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【医師監修】女性特有の病気|年代別に気をつけたいのはどのような疾患?

【医師監修】女性特有の病気|年代別に気を付けたいのはどのような疾患?
鈴木 幸雄 医師・医学博士

監修者
鈴木 幸雄 医師・医学博士

産婦人科専門医・指導医、婦人科腫瘍専門医。旭川医科大学医学部卒業。横浜市立大学産婦人科学講座所属。現在、コロンビア大学産婦人科・婦人科腫瘍部門の博士研究員として研究に従事。これまで多くの子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん患者における手術、化学療法を担当。また、公衆衛生、医療政策、医療経営などにおける知見も持つ。女性ヘルスケア専門医、細胞診専門医、腹腔鏡技術認定医でもある。

女性特有の病気はいくつかありますが、とくに50代以降で発症のリスクの高い病気は少なくありません。身体の不調を年齢が原因と思い放置すると、病気が進行してしまうケースもあるので、注意が必要です。このコラムでは50代以降で特に注意したい女性特有の病気や各種がんについて取り上げます。初期症状や検査方法を知り、病気の早期発見につなげましょう。

女性特有の病気とは?

女性特有の病気とは?

女性特有の病気は多くありますが、代表的な病気には「乳がん」「子宮頸がん」「子宮筋腫」「子宮内膜症」などがあります。注意しなければいけないことは、乳がんや子宮頸がんは40代以下の若い年代でも多く、40~60代以降でも引き続き増えていくことです。一方で子宮筋腫や子宮内膜症などは、月経がある間、つまり平均で50歳未満で問題になってきます。若い頃から身体の状態に気を配るとともに、定期検診を受けることが大切です。

年齢別に気をつけたい女性特有の病気

年齢別に気を付けたい女性特有の病気

女性特有の病気は年代によって発症する可能性が高くなるものがあります。ここでは年齢別に特に気をつけたい病気について紹介します。

40代から気をつけたい乳がん

乳がんの原因と初期症状、検査方法について見てみましょう。

原因と初期症状

原因と初期症状

乳がんは、乳管あるいは乳腺小葉(にゅうせんしょうよう)に発生するがんです。乳房にしこりを見つけてがんに気付くという方が多いことでも知られています。乳房の形が左右で非対称になったり乳頭から分泌物がでたりすることもあり、乳房のただれやえくぼといった症状など、自分で気付きやすいことが特徴です。

検査方法

ず行ってほしいこと

2年おきに乳がん検診(マンモグラフィ)を受ける。もっとも大切なのは、きちんと乳がん検診を受けることです。その他にもさまざまな検査がありますが、がんの早期発見とそれによる死亡率減少効果が認められてるのは、マンモグラフィだけなのです。マンモグラフィは乳房専用のX線検査です。乳房を2枚の板の間に挟んで圧迫して薄く伸ばした状態で撮影をします。視診や触診では発見しにくい小さな病変や微細な石灰化を見つけることが可能です。

乳房に対するその他の検査方法について

乳がん検診の主役であるマンモグラフィ以外にも、乳がんの検査は、視診や触診、エコー(超音波)などによって行われます。視診と触診についてです。乳房の左右差や乳頭からの分泌物などを目で確認し、加えて乳房から脇の下にかけて触りながら、しこりの有無や動き方、硬さなどを調べます。

一方エコー検査は、超音波を発生する機器を乳房に当て、超音波の反射する様子を画像で確認する方法です。マンモグラフィ検査で高濃度乳房とされる場合にはエコー検査のほうが、がんを見つけやすい傾向にあります。被爆の心配がないため妊娠中でも検査が可能です。

視診や触診、マンモグラフィ、エコー検査などを行い、がんである可能性が高いと判断されれば病変細胞や組織を顕微鏡で調べることになります。がんの転移や広がり方を調べるには、MRI検査、CT検査、骨シンチグラフィ検査およびPET検査といった画像検査が有効です。

50代から気をつけたい卵巣がん

50代から気を付けたい卵巣がん

続いては、卵巣がんの原因と初期症状、検査方法について見てみましょう。

原因と初期症状

卵巣がんは食欲がなくなったり、服のウエストがきつくなったりといった症状で発覚するケースがあります。なぜなら、卵巣がんは初期段階ではほとんど自覚症状がないためです。症状が進むと、がんが直腸や膀胱を圧迫することによる便秘や頻尿、脚がむくむケースもあり、腹水がたまるとお腹が前に大きく突き出ることがあります。

検査方法

卵巣がんを早期発見できるがん検診の方法は残念ながらありません。そのため、卵巣がんを疑った場合にさまざまな検査をしていくことになります。卵巣がんの検査方法は、腹部の触診や内診、エコー検査およびCT検査、MRI検査といった画像検査です。

腹部の触診や腟の内診を行い、直腸周辺に異常がないか確認する場合には肛門から指を入れることもあります。エコー検査は、卵巣や子宮をより詳細に診ることができるよう、腟の中に機器を挿入して行う経腟超音波断層法検査が一般的です。

最終的にがんであるか正確な診断をするには病理検査(身体の一部分から採取した細胞や、病変の一部を薄く切り出した組織を顕微鏡で観察する検査)が有効です。卵巣は骨盤内の深い場所にあるため、手術で卵巣を実際に摘出して最終的な診断を行います。

50代から気をつけたい子宮体がん

50代から気を付けたい子宮体がん

一般的に子宮がんと呼ばれるものは、「子宮体がん」と「子宮頸がん」にわかれます。ここでは子宮体がんについて取り上げます。

※ここでは詳しく取り上げませんが、「子宮頸がん」は20-40代にもも多い女性特有のがんで、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンと子宮頸がん検診(20歳以降、2年間隔)によってほとんどのがんを予防することができます。

原因と初期症状

子宮体がんは月経ではない時期や閉経後に出血があることで気づくケースがあります。ほとんどは、閉経後の不正出血で気付きます。ただし出血といっても、おりものに血が混ざった褐色の場合があるため注意が必要です。ほかには、下腹部の痛みや性交痛、排尿時の痛み、排尿困難などの症状が出る場合があります。

検査方法

子宮体がんの検査は、子宮内膜細胞の病理検査や病理診断、内診・直腸診などです。がんが広がっている範囲を確認するには子宮鏡検査や画像検査を行います。

病理検査および病理診断は、腟から子宮内に細いブラシやチューブのような器具を挿入し子宮内膜の細胞を採取してがん細胞がないかを調べます。内診は、片手の指を膣に入れもう片方の手を下腹部にあてながら子宮の形や大きさ、癒着などがないかを確認し、直腸を調べる場合は、肛門から指を入れます。

また、がんの形状や位置を直接確認するには、子宮鏡検査が有効です。腟から子宮体部に内視鏡を入れる方法で病理診断と併せて行うケースが多いでしょう。

50代以降から気をつけたい更年期障害

50代以降から気を付けたい更年期障害

50代以降の病気では、更年期障害に悩まされる方が多いでしょう。

原因と初期症状

更年期障害は、40代中頃から発症する可能性が高い病気です。卵巣機能の衰えによって女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで発症するとされており、代表的な症状としてはホットフラッシュがあります。手足の冷えや動悸といった症状の場合は、不眠などストレスや疲労などが原因のこともあり、他の病気との見極めが難しいケースがあるため注意が必要です。

検査方法

更年期障害と思われる症状がある場合は、まず自己チェックをしましょう。簡略更年期指数(SMI)は、症状の程度に併せて点数をつけ、合計点を元に更年期障害の可能性があるかどうかを確認できます。

また、血液検査も更年期障害の検査として有効です。女性ホルモン値をはじめとして、血糖値やコレステロール値、甲状腺機能などをチェックします。加えて血圧や尿検査、骨密度検査なども行うと良いでしょう。

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60代からは幅広い病気への備えも大切

60代からは幅広い病気への備えも大切

ここまでは、50代から気をつけたい女性特有の病気について見てきました。60代になると女性特有の病気に加え、幅広い病気に備える必要があります。

胃がん

まずは、胃がんの原因と初期症状、検査方法について見てみましょう。

原因と初期症状

胃がんの発生は、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)との関係が強いことが分かっています。ピロリ菌感染者がすべてがんになるわけではありませんが、ピロリ菌がいる場合は除去することが胃がんの予防に有効です。ほかにも多量の飲酒や塩分摂取、喫煙なども発症要因となっています。

初期症状としては、食欲低下や腹部の不快感、胸焼けなどがありますが、ほとんどの場合症状がありません。

検査方法

ず行ってほしいこと

50歳以降の方は1年毎に、胃バリウム検査もしくは胃内視鏡検査を受けてください。胃がんも早期発見によって死亡率低下が証明されているがんです。X線検査(胃バリウム検査)や内視鏡検査を行います。特に内視鏡検査は画像技術の向上により精度が増し、微細ながんまで見つけることが可能です。

血液検査で胃がんが疑われることもあります。貧血があった場合、悪性腫瘍が原因のケースがあります。また、腫瘍マーカーが高い場合、胃がんの可能性を疑いますが、必ずしもがんとは限らない場合もありますので、血液検査の結果だけでは判断ができません。反対に腫瘍マーカーが正常値でもがんの場合がありますので、複数の検査を受けることが大切といえます。

大腸がん

大腸がん

続いて、大腸がんの原因と初期症状、検査方法について見てみましょう。

原因と初期症状

大腸がんは、大腸の一番内側の粘膜に発生するがんで、正常な細胞が直接がん化するタイプと良性のポリープが大きくなる過程においてがん化するタイプがあります。日本人の場合、70%がS状結腸と直腸に発生し、大腸がんは男性では胃がん・肺がんの次に多く、女性では乳がんの次に多いがんです。食生活の欧米化や高齢化によって罹患する人は年々増えています。

早期は自覚症状がほぼありません。進行すると体重減少、便秘、下痢、便の狭小化などの症状がでます。また、がんの発生している場所によっても症状が異なります。

検査方法

ず行ってほしいこと

40歳以降で毎年便潜血検査を受けましょう。大腸がんも便潜血検査を行うことで死亡率減少効果が証明されていますので、きちんと受けられることをおすすめします。

精密検査としては、大腸内視鏡検査が多く行われます。カメラで大腸の中を観察することで、大腸の内側をきちんと調べポリープやがんがないかどうか直接診ます。必要に応じて一部を採取する組織検査を行い、顕微鏡で組織を診ることによって悪性のものがあるかどうか判断します。

CT検査では、リンパ節への転移や腹膜播種の有無を調べることが可能です。血流の良い肝臓や肺に転移していないかも調べます。

MRI検査は、リンパ節への転移などを調べることに適しています。特に肝臓MRIは、CT検査と比べてより小さな肝転移を見つけることが可能です。

PET検査を行うこともあります。放射性フッ素を含む薬剤を注射する方法です。糖を含む薬液を注射すると、がんが糖類を取り込む性質を利用してがんがある部位に薬剤が集積します。その集積を画像からとらえることができるものです。保険診療では、他の検査では再発・転移の診断が確定できない場合のみ検査の対象となります。

更年期関節症

更年期関節症

更年期関節症の原因と初期症状、検査方法について見てみましょう。

原因と初期症状

関節を形成する骨や軟骨などには女性ホルモンの受容体があります。女性ホルモンは関節の炎症などを抑える作用があるため、低下すると炎症を抑制できません。そのため関節痛が起こります。併せて、自己免疫性の病気である関節リウマチも更年期の女性に発症しやすいため、見極めが必要です。

検査方法

問診や診察により症状をチェックするとともに、関節痛以外にも更年期特有の症状がないかを総合的に判断します。レントゲンで骨の状態を、関節エコーでは関節の中の腫れや炎症を確認しますが、症状によっては血液検査も有効です。特に関節痛と似た症状を起こす変形性関節症や関節リウマチなどの可能性がないかも確認します。

50代からの疾患リスクにはどのように備える?

50代からの疾患リスクにはどのように備える?

50代からは病気のリスクに対してどのように備えれば良いのでしょうか。

気になる症状は早めに医療機関に相談する

気になる症状があればすぐに医療機関に相談するようにしましょう。50代になると、「疲れているからかな」「年齢のせいかな」などと自己判断をしてしまいがちです。

40代を過ぎたころから筋肉量や身体能力は低下し、心肺や肝臓、膵臓などの内臓機能も衰えてきます。若いときと比べて仕事内容や仕事量の調整が必要になるでしょう。自己判断をして受診を先延ばしにしていると病気が進行してしまう可能性があります。

定期的にがん検診、人間ドックで検査する

病気は早期発見が非常に大切です。なかには定期健康診断(法定検診)や特定健康診断(特定検診)を受けているから大丈夫と考えている方もいるでしょう。ここで注意したいことは、いわゆる法定健診や特定健診と呼ばれるものは、限られた検査しか行うことができないということです。

例えば、胃バリウム検査や胃カメラ、肝臓や膵臓などを調べる腹部超音波検査は法定健診に含まれていません。当然、法定検診であっても受けないよりは受けたほうが良いですが、50代以降の方であればより詳細に検査ができるがん検診や人間ドックを定期的に受けると安心です。

人間ドックの基本的な検査コースであれば、検査時間は1時間ほどです。結果も数週間程度で届くため、忙しい方でも負担なく疾病リスクを調べることができるでしょう。

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疾病に対する備えを見直す

疾病に対する備えを見直す

女性特有の病気はもちろん、がんなどに罹患すると治療が長期にわたり、経済面で大きな負担となります。入院や療養によって仕事ができず収入が途絶えてしまうことを想定して、準備をしておくことが必要です。医療保険に加入することで、いざという場合に備えることができるでしょう。

特に女性の場合は、女性特有の疾患に手厚い医療保険を選ぶとより安心です。

どのようにして保険を選べば良いか迷う場合や保険を見直したい場合は、ぜひセゾンのファイナンシャルアドバイスサービスにご相談ください。

ファイナンシャルプランナーへの無料相談はこちら

生活習慣を整える

年齢を重ねれば、身体能力に加えて内臓機能も落ちていきます。20代や30代のときと同じような生活習慣では身体に負担がかかってしまうことでしょう。女性特有の病気やがんの予防には、生活習慣の見直しが必要不可欠です。

がん検診などの受診を「費用がかかるから」と避けている方もいるでしょう。しかしよく考えてみてください。実際に病気になった場合、年間の医療費は数百万円必要となります。一方、がん検診であれば数万〜数十万円程度で済むでしょう。がん検診を受けて、予防や早期発見につなげることは経済的な損失を減らすことになります。

おわりに

50代以降でかかりやすい女性特有の病気について解説しました。女性特有の疾患はもちろん、60代以降は胃がんなどの罹患率も高くなります。病気になり治療が長引けば、精神的にも経済的にも負担が掛かるのです。

病気によっては日頃からのセルフチェックで発見できるものもあります。定期的にがん検診や人間ドックを受けることで、予防および早期発見につなげることが大切です。併せて、万が一のときに備えて医療保険を見直しておくとより安心でしょう。

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