所有している不動産を担保として差し入れることで比較的低金利での資金調達が可能な不動産担保ローンですが、借入可能額はローン契約者の与信のほか、担保不動産の評価額に大きく影響を受けます。不動産担保ローンの借入可能額の目安を把握する際の算出方法や前提となる知識について解説していきます。
不動産担保ローンで借入可能額の目安となる計算式
不動産担保ローンの借入可能額=不動産評価額×担保掛目(6割〜8割)
不動産担保ローンは、所有している不動産を担保とすることで使途自由で比較的多額の資金調達が行えます。
しかし融資可能額は担保不動産の評価額によって異なるほか、担保不動産の評価額がそのまま借入可能額となるわけではなく不動産価値の下落を見越して担保掛目を乗じて借入可能額を算出するなどの計算が行われています。
このため不動産担保ローンの利用を検討する際には借入可能額の見極めがポイントといえます。
担保掛目は不動産担保ローンを提供している金融機関によって異なりますが、不動産評価額に対して6割〜8割程度の担保掛目を設定していることが多くなっています。
不動産担保ローンのおおよその借入可能額は担保不動産の評価額×担保掛目(6割〜8割)に加え、ローン契約者の信用情報などを踏まえたうえで借入可能額を算出しています。
不動産評価額の算出方法:建物と土地の総合的アプローチ
不動産担保ローンを利用する際、不動産評価額は融資条件を大きく左右する重要な要因です。不動産評価は通常、建物と土地を分けて行い、それぞれの価値を合算して総合的な評価額を算出します。ここでは、建物と土地それぞれの主要な評価方法について解説します。
建物の評価方法
原価法
積算価格=再調達原価×残存年数(耐用年数−築年数)÷耐用年数
原価法は、不動産の価値を算出する最も一般的な方法です。この方法では、現在の建物を新築するのにかかる費用(再調達原価)を見積もり、建物の経年劣化による価値の減少分を計算します。
さらに土地の価値を別途評価し、これらの要素を組み合わせて不動産全体の価値(積算価格)を算出します。
例えば、再調達原価が1億円、経年劣化による減価が2,000万円、土地の価値が5,000万円の場合、積算価格は 1億3,000万円となります。
しかし、この計算式のままでは同じ構造・大きさ・築年数の物件だと同じような評価額となるので、周辺環境や形状などの土地の評価やリフォーム履歴などの建物の評価を加味した価格補正を行う必要があり、そのため計算者の判断によって算出される価格に幅が出る場合があります。
収益還元法(賃貸アパートや区分所有マンション向け)
収益還元法の不動産評価額=1年間の利益(賃料収入−必要経費)÷還元利回り(周辺の類似物件の利回り)
収益還元法は賃料収入を算出の基礎として用いる算出方法で、主に賃貸アパートや区分所有マンションなどの収益物件の不動産評価額の算出に使用されます。
収益還元法は、主に賃貸物件などの収益不動産の評価に用いられる方法です。
この方法では、不動産から得られる将来の収益を現在の価値に換算して評価額を算出します。具体的には、年間の賃料収入を算出し、維持管理費や税金などの経費を差し引いて純収益を計算します。
そして、市場の利回りを考慮し、純収益を現在価値に換算します。例えば、年間純収益が500万円で、市場の利回りが5%の場合、不動産評価額は1億円と算出されます。
土地の評価方法
金融機関では主に土地と建物の積算価格から不動産評価額の算出を行っており、建物は原価法、土地は「公示地価・基準地価・路線価」などの算出基準を用いて積算価格を算出します。土地の算出基準について把握しておきましょう。
公示地価
公示地価は国土交通省が定める標準地の1平方メートルあたりの土地の価格を指します。毎年1月1日に評価が行われており、同じ土地を調査するので価格推移を把握しやすいメリットがありますが、標準地は「都市部とその周辺地域」と定められているため、都市部以外の土地価格を知るには不向きです。
公示地価は原価法の土地価格の目安となるほか、固定資産税や相続税などの評価地価の算出基準としても用いられており、社会インフラとして大きな役割を持っています。
基準地価
基準地価は各都道府県が定める基準地の1平方メートルあたりの土地の価格を指します。
基準地価は毎年7月1日に評価が行われていますが、公示地価で用いられる標準地と異なり都市部とその周辺地域以外の土地も指定できるため公示地価の補完的な役割を有しており、都市部以外の土地価格を把握するための重要な指標となっています。
路線価
路線価は主に相続税や贈与税などの税金の計算のために用いられる指標のため、国税庁が発表しています。路線価は公示地価や実際の取引事例を参考に土地に面した道路ごとに土地価格が調査されています。
路線価には国税庁が公表している相続税路線価と市町村が使用する固定資産税路線価があり、相続税路線価は公示地価の8割程度、固定資産税路線価は公示地価の7割程度が目安となっています。
土地の価格は他に同じものがないため、正確な調査には不動産鑑定士による鑑定が必要となるなど費用や時間を要してしまうため、おおよそでも土地の評価額を把握可能な公的な土地価格調査は不動産担保ローンの融資条件を想定するうえで重要な情報となります。
公示地価・基準地価・路線価はいずれも土地価格をあらわしています。しかし、それぞれの算出方法は想定の利用目的にそって行われているため、調査手法や評価額が異なります。それぞれの特徴を把握して土地評価額の見当をつけるようにしましょう。
総合的な評価方法
取引事例法(土地や中古物件向け)
取引事例法は、主に土地や中古物件の評価に用いられる方法です。
この方法では、近隣の類似物件の実際の取引価格を参考に、評価対象の不動産の価値を推定します。
まず、評価対象の不動産と似た条件(場所、規模、用途など)の最近の取引事例を収集します。次に、取引事例と評価対象の相違点(立地条件、築年数、設備など)を分析します。そして、相違点を考慮して価格を調整し、評価対象の価値を算出します。
例えば、近隣の類似マンションが5,000万円で取引されていたが、評価対象のマンションの方が駅に近く、新しい場合、これらの優位点を考慮して5,500万円と評価する、といった具合です。
このように、不動産の評価は建物と土地それぞれの特性を考慮し、複数の方法を組み合わせて総合的に行われます。金融機関は、これらの評価方法を参考にしつつ、独自の基準も加味して最終的な担保評価額を決定します。不動産担保ローンの借入可能額を正確に把握するためには、これらの評価方法の特徴を理解した上で、実際に金融機関に相談することが重要です。
担保掛目とは
不動産担保ローンでは担保価値による一定の元金保全を前提とし、低金利で長期間の返済期間で利用することができます。しかし、不動産の評価額は一定ではなく、築年数の経過に伴い老朽化や設備の旧式化といった価値の低下が生じることになります。
こうした価値の変動を見込み不動産評価額に対し担保掛目を乗じることで、一定の余裕を設けています。
不動産担保ローンの担保掛目は金融機関によって設定が異なりますが、おおよそ6割〜8割程度といわれています。
借入希望額がこの掛目の金額を下回ると融資審査がとおりやすくなったり融資条件が有利になるなどの恩恵を受けることができます。逆に上回ると融資審査がとおりにくくなったり金利が上がるなど融資条件が厳しくなるなどのデメリットが生じる可能性があります。
金融機関に直接問い合わせるのが最も確かな方法
借入可能額を把握するためには、銀行や専門家に直接聞いてみましょう。土地の値段を知るための情報は、公示価格や基準価格、路線価などがありますが、それはあくまで参考であり、銀行によって別の方法で評価することもあります。
実際にお金を借りるときには、借りる人の年齢や収入、仕事の状況、借金の状態なども考慮されるため、その結果として借りられるお金の額が変わることもあります。
しっかりとした不動産担保ローンの計画をたてるためには、いくつかの銀行を比べてみて、必要な情報を提供して、借りられる額を確認することが必要です。
おわりに
不動産担保ローンは、所有する不動産を担保に融資を受けるため、借入可能額が大きくなる傾向があります。不動産評価額が高いほど、借入可能額は増加し、ローン金利も低くなるメリットがあります。
借入可能額の目安は、不動産評価額の6~8割程度とされています。ただし、この評価額は土地や建物によって算出方法が異なり、金融機関によっても評価基準が異なるため、実際に問い合わせてみないと正確な金額は分かりません。
例えば、土地の評価には公示地価や基準地価が用いられ、建物の評価には原価法などが用いられます。収益物件であれば収益還元法、取引事例が豊富な物件であれば取引事例法が用いられるなど、ケースバイケースです。
そのため、不動産担保ローンの利用を検討する際には、事前にご自身でもおおよその借入可能額を試算しておくことをおすすめします。試算することで、金融機関から提示された融資条件が適切かどうかを判断することができます。
もし試算が難しい場合は、信頼できる金融機関に相談してみましょう。豊富な実績とノウハウを持つ金融機関であれば、適切な査定と、お客様の状況に合わせた融資プランの提案が期待できます。
セゾンファンデックスは、20年以上にわたり不動産担保ローンを提供してきた実績を持つ、信頼できる金融機関の一つです。日本全国の様々な不動産を担保として受け入れており、債務超過などの場合でも相談可能な点が強みです。住宅ローンが残っている場合でも利用できるなど、柔軟な対応が期待できます。
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