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貧血予防の「薬膳」めまいや立ちくらみを感じる方必見

貧血予防の「薬膳」夏バテを感じる方必見
瀬戸 佳子 国際中医薬膳師・登録販売者

執筆者
瀬戸 佳子 国際中医薬膳師・登録販売者

早稲田大学理工学部卒、同大学院理工学研究科修了。北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)薬膳科卒業。会社員を経て、東京・表参道の「源保堂鍼灸院」併設の薬戸金堂で、漢方相談を行いながら東洋医学に基付いた食養生のアドバイスを行う。雑誌やWEBセミナーの講演などでも幅広く活躍。 『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』『季節の不調が必ずラク~になる本』(共に文化出版局)が好評発売中。

貧血というと「クラっとめまいがする」という症状だと思っている人が多いですが、めまいだけでなくさまざまな不調の原因です。日本人女性の貧血の割合は高く、女性の4割(生理のある年代だと65%)が貧血、または隠れ貧血だといわれています。

また、最近は女性だけでなく男性の貧血も増えているようです。 貧血を解消するだけで、多くの不調が改善することもよくあります。夏バテから貧血がさらに進行する人も多い時期です。手軽にできることから貧血対策をしっかりしていきましょう! 

東洋医学の貧血、『血虚』とは?

東洋医学の貧血、『血虚』とは?

西洋医学でいう貧血は、東洋医学でいうと「血虚(けっきょ)」に入ります。血虚は、単純に「血液が足りない」ということだけでなく、もう少し広い範囲を指します。 

血虚というのは「血(けつ)」が足りない状態ということ。 東洋医学でいう「血(けつ)」は血液だけでなく、精神活動や身体を養う作用まで指します。

実際に患者さまを診ていても、健康診断では貧血といわれないのに東洋医学的には「血虚」に当てはまることがとても多いです。 

血の働きは、全身を養い栄養や酸素を運んだり、組織に潤いを与えたりする作用があります。これは血液が栄養や酸素を送り、老廃物を回収することと同じです。

一番異なることとしては、「血には精神的に安定させる」という作用があります。血虚になると、気持ちが落ち込みやすくなったり、睡眠が安定しなくなったりすることがとても多いです。 

では、実際に「血虚」に該当しないか、次の項目でチェックしてみましょう。

こんな症状は「血虚」かも

血虚のチェックリスト

  • めまい、立ちくらみ
  • 動悸がする
  • 疲れやすい、体力がない
  • 不安感がある
  • 落ち込みやすい、涙もろい
  • 寝入りが悪い、途中で起きる
  • 物忘れしやすい
  • 夜になると目が見えにくくなる
  • 視力の低下やドライアイが気になる
  • 月経量が少ない
  • 髪の毛が抜けやすい、ツヤがない
  • 爪が割れやすい
  • 皮膚が乾燥する、ツヤがない
  • 冷え性
  • 便秘
  • コロコロした便が出る

血虚(貧血)と関係あるのか、と思う症状もあるでしょうが、実はとても関係することが多いです。

特に「気分が落ち込みやすい」、「夜になると目が見えにくくなる」、「爪が割れやすい」、「便秘気味でコロコロした便が出る」、は血虚(貧血)の典型症状です。この4つの症状がひとつでもあれば、他の項目が当てはまらなくても血虚(貧血)の可能性が高いです。

血虚になる原因

血虚になる原因

ではなぜ血虚になってしまうのでしょうか。血虚の原因は大きく分けて3つの原因があります。

1つ目は、食事中の血の材料の不足です。

2つ目は、食べても血がうまく消化吸収されていない、つまり胃腸が弱いということです。

2つ目は、過労や睡眠不足など、血の消耗量が多過ぎる、ということです。

食事中の血の材料の不足

これは単純に食事の量が少ないという場合と、食事中の血の材料の割合が少ないということです。例えば、夏バテして食欲が低下していつものようにしっかり量を食べることができない場合は、貧血になることが多いです。

「身体がだるい」と理由で断食する人がいますが、貧血タイプの人は断食をすると補給が一気に絶たれてぐったりしてしまうことがあるので注意が必要です。 

また、最近多いのが植物性の食事中心の方です。動物性のタンパク質が不足すると、やはり貧血になります。食事はバランス良く、頻度もできれば3食しっかり摂るのがおすすめです。

胃腸が弱い

基本的に血の材料は食べ物で、それを受け止めるのは胃腸の役割です。しかし、胃腸が弱いと血の材料になるものをいくら食べても身体の栄養になってくれません。例えば、食べても胃もたれしてしまったり、下痢になってしまったり、ということがあります。 

元々胃腸が弱いというケースもありますが、貧血の人で多いのが自ら胃腸の調子を下げていることです。

貧血になると頭がぼーっとしがちになるので、甘いものを食べ過ぎてしまう傾向があります。ちょっとだけ、と思っていたのにチョコレートを一箱食べてしまったり、なんやかんや言い訳をして食後のデザートを毎日のように食べていたりしがちです。

また、貧血になると身体の潤いが不足するので、喉の渇きや口の乾燥感も強くなります。そうすると口がさっぱりするものが欲しくなるので、冷たいものやナマモノを食べ過ぎてしまうことがあります。

消耗する血が多過ぎる

血を消耗し過ぎていて、補給が間に合っていないという状態です。お金で考えるとわかりやすいと思うのですが、血をお金だとするといくらお金がたくさんあっても、浪費すれば減ってしまう、ということです。ご自身の収入(血を補給できる量)と支出(血を消費する活動)とのバランスが合っているか見直すと良いでしょう。 

血を消耗しやすい行動

  • 働き過ぎ
  • 運動のし過ぎ
  • 目の使い過ぎ
  • 気の使い過ぎ
  • ストレス
  • 考え過ぎ
  • 寝不足

筋肉は血液の消耗量が激しい部分なので、たくさん使うと貧血になります。激しい運動をしたり、労働時間が長かったりすると血液をたくさん消耗します。

また、目が見えるのは東洋医学では「精血(せいけつ)」といって、血液の一番きれいな上澄で見えていると考えます。目を酷使すると血液も酷使してしまうので、血液が消耗してしまうのです。

気の使い過ぎ、ストレス、考え過ぎ、というのは東洋医学的に考えると血の精神活動を支える部分になります。身体は動かしていなくても、頭をたくさん使えばエネルギー不足になりますし、気をたくさん使えば気疲れしてしまうのです。

寝不足は、身体を動かしている時間そのものが長くなってしまうので、血も消耗してしまっているのです。単純に寝る時間が遅いだけでも血は消耗するので気をつけなくてはいけません。

貧血改善の薬膳

血虚を改善するためには、先ほどの原因となることをできるだけ減らすことが大切です。あらためて血虚にならないように生活習慣を整理してみましょう。 

貧血を改善する生活習慣

  • 肉や魚をしっかり食べる
  • 食事を欠食しない
  • 冷たいもの、甘いもの、ナマモノをできるだけ控える
  • 過労や寝不足を避ける
  • 目の疲労を避ける
  • 頭の疲労やストレスを減らす

なかなか難しいこともあると思いますが、その場合は血を補うものをできるだけ積極的に摂るようにしましょう。

毎日の食習慣でぜひ摂って欲しい食材をいくつかご紹介いたします。食べやすいもの、身近なもので取り入れてみてください。 

レバー

レバー

血虚を改善するために、まず一番効率的なのはレバーです。特に「鳥目」といって夜に視力が落ちやすい人はぜひ食べて欲しいです。自分で作るのが苦手、という人は、惣菜でレバニラを買ってきたり、焼き鳥を買ってきたりするのでも良いでしょう。週に一回くらいは取り入れると良いでしょう。

ツナ

ツナ

マグロは血を補うのに良い食材ですが、お刺身ではなく加熱したものがおすすめです。手軽に食べれるのがツナ缶です。貧血の人は、いつもの食事にプラスして食べると貧血解消に良いでしょう。なお、カツオの缶詰でもOKです。オイルのものでも、水煮のものでも食べやすいもので大丈夫です。できるだけ添加物の少ないものを選ぶと良いでしょう。

かつお節

かつお節

お肉やお魚が食べたくても胃がもたれてしまう、という人もいると思いますが、その場合はかなり胃腸が弱っていて、少しずつタンパク質に慣れていかなければなりません。胃腸が弱い人でも摂りやすいタンパク質がかつお節です。

かつお節は発酵食品でもあり、消化を促してくれるもの。また、乾物のため水分が少なく、少量でもしっかりタンパク質が含まれています。ご飯やおひたし、お味噌汁などできるだけいろいろなところにトッピングするのがおすすめです。

貧血の解消は一朝一夕には解消しません。食事や生活習慣を見直して1週間、1ヵ月と少しずつ症状が改善することが多いです。半年くらい継続できると、数値でもしっかり改善していることが多いです。

東洋医学では「女性の本は血」といいます。体調の管理の上でも、ホルモンバランスを整える上でも、美容のためにも血液が潤沢にあることがとても大切ですので、血をしっかりアップさせて過ごしていきましょう。

書籍紹介

季節ごとに起こりやすい冷え、花粉症、熱中症、イライラ……などの心身の不調に対して、東洋医学の観点から「食べ方」や「暮らし方」を解説しています。「薬膳養生カレンダー」を参考にぜひ養生を始めましょう!

おうち薬膳養生12か月 瀬戸佳子

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