独身者の老後には、資金不足や財産管理の難しさ、詐欺被害、相続トラブル、葬儀や遺品整理の問題など、さまざまなリスクが潜んでいます。これらのリスクに備えるには、50代のうちから計画的に対策を講じることが重要です。
この記事では、独身者の老後に起こりうるリスクと必要な資産額、身寄りがない方が今からすべき対策について解説します。さらに、独身者の老後の悩みの解決をサポートしてくれるサービスについても紹介しています。老後を安心して過ごすために、今からできることを考えていきましょう。
(本記事は2024年7月22日時点の情報です)
- 独身者の老後には資金不足や財産管理の難しさ、詐欺被害などさまざまなリスクがある
- 独身者が老後に必要な資産額は、生活費や住まい、介護、葬儀などの費用を合計すると男女別に算出できる
- 身寄りがない50代は、退職金や年金の確認、貯金やNISA、iDeCoによる資産形成など計画的な対策が重要
- 任意後見契約や身元保証サービス、遺言書の作成など、リスクに備えた法的対策も検討すべき
独身男性・女性の老後に起こりうるリスク
独身で老後を迎えると、お金の面だけでなく身の回りのことでもさまざまなリスクが生じる可能性があります。寂しく不安な老後を避けるためには、50代のうちから備えておくことが大切です。
ここでは、独身者が老後に直面しうる具体的なリスクについて見ていきましょう。
資金不足に陥る可能性がある
独身で老後を迎える場合、十分な貯金がないと資金不足に陥るリスクがあります。ゆとりある老後生活を送るには、若いうちから計画的にお金を蓄えておく必要があるのです。
内閣府の「高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、結婚経験のない独身の高齢者のうち35.4%が、また離別した高齢者のうち34.6%が、老後の生活費について不安だと回答しています。老後資金が不足すると、生活のゆとりが失われ、健康管理などにも支障が出かねません。
参考:内閣府|令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果(全体版)
財産管理が難しくなる
認知症などを患って判断力が低下すると、銀行口座の解約や不動産の売却など、財産に関する法的な手続きが自分ではできなくなってしまいます。成年後見制度を利用する場合でも、身寄りがないと申立てをしてくれる人がおらず、面識のない第三者が財産管理をすることになりかねません。
大切な財産を託す相手は自分で選びたいものです。独身者は特に、信頼できる身内や友人に財産管理を任せられるよう、元気なうちから対策を講じておくことをおすすめします。
詐欺被害に遭う可能性が高くなる
高齢者は特殊詐欺のターゲットになりやすく、被害に遭うリスクが高くなります。同居家族がいれば、不審な電話やメールに気付いて被害を未然に防げることもありますが、独身だとそうした「防波堤」となる存在がいないため、詐欺に遭ってしまう可能性が高まるのです。
老後を安心して過ごすためにも、普段から用心深く行動し、困ったことがあれば周囲の信頼できる人に相談するよう心がけましょう。
財産の継承先でトラブルになる可能性がある
独身の場合、財産の相続人は民法の規定に従って決まります。結婚経験がなく子どももいない場合、両親がすでに他界していれば兄弟姉妹が法定相続人となり、兄弟姉妹も先に亡くなっていれば甥姪が相続人になります。
疎遠な兄弟姉妹や面識のない甥姪に財産が渡るのは避けたいという人も多いでしょう。心情に反する相続を防ぐには、生前に遺言書を作成するなどの対策が必要です。
葬儀や遺品整理に関して他人に迷惑をかける可能性がある
身寄りのない独身者が亡くなった場合、自治体の手で法律に基づいて火葬が行われます。ただし、通常の葬儀とは異なり、極めて簡素な対応になります。一般的な葬儀を望むなら、生前から葬儀社と契約を交わすなどの準備が欠かせません。
また、遺品の整理は、賃貸物件なら大家、施設入居者なら施設側の負担になります。処分費用も発生するため、入居者の死後に遺品整理まで行わなければならないとなれば、大きな迷惑となるでしょう。
入院や高齢者施設への入居が難しい可能性がある
入院や介護施設への入居の際には、身元保証人が求められるのが一般的です。アパートの賃貸借でも、緊急連絡先の記入を求められることがほとんどでしょう。
身寄りのない独身者の場合、たとえ本人に入院や入居の意思があっても、身元を引き受けてくれる人がいないため断られてしまう可能性があります。こうした事態を避けるには、信頼できる友人や福祉関係者などに事前に相談しておくことが大切です。
独身者は老後のためにいくらの資産が必要?
独身者が老後を迎えるにあたり、どのくらいの資産を準備しておく必要があるのでしょうか。老後に必要な資産額は人それぞれですが、独身者の平均的な貯蓄額や老後にかかる費用の内訳を見ていくことで、より具体的なイメージをつかむことができるでしょう。
独身者の平均的な貯蓄額
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和3年)」によると、60代以上の単身世帯の平均的な貯蓄額は以下の通りです。
- 60代の平均値:1,860万円、中央値:460万円
- 70代の平均値:1,786万円、中央値:800万円
中央値を見ると、60代は460万円、70代は800万円となっています。平均値と中央値には大きな差があり、実際には1,000万円以下の金融資産で老後生活を送る独身者が多いと推察されます。
参考:金融広報中央委員会|家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和3年調査結果
老後に必要な費用の内訳
独身者の老後資金を考える上で、どのような支出が発生するのか把握しておくことが大切です。主な支出としては、日常の生活費、住宅関連費用、介護費用、葬儀費用などが挙げられます。それぞれの費用について詳しく見ていきましょう。
老後の生活費
総務省統計局の「2019年全国家計構造調査」によると、高齢無職単身世帯の1ヶ月あたりの平均的な支出は以下の通りです。
- 男性の支出合計:163,492円(内、社会保障給付:149,802円)
- 女性の支出合計:141,646円(内、社会保障給付:128,908円)
男女ともに、年金などの社会保障給付だけでは支出をまかなえず、毎月1万円以上の赤字が生じています。この不足分を補うためにも、老後に向けた資産形成が必要だと言えるでしょう。
参考:総務省統計局|2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果
老後の住まいにかかる費用
マンションなどに住む場合、退職後も家賃の支払いが継続的に発生します。一方、持ち家の場合は、ローンの返済が終わっていないと老後の家計を圧迫する可能性があります。
また、リフォームやバリアフリー化などの費用もかかってくるでしょう。介護施設やサービス付き高齢者向け住宅などへの入居を検討する場合は、入居一時金など多額の費用が必要になる場合もあります。
老人ホームに入所するなど介護に必要な費用
生命保険文化センターの「2021年度生命保険に関する全国実態調査」によると、介護にかかる費用は以下の通りです。
- 毎月の介護費用:平均8.3万円
- 一時的な介護費用:平均74万円
- 介護期間:61.1ヶ月
参考:生活保険文化センター|2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査
また、介護施設別の月額料金と入居一時金の相場は次の通りです。
施設の種類 | 入居一時金相場 | 月額料金相場 |
---|---|---|
介護付き有料老人ホーム | 0~数千万円 | 約15万~35万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0~数千万円 | 約15万~35万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 0~数十万円 | 約10万~30万円 |
グループホーム | 0~数十万円 | 約15万~20万円 |
特別養護老人ホーム | 0円 | 約6万~15万円 |
ケアハウス | 0〜数百万円 | 約7万~20万円 |
葬儀費用
株式会社鎌倉新書の「第5回お葬式に関する全国調査」によると、葬儀にかかる平均的な費用は以下の通りです。
- 葬儀全体にかかった費用(火葬場や式場の使用料など):67.8万円
- 葬儀の飲食にかかった費用:20.1万円
- 葬儀の返礼品にかかった費用:22.8万円
- 合計:110.7万円
以上の内容から、独身者の老後には、日常の生活費だけでなく、介護や葬儀など、さまざまな場面で多額の支出が見込まれることがわかります。計画的に資産形成を行い、安心して老後の生活が送れるよう備えておくことが大切だと言えるでしょう。
参考:株式会社鎌倉新書|第5回お葬式に関する全国調査(2022年)
【男性・女性別】寿命を迎えるまでに結局いくら必要?
厚生労働省の「令和2年都道府県別生命表の概況」によると、日本人の平均寿命は男性が81.49歳、女性が87.60歳です。
また、先述したとおり、高齢無職単身世帯の1ヶ月あたりの平均支出は男性が163,492円、年金などの社会保障給付は149,802円で、毎月の赤字は13,690円になります。例えば、無職の男性であれば、60歳から平均寿命の81歳までの21年間で、約345万円の赤字が発生します。
対して、女性の平均支出は141,646円、社会保障給付は128,908円でした。毎月の不足分は12,738円となるため、無職の女性であれば、60歳から平均寿命の87歳まで27年間で、約413万円の赤字が発生します。
単純計算にはなりますが、平均的な年金収入に加えて、独身男性の場合は約345万円、独身女性の場合は約413万円の老後資金があれば、平均寿命を迎えるまでの生活費をまかなえる計算になります。
ただし、これはあくまで平均値であり、ゆとりある老後生活のためにはさらに上乗せした資産形成を目指す必要があるでしょう。
参考:厚生労働省| 令和2年都道府県別生命表の概況(都道府県別にみた平均余命)
身寄りがない50代が今から行うべき対策は?
独身で老後を迎える50代の方は、今から計画的に老後資金を準備し、認知症対策などを行っておくことが重要です。ここでは、身寄りがない方が取り組むべき具体的な対策をご紹介します。
退職金額や年金受給額を確認しておく
老後資金の目標額を考える上で、まず把握しておきたいのが年金の受給額と退職金の支給額です。「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で年金の見込み額をチェックし、勤務先の就業規定などで退職金の支給額を確認しておきましょう。
これにより、ご自身で準備すべき老後資金がどの程度必要か検討しやすくなります。
資産形成をしておく
公的年金だけでは老後生活の資金が不足する可能性が高いため、計画的に資産形成に取り組むことをおすすめします。貯蓄や保険、投資信託など、さまざまな方法を組み合わせて無理のない範囲で準備を進めていきましょう。
貯金をする
老後資金専用の口座を作り、コツコツと積み立てていくのが基本です。普通預金から定期預金に自動で積み立ててくれる「自動積立定期預金」などを活用するのも良いでしょう。
将来の病気やケガに備えて、医療保険や介護保険への加入も検討しておくと安心です。保険で老後資金を準備する際は、保険料を最後まで払い込める商品を選ぶようにしましょう。
NISAやiDeCoを始める
NISAは、投資信託の運用益に対する税金が非課税になる制度です。年間360万円まで、生涯通算で1,800万円まで非課税で投資でき、途中で資金を引き出すこともできるため、老後資金の準備に適しています。
iDeCoは、掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税になる個人型の確定拠出年金制度です。原則60歳まで引き出せませんが、老後の年金資産を着実に積み上げられるメリットがあります。
任意後見契約や身元保証サービスについて検討しておく
認知症を発症して判断能力が低下した場合に備え、信頼できる人と任意後見契約を結んでおくことをおすすめします。これにより財産管理や契約などを任意後見人に任せられます。
入院や介護施設への入居の際、身元保証人を立てられるよう身元保証サービスについても検討しておきましょう。これらは司法書士などの専門家に相談して利用するのが良いでしょう。
遺言書の作成をしておく
自分の財産を、法定相続人以外の人物や団体に承継したい場合は、元気なうちに遺言書を作成しておくことが大切です。遺言書を残しておけば、希望通りの相続先を指定できます。
身寄りがない人が亡くなった場合、葬儀や埋葬は行政の最低限の対応となり、遺品整理は誰も行ってくれません。
希望の葬儀や供養を行ってもらい、遺品整理で周囲に迷惑をかけないためにも、死後事務委任契約を専門家と結んでおくのがおすすめです。生前に具体的に取り決めておきましょう。
独身の老後の悩みは「ひとりのミカタ」に相談するのもおすすめ
独身の方が抱える老後の悩みは多岐にわたります。身寄りがないため入院時の身元保証人がいない、介護や葬儀など終活の準備をどうすればよいかわからない、といったお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
こうした独身の方の老後に関する幅広い悩みに対し、トータルでサポートしてくれるサービスが「ひとりのミカタ」です。
「ひとりのミカタ」は、セゾンカードでおなじみのクレディセゾンのグループ会社「くらしのセゾン」が提供する終活支援サービスです。
入院時の身元保証から、緊急連絡先の代行、さらには死後の事務手続き(エンディングサポート)まで、独身の方のさまざまな困りごとを解決するサービスを総合的に提供しています。
会員になると、24時間365日の電話健康相談やハウスクリーニングなど、日常生活に役立つ多彩なくらしのサービスも割引価格で利用できるなど、うれしい特典もあります。
身元保証を中心とした「エルダープラン」と見守り・駆けつけサービスやエンディングサポート(死後事務手続き)が加わった「プラチナプラン」の2つのプランが用意されており、ライフステージに合わせて必要なサポートを受けられるのも魅力です。
老後のさまざまな不安を抱える独身の方にとって、「ひとりのミカタ」は、まさに心強い味方になってくれるサービスと言えるでしょう。
老後の備えについて専門家に相談したい方は、まずは無料の資料請求をしてみてはいかがでしょうか。
おわりに
独身者の老後は、お金や身の回りのさまざまなリスクに直面します。資金不足や財産管理の難しさ、詐欺被害や財産継承のトラブル、葬儀や遺品整理の問題、入院や施設入居の困難さなど、多岐にわたる課題があります。
これらのリスクに備えるためには、50代のうちから、退職金や年金の確認、貯金やNISA・iDeCoによる資産形成、任意後見契約や身元保証サービスの検討、遺言書の作成など、計画的な対策が必要不可欠です。
独身者が老後の悩みを解決し、安心して充実した生活を送るためには、今からできることを着実に実行に移していくことが重要です。
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