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銀行の代理人カードは効力がない?家族が認知症になったときに安心の預金管理方法とは?

銀行の代理人カードは効力がない?家族が認知症になったときに安心の預金管理方法とは?
セゾンのくらし大研究 編集部

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認知症による口座凍結問題の対策として、「代理人カード」の作成を検討する方もいるのではないでしょうか。代理人カードは本人の代わりに預金の管理ができます。このコラムでは、代理人カードのメリットやデメリット、資産凍結対策として利用できる制度を詳しく解説します。家族の資産凍結対策を検討している方はぜひ参考にしてください。

この記事を読んでわかること

  • 認知症による預貯金の資産凍結は増加を背景に「代理人カード」の作成を検討する方が増えている
  • 代理人カードは本人に代わって預貯金の引き出しができる
  • 代理人カードは口座名義人の認知症が進行すると利用できなくなる可能性がある
  • 認知症による口座凍結に対処する方法には「後見人制度」や「家族信託」がある
家族信託サポート
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増えている資産凍結問題

増えている資産凍結問題

近年、高齢化によって認知症の発症も多くなっています。平成29年版高齢社会白書によると、2025年には5人にひとりが認知症になるという推計も出ており、私たちにとっても身近な問題となっています。

認知症が進むと日常生活に支障が出ますが、財産管理においては「認知症における資産凍結」が社会問題化しています。

なぜ資産凍結が問題となるのか、どのような制限が生じるのか詳しく見ていきましょう。

認知症によって口座凍結されるタイミング

認知症によって口座凍結されるタイミングは、銀行が本人の認知能力が低下したと判断したときです。たとえ病院で認知症の診断が下されていても、本人が手続きできる場合は、即時凍結されることはありません。

銀行は、以下のようなタイミングで認知能力の低下を知ることになります。

  • 家族が銀行に本人の認知症を相談した
  • 本人が窓口で手続きした際に、銀行員が判断能力の低下に気づく(名前や生年月日が言えないなど)
  • 家族が本人のキャッシュカードで限度額いっぱいにお金を引き出している
  • 詐欺と疑われる出金や振込がある

認知症が発覚した時点で口座は凍結され、口座の取引が制限されてしまうのです。

認知症による口座凍結で生じる制限

認知症による口座凍結では、具体的に以下のような取引が制限されます。

  • ATMの入出金(本人及び家族でも不可)
  • カードの再発行
  • 口座振替
  • 投資信託の購入や解約
  • 定期預金の解約

主にお金の引き出しや振込ができなくなるため、年金の受け取りや生活費、医療費の支払いは困難になるでしょう。そのため、今まで本人の口座から支払っていたお金を子どもが立て替えなければならない可能性があります。

全取引ができなくなるわけではない

認知症による口座凍結の場合、本人死亡時のように全ての取引が中止になるわけではありません。

死亡による口座凍結と認知症による口座凍結では以下のような違いがあります。

死亡による凍結の場合認知症による凍結の場合
できること・外部からの入金
・自動引き落とし
できないことすべての取引ができなくなる・ATMの入出金
・銀行窓口での各種手続き
・定期預金の解約など

例えば認知症による口座凍結の場合、預貯金の引き出しはできないものの、年金などの外部からの入金は引き続き行われます。また、保険料や光熱費などを自動引き落としや口座振替している場合、お金の引き落としも預金がある限りは続くため注意が必要です。

本人のキャッシュカードで家族が出入金し続けるのは危険

本人のキャッシュカードで家族が出入金し続けるのは危険

家族が認知症になった場合でも、暗証番号さえわかればキャッシュカードでの引き出しは可能です。しかし、本人のキャッシュカードで家族が入出金を続けるのは危険です。ここでは、本人のキャッシュカードを家族が使用することへのリスクを詳しく解説します。

高齢者は利用限度額が引き下げられる

多くの金融機関では、高齢者への詐欺やキャッシュカードの騙し取り被害を防止するために1日当たりの利用限度額を低く設定しています。

例えば、「70歳以上の方は1日の引き落とし金額は20万円まで」などです。万が一、10万円以上の金額を引き出そうとした場合は、引き出したお金の用途などを詳しく聞かれることがあります。預金管理を代行する場合、医療費や介護費で高額の引き出しがあるかもしれません。しかし、家族であっても預金の使途を聞かれることがあり利用する側にとっては不便といえます。

また先述のように、用途を聞かれた際に親が認知症であることが金融機関へ伝わってしまうこともあるでしょう。その場合はお金を引き出せずに口座が凍結されてしまうリスクもあります。

定期預金の解約ができない

定期預金の解約は多くの場合、口座名義人が窓口で手続きするのが原則です。

親の入院費や介護施設の入居費用など、まとまった出費が必要な時もあるでしょう。しかし、家族が「本人のために使う」と説明しても本人の意思を確認できない以上は預金保全の観点から了承することはできないのです。この場合も親の認知症が発覚した時点で口座が凍結される可能性があります。

カードの再発行ができない

通帳やキャッシュカードの紛失や磁気不良時は、口座名義人が再発行の手続きをしなければなりません。そのため、親が認知症になった後にカードの紛失や時期不良が発生した場合は、そのまま口座を利用できなくなる可能性があります。また、暗証番号を忘れてしまった場合、口座名義人による手続きが必要なため再発行できなくなるので要注意です。

銀行で発行できる代理人カードとは?

銀行で発行できる代理人カードとは?

銀行は本人の預金を守るためにあらゆる制約を設けています。本人のキャッシュカードで家族が入出金する状態では、前述したようなリスクがあり、最悪の場合預金口座が凍結されてしまうこともあります。

そこで、金融機関で発行できる「代理人カード」を利用する方が増えています。金融機関によっては、「家族カード」などの名称の場合もあります。代理人カードとは、口座名義人以外の方に日常的な預貯金の引き出しを代行してもらうためのカードです。

銀行の代理人カードを作れる方

代理人カードを作れる代理人の条件は銀行によっても異なりますが、「生計を同じくする家族」「2親等以内の家族」などの条件があるため、ご利用の金融機関を確認してみてください。

例えば、メガバンク3行の発行条件は以下のとおりです。

  • 三井住友銀行:1名、同行の口座を保有
  • みずほ銀行:本人と生計を共にする親族1名、同行の口座を保有
  • 三菱UFJ銀行:本人と生計を共にする親族1名(原則として成人だが、満16歳以上なら可)

なお、代理人カードは何枚も作成できるわけではなく、親族で1枚のみです。作成は無料もしくは1,000円程度の手数料がかかります。

また、代理人カード以外にも、三井住友銀行では「代理人氏名手続き」、みずほ銀行は、「代理人予約サービス」など本人以外が手続きを行うための制度もありますので、ご利用の金融機関のサービスをご確認ください。

代理人カードのメリット

代理人カードのメリット

代理人カードのメリットをそれぞれ解説します。

預金の管理がしやすくなる

代理人カードは簡単に発行でき、キャッシュカードを預かって預金管理するよりもリスクが少ないことがメリットのひとつです。発行する際には以下の書類などを持参して、口座名義人が窓口で手続きします。

  • 通帳かキャッシュカード
  • 取引印鑑
  • 本人確認書類原本
  • 発行料(金融機関によっては無料で作成可能)

代理人カードを発行しておけば、家族が入院や自宅療養で外出できない場合でも代理でお金を引き出せるため、生活費や医療費を滞りなく支払うことが可能です。また将来的に大きな出費が発生した際にも、本人の預貯金を把握できるため金銭管理がしやすくなります。

暗証番号の設定がしやすい

代理人カードの暗証番号は、口座名義人と同じ番号もしくは異なる番号を設定できます。万が一口座名義人が暗証番号を忘れてしまい、本人が入出金できなくなった場合でも、代理人カードの持ち主が暗証番号を覚えていれば口座からお金を引き出せます。

暗証番号の再設定には本人による手続きが必要ですが、代理人カードがあれば本人が暗証番号を忘れた場合でも安心です。

代理人カードのデメリット

代理人カードのデメリット

代理人カードは便利な一方、機能の制限などデメリットもあります。

それぞれ詳しく解説します。

認知症が進行すると使えなくなる場合がある

先述のように、金融機関は本人の意思能力の低下を把握した時点で口座を凍結することがあります。これは代理人カードを作成した場合でも変わりません。したがって、口座凍結と同時に代理人カードも利用できなくなってしまいます。

家族が本人の預金額を把握できてしまう

代理人カードを発行すると、家族は本人の預貯金額を把握できてしまいます。親が子どもに代理人カードを作らせた場合、親の預貯金額を知ったことで相続時にトラブルになる可能性があります。代理人カードを発行する場合は相続トラブルのリスクも考慮しつつ、信頼できる親族に代理人をお願いする必要があるでしょう。

また、口座名義人によっては預貯金を把握されたくないという考えから代理人カードの発行を断られてしまう可能性があります。代理人カードを発行する際には、家族間で用途や目的を話し合って慎重に決定するようにしましょう。

金融機関ごとに作成が必要

代理人カードは口座がある金融機関ごとに申請しなければ作成できません。本人が複数の口座でお金を管理している場合はカード作成に労力と時間がかかります。

また、金融機関によっては本人が窓口まで出向く必要があり、いくつもの金融機関へ出向くのは負担になるかもしれません。

使用できる機能が少ない

代理人カードではキャッシュカード機能しか利用できず、クレジットカード機能やデビットカード機能、窓口での手続きはできません。例えば、大きな出費があるため定期預金を解約したいという場合でも、代理人カードでは解約手続きができません。

あくまでも預貯金の入出金をするための予備的措置でしかないため、支払いなどの代行には不向きといえるでしょう。

本人が死亡すると使用できなくなる

代理人カードは口座名義人が亡くなると無効になり、預金は利用できなくなります。名義人が亡くなった後にその事実を金融機関へ伝えずにお金を引き出し続けた場合は、相続人間で大きなトラブルに発展するため注意が必要です。

代理人カード以外で口座凍結に対処する方法

代理人カード以外で口座凍結に対処する方法

代理人カードは便利なようで機能制限や口座凍結のリスクなど不便な点もあります。認知症による口座凍結の対策としては網羅できない点も多いのです。

ここでは、代理人カード以外で口座凍結に対応する方法を解説します。

法定後見制度を利用する

成年後見制度のうち、法定後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などの理由で意思能力が低下した場合、その方の財産や身上を守るための制度です。

主に、以下のような契約や手続きを後見人が手伝います。

  • 財産の管理
  • 入院・介護などの医療契約の代行・補助
  • 悪質な契約や不利益な契約の取り消し手続き

後見人には「補助」「補佐」「後見」の3種類があり、本人の状況によってそれぞれ以下のように手伝える範囲が異なります。

対象となる方できること
補助重要な手続き・契約の中で、ひとりで決めることに心配がある方一部の限られた手続き・契約などを
 ・一緒に決めてもらう
 ・取り消してもらう
 ・代行してもらう
保佐重要な手続き・契約などを、ひとりで決めることが心配な方財産に関わる重要な手続き・契約などを
 ・一緒に決めてもらう
 ・取り消してもらう
 ・代行してもらう
後見多くの手続き・契約などを、ひとりで決めるのが難しい方すべての契約などを
 ・代行してもらう
 ・取り消してもらう

引用:厚生労働省「成年後見はやわかり」より

法定後見制度を利用するには、家庭裁判所に後見開始の申し立てを行う必要があり、後見人の選出は裁判官が行います。申立から利用開始までは早くて1〜2ヵ月、長い場合は4ヵ月程度です。

法定後見制度の注意点

成年後見制度には以下のようなデメリットもあります。

  • 原則途中で止めることはできない
  • 利用開始までに数ヵ月かかる
  • 後見人の財産は裁判所の管理下に入る
  • 家族が後見人になれるとは限らない
  • 専門家が後見人に選出された場合は報酬を支払いが必要

法定後見制度は原則途中で止めることはできないため、被後見人が亡くなるまで財産を管理し続けなければなりません。また、後見人は裁判所が決定するため家族以外の専門家が選出された場合は報酬を支払う必要があります。

財産管理も裁判所の管理下で行うため、家族や本人が思いどおりに財産を使うことは難しくなるかもしれません。

例えば、「実家の土地を売却したい」という場合も裁判所の許可が必要です。融通が効かないため、精神的な負担があるでしょう。成年後見人制度の利用は家族間で話し合い、慎重に検討する必要があります。

任意後見制度を利用する

本人に意思能力がある段階では、家族や信頼できる方に後見人になってもらう「任意後見制度」が利用可能です。法定後見制度とは異なり、本人の意思で後見人や将来委任する後見業務の内容を決められる点がメリットといえます。

任意後見制度の申請手順は、以下のとおりです。

  • 本人が後見人を選出する
  • 本人と後見人の間で任意後見契約を締結する
  • 本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所へ申請して任意後見監督人を選出する申し立てを行う

任意後見契約では、本人の生活や医療、財産管理などに関する事務に関して後見人に代理権を与える旨を契約書にまとめます。契約の際には公正証書による作成が必要です。

また、任意後見人制度の場合は「後見監督人」を選出します。後見監督人は、任意後見人が契約内容どおりの仕事をしているか、財産目録を提出させるなどして監督します。監督人は家庭裁判所が選出し、本人の親族や後見人がなることはできません。弁護士や社会福祉士などの第三者から選出されます。

家族信託を利用するという方法も

家族信託を利用するという方法も

成年後見制度以外にも、家族信託を利用する方法もあります。家族信託とは、信頼を寄せる家族にご自身の預金管理を委託する制度のことです。

家族信託では、親が認知症になっても信託口座は凍結されません。本人がご自身で財産管理ができなくなったとしても、子どもが信託された財産の管理や運用をすることができます。

また、成年後見制度よりも柔軟に財産管理ができるため、将来的に不動産の管理や処分を子どもに任せたい方、事業継承が必要な方にもおすすめの方法です。

家族信託を利用するには、信託契約書の作成や家族信託用口座の作成、信託財産の移転などが必要です。ご自身で行うこともできますが、信託契約に不備が生じる、リスク検討が不十分になるなどのデメリットもあります。家族信託を行う際には、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

セゾンの相続 家族信託サポート」では、クレディセゾングループの幅広いネットワークを活かし、さまざまなニーズに応えることが可能です。また、家族信託に強い司法書士と提携しており、無料相談もできます。将来の財産管理に不安をお持ちの方はぜひお気軽にご相談ください。

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おわりに

代理人カードは手軽に発行でき、親が入院しているときや外出が難しいときに家族が預貯金の引き出しの代行をするには便利です。しかし、口座名義人の認知症が進行した際には口座凍結の可能性があるため、認知症による口座凍結対策としては不十分です。成年後見人制度や家族信託の利用も検討することをおすすめします。

中でも家族信託は本人の意思確認ができるうちに実施する必要があるため、早いうちに対策する必要があります。手続きには専門的な知識が必要なため、必要に応じて司法書士に相談しながら検討してみてください。

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