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運動不足で体が悲鳴?整体師が教える見逃しがちな症状

運動不足で体が悲鳴?整体師が教える見逃しがちな症状
佐藤 啓

監修者

株式会社link代表取締役

佐藤 啓

隠れ家整体院~felice.~【フェリーチェ】院長。整骨院での院長歴5年、施術実績約6万人。犬の歪みも不調も解決するドッグ整体も実施。人と犬を健康にするための活動に従事している。

長時間のデスクワークが続くと、ふと感じる身体の不調。肩こりや腰痛、なんとなく疲れが取れない…そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。実は、その原因のひとつが「運動不足」にあるかもしれません。本記事では、整体師の佐藤啓さんに伺った運動不足が引き起こす具体的な症状や、その改善方法について詳しくご紹介します。

20歳以上の半数に1人が週1回以上の運動・スポーツをしている

最新の調査結果によると、20歳以上の半数以上の人が、週に1回以上の運動やスポーツをしているといいます。言い換えると、約半数近くの人が週1回も運動をしていないという結果に。男女別に見ると、20代から50代の働く世代では男性の運動率はわずかに増加しましたが、女性の運動率は減少しており、男女間の運動率の差が年齢を増すごとに広がっていることがわかります。

20歳以上の半数に1人が週1回以上の運動・スポーツをしている
出典:スポーツ庁 スポーツの実施状況等に関する世論調査

スポーツ庁では、「成人の週1回以上のスポーツ実施率が70%になること、成人の年1回以上のスポーツ実施率が100%に近づくこと」、「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2回以上実施し、1年以上継続している運動習慣者の割合の増加」を目指すという目標を掲げています。

しかし、運動不足はなぜそんなにも問題なのでしょうか?

運動不足が寿命にも影響?死亡リスクとの怖い関係

運動不足は、私たちの健康にさまざまな悪影響をもたらし、寿命を縮めるリスクも秘めています。運動をしない生活が続くと、心臓病、高血圧、糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まります。これらの病気が悪化すると、命に関わる事態に発展する危険性も高まるのです。

私自身、学生時代からサッカーを続けていましたが、社会人になって忙しくなり、9年間運動から離れていました。その間、心身に不調を感じることが多く、つらい日々を送っていました。独立後、再びサッカーを始めたところ、心身ともに回復してきたのを実感しています。特に、20代から30代にかけては、体力的な衰えを強く感じていました。しかし、定期的に運動を続けることで、以前のような体力を取り戻しつつあります。運動をすることで、心もリフレッシュでき、仕事にも良い影響が出ていると感じています。

運動不足が引き起こす身体の不調とは?

運動不足が引き起こす身体の不調とは?

現代人にとって、長時間同じ姿勢でのデスクワークや、運動不足はもはや避けて通れない問題です。同じ姿勢で座ったままの状態が長時間続くと、私たちの体はさまざまなサインを出し始めます。運動不足が引き起こす不調について詳しく見ていきましょう。

肩こりと背中の痛み

まず挙げられるのが、辛い肩こりと、背中の痛みです。長時間の座り仕事が続くと、筋肉が緊張し、肩こりや背中の痛みを引き起こします。

特に、姿勢が悪くなると肩周りや背中の筋肉が緊張しやすくなり、痛みや不快感を感じることがあります。

肩が張ってきたり、気づくと頭痛が出てきたりする状態は、慢性症状に繋がることが多いです。慢性的な症状を引き起こす大きな要因となるのが運動不足。実際、運動習慣を取り入れることで、ほとんどの体の不調を改善できます。

腰痛と骨盤の歪み

現代人の多くが悩まされるのが腰痛です。その原因の一つにも、運動不足が挙げられます。運動不足は、腰部の筋肉を弱らせます。その結果、姿勢のバランスを崩しやすくなります。

特に、骨盤の歪みは腰痛を悪化させる大きな要因です。運動不足が続くと、骨盤を支える筋肉が弱まり、骨盤が本来の位置からずれてしまうことがあります。

長時間座りっぱなしの姿勢は、背もたれに深く寄りかかると、骨盤が後ろに傾きがちです。この状態になると、骨盤が後ろに倒れ、腰の力が弱くなり、背骨が湾曲して猫背になっていきます。この姿勢が続くと、内臓が圧迫され、背骨から出る神経が内臓や筋肉に対して適切に働かなくなります。結果として、神経からの指令が弱まり、内臓の働きが低下し、腹筋や背筋が硬くなります。これが長期間続くと、身体に不調が現れるのです。

慢性的な疲労感と体力低下

運動不足になると、筋肉量が減り基礎代謝が低下します。体はエネルギーを消費しにくくなり、余分なエネルギーが蓄積されてしまいます。また、血液循環が悪くなり、疲労物質が溜まりやすくなることも。運動不足が続くと、ストレスを感じやすくなり、それがまた疲労感に拍車をかけます。慢性的な疲労感に悩んでいる方は、まずは軽い運動から始めてみましょう。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲から少しずつ体を動かすことが大切です。

長時間座っていると体内のインナーマッスルの機能が低下し、体幹がスムーズに動かず歩行や立ち姿勢が不安定になります。例えば身体が右に倒れたときには、左側のインナーマッスルが無意識に戻そうとします。常に調整が必要な状態では、インナーマッスルに疲労が蓄積し、身体にも負担がかかります。

関節のこわばりと痛み

運動不足は、基礎代謝を低下させ、体内に疲労物質が蓄積されやすくなります。そのため、慢性的な疲労感に悩まされることが増え、日常生活にも支障をきたすことがあります。

関節は、運動によって潤滑油のような役割を果たす関節液が分泌され、スムーズに動くことができます。しかし、運動不足によって関節が動かなくなる時間が長くなると、関節液の分泌が減り、関節がこわばり、痛みを感じやすくなります。

関節を十分に動かさないと、関節がこわばることがあるので、意識的に動かすことが大切です。関節を十分に使わないと、身体は自然に「ここまででいいや」と学習してしまいます。このような習慣が続くと、関節がこわばる原因になります。最低でも2日に1回、できれば3日に1回は、関節をしっかり動かすことが身体には必要です。股関節を開く運動や、全身の関節を動かすラジオ体操などを取り入れてみましょう。

血流停滞による頭痛

「パソコンを使いすぎると目が疲れて頭痛がする」というのは、よく耳にする話です。確かに、長時間の画面注視は目の疲れに繋がり、頭痛の一因となることがあります。しかし、頭痛の原因はそれだけではありません。

一般的に、頭痛には大きく分けて「緊張型頭痛」と「偏頭痛」の2種類があります。

緊張型頭痛は、首や肩の筋肉が長時間緊張することで、血管が圧迫され、酸素や栄養が脳に十分に行き渡らなくなることが主な原因です。

一方、血管が拡張することでズキズキとした拍動性の痛みが生じるのが偏頭痛です。偏頭痛の引き金となる誘因はさまざまですが、実は、首や肩の筋肉の緊張が間接的に血管に影響を与えているケースも多いのです。長時間のデスクワークなどで同じ姿勢を続けていると、首や肩の筋肉が緊張し、血流が悪くなります。この状態が続くと、脳への血流も悪くなり、頭痛を引き起こす可能性が高まります。

偏頭痛が起こる原因のひとつとして、足の血液循環が不十分であることが挙げられます。心臓は血液を全身に送る役割を果たしていますが、足の血液循環が悪くなると、心臓はより多くの努力をして血液を送ろうとします。
しかし、足だけの血流を増やすことは難しく、結果的に頭に血液が集まりすぎて偏頭痛を引き起こすことがあります。偏頭痛を改善するには、足や骨盤の血流を良くすることが効果的です。筋力低下が原因で血液循環が悪くなっている場合が多いため、足の筋力を鍛えることで、無駄な血液の集中を防ぎ、偏頭痛を軽減することができます。むくみも筋力低下からくることが多いため、筋力を増やすことが重要です。

運動不足は人の「幸福度」をも左右する

運動不足は、身体だけでなく心の健康にも悪影響を与えます。身体を運かすことで脳内で「幸せホルモン」と呼ばれるエンドルフィンやセロトニンが分泌され、気分が爽快になり、ストレスが軽減されます。

しかし、運動不足が続くと、幸せホルモンの分泌量が減少し、ストレスや不安、うつ状態になりやすくなります。また、運動をすることで人との交流が図れ、孤独感を解消する効果も期待できます。社会的なつながりは、心の健康を保つ上で非常に重要。運動は心にも大きな影響を与えているのです。

整体師に聞く!運動不足の症状をチェックするポイント

整体師に聞く!運動不足の症状をチェックするポイント

ここからは、佐藤さんに、自分が運動不足に当てはまるのかどうかをチェックする際のポイントについて解説していただきます。1つでも当てはまる人は、自身が運動不足であることを認識し、改善に取り組みましょう。

慢性的に症状が出ている

まず、症状には「急性」と「慢性」の二つがあります。急性のような一過性のものではなく、肩こりや腰痛、背中の張り、体のだるさなどの症状が慢性的に出ている場合は、基本的に運動不足が関係していると考えると良いでしょう。

慢性症状とは、急性の怪我や外力によるものではなく、徐々にダメージが積み重なって出る症状です。痛みへの耐性は人によって異なりますが、たとえば「月に1回整骨院に行かないと耐えられない」レベルの痛みや、日常的に続く痛みで「我慢すれば何とかなる」と感じるケースも慢性症状に該当します。

肩こりや首の痛みが蓄積していくと、頭痛など他の症状も引き起こされることがあります。こうした積み重ねが慢性症状を引き起こします。多くの方が慢性症状に当てはまると考えられますが、運動不足が原因であることが多いのです。

末端冷え性である

末端冷え性も運動不足と関係しています。特に寒い季節になると、末端冷え性が気になる方が増えると思いますが、これも血流の問題です。筋力が低下すると、末端部分に血液を運ぶ能力が減少します。簡単に言うと、筋力が落ちることで血液の循環が悪くなり、末端が冷えやすくなるのです。

末端冷え性は特に女性に多いとされています。女性は一般的に筋力が少ないため、筋力の低下が早く進む傾向があります。

食欲が低下している

食事量が減るのは、エネルギー消費が少ないことが原因です。運動不足により代謝が悪くなり、1日に消費するエネルギーが少なくなると、「これだけのエネルギー消費ならこれだけ食べれば大丈夫」となりがちです。しかし、適度に運動してエネルギーを消費することで、身体が必要とするエネルギー量も増えるため、自然と食事量も増えるのです。

年齢とともに食事量が減るのは、運動不足や筋力の低下が影響しています。運動不足によって内臓機能も低下し、身体の代謝が悪くなるため、結果的に食事量も減ってしまいます。病気など、心身に問題がないのであれば、運動をすることで、食事量の問題も改善することができます。

筋肉は何歳からでも鍛えられる!運動不足を改善するエクササイズ

筋肉は何歳からでも鍛えられる!運動不足を改善するエクササイズ

「筋肉トレーニングなんて、若い人がするもの」と思っている方も多いのではないでしょうか?しかし、実は筋肉は年齢に関係なく鍛えることができるのです。運動不足が気になる方、体力低下を感じている方も、今日からできる簡単なトレーニングをはじめましょう。

人体の組織の中で、年齢に関係なく鍛え続けられるのは筋肉だけです。実際の体験として、以前の職場で高齢者向けの転倒骨折予防教室を担当していた際のことをお話しします。そのとき、88歳の女性と腹筋で競い合ったのですが、私が当時23歳だったにも関わらず、そのおばあちゃんに負けてしまいました。
驚くべきことに、そのおばあちゃんは、体操以外に特別な運動をしていないそうです。日常的な活動は裁縫くらいで、畑仕事や他の運動は行っていません。運動の経験も特別なものはなく、高齢になってから運動を始めたそうです。今回その体操からエクササイズをご紹介しますので、ぜひ挑戦してみてください。

壁と重力を利用して簡単!「開脚ストレッチ」

壁に足がつくように寝転んで、お尻が壁にピタッとくっつくように足を壁に這わせていきます。

壁と背中がL字状になったら、足を広げて開脚します。足の位置は壁に沿わせ、3分間その姿勢をキープしましょう。壁と重力のサポートを利用することで、無理なく効果的に筋肉を伸ばすことができます。特に股関節や内腿の柔軟性が改善されるので、日常生活の動きが楽になります。

足を開いた状態でキープすると、重力で自然と開脚されていきます。重力を利用した無理のないストレッチで股関節まわりに効きますよ。

インナーマッスルを鍛える「足上げ腹筋」

椅子に90度の角度で深く座った状態で、両足を揃えます。片足をまっすぐ上に上げます。この状態で数秒キープし、ゆっくりと元の位置に戻します。10回を1セットとして、3セットを目安に行いましょう。この運動は腹部の深層筋を刺激し、体幹の安定性を高めるのに役立ちます。

この姿勢で、インナーマッスルである腸腰筋が活発に使われます。腿上げをする際は、足の力だけで上げることを意識し、手を使わずに行いましょう。股関節周りが苦しくなってくるのが正常な反応です。その部分に苦しさを感じる場合、正しい動きができている証拠です。お腹が痛くなる場合は、動きにに問題があるかもしれません。

首の可動域を広げる「回旋運動」

後ろを振り向く際、左右に首をまわすことを「回旋運動」といいます。「回旋運動」は、首の柔軟性を改善し、可動域を広げることで、首の筋肉をほぐし、姿勢改善にもつながります。直立した状態で、ゆっくりと首を右に回し、さらに左に回します。動作は滑らかに、無理のない範囲で行いましょう。各方向に10回ずつ回旋させ、3セット行うのが理想です。

首を横に振り向く動作を行ったとき、正面から後ろまでしっかりと見えることが正常な回旋動作です。もし首を振り向いたときに首の後方まで見えなかった場合、それは可動域が不十分であることを示しています。1日に30回首を振り向く動作を行うことで、首の状態を良好に保つことができます。

運動は疲れたら休む、再開を1日3回繰り返すだけ

運動をする際の基本的なポイントは、「疲れたら休む」こと。無理をせず、自分の体が疲れを感じた時点で運動を中断することが大切です。一日の運動を1回で済ませるのではなく、1日3回に分けて行う方法も有効です。運動を1日3回繰り返すことによって、体全体が適度に刺激され、効率よく筋肉を鍛えることができるため、続けやすく、成果も上がりやすくなります。

また、運動の効率を最大限に保つためには、1回の運動時間を2時間以内に抑えましょう。2時間を超えると、身体の効率が下がり、疲労回復が遅れる可能性があり、長時間の運動は逆効果になってしまいます。

運動の目標は、各自の筋肉量や体力に応じて異なるため、「自分が疲れるまで行う」のがベストです。筋肉を使い過ぎて「これ以上は無理」と感じたら、その時点でやめて構いません。運動不足の方は、最初はすぐに疲れてしまうこともありますが、それでも大丈夫です。

まとめ:運動不足による身体の不調を防ぐために

まとめ:運動不足による身体の不調を防ぐために

肩こりや、腰の痛みなど、運動不足が引き起こすさまざまな身体の不調を防ぐためには、日常的に簡単な運動習慣を取り入れることが重要です。特にスポーツは、体の関節をフルに使い、全身の筋肉をバランスよく鍛えることができます。大切なのは自分に合った運動量を見つけること。無理なく楽しみながら、運動不足を解消しましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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