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家族信託の信託監督人とは?求められる資格や役割を詳しく解説

家族信託の信託監督人とは?求められる資格や役割を詳しく解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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豊かなくらしに必要な「お金」「健康」「家族」に関する困りごとや悩みごとを解決するために役立つ情報を、編集部メンバーが選りすぐってお届けします。

この記事では、家族信託における信託監督人について取り扱います。家族信託の当事者となる委託者・受託者・受益者とは何か確認したうえで信託監督人とその三者についての関係を理解しましょう。そして信託監督人はどういった役割があり、どういった場面で選任すべきなのかなどについて紹介します。

この記事を読んでわかること

  • 家族信託の当事者となる三者と信託監督人の関係について理解する
  • 信託監督人の役割や選任されるための資格を知る
  • 信託監督人の選任が必要なケースを把握する
  • 信託監督人を選任する際のポイント
家族信託サポート
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家族信託の当事者となる三者

家族信託の当事者となる三者

家族信託には当事者となる三者が登場します。この委託者、受託者、受益者の三者が、信託契約の枠内で資産の管理と利益の配分を進めることになります。

以下で詳しく解説します。

委託者とは

委託者は財産の所有者であり、ご自身の財産の管理・処分を他者に任せる者です。これにより、委託者は信託契約に基づいて、信託の運用と保守を委ねることができます。委託者になるには資格は不要ですが、信託契約を結ぶことになるので契約行為ができるだけの能力が必要です。

受託者とは

受託者は委託者から財産を預かり、その管理や処分をする責任を負う者です。

信託契約で規定された範囲内で、受託者は資産を有効に運用し、委託者の意図を遵守します。契約により受託者の権限と責任が厳密に規定されることになります。

受益者とは 

受益者は信託財産によって経済的な利益を享受する者です。受託者が管理し、運用する資産から生じる利益は、受益者に分配されます。

委託者が明示すれば、委託者自身が受益者となることも可能です。信託契約において、受益者の指定は重要な事項となります。

家族信託における信託監督人とは

家族信託における信託監督人とは

家族信託における信託監督人とは家族信託の当事者となる三者(委託者・受託者・受益者)とどのような関わりがあるのでしょうか。

また、信託監督人とは別に信託管理人や受益者代理人を設定する場合もあります。それらの違いについても家族信託を設定するに際して理解しておく必要があります。

さらに、信託監督人になれない方もいることに注意が必要です。このように確認しておくべきことがいくつかあるので、詳細を解説します。

信託監督人とは?その役割は?

信託監督人は、受益者の権限行使を補完する存在であり、受益者に代わって受託者を監督するために選任される者です。

例えば受益者が未成年や高齢で認知症を患っているなどの場合は、受益者ご自身が受託者の信託事務が適切に行われているか監督することは難しく、そのような受益者に代わり受託者を監督するのが信託監督人の役割となります。

信託管理人や受益者代理人との違い

家族信託では信託管理人、受益者代理人という信託監督人と類似した役割を持つ者が設定されることがあります。それぞれの違いを理解するために、信託管理人と受益者代理人について詳しく確認してみましょう。

信託管理人は、信託監督人と役割は同じです。異なる点は受益者が現に存しない場合に選任されるということです。

例えば、将来生まれてくる子どもを受益者に指定することが家族信託では可能となりますが、そういった場合には受益者が不在となり受託者を監督する者がいない期間が存在します。

このような場合に受益者が現れるまでの間、受益者に代わって受託者の監督を行う者が信託管理人となります。

受益者代理人は、代理する受益者のために、該受益者の権利に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する者です。これは信託監督人や信託管理人と比べて強い権限を有することを意味し、受益者本人は単独受益者権以外の権利を行使することができなくなってしまいます。

受益者代理人を選任する目的は判断能力の低下した受益者や子どもを受益者とした際の受益者保護が主なものです。

信託監督人になれない方

信託監督人になることができない方がいます。それは未成年者と当該信託の受託者です。これらの方は信託監督人に選任される資格を有しません。また、これらの方が信託監督人の資格を有していないことは信託法に定められています。

このことから信託監督人には一定の財産管理能力を有しており受託者を監督するのに適当な方であることが必要であることがわかります。

信託監督人の選任が必要なケース

信託監督人の選任が必要なケース

信託監督人の選任が必要となるのはどういった場合でしょうか。高齢の信託受益者には、加齢に伴う健康リスクが懸念されます。

体調不良や認知症の可能性が高まり、これにより受託者の適切な監督が難しくなり、資産管理にも課題が生じる可能性があります。

また、未成年者や障がい者の場合には、ご自身で判断することが難しく資産管理に課題が生じる可能性があります。このような信託監督人が必要となるケースについて詳細に解説します。

受益者が高齢

高齢者が信託の受益者になると、加齢に伴う健康問題が懸念されます。例えば、体調不良や認知症が発生する可能性が高まります。

これらの状態において、受益者が受託者を適切に監督することが難しくなります。高齢者は日常的な生活がままならなくなり、資産管理における判断は同じように困難になるでしょう。

このようなケースでは、信託監督人を選任しておくことが望ましいです。信託監督人は高齢者の状況を理解し、そのニーズに適切に対応しつつ、受託者を監督してくれます。

受益者が未成年

未成年の者が信託の受益者となる場合、ご自身で判断して受託者を監督することは難しいでしょう。特に幼い子どもが適切な監督者となることは期待できません。

したがって、信託監督人をあらかじめ選任しておくことが必要となります。信託監督人は法的な責任を持ち、未成年者を保護する役割を担います。これにより、適切な受託者の監督が行われることになります。

受益者が障がい者

障がい者が受益者である場合、その親などが亡くなった後は家族のサポートなく本人が受託者の監督をすることになります。

この場合は、受託者の監督が困難な状況が生じ得ます。信託監督人の選任は、障がい者の特有のニーズを理解し、法的な枠組みの中で受託者の監督が行われることになります。

信託監督人の役割と必要な資格

信託監督人の役割と必要な資格

信託監督人は、信託契約の円滑な履行と受益者の権益を守る重要な存在です。そのため、資格や権限についての理解が必要であり、信託契約の透明性と公平性を確保するために適切な選任が求められます。

以下に、信託監督人に必要な資格やその役割、報酬について詳しく解説します。

信託監督人に必要な資格と選任方法

信託監督人には特別な資格が必要ありません。未成年者と受託者本人以外は原則誰でもなれますが、信託の複雑さや法的責任を考えると、司法書士や弁護士などの法律の専門家に依頼することが一般的です。

また、個人だけでなく法人も信託監督人に選任できます。信託監督人の選任方法には、信託契約による指定と家庭裁判所による選任の2つの方法があります。

信託監督人が持つ権限

信託監督人は、受託者が行った権限外の行為や利益相反行為の取り消しを含む受託者を監督する権利を行使できます。

一方で、受託者の利益相反行為の承認や辞任、信託契約の内容変更の同意など、受益者が持つ信託の意思決定に関する権利まで行使することはできません。

信託監督人の役割

信託監督人の主な役割は、受託者が信託の目的に沿って信託事務を行っているか監督することです。また、司法書士や弁護士などの専門家を信託監督人に依頼すると、財産処分行為について客観的なアドバイスを受けられることもあります。

これにより、信託の円滑な運用と遺産の保全を図ることができます。

信託監督人の報酬と任務開始・終了時期

信託監督人に係る報酬は、司法書士や弁護士などの専門家に依頼する場合と家族に依頼する場合で異なります。専門家である司法書士や弁護士に比べて家族に依頼した場合、報酬が低くなるもしくは報酬がないことが一般的です。ただし、その分適切な監督がなされないことや、適切なアドバイスが受けられない可能性も高まります。

任務の開始は、契約締結時からとすることが一般的ですが、任務の開始時期を契約締結時と異なる時点に設定することもあります。以下で確認しましょう。

1つ目は、受益者が受託者を監督できなくなった時に信託監督人を選任することを検討する場合です。これは健康なうちは受益者がご自身で受託者を監督し、判断力が低下してきたら信託監督人に助けてもらうことを想定したものです。このような場合は、受益者の家族が「信託監督人は必要だと判断して就任を承諾したとき」のような定め方が望ましいでしょう。

2つ目は、第2受託者に切り替わるタイミングで信託監督人を選任するケースです。これは当初の受託者は家族信託の設定を詳細に把握しているが、第2受託者(当初の受託者の子どもなど)は家族信託の設定への理解が乏しいようなケースです。家族信託への理解が乏しい受託者に対して信託監督人による監督が必要となる、との判断から信託監督人の任務開始時期を受託者が第2受託者に移った時と定めます。

では、信託監督人の終了時期についてはどうでしょうか。信託監督の終了時期は一般的には信託契約終了時とすることが多いです。

例えば、信託契約終了時にこれまで管理していた受託者がそのまま財産を引き継ぐケースや専門家が関与して信託契約終了後の信託財産を取りまとめて清算するようなケースでは残余財産への不正や誤った清算をしてしまうというリスクが低いので、信託監督人の終了時期は信託契約終了時としても問題が生じることは少ないでしょう。

一方で、残余財産を複数の家族に分配するケースや信託財産を売却し現金化して清算するケースなどは清算事務が完了したことを確認するところまでを信託監督人の任期として定めておくことが望ましいです。

安全で効率的な家族信託のために

安全で効率的な家族信託のために

家族信託は家族の財産管理を将来に向けて安心に行うための選択肢のひとつです。今回、取り扱った信託監督人選任する要否の判断や、選任することになった場合には安全で効率的な信託の構築には専門的なアドバイスが欠かせません。

信頼性のある専門家に相談することで、安全で効率的な信託監督人の要否判断や選任が可能となります。特に司法書士は法的な専門知識を有し、信託のプロセスや法的な要件に詳しく対応できます。家族信託に強い司法書士に依頼することで、信頼性の高い家族信託の構築が可能となります。

セゾンの相続 家族信託サポート」では、家族信託に関する包括的なサポートを提供しています。経験豊富な司法書士と提携していますので、ニーズに合わせた信託の構築が可能です。まずは「セゾンの相続、家族信託サポート」に相談してみてはいかがでしょうか。

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おわりに 

家族信託における信託監督人について解説をしてきました。信託監督人を選任することが必要となることが想定される場合、信託監督人についての理解を深め、本当に信託監督人を選任すべきなのか、また選任する場合は誰を選ぶのか、どの時点で任務を開始とし、終了とするのかなど、事前に決定しておくべきことは数多くあります。信託監督人の選任を含めて家族信託を安全で効率的なものとするためには専門的な知識や経験が必要になります。

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