「あなたの資産、大丈夫ですか?」と題した一連のコラムはお読みいただけましたでしょうか?資産形成にあたって大事なことをお伝えしたこのコラムの中で保険のことに少し触れましたが、保険については分かっているようで実はよく分かっていないという人もいらっしゃると思いますので、これから「保険についてもっと知ろう」シリーズと題して保険について詳しくお伝えしていきます。
1.実際に行動してみましたか?
「あなたの資産、大丈夫ですか?(その3)」では保険について以下の5つの質問をしました。
5つの質問
A. 現在どのような保険に加入されているか把握できていますか?
B. 現在加入されている保険の内容をご自身で説明できますか?
C. 生命保険と自動車保険、火災保険の担当者は同じ人ですか?
D. すべての保険証券は1つのファイルにきちんと管理できていますか?
E. 現在加入されている保険で全てのリスクをカバーできていますか?
答えはいかがでしたでしょうか?A~Dの全てが「No」と回答された人が多いのではないでしょうか。
しかし、ここで「No」とお答えになられたことが悪いわけではありません。むしろ大事なのはこの「後」なのです。例えば、答えが「No」だったことに危機感を覚え、ご自身が加入されている保険証券を実際に引っ張り出して内容を確認してみようとされたかどうかです。また、ご自身で説明できるようになろうと何かのアクションをされてみたかどうかです。保険証券を整理してみようと実際に行動に移してみたかどうかです。加入している保険のそれぞれの担当者が同じかどうか確認し、何かしらの次のアクションにつなげられたかどうかが、とても大事なのです。
「あなたの資産、大丈夫ですか?(その5)」で「知っていることと実践できていることは異なる」ということをお伝えしましたが、お読みくださった方はそのことを覚えていらっしゃいますでしょうか?知っていてもそれを実践しなければ、現実は何も変わりません。「あなたの資産、大丈夫ですか?(その3)」で問いかけさせていただくことで、今までの状態は良くないということがお分かりになられた(知った)としても、その気付きを何かしらの行動に移していかなければ、あなたの資産はリスクに晒され続けたままであり、今までの状況と「今」、そして未来には何の変化も起こらないどころか、問題の先延ばしにしかなっていません。
不安をあおるつもりはありませんが、ご自身の資産がリスクに晒され続けていると気付かれたのであれば、まずは保険証券を引っ張り出すところからでも良いので、実際に「何かしらの行動やアクション」をされてみることを強くおすすめします。
2.そもそも保険証券とは何なのか。
保険証券とは、保険契約が成立した証として保険会社から交付される、契約内容を具体的に記載した書面です。 つまり、この保険証券には契約した大事な情報が取りまとめて表記してあるものです。保険業について定めている保険業法においては、保険会社や保険契約者の氏名等を記載した書面を交付しなければならないと規定されています。
書面は、実は合意があれば交付しなくても良いと解されており、これを受けて最近は保険証券をペーパーレスにしている保険会社もあります。万が一探しても見つからなかった、という場合は、WEBサイト上で契約内容が確認できるようになっていないか調べてみることをおすすめします。なお、保険証券を紛失したとしても、保険会社に連絡して手続きを取ることで再発行はできますし、保険金を受け取る権利を失うということはありません。
では、保険証券はなくても良いのではないか、と思われるかもしれません。確かに普段の生活で保険証券が必要になることはありません。しかし以下の2つの場合には保険証券が必要となります。
保険証券が必要な場合(その1)
保険証券が必要な場合の1つ目は、契約内容の変更や保険契約を解約する場合です。例えば住所や保険金の受取人の変更、結婚や離婚で姓が変わった、などです。この場合、保険証券(第3章ご参照)に記載されている証券番号が必要になります。保険証券が見つからず証券番号が分からない場合、保険会社(のカスタマーセンターなど)に問い合わせをすれば番号は分かりますが、保険証券があればそもそもそのような問い合わせをする必要はありませんので、手元にあった方が良いでしょう。
保険証券が必要な場合(その2)
保険証券が必要な場合の2つ目は、保険金支払いを請求する場合です。保険金支払いを請求する場合には、保険証券を保険会社に提出することが求められます。もちろん、保険証の紛失等で提出が困難な場合でも保険金支払いは請求できますが、紛失届の提出等他の手続きも必要になりますので、やはり保険証券は手元にあった方が良いでしょう。
3.保険証券を見てみよう
さて、保険証券の話をここまで進めてきましたので、これから保険証券の記載内容についてご説明していきます。「保険証券を引っ張り出したけど見方が分からない」、「難しそうでとても説明できるとは思えない」という方もいらっしゃると思いますので、まずは見方を学んでいただけたら幸いです。お持ちの保険証券をお手元にお出しください。
もしかすると、きちんと見るのは初めて、という方もいらっしゃるのではないかと思います。何が書いてあるのか見てみましょう。当たり前ですが、生命保険、損害保険では記載されている内容は異なります。
保険証券を初めて見る人にとっては、保険証券に記載されている内容をすぐには理解できない難しいものと捉えられるかもしれません。しかし、難しいといって理解するのを諦めるのではなく、資産形成のための大切なステップだと思いなんとか理解しようと努めてください。なぜなら、契約している保険が自身に適しているものかを判断するために一番大事なファーストステップは「現状把握」だからです。
保険の現状把握をするためには、まずこの保険証券の中に出てくる言葉が何なのかを知る必要があります。例えば、車の運転でいうと、道路標識の意味が分かっていなければ、大きな事故を起こす可能性があったり、法律に違反することになってしまったりして、結局は自身だけに留まらず、周りの方にも多大な迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。このようにきちんと言葉の意味を正確に知っておかなければ、現状把握することはできるはずがないのです。
ここでは世帯加入率が約90%と日本国民のほとんどが加入している生命保険を例にとり、保険証券に記載されている事項の主なものについてご説明します。以下の事項がご自身の保険証券のどこに記載されているか確認しながら読み進めてください。
3-1.証券番号
ではまず、「証券番号」がどこにあるか探してみてください。見つかりましたか?8桁から長いものでは14桁くらいの数字が並んでいますが、これがあなたの契約している保険の「証券番号」です。証券番号とは契約ごとに割り当てられた番号のことで、この番号に誰が契約者なのか、保険料はいくらかなどの契約内容が紐付けされています。この番号ごとに契約内容が登録されているため、契約内容を変更する際などは証券番号を元にその時点での契約内容が確認でき、保険会社が内容の変更に応じることができるのです。
3-2.保険に関わる人的関係
次に、保険に関わる人的関係を見てみます。まず「(保険)契約者」という欄を探してください。探しづらいようでしたら人名が記載されている欄を探してください。「契約者」という欄に記された名前の方は、保険会社と保険を契約した方であり、保険料を支払う義務があるということになります。
次に「被保険者」という欄を見てください。そこに記された名前の方は、保険の対象者、すなわち保険が掛けられている方です。その人が病気になったり亡くなったりした場合金銭(=保険金)が支払われることになります。
最後に、「受取人」という欄を見てください。そこに記された名前の方が、保険金や給付金を受け取ることができます。保険に関わる人的関係はこの3つになります。
3-3.保険料内訳
では、「保険料」という欄を探してください。保険会社によって記載が異なるため、「保険料」の前後に何か文言が記されている場合もありますが、「保険料」という文言が記されている欄を探してください。ここに記されている金額が毎月保険会社に支払う保険料の金額です。
なお、特約(後述します)を付している場合は、保険料内訳として、主契約保険料、特約保険料、に分かれそれぞれの金額が記されています。保険は、それだけで保険契約として成立する契約の基本部分である主契約と、主契約の保障内容を充実させるために付けるオプションの契約があり、このオプションの契約のことを特約といいます。例えば死亡保障を主契約として、医療保障をそれに付ける場合、この医療保障が特約となります。特約を付けている場合は主契約と特約でそれぞれいくら支払うことになっているのかという内訳が表示されるのです。
3-4.保障内容
最後に「契約内容」という欄を見てみましょう。ここには、どのような時に保険金が支払われるのか、支払われる保険金はいくらなのか、いつまで保険金の支払いが保障されるのか、ということが記載されています。契約内容の具体的なことについては当シリーズの記事で別途ご説明しますので、まずは何が書いてあるのかを知っておいてください。
4.保険証券を保管しよう
普段の生活に保険証券は必要がないため、どこに保管したのか分からなくなってしまうということが起こりえます。また、生命保険、損害保険、自動車保険など契約したタイミングや担当者が異なると、ばらばらに保管してしまうということもあるでしょう。これではいざという時にスムーズに手続きを進めることはできません。そうならないためにも、保険証券は保管場所を決め、まとめて保管しておきましょう。なお、死亡保険金の受取人はご自身のご家族などご自身以外になっているはずですので、その人(=受取人)には保険証券の保管場所を伝えておくことをおすすめします。
おわりに
いかがでしたでしょうか。初めて保険証券をご覧になられた人には面食らうことも多かったかもしれません。これが保険と向き合う第一歩です。次回からも、保険についてご説明していきます。