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70代、80代になっても筋力を維持させる方法

正木 伸城(記事を編むライター)

執筆者

記事を編むライター

正木 伸城

15,000冊超の読書で得た知識を武器に生活やビジネス上の出来事を言葉にし、思想的に深堀りする記事を編むのを得意としているライター。その他、マーケターやフリーランス広報なども生業にしている。「社会的弱者の方の声を聴診器のようにして聞いて、自身が拡声器となってその声を社会に広げる」が自身のテーマ。

人生100年時代といわれて久しいですが、いつまでも健康な体でいたいとは誰もが思うものです。しかし私たちの身体は、否応なしに加齢によって肉体的に衰えていきます。私たちの筋力は、30歳くらいをピークに減少していくといわれています。

また、持久的な力よりも瞬発的な力を発揮する筋肉の方が衰えやすいということが分かっています。もし、あなたが「立つ」「歩く」「姿勢を保つ」などの日常的な行動の基盤となる動きが充分にできなくなったら、どう思われるでしょうか。多くの方がQOL(生活の質)の低下に意気消沈するかもしれません。 

このような筋肉自体の変化について、トレーニングで対抗することはできるのでしょうか。ここでは、70代、80代になっても筋力を可能な限り維持するための方法を紹介します。 

1.適切な運動の仕方によって高齢者の筋力は維持できる 

私たちの筋肉は、細い線維がたくさん束になった状態で構成されています。その繊維を筋線維と呼びます。筋線維の数は、若い頃には約60万本ありますが、80歳になる頃には35万本ほどにまで減少することが知られています。筋力の衰えについてはさまざまな研究がありますが、筋肉量を基準に考えると、20歳ごろの筋肉量が、70歳になる頃には男女ともに30%低下するとされています。10年あたり6%ずつ減少していくという計算になります。 

それにともない、高齢者になると、活動力や体力が低下します。また、過去に病気やケガの経験があると、それを契機にあまり動かない生活へと移行しやすくなり、その結果さらに活動性が弱まるということが起こり得ます。すると、筋肉の萎縮も急速に進行してしまうでしょう。しかし、適切な運動を続けていれば、高齢者であっても筋力の維持を目指すことはできます。 

これもさまざまな研究で明らかになっていますが、若いときから運動を継続してきた人は、筋肉量が減少しにくいといわれています。しかし「それは分かっているけれど、若いときにほとんど運動もしていないし、今からでは遅いのではないか」と考える方も多くいるでしょう。ですが、「今からでは遅い」ということはありません。適切な方法で運動をすれば、高齢者の筋力トレーニングにも効果がでてきます。 

「運動」といっても、ウエイトトレーニングやスクワットのような激しい動きを想像しなくてもけっこうです。たとえば階段を登ったり、バス停まで歩いたり、掃除や洗濯などの家事を通して体を動かしたりすることで、活動を促進することができます。

ちょっとした合間の時間や生活に必要な活動で体を使う(=身体活動)だけで、健康増進効果は見込めます。身体活動は、「運動」と「生活活動」に分けられますが、特に高齢者は、運動だけでなく、生活活動も含んだ身体活動をしていくことで、筋力の維持を夢で終わらせないという状況をつくりだすことができます。 

とはいえ、ムリは禁物です。高齢者の場合、安全性を考慮し、一般的には全身の骨や筋肉を程よく動かす「有酸素運動」が効果的です。具体的には、ウォーキングやジョギング、水泳などがあります。 

2.上半身・下半身を鍛えるエクササイズ 

さて、ここでは、筋肉のなかでも「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)」と呼ばれる筋肉に注目します。抗重力筋とは、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉のことです。全身には大体400ほどの筋肉がありますが、特に高齢者はこの抗重力筋を鍛えていくことが大切になります。 

筋トレというと、億劫で、諦めがちになりますが、そこは踏ん張りどころです。筋力トレーニングによって、高齢者にとって大切な抗重力筋を鍛えることができます。それぞれの筋肉の位置や動作を意識しながら、トレーニングをすると、より効果的です。ここでは、上半身と下半身の筋力アップを図るエクササイズをすこし紹介します(ただし、筋力トレーニングをする際には、かかりつけ医に必ず相談してから行ってください)。 

上半身の筋力を高めるエクササイズ 

【手のひらの押し合いっこ】 

  1. 椅子に腰かけて、胸の前で手を合わせ、ひじを開きます。脇はこぶし1個分ほど開きます。 
  2. 合わせた両手を押し合うように力を入れ、同時に胸にも力を入れます。 ※ 合わせた手は、身体の真ん中に位置するように力を出し合いましょう。 
  3. 5秒ほど力を入れたら、ゆっくりと力をゆるめます。 
  4. 無理のない範囲でゆっくりと、①~③ をくり返します。(5~6回を1日3回が目安です) 

【ポイント】 

  • 動作の最中は、呼吸を止めないようにします。 
  • 胸(大胸筋など)や背中(広背筋など)の筋肉を意識しながら行いましょう。 

下半身の筋力を高めるエクササイズ 

【椅子に座ったままできるスクワット】 

  1. 椅子に腰かけて(支えが必要な方は机に手をついて)、足を腰の幅に開きます。 ※かかとは床にしっかりつくようにしましょう。 
  2. 上半身を少し前に傾けて、目線は前方に向けます。 
  3. かかとに体重をのせて、太ももに力を入れます。 
  4. お尻をしめるように、しっかりと立ちます。 
  5. 無理のない範囲でゆっくりと、①~④をくり返します。( 5~10 セットが目安です) 

ポイント】 

  • 動作の最中は、呼吸を止めないようにします。 
  • 立つとき・座るときは、膝がつま先より前に出ないように注意します。 
  • 太ももの前と後ろ(大腿四頭筋・大腿二頭筋)、お尻(大臀筋)の筋力を意識しながら行いましょう。 

参考:https://www.azumien.jp/contents/method/00039.html 

3.かかりつけの医師に相談しつつ無理のないトレーニングを 

日常生活に必要な姿勢を保つ能力、移動する能力の向上は、生活機能やQOL(生活の質)の維持・向上につながります。筋力が強くなり、筋肉量が増えると関節への負担が減るため、つらい腰痛や膝痛の軽減にも有効です。 

また、嚥下(飲み込み)に関わる筋力を鍛えて嚥下機能を維持・改善することで、低栄養や誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクを減らし、おいしい食事を楽しむことができます。反対に、足や腹筋、背筋の筋力が低下すれば膝や股関節、腰などの痛みが起きたり、すでに傷めている方はさらに悪化することになります。歩行中にバランスが崩れたときに踏ん張ったり、身体を立て直すこともできずに転倒する、という事態も起こり得ます。 

繰り返しになりますが、高齢者が筋力トレーニングを行うときは、がんばり過ぎないことが重要です。高齢者の筋組織は若い方に比べて傷つきやすいため、思わぬケガや病気、関節の痛みなどにつながるおそれがあります。運動を始める前に必ずかかりつけ医に相談し、体調が悪いときは無理をせず、ご自身のペースで取り組みましょう。 

そして、運動は楽しくないと続けることがなかなか難しいものです。ウォーキングやストレッチ、ラジオ体操、水泳などのなかから、自身が楽しくできる運動を見つけてみてください。運動が苦手な方は、毎日の家事や買い物、庭の手入れ、散歩などで身体を動かしてみましょう。それだけでも健康寿命を延ばせます。 

筋力トレーニングとともに、日ごろからこまめに身体を動かして衰えやすい筋肉をしっかりつくることが大切です。何歳になっても、筋肉は鍛えて発達させることができるといわれています。いつまでも若々しく元気でいるために、周囲の人との交流を楽しみながら活動的な毎日を過ごしましょう。

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