きをすると、ご自宅や入院先に市区町村の職員が訪問し、生活状況や心身の状況などをご本人や家族からヒアリングをして調査します。
訪問調査では、以下の項目をチェックされます。
日常生活を送るうえで必要となる基本的動作
- 身体の麻痺
- 関節の動きの制限
- 寝返り・起き上がり
- 座位保持
- 両足での立位
- 歩行
- 立ち上がり
- 片足での立位
- 洗身
- つめ切り
- 視力・聴力
ひとりで日常生活を送れるか
- 移乗・移動
- 飲み込み・食事摂取
- 排尿・排便
- 歯磨き・洗顔・整髪
- 上着、ズボンの着脱
- 外出頻度
認知機能は問題ないか
- 意志の伝達
- 毎日の日課の理解
- 生年月日・名前
- 短期記憶
- 季節
- 場所の理解
- 徘徊
精神や行動が不適切ではないか
- 被害妄想・作話
- 感情が不安定
- 昼夜逆転
- 同じ話をする
- 大声を出す
- 介護に抵抗
- 落ち着きがない
- ひとりで出たがる
- 収集癖
- 物や衣類を壊す
- ひどい物忘れ
- 独り言・独り笑い
- 自分勝手な行動
- 話がまとまらない
適切な社会生活が送れるか
- 薬の内服
- 金銭の管理
- 日常の意思決定
- 集団への不適応
- 買い物
- 簡単な調理
過去14日間に特別な医療を受けていないか
次の12項目のことについて確認します。
- 点滴の管理
- 中心静脈栄養
- 透析
- ストーマ(人工肛門)の処置
- 酸素療法
- レスピレーター(人工呼吸器)
- 気管切開の処置
- 疼痛の看護
- 経管栄養
- モニター測定(血圧、心拍、酸素飽和等)
- 褥瘡(じょくそう)の処置
- カテーテル(コンドームカテーテル、留置カテーテル、ウロストーマ等)
一次判定
要介護認定の一次判定では、コンピューターによる判定が行われます。
二次判定
二次判定では、介護認定審査会が一次判定の結果と主治医意見書の内容をもとに判定を行います。
介護認定の通知
市区町村が要介護認定を行うと、その結果は郵送で通知されます。
結果通知が届くのは、申請してから原則として30日以内です。
なお、希望していた要介護度が判定されなかったときや、想定よりも低く判定された場合の救済制度として、不服申し立て(審査請求)があります。
ケアプランの作成・提出
要介護認定を受けてから、介護サービスを利用するには「ケアプラン」を作成し、自治体に提出する必要があります。
ケアプランとは「どの介護サービスをどのような目的で、どのくらい使うか」をまとめたものです。
自宅でサービスを利用する場合
自宅でサービスを利用する場合は、まずは、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらうことから始まります。ケアプランは自分で作成もできますが、ケアマネジャーに作ってもらうのが一般的です
要介護3の認定を受けた方は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに担当してもらうことになります。
施設に入居する場合
施設に入居する場合には、まずはご自分で介護施設を探す必要があります。
最寄りの地域包括支援センターに紹介してもらうこともできますが、自分でインターネットを使って探すこともできます。
要介護3の老人ホームの選び方
「在宅介護はもう無理」と、要介護3の方が入居できる施設を探している方には、特別養護老人ホームも選択肢のひとつになります。ただし、特養の入所希望者は非常に多いため、何年も待機するケースが少なくありません。
そこで、民間の介護付き有料老人ホームへの入居も併せて検討することをおすすめします。
介護付き有料老人ホームは、厚生労働省の定めた基準を満たし「特定施設」として指定されている施設です。介護・看護スタッフが手厚く配置されており、設備や介護サービスも充実しているため、要介護3の方が安心して生活を送ることができます。施設の数が多いため特養と比べて入居しやすい点もおすすめです。
相続の認知症対策は「セゾンの相続 家族信託サポート」がおすすめ
相続について考えた際、被相続人となる方が認知症となってしまった場合は預金口座が凍結されたり、不動産の売買ができなくなったりすることが問題となります。今話題の「家族信託」では、事前に子ども世代に財産の管理を委託しておくことで、本人が認知症となってしまった場合にも資産が凍結されることなく、子どもが財産の管理や運用、処分をおこなうことができます。家族信託を検討する場合には、専門家へのご相談をおすすめします。
「セゾンの相続 家族信託サポート」では、家族信託の経験が豊富な提携専門家のご紹介が可能です。初回のご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
おわりに
要介護3は、日常生活全般に介護が必要な状態で、認知症の症状がある方が多く認定されています。
要介護3では「自宅で利用するサービス」と「施設に入居して利用するサービス」の2つが受けられます。介護サービスの利用は、本人が安全で充実した生活を送れるようになるだけでなく、家族の介護負担も軽減してくれます。
本人や家族の状況・希望に合わせてさまざまな種類から選ぶことができますので、この記事を参考に、どのサービスを利用するか検討してみてください。