更新日
公開日

月経前にイライラしたり不安になる時は、月経前症候群かも?月経前症候群の主な原因、症状、治療を紹介します。

月経前にイライラしたり不安になる時は、月経前症候群かも?月経前症候群の主な原因、症状、治療を紹介します。
甲斐沼 孟 医師

執筆者
甲斐沼 孟 医師

私は医師として15年以上キャリアを積んできました。これまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。全国学会での学術発表や論文執筆などの多角的な視点で医療活動を積極的に実践しています。さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門的知識を活かして誠心誠意対応します。

月経前症候群とは、月経前にイライラする、不安になるなど精神的あるいは身体的症状の総称を指しており、一般的には月経前の3~10日前後の日程で続いて、月経開始とともに症状が軽快または消失するものを意味します。 

日本では月経周期を有する女性の約80%が月経前に何らかの症状があるといわれており、それらの症状が日常生活に支障や困難を感じるほど強い程度を示す女性の割合は約5%程度存在するといわれています。特に思春期ごろの女性では月経前症候群の頻度がより多いとの報告もあります。今回は、月経前症候群の主な原因、症状、治療などを中心に解説します。

月経のメカニズム  

月経のメカニズム  

通常、女性には25〜38日間の性周期があり、月経の始まりから次の月経までがひとつの周期的なサイクルとなっています。まず性周期の前半部分では、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンというホルモンが多く分泌され、卵巣内の卵胞が成熟する「卵胞期」というフェーズになります。 

そして、性周期前半が開始されてちょうど14日目頃に成熟した卵胞から卵子が排出(排卵)されます。排卵後には妊娠に備えて黄体からエストロゲンとは異なるもうひとつの女性ホルモンであるプロゲステロンが生理的に多く分泌されるようになります。

この時期は「黄体期」と呼ばれ、二週間ほどして妊娠が成立しなければ、妊娠のために準備された子宮内膜が剥がれ落ちて月経が生じて、次の性周期に移行することになります。

月経前症候群を引き起こす2つの原因

月経前症候群を引き起こす2つの原因

過剰なストレス      

急な環境の変化や、ハードワークによる緊張状態が続いた時など、ストレスが溜まっていると、月経前症候群の症状を自覚しやすくなります。過剰なストレスに伴って、身体の免疫力が低下して自律神経が乱れているケースでは、月経前症候群の症状が重くなる傾向がありますので注意が必要です。 

女性ホルモンの変動

月経前症候群は黄体期に精神的、あるいは身体的なさまざまな症状が現れる疾患であり、日本人女性の70~90%が何らかの症状を自覚していると考えられています1)。 人によって大きく症状が異なる本疾患の原因ははっきりと判明していませんが、排卵後に訪れて月経前の黄体期に分泌される女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が急激に変動することによって発症と深く関わっているとも考えられています。 

黄体期の後半にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が急激に低下することによって、脳内ホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが、月経前症候群を引き起こす原因といわれています。 

月経前症候群に関連する知識

月経前症候群に関連する知識

症状

初めての月経は、多くの場合には小学生高学年、あるいは中学生頃に起こりますが、開始当初は月経周期も不順なことが多く、女性ホルモンの働きが安定するのは18歳前後といわれています。 

また、年齢を重ねて45歳前後になると女性は更年期の時期に入って、月経も不順になってやがて閉経期を迎えることとなります。18歳から45歳の時期は性成熟期と呼ばれており、女性が妊娠や出産をするために適切な時期と考えられている一方で、女性ホルモンの変動が認められるために女性を悩ます一面もあって、特に月経前症候群の典型的な症状はこの時期に現れると伝えられています。 

月経前症候群に随伴する精神神経症状としては、情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、睡眠障害などが挙げられます。また、自律神経症状として、のぼせや食欲不振、めまい、倦怠感などを自覚するケースもあります。 

身体的症状としては腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、そして乳房の張りなどの訴えがよくあります。特に、精神状態が強く前面に出るような場合には、月経前の不快な気分障害を認める場合もあります。 

月経前症候群では、月経前にありとあらゆる症状が毎月現れて、基本的には月経開始後には和らぐことが特徴的とされています。 

併せて読まれています

小島慶子のいっしょに「更年期」を語ろうよ|第1回 私の更年期の始まり

更年期症状だけじゃない?|女性の髪とエクオールの関係

【医師監修】40代の生理がこない原因とは?閉経や病気の可能性について解説

症状に関するチェックリスト

症状に関するチェックリスト

月経前症候群には主に身体症状と精神症状があります。月経前症候群の精神症状としては情緒不安定、ちょっとしたことでイライラ感を募らせる、抑うつ症状、不安を抱いて睡眠が障害されることなどが挙げられます。 

自律神経症状としては、全身ののぼせ感や食欲不振、頭重感やめまい症状、倦怠感や疲労感などを自覚することも経験されますし、身体的症状は、腹痛、頭痛、腰痛、全身のむくみ、そして乳房の張りなどの症状を自覚することも多いといわれています。 月経前症候群では、非常に多くの症状が出現するのが特徴であり、しかもこれらの症状は月経の3~10日ほど前から始まって月経の開始とともに改善傾向を示すことが多いです。 

まずは、仮に月経前に悩ましい症状を自覚した際には、それらの出現症状を記録して、月経周期との関連性を確認するように努めましょう。 

受診目安

受診目安

月経前症候群では通常月経が開始する3~10日ほど前から身体的、精神的に現れる不快な症状が出現して、これらの症状は月経が開始すると同時に改善するのが特徴的です。 

月経のある女性の大部分は月経前に何らかの不快症状を感じると一般的にいわれていますが、日常生活に支障を来すほど重度の症状を認める場合には月経前症候群を疑います。 

重症化すると著しい気分変調を来す気分障害と呼ばれる精神疾患のひとつとして捉えられることもあり、抗うつ薬などの使用が必要となることも多いことから心配であれば早期的に専門医療機関を受診して相談することが重要なポイントです。 

治療

一般的に、月経前症候群に対する治療策のひとつの手段として、薬物による治療、あるいは薬にたよらない治療方法が考慮されます。 比較的軽症な場合にはカウンセリングや生活習慣改善のための指導が行われ、生活習慣の改善によって月経前症候群の症状が改善されることも多くあります。 

月経前症候群にならないために、あるいは症状を改善させるためには、有酸素運動を主体とした適度な運動や禁煙、節酒、そしてストレスの解消などを中心に指導を行います。 月経前症候群に陥った際には、食事や運動によって改善を図るのと同時に、医薬品に頼って症状を緩和するのもひとつの選択肢であり、月経前症候群に関連する諸症状を緩和する専門治療薬から、特定症状にピンポイントで働きかける医薬品までさまざまな種類があります。 

精神神経症状や自律神経症状に対しては、精神安定剤や選択的セロトニン再取り込み阻害薬などの薬物療法(脳内の活性物質セロトニンを維持する治療法)を使用することが経験されます。 市販のビタミン群が含有されたサプリメント療法、漢方薬を使用する東洋学的漢方療法やピルなどを用いた排卵抑制療法も月経前症候群の症状を緩和させる治療選択肢のひとつとして捉えられています。

肩こりやのぼせ症状がある場合には、漢方薬「桂枝茯苓丸料(けいしぶくりょうがん)」は生理痛に、「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」は便秘などの体質を改善させる効果が期待できます。 

また、全身や特に頭が重く感じて嘔吐やめまい症状を随伴している際には、「当帰芍薬散料(とうきしゃくやくさん)」を服用することで頭重感やめまいのみならず、冷え症や肩凝りにも有効的に働きますし、「五苓散料(ごれいさん)」は頭痛や浮腫が強く認められる場合に処方される漢方薬です。 

自宅でできる改善方法 

自宅でできる改善方法 

月経前症候群が重症化すれば、イライラ感や怒り感情が強くなって他者を無意識に罵倒したり、攻撃したりすることもあるのみならず、そういった症状を周囲に十分理解してもらえない辛さから自ら社会離脱して引きこもりになってしまうこともあります。 

このような月経前症候群の症状を未然に予防するために、月経に関する自分のリズムを知って気分転換やリラックスする時間をつくり、ご自身が心地良いと思えるようなセルフケアを探してみることが重要です。 

性格的に律儀で真面目、几帳面で完璧主義の方は月経前症候群になりやすいので極力ストレスを感じずに対処策を多数持っておかれることをおすすめします。 

月経前症候群にならないためには、日常的にできるだけカルシウムやマグネシウムを積極的に摂取し、カフェイン、アルコール、および喫煙習慣は控えたほうが良いといわれています。植物のエストロゲンとも呼ばれる女性ホルモンに似た働きのある豆腐、豆乳などに含まれるイソフラボンやブロッコリーなどに含有されている神経伝達物質の代謝に関与しているビタミンEを摂取してリラックスできる場合もあります。

改善しない場合は産婦人科専門医や精神科専門医へ相談しましょう

改善しない場合は産婦人科専門医や精神科専門医へ相談しましょう

月経前症候群は、通常では月経が開始する3日から10日ほど前から吐き気や頭痛、眠気などの身体的症状や不安感やイライラする感情など精神的に不快な症状を呈することが知られています。 

一般的に、月経のある女性の大部分は月経前に何らかの不快症状を感じるといわれており、日常生活に支障を来すほどにイライラする、不安を感じるなどの症状を認める場合には月経前症候群を疑います。 

このようなさまざまな症状を自覚して、生活習慣を見直しても状態が改善しない場合には、具体的にいつからひどい症状が出現して続くのかをセルフチェックしたうえで産婦人科専門医や精神科専門医の担当医に速やかに相談しましょう。今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

引用文献

1)松田 香, 白石 三恵:月経前症候群の症状を有する女性へのアロマセラピーの効果に関する系統的レビュー ―精神症状・身体症状・自律神経活動に着目して―. 日本助産学会誌. 論文ID: JJAM-2021-0019. Vol. 36 (2022), No. 1 pp. 15-28 

DOI https://doi.org/10.3418/jjam.JJAM-2021-0019

よく読まれている記事

みんなに記事をシェアする

ライフイベントから探す

お悩みから探す

執筆者・監修者一覧

執筆者・監修者一覧

セミナー情報

公式SNS

おすすめコンテンツの最新情報をいち早くお届けします。みなさんからのたくさんのフォローお待ちしています。