不動産担保ローンを組む場合は抵当権を設定することになりますが、金融機関の中には1番抵当権を条件にしているところもあります。では、2番抵当権の設定には1番抵当権者の承諾が必要なのでしょうか。
この記事を読んでわかること
- 抵当権の順位変更では不利益を受ける利害関係人の承諾が必要
- 抵当権者は債務者の支払いが滞った場合に不動産を売却して配当を受けられる
- 2番抵当権者は1番抵当権者の債権額や将来の配当などを想定しなければならない
- 金融機関によっては2番抵当権でも不動産担保ローンを組める場合がある
このコラムでは、融資を行う際になぜ1番抵当権を条件にしている金融機関が多いのか解説します。1番抵当権者の承諾が必要な手続きや2番抵当権で不動産担保ローンを利用する際の注意点もご紹介しますので、2番抵当権について疑問をお持ちの方はぜひ参考にしてください。
2番抵当権の設定に承諾は不要
不動産を担保として借入をする方法として不動産担保ローンが挙げられますが、2番抵当であっても融資を行う不動産担保ローンはあります。
しかし、すべての金融機関で取り扱っているわけではなく、1番抵当を利用条件にしているところも少なくありません。
また、2番抵当で不動産担保ローン組む際は2番抵当権の設定をすることになりますが、抵当権の設定は金融機関と不動産の所有者が行うので、1番抵当権者の承諾などは特に必要ありません。
1番抵当権者の承諾が必要な手続きとは
2番抵当権の設定には1番抵当権者の承諾は不要ですが、1番抵当権者の承諾が必須となる手続きもあります。では、どのような手続きで1番抵当権者の承諾が必要になるのでしょうか。
【1番抵当権者の承諾が必要な手続き】
- 抵当権の順位変更は承諾があれば可能
- 2番抵当権の実行には承諾が必要
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
抵当権の順位変更は承諾があれば可能
抵当権の順位は登記された順で決まりますが、民法第374条で規定されている「順位の変更」という手続きで各抵当権者が合意すると、抵当権の順位の変更が可能です。
順位を変更した結果、抵当権の実行の際に配当が減少するなど抵当権者の状況に変化が生じるため、不利益を受ける転抵当権者(民法第376条1項前段)など利害関係人がいる場合は、利害関係人の承諾が必要です。
また、口約束などで抵当権者が合意をしても順位変更の効力は発生せず、効力を生じさせるためには登記が必要です。
ただし、抵当権の順位変更は、抵当権を実行して不動産を競売した際の配当金の額に大きな影響を及ぼすため、実際には、1番抵当権者によほどの利益がない限り、順位変更の同意をすることはありません。
抵当権の順位変更について、具体的なケースを見ていきましょう。
AとBで抵当権の順位変更をした場合
抵当権が実行された場合、不動産の売却代金は、1番抵当権者から抵当権の順位に応じて配当され、配当金の残額が0円になった時点で終了します。
では、抵当権の順位変更をした場合はどうなるのでしょうか。1番抵当権者A(債権額1,500万円)、2番抵当権者B(債権額600万円)、3番抵当権者C(債権額300万円)がいる場合、不動産が競売で2,000万円にて売却されたケース(各抵当権者の配当額上限は各債権額)で考えてみましょう。
【順位変更していない場合】
不動産の代金が2,000万円なので、最初に1番抵当権者Aに1,500万円が配当されます。次に2番抵当権者Bに残りの500万円が配当され、3番抵当権者Cの配当は0円です。
【1番抵当権者と3番抵当権者が順位変更している場合】
AとCが抵当権の順位を変更した場合、1番抵当権者はC、3番抵当権者はAに変わります。
不動産の代金が2,000万円なので、最初に1番抵当権者Cに300万円が配当されます。次に、2番抵当権者Bに600万円が配当され、3番抵当権者Aには残りの1,100万円が配当されます。
配当金は各抵当権者の債権額を上限として、抵当権の順位の順番で配当されるので、抵当権の順位変更によって配当金額が変わる点に注意が必要です。
利害関係者がいる場合
抵当権の順位を変更(民法第374条)すると、抵当権者の優先順位が変わります。そうすると、順位変更の合意をした抵当権者以外にも不利益を受ける方が出てくる可能性がありますので注意してください。
例えば、1番抵当権者Aが抵当権自体を第三者Dに対する債務の担保にしている場合(転抵当)、1番抵当権者と3番抵当権者が抵当権の順位を変更すると、Aへの配当額が減少し、Aの抵当権で担保されているDの債権回収額も減少してしまいます。
第三者に不利益を与えることは順位変更を認めた法の趣旨ではありません。そのため、順位変更によって不利益を被る利害関係人がいる場合は、利害関係人の承諾が必要です。
2番抵当権の実行には承諾が必要
抵当権を実行すると、1番抵当権者が配当を受け、配当金が残っていれば2番抵当権者に配当されます。
ここで、債務者が1番抵当権者への支払いに充てる目的で、他の債権者に2番抵当権を設定して借入れたケースにおいて、2番抵当権者への返済を滞らせて1番抵当権者への支払いを続ける場合はどうなるのでしょうか。
2番抵当権者が抵当権を実行できなければ、そもそも2番抵当権は担保としての機能を果たせません。このような不都合を回避するために、抵当権者であれば順位に関係なく抵当権を実行できることになっています。
抵当権の実行は、不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申立書を提出し、不動産の競売手続きを進めることによって行われます。競売を行っても2番以下の後順位抵当権者に配当見込みがない場合に、後順位抵当権者を保護する必要はありません。一方、抵当権の実行を考えていない1番抵当権者の意思を尊重する必要があります。
そこで、2番抵当権者に配当見込みがない状況での2番抵当権者の抵当権実行は、裁判所によって取り消されることになります。
なお、配当を期待できない2番抵当権者から1番抵当権者に対し、抵当権の実行をしてもらえるよう申し入れること自体は可能です。しかし、債務者が1番抵当権者に順調に支払っている状態では、2番抵当権者の申し入れを承諾する可能性は非常に低いでしょう。
そもそも不動産担保ローンの抵当権とは
抵当権は、不動産担保ローンを組む場面でよく使われる言葉です。では、そもそも抵当権とはどのようなものなのでしょうか。
抵当権については民法第369条1項で規定されており、債務者などが不動産を手元に留めたまま債務の担保として提供し、その不動産の代金などから他の債権者に優先して弁済を受ける権利です。
一般的に、少額のカードローンなどの借入れの場合は、お金を借りる方(債務者)の経済的信用が主な判断材料です。これに対し、不動産担保ローンの場合は大きな金額が動くため、債務者の経済的信用だけでは足りず、さらに担保が必要になります。
こうした理由から、不動産担保ローンでは価値が高い不動産を担保にすることで、万が一債務者の支払いが滞った場合に不動産を売却するなどして代金を回収することが可能です。
関連記事:不動産の抵当権とは?内容や仕組みについてわかりやすく解説
抵当権には優先順位がある
所有権などの物に対する権利を物権といい、原則として1個の物には同一内容の物権は1個しか成立しません。これを一物一権主義といいます。所有者が複数人存在してしまうと、その物の使用にあたって奪い合いになり、権利関係に矛盾が生じるからです。
これに対し、抵当権は複数存在しても、不動産を使用しない形の担保なので権利関係の矛盾が生じません。また、抵当権には優先順位があり、登記した順番で優劣が決まるので、奪い合いも発生しないのです。このような理由から、抵当権は不動産に複数設定できます。
また、1番最初に設定された抵当権を1番抵当権、2番目に設定された抵当権を2番抵当権、3番目に設定された抵当権を3番抵当権(以下同)と呼ぶことで、それぞれの抵当権を識別することが可能です。
なお、抵当権の順位と登記の関係は民法第373条で規定されています。
関連記事:不動産担保と抵当権はどう違う?登録や抹消方法ほか根抵当権まで解説
2番抵当権が実行されるときの流れ
債務者が債務の支払いを滞らせた場合、債権者は債務の担保である不動産を競売で売却し、売却代金から配当を受けることが可能です。これを抵当権の実行といいます。
また、抵当権が複数設定されている状況で抵当権が実行されると、1番抵当権が2番抵当権に優先し、1番抵当権から順番に配当を受けることになります。
それぞれの弁済について具体例で考えてみましょう。
1番抵当権者A(債権額1,500万円)、2番抵当権者B(債権額600万円)、不動産が競売で1,500万円にて売却されたケースで検討してみると、1番抵当権者が優先して配当を受けるので、1番抵当権者Aへの配当が1,500万円、2番抵当権者Bへの配当は0円です。
しかし、不動産が競売で2,500万円にて売却された場合は、1番抵当権者Aへの配当は1,500万円、2番抵当権者Bへの配当は600万円、つまり債権全額相当の配当を受けることが可能です。
2番抵当権者の場合、抵当権を実行しても、不動産の価値次第で代金を回収できないリスクがある点に注意してください。
2番抵当で不動産担保ローンを利用する注意点
2番抵当権であっても不動産担保ローンを組むこと自体は可能です。しかし、2番抵当権者の金融機関は、債権額や債務者の状況、不動産の余力など、2番抵当ならではの事項について検討なければなりません。
また、2番抵当で不動産担保ローンを利用する際には注意点があります。
【2番抵当で不動産担保ローンを利用する際の注意点】
- 2番抵当に対応していないローンも多い
- 金利が高い傾向がある
- 借入上限額が低い傾向がある
借りる側の立場から考えると、条件が良くないように思えるかもしれません。なぜ2番抵当の不動産担保ローンにはこういった傾向が見られるのか、理由を見ていきましょう。
2番抵当に対応していないローンも多い
2番抵当でローンを組む場合、すべての金融機関が対応しているわけではありません。融資の条件に2番抵当でも可能である旨が記載されているローンに限られます。
2番抵当に対応する金融機関が限定されるのは、2番抵当では1番抵当に優先されてしまい、抵当権を実行しても配当を受けられない可能性があるからです。
2番抵当に対応していない金融機関は多く、特に大手メガバンク系などの不動産担保ローンは1番抵当を条件にしていることがほとんどです。
2番抵当でローンを組む場合は金利が高い傾向がある
2番抵当で不動産担保ローンを組む場合、1番抵当と比較すると金利が高い傾向があります。
抵当権を実行して配当を受ける場合、1番抵当であれば優先して配当を受けられますが、2番抵当で融資した金融機関は、1番抵当権者への配当で残った額の範囲内でしか配当を受けられません。
そのため、2番抵当で融資をする金融機関は貸し倒れの不安も大きく、金利を高く設定する必要があるわけです。
また、金利が高くなると支払総額も大きくなるので、返済計画をしっかり立てる必要があります。
不動産担保ローンの抵当権の順位 | 金利相場 |
1番抵当権 | 低い |
2番抵当権 | 高い |
2番抵当でローンを組む場合は借入上限額が低い傾向がある
1番抵当が2番抵当に優先するため、2番抵当権者にとっては配当を受ける額が少なくなります。そうすると、2番抵当では不動産の価値どおりの額を弁済に充てることができません。
この点、1番抵当で配当される額をあらかじめ想定し、その額を差し引いて借入上限額を設定しないと完済されないリスクが生じます。そのため、2番抵当では借入上限額が低い傾向があるのです。
また、高額な借入を希望すると審査に落ちる可能性があり、希望どおりの借り入れができないケースもある点に注意してください。
関連記事:不動産担保ローンとは?特徴とメリット・デメリットを知って活用しよう
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銀行などでは1番抵当権を条件にしていることも多く、抵当権の順位がネックとなり借入れを断られるケースも少なくありません。
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おわりに
抵当権が設定されている別のローンを返済中という理由で、借り入れを諦めている方も多いかもしれません。不動産担保ローンで融資を受ける際には抵当権の設定が必要ですが、すでに抵当権が設定されている不動産でも価値に余力があれば、2番抵当権を設定してローンが組める可能性もあります。不動産を担保にした融資をお考えの方は、セゾンファンデックスの「事業者向け不動産担保ローン」に相談してみてはいかがでしょうか。