火災保険も他の保険と同様に、家族や家の状況の変化にあわせた見直しが必要です。火災保険は中途解約ができ、解約返戻金が支払われます。今回は火災保険の見直しをおすすめする4つのタイミング、見直しのメリットやポイントについてわかりやすく解説します。
火災保険は状況の変化に応じた見直しが必要
火災保険は割引などの関係により、5年などの長期契約での加入が多い保険です。ですが、他の保険と同様に家計の状況等をふまえて途中で見直し、乗り換えることが可能です。火災保険の見直しによって、結果的に家計の見直しにつながることもあります。
ここ最近、火災保険料は値上げの傾向にあります。ソニー損害保険株式会社が2020年10月に全国のファイナンシャルプランナー(以下FP)に実施した調査でも、83%のFPが火災保険料の改定が一般の家庭に影響を与えると捉えています。さらに88%ものFPが、火災保険値上げや家計収入の変化に応じて火災保険の見直しをすべきと回答していることに注目です。
出典:ソニー損害保険株式会社「家計&火災保険の見直しに関するFP調査」
また、地震国である日本において、地震保険に注目が集まっています。地震保険は単独では加入ができず、必ず火災保険とセットで加入する必要があります。その地震保険も、災害リスクの高まりを背景に2017年、2019年、2021年と3段階の値上げが続いていましたが、ようやく2022年10月には全国平均で0.7%の値下げがされる予定です。地震保険に未加入の場合は加入の検討を、既に加入している場合は今までの値上げに伴い見直しをする必要があるかもしれません。
そもそも火災保険は中途解約が可能なのか
火災保険は中途解約が可能です。1年契約よりも5年や10年契約が多い火災保険ですが、割引が適用されているからという理由で途中解約ができないということはありません。火災保険は家を購入する際に、住宅ローンを借りる金融機関のすすめのままに加入したという方も多いかもしれません。そのため、火災保険の内容自体をあまり詳しく調べたことがなく、加入後もそのままにしていることも考えられます。
長期契約を途中解約すると、返戻金が戻ってくる
火災保険は一括払いで先に保険料を支払うケースが主流ですが、途中解約した場合は保険契約満期までの未経過分については、返戻金という形で戻ってきます。例えば、5年契約の火災保険を4年経過したところで中途解約すると、残り1年弱の保険料が返ってくるとイメージすると良いでしょう。
解約返戻金=一括払い保険料✕返戻率となり、返戻金は契約期間や加入してからの経過年数によって決まります。返戻率は未経過料率ともいい、一般的には保険の約款や契約のしおり、保険会社のホームページなどに記載されています。
住宅ローンを利用している場合は注意が必要
住宅ローンを借りている場合は、火災保険の切り替えの際に金融機関の承諾が必要となる可能性があります。金融機関が火災保険の保険金の請求権を担保として質権を設定しているケースがそれに当てはまります。
質権設定とは、金融機関等の住宅ローンの債権者が住宅ローン等の借入金の担保として、火災保険の保険金請求権や返還保険料請求権に対し質権設定することをさします。仮に、建物が火災で全焼した場合において、抵当権を実行することができなくなってしまいます。そこで質権を設定することで万が一の場合でも金融機関等の住宅ローンの債権者は貸付金を回収できるメリットがあります。
火災保険が質権設定されている場合、保険証券は質権者である金融機関に送られ、契約者には写しが送付されます。手元にあるものが保険証券なのか写しであるのかで、火災保険が質権設定されているかを確認することができます。住宅ローンを受けていて質権設定がされている場合には、勝手に火災保険を変えずに、金融機関の同意を得るようにしましょう。
2022年10月には火災保険の改定が予定されている
2022年10月に火災保険料の大幅な改定が予定されています。多くの場合、保険料は値上げされ家計への負担もさらに増す見込みです。改定のポイントは大きく3つです。見直しをするなら、改定される前の2022年9月中までに行うほうが良いでしょう。
【2022年10月の火災保険の改定内容】
- 全国平均で約11%の火災保険料が値上げされる
- 契約期間の最長期間が10年から5年へ短縮される
- 家財保険などは自己負担額が引き上げされる
火災保険の見直しをおすすめする4つのタイミング
火災保険の見直しはライフスタイルの変化などにより、加入している補償内容に過不足感を感じるようになったタイミングでするのがおすすめです。火災保険の見直しは、基本的にいつでもできます。一部の自動車保険のように等級を引き継ぐタイミングを考慮しなければいけないこといったことはありません。ですが、特に次のようなタイミングでの見直しがおすすめです。
- 引っ越しをするとき
- 住宅を増築、改築するとき
- 家族構成が変わったとき
- 更新の通知が届いたとき
以下で、それぞれ詳しく解説します。
引っ越しをするとき
家計の見直しの一貫として火災保険の乗り換えも検討していたものの、これまでなかなか手が回らなかったというような場合は、引っ越しの際に乗り換えるのがスムーズでしょう。
持ち家の住居から、新たな持ち家の住居に引っ越す際には、それまで加入していた火災保険の異動手続きをすることにより、引き続き同じ保険に入ることも可能です。ただし、建物の広さや構造によって保険料が変わるため、保険料の再計算をすることになります。何の手続きもなく継続できるわけではないので、引っ越しの際に加入していた火災保険の解約をするケースが多いといえます。
賃貸の物件から持ち家の新居への引っ越しに関しては、賃貸の時に加入していた火災保険を継続することはできませんので、この場合は一度解約して新たな保険に入ることになるのです。
住宅を増築、改築するとき
増改築やリフォームをしたタイミングでの、火災保険の見直しもおすすめです。増改築やリフォームをすることで、住居の構造や評価額などが変わる場合があります。例えば、住居の耐震や耐火が強化された場合、通常はこれまでよりも保険料が安くなります。
火災保険の見直しをしないままでいると、支払う必要のない保険料を支払い続けることにもなりかねません。同じ保険会社での加入を継続したとしても保険料を再計算する必要があるため、このタイミングで条件の良い他の保険会社の火災保険への乗り換えを検討しましょう。
家族構成が変わったとき
家族構成が変わるときも火災保険の見直しのタイミングといえます。例えば、子どもが大学進学や就職で一人暮らしを始めた、あるいは結婚したといった場合、使用する家財の量が減ります。火災保険の対象に家財も含んでいる場合は、家財の補償額を下げることで、保険料が安くなるはずです。保険料を再計算する必要性が出たことを機に、他の火災保険との補償や保険料と比べてみても良いでしょう。
更新の通知が届いたとき
火災保険の契約更新の通知が届いたということは、満期を迎えたことを意味します。このタイミングでの保険の乗り換えが、もっともスタンダードなものかもしれません。契約時から数年経っているため、新たに更新する際には保険内容や保険料が変わることがほとんどです。更新後の保険料が高いと感じたら、ぜひ保険の乗り換えを検討してみましょう。
火災保険を見直すメリットと注意点
火災保険を見直すメリットとしては、安い保険料の保険に乗り換えることで家計への圧迫を減らすことができるほか、変化するライフスタイルや住居の状況に応じて補償内容を変えられる点が挙げられます。
先ほど述べたとおり、子どもの独立によって使用する家財が減る場合、保険料が安くなることが多いはずです。これまでの保険を継続するにせよ、乗り換えるにせよ、手続きをしないと必要ない保険料まで支払い続けることになってしまいます。
増改築やリフォーム後はもとめる補償内容が増えることもあるでしょう。また、住宅事情や災害の現状を踏まえた補償を充実させることもできます。
一方、注意点は保険の乗り換えによって保険料が高くなる可能性がある点です。長期契約の保険にはその分、割引が適用されます。しかし、2015年以降それまで最長保険期間が10年に短縮されたことで、これまで10年以上の火災保険に入っていた場合は、見直しにより割引率が下がることも考えられます。
さらに、都道府県により異なりますが、台風や集中豪雨による土砂災害をはじめとする自然災害の増加により、火災保険の保険料が値上がりしている可能性があることに留意しましょう。
火災保険を見直しする際のポイント5つ
火災保険を見直す際のポイントは次の5つです。
- 必要な補償を精査する
- 地震保険をつけることを検討する
- 長期契約を視野に入れる
- 保険金額が建物などの新品価格の「新価」で契約する
- 前の契約との間に空白期間をつくらない
いざ火災保険を見直そうと思っても、ポイントをおさえていないと、必要な補償をつけ忘れていたり、思っていたよりも割引適用が少なかったりといったことがあります。後で後悔することのないよう、それぞれ詳しく確認していきます。
必要な補償を精査する
火災保険の見直しの際に重要なことはまず、保険料と補償のバランスを考え必要な補償を精査することです。火災保険のパンフレットなどを読むうちに、あれこれ補償をつけたくなるかもしれません。しかし、当然ながら補償をつければつけるほど、保険料は高くなるのが一般的です。本当に必要な補償に絞りましょう。
その一方で、保険料を安くすることに意識がむきすぎてしまうのも危険です。災害に遭ったときなど肝心なときに十分な補償を受けられず、結局多額の費用がかかってしまうという元も子もない状況になりかねません。近年、自然災害が増えている状況を踏まえて、居住地域のハザードマップを確認したうえで必要な補償内容をよく検討しましょう。
地震保険をつけることを検討する
火災保険の見直しのタイミングで、地震保険への加入も検討しましょう。地震保険は単独で契約することができず、必ず火災保険とセットでの加入となります。世界でも有数の地震大国である日本において、地震保険は心強い備えです。いつどこで起きるか予測することができないため、これまで大きな地震がなかった地域でも加入を検討する必要があります。
長期契約を視野に入れる
火災保険の契約は最長で10年です。2022年10月改定では10年から5年に引き下げが予定されています。長期の契約であればあるほど、保険料にかかる割引率が高くなります。また、当面は大きなライフスタイルの変化や、家の改築やリフォームの予定がない場合は、保険料の割引率のメリットに加え、更新の手続きの手間がかからないため長期契約がおすすめです。
ただし、収入の増減に伴う家計の見直しの必要性はいつ出てくるかわかりません。契約更新の通知がこない限り、保険見直しを検討されない方は、こまめに保険内容を確認し契約の見直しができるよう、ある程度契約期間を短くするという考え方もあります。
保険金額が建物などの新品価格の「新価」で契約する
新たに火災保険を契約する際は、「新価」で契約するようにしましょう。簡単にいうと、保険金の金額は家屋や家財の評価額で決まりますが、評価額には新価と時価の2つがあります。
新価とは、同等のものを新たに建築又は購入するために必要な金額をいいます。一方で、時価とは同等のものを新たに建築又は購入するのに必要な金額から経過年数による価値の減少と使用による消耗分(経年劣化)を差し引いた金額をいいます。
昔、契約した火災保険は時価での契約になっていることが多い傾向にあります。新しく契約するタイミングでは、時価に比べ、十分な補償を受けられる「新価」での契約がおすすめです。
前の契約との間に空白期間をつくらない
火災保険の乗り換えの際に、無保険期間となる空白期間をつくらないように注意しましょう。火災などの災害はいつ起きてもおかしくありません。空白期間に火災や自然災害が発生した場合、補償を受け取ることはできず、保険金なしで修繕対応などをしなければならなくなります。想定外の大きな出費となり、家計にも大きなダメージを与えます。火災保険の解約後しばらくしてから新しい保険に入るというようなことは避け、前の契約との間に空白期間を生まないように気をつけましょう。
火災保険を見直してムダを省き、安心を手に入れよう
火災保険は、たとえ長期の契約であっても、途中解約して別の保険会社の保険に乗り換えることが可能です。昔、勧められるがままに火災保険に加入し、何年も内容の見直しをしていない方は、この機会に見直しをすることをおすすめします。必要ない補償を外して保険料を削減できるかもしれません。また、昨今の自然災害の状況や現在の住宅事情を踏まえて、必要な補償などをつけることでいざというときに備えられます。