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お墓を放置したらダメ?「墓じまい」にまつわるおひとりさまの選択肢を専門家が詳しく解説します!

お墓を放置したらダメ?「墓じまい」にまつわるおひとりさまの選択肢を専門家が詳しく解説します!
森田 真充

執筆者

株式会社ハウスボートクラブ 墓じまいサポート部部長

森田 真充

家業の石屋にて9歳の頃からお墓の工事に携わり、墓石販売会社に就職後「墓じまい」の取り扱いを本格的に開始。2023年5月より株式会社ハウスボートクラブで「お墓の引越し&墓じまいくん」を立ち上げる。お墓の販売は1,500件以上、墓じまいは3,000件以上の実績を有し、現在も「墓じまい」のお客様相談、セミナー講師等にて活躍中。

近年、継承する方がいないなどの理由から、終活のひとつとして「墓じまい」が増えています。子供がいない夫婦世帯や単身世帯にとって「墓守問題」は深刻です。現代のお墓事情、継承問題から「墓じまい」に至るさまざまな選択肢について専門家が詳しく解説します。

増加し続けるお墓の継承問題

増加し続けるお墓の継承問題

ご家族やご自身の「お墓」について考えたことはありますか?例えばご自身が新しくお墓を建てた場合、そのお墓は30年後、50年後も引き継がれるでしょうか。

内閣府が発表する「令和4年版高齢社会白書」によると、令和元年時点で65歳以上の人のいる世帯数は2,558万4,000世帯と、全世帯(5,178万5,000世帯)の約半数を占めています。また65歳以上の男女それぞれの人口に占める単身世帯の割合は、昭和55年は男性4.3%、女性11.2%でしたが、、令和2年には男性15.0%、女性22.1%と大きく増加傾向にあります。

2024年現在、少子化の進行にも歯止めがかからず、子供がいない夫婦世帯や単身世帯の割合は、今後ますます増加していくことが予想されます。

「墓じまい」とは今あるお墓を撤去して土地を返還する一連の流れのことを指しますが、多くの場合、お墓に眠っていたご先祖様を新たな場所で供養しなおす「改葬」も併せて行われます。

厚生労働省の「令和4年度衛生行政報告例」によると2022年度の改葬件数は15万件を超え、過去最多件数となりました。2023年7月に当社が実施したアンケート調査では、『墓じまいを検討している』または『検討したことがある』理由として、「子どもに迷惑・負担をかけたくないから」27.3%、「後継ぎがいないから」20.7%という結果となり、全体の約半数がお墓の維持・継承に関する悩みを抱えていることがわかります。

『墓じまいを検討している』または『検討したことがある』理由

また、お墓の新規購入者を対象とした「いいお墓 第15回お墓の消費者全国実態調査(2024年)」では、全体の64.1%が後継ぎのいらないお墓を選択し購入したと回答しています。

特に近年人気が高まっているのは樹木葬や室内納骨堂で、反対に一般墓と呼ばれる昔ながらのお墓は購入者の割合が減少しています。樹木葬や室内納骨堂は永代供養や継承者不要のタイプが非常に多く、このことからも、お墓の維持・継承は難しい問題であるといえます。

購入したお墓の跡継ぎはいますか
購入したお墓の種類

「墓じまい」せず放置されたお墓はどうなる?

「墓じまい」せず放置されたお墓はどうなる?

次の継承者が決まらず、管理費等が払われないまま放置されたお墓は「無縁墓」と見なされ、場合によっては強制撤去の対象となります。強制撤去されたお墓に眠る遺骨は合葬されて二度と取り出すことができません。撤去にかかった費用が血縁者を辿って請求される場合もあるようです。

お墓は、建物や現金のような相続財産とは別の「祭祀財産」に分類され、分割ができず、慣習によって指定された一人が承継するものと定められています。民法第897条の規定は、次のとおりです。

(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

(引用:民法第897条|e-Gov法令検索

この条文では「慣習によって承継者を決めるが、被相続人(故人)の指定があればその者が承継し、それでも決まらなければ家庭裁判所が承継者を決める」と定められています。つまり、被相続人(故人)の指名がなければ誰もが承継者になる可能性があるということです。

もちろん、お墓の強制撤去となればそれなりの時間をかけて手順を踏む必要があるため、突然お墓が無くなってしまうということはありません。しかしながら、そんな事態が起こってしまってはお墓に眠っていたご先祖様にも、後始末を被った血縁者にも非常に申し訳ないことになってしまいます。次の継承者がいない方にとっては、ご自身の代でお墓を整理することは避けられない課題なのです。

以前、墓じまいと改葬をお手伝いさせていただいた男性は、鹿児島県に単身で暮らしていました。子どもがいないためご自身に何かあった場合には、墓のことは姪御さんに任せたいとのことでした。とはいえ、極力姪御さんの負担を減らしたいと考えられ、墓じまいを決意されました。

具体的には、鹿児島のお住まい近くの寺院内のお墓からご先祖様をお引越しさせるために東京・赤坂の永代供養つき納骨堂をご購入し、ご自身の分も生前契約をされました。この先東京在住の姪御さんが度々鹿児島を訪れる必要がないように、という想いやりを原動力に墓じまいをされました。

ところが、実際に寺院のカロートを開けてご遺骨を取り出したところ、中にひとつだけ、記名がなく誰のものか特定できない骨壺がありました。寺院にも記録がなく、結局「氏名不詳」として他のご先祖様たちと一緒に改葬先でご供養されました。

お墓の中には数十年前、場合によっては100年以上前のご先祖様が眠っていることもあります。また、遠方に住んでいる方や若い世代の方は、寺院との関係性が薄くなっている場合もあります。そんな中、自治体や寺院との手続きや準備を進めていくのはなかなか骨の折れる作業です。この方はご自身の代できれいに整理をやり遂げられ、後を任された姪御さんも安心されたことと思います。

墓じまいのその先は?後継ぎ不要の供養先

墓じまいのその先は?後継ぎ不要の供養先

昨今、お墓は「代々継いでいくもの」「立派なお墓を後の世代へ残すことが美徳」とされた時代から、「何も残さない」「負担を掛けない」ことが思いやりと捉えられる時代に変化したと強く感じます。

新たにお墓を設けられる場合も、「ご夫婦だけの区画」や「何十年で合葬」というタイプを契約される方も非常に増えていると聞きます。お墓の継承者がいないおひとりさまにとって、自分の代で完結できる供養先であれば安心ではないでしょうか。後世に承継の必要がない供養先にはどんな種類があるのか、ご紹介したいと思います。

樹木葬

樹木や植栽を墓標するお墓のことを指します。遺骨を骨壺や骨袋に入れて、個別の区画に埋葬する「個別納骨タイプ」、遺骨を骨袋に入れて1つの空間に集めて埋葬する「集合墓タイプ」、遺骨を1か所に集めて他人の遺骨と一緒に埋葬する「合祀タイプ」など、さまざまな埋葬方法がありますが、樹木葬の多くは一定期間納骨した後に合祀する「合祀タイプ」です。埋葬方法により、費用にもかなり幅があるのが特徴です。

樹木葬

納骨堂

室内のため天候や季節に関係なくお参りしやすいことが特徴で、比較的アクセスのよい場所にあることも多く、頻繁にお参りに行かれる方には特におすすめの方法です。

「ロッカー式」や「仏壇式」のほか、遺骨が参拝スペースに運ばれてくる「自動搬送式」など、最新の技術が使われた施設もあります。個別や家族単位で納骨されるタイプが多く、価格帯は樹木葬に比べると若干高額になる傾向です。寺院が運営していることがほとんどなので、懇ろ(ねんごろ)な供養が受けられることもポイントになります。

納骨堂

合祀・合葬墓

供養塔などを目印として、不特定多数の遺骨を一緒に埋葬するお墓です。骨壺から出され他人の遺骨と混ざってしまうと、その後取り出したり引越しさせたりすることはできなくなってしまいます。簡素ですが永代に渡って同じ場所で供養され、管理の必要もないため、最も費用を抑えることができる方法です。

海洋散骨

これから墓じまいやお墓を考えられる方に、ぜひ検討していただきたいのが海洋散骨です。ご遺骨をパウダー状にして海に撒く供養方法で、物や形を残さず自然に還ることができるのが最大の特長です。文字通り「海すべてがお墓」というイメージで開放感があるため、明るく送り出したいという方に選ばれる傾向です。

旅行も兼ねて故人の故郷の海を訪れたり、沖縄やハワイのようなリゾート地の海をあえて選ぶ方もいらっしゃいます。ご遺骨がまったく手元に残らないことでお参りしづらい、寂しいとお感じになる方には、一部を分骨して手元供養を用意することもでき安心です。散骨する地域やセレモニーの内容にもよりますが、費用も合祀と同じ程度になるケースも多く、おひとりさまの新たな供養の選択肢としても、検討されてはいかがでしょうか。

後の世代に負担を残さないために、今のうちからできること

後の世代に負担を残さないために、今のうちからできること

このコラムでは、墓じまいに注目が集まっている理由や墓じまいをせず放置するとどうなるかについて解説いたしました。

お墓の承継者やその周辺の方には、ぜひ自分事として考えていただきたい話題です。墓じまいについて悩む時間が長ければ長いほど安心から遠ざかります。例えば、墓じまいでは必ず必要になる石材処分費用も近年高騰しています。墓じまいを考えている方は、早めに手を打っておくことが得策といえます。

墓じまいにかかる費用は大きく分けて、墓石の解体(撤去)工事費用と改葬先にかかる費用の2つです。墓じまいは、まず改葬(引越し)先を決めるところから準備が始まります。今後墓じまいが必要になるかもしれない、という方は今のうちにどんな改葬先が良いか、そしていつ頃までに墓じまいを進めるのか、ご親族やご自分が安心できる供養の方法はそれぞれ違います。どうすれば良いか悩まれている方は、専門家へ相談してはいかがでしょうか。

墓じまいを含め、おひとりさまの終活について

墓じまいを含めた終活をお考えの方、特におひとりさまにはクレディセゾンのグループ会社「くらしのセゾン」が提供する「ひとりのミカタ」をおすすめします。「ひとりのミカタ」は、入院や高齢者施設入居時の身元保証、緊急連絡代行などをおこない、おひとりさまの暮らしの安心をサポートする会員プランです。会員さま限定サービスとして、墓じまいに強い専門会社と連携した相談サービスをご用意しております。例えば「寺院との交渉が不安」「墓じまい後は散骨を考えている」「改葬先のお墓を提案してほしい」など、多様なお悩みについてご相談を承ります。

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ひとりのミカタ
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セゾンの相続 お墓探しサポート」では、お墓探しに強い専門家と提携しているため、お墓探しをサポートします。例えば、墓じまいをして永代供養へ切り替えたい方であれば納骨堂などお墓の提案や、永代供養に関する手続きなどのサポートを提供しています。お墓の継承者がいなくても安心できるお墓探しが気になる方は、一度「セゾンの相続」へ相談してみてはいかがでしょうか。

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