近年、高齢者を狙った「特殊詐欺」の被害が深刻化しています。詐欺師たちは巧妙な手口で信頼を装い、大切な資産を狙います。特に高齢者は、孤立しがちで情報に触れる機会が少ないことから、狙われやすい傾向にあります。
本記事では、高齢者が遭いやすい特殊詐欺の種類や手口を詳しく解説するとともに、被害を防ぐための具体的な対策をご紹介します。詐欺から大切な家族や自分自身を守るための一歩として、ぜひ最後までお読みください。
- 特殊詐欺による被害が増加傾向にあり、2023年の被害総額は452.6億円で前年比22%増となっている
- 高齢者の詐欺被害を防ぐ対策として、在宅時でも留守番電話設定にする、ナンバーディスプレイを活用するなどがある
- 警視庁は2020年1月から特殊詐欺を10種類に分類している
- 高齢者は「お金」「健康」「孤独」の3つの不安を持っており、詐欺グループはこれらの不安につけ込んで犯行に及んでいる
高齢者への被害が広がっている「特殊詐欺」とは?
特殊詐欺の被害は深刻な社会問題となっています。特に65歳以上の高齢者が被害に遭うケースが多く、その手口は年々巧妙化しています。
被害を防ぐには、まず特殊詐欺の実態を知ることが重要です。
特殊詐欺の概要と実態
特殊詐欺とは、不特定多数の人物に電話やはがきなどで接触し、対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、現金等をだまし取る犯罪です。2023年度の認知件数は19,038件で、被害総額は452.6億円にも上り、前年と比べ件数で1,468件(+8.4%)、被害額で81.8億円(+22.0%)増加しています。
被害は大都市圏に集中しており、東京、大阪、神奈川、愛知、埼玉、千葉、兵庫の7都府県で全体の67.4%を占めています。1日当たりの被害額は1億2,399万円、既遂1件当たりの被害額は243.8万円と深刻な状況が続いています。
特殊詐欺と詐欺の違いとは
通常の詐欺は、人と人が直接会って言葉巧みに金品をだまし取る手口です。一方、特殊詐欺は、面識のない不特定多数の人に電話やハガキ、メールなどを使って対面することなく信頼させ、お金等をだまし取る犯罪という特徴があります。
犯人は被害者と直接顔を合わせないため、捜査機関による追跡が困難になりやすく、それが被害の拡大につながっている一因とされています。
高齢者が狙われやすい原因
高齢者は「お金」「健康」「孤独」の3つの大きな不安を抱えていることが多く、悪質業者はこれらの不安を巧みにあおり、親切にして信用させ、年金や貯蓄などの大切な財産を狙っています。
また、退職後の高齢者は自宅にいる時間が長いため、電話勧誘販売や家庭訪販による被害に遭いやすい傾向にあります。加えて、デジタル機器に不慣れな方が多く、最新の詐欺の手口などの情報を得にくいことも被害が集中する要因となっています。
特殊詐欺の種類と手口
特殊詐欺の手口は年々巧妙化し、被害も拡大しています。2020年1月1日から警視庁では特殊詐欺を10種類に分類しています。
各手口の特徴を知り、不審な電話や勧誘があった際の対処方法を学びましょう。
特殊詐欺の種類一覧
警察庁は、特殊詐欺の手口について以下の10種類に分類しています。それぞれの手口や内容を参照していただき、不審な連絡があった際の参考にしてください。
特殊詐欺の種類 | 手口・内容 |
---|---|
オレオレ詐欺 | 親族や警察官、弁護士等を装い「交通事故の示談金が必要」「会社の小切手を紛失した」などと称して現金をだまし取る手口です。 |
金融商品詐欺 | 価値のない未公開株や社債、高価な物品等について嘘の情報を提供し、購入すれば利益が得られると信じ込ませ、その購入代金として金銭をだまし取ります。 |
預貯金詐欺 | 警察官や銀行協会職員等を装い「あなたの口座が犯罪に利用されている」「キャッシュカードの交換手続きが必要」などと言ってカードをだまし取ります。 |
ギャンブル詐欺 | 雑誌に「パチンコ打ち子募集」等と掲載し、会員登録等を申し込んできた人から登録料や情報料等の名目で金銭をだまし取ります。 |
架空料金請求詐欺 | 有料サイトや消費料金等について「未払いの料金がある」と言って金銭を要求する手口です。 |
交際あっせん詐欺 | 「女性紹介」等と掲載し、女性の紹介を求めてきた人から登録料や保証金等の名目で金銭をだまし取ります。 |
還付金詐欺 | 医療費や税金等について「還付金がある」と言って、ATMを操作させ、被害者の口座から犯人の口座に送金させます。 |
融資保証金詐欺 | 実際には融資しないのに、簡単に融資が受けられると信じ込ませ、保証金等の名目で金銭をだまし取ります。 |
その他の特殊詐欺 | 上記の類型に該当しない特殊詐欺の総称です。 |
キャッシュカード詐欺盗 | 警察官や銀行協会職員等を装い、キャッシュカードを準備させた上で、隙を見てキャッシュカード等を盗み取ります。 |
これらの手口に共通するのは、公的機関や金融機関、親族などを装って信用させ、被害者の不安や焦りにつけ込む点です。特に還付金詐欺やキャッシュカード詐欺では、犯人が警察官や行政職員を装うケースが多く、その巧妙な話術で被害者を信用させています。
他にもある最新の手口
最近では、パソコンの画面に突然警告が表示され、サポート窓口を装って金銭をだまし取る「サポート詐欺」や、高齢者の判断力の低下につけ込んで不動産を不当な高値で売りつける「不動産詐欺」なども発生しています。
特に認知機能が低下し始めた高齢者を狙った不動産詐欺では、アパートの一室を市場価格の数倍で売りつけたり、価値のない原野や山林を強引に購入させたりするケースが報告されています。これらの新たな手口による被害を防ぐためにも、不審な勧誘や突然の警告画面には注意が必要です。
高齢者が特殊詐欺被害に遭わないための対策方法
特殊詐欺の被害は年々増加傾向にあり、手口も巧妙化しています。被害を防ぐためには、具体的な対策を講じることが重要です。
ここでは、高齢者とその家族が実践できる6つの対策方法を紹介します。
在宅していても留守番電話設定にしておく
犯人は自分の声が証拠として残されることを極端に嫌います。そのため、在宅時でも留守番電話に設定しておくことは、効果的な対策の一つとなります。
本当に用件がある相手であれば、必ずメッセージを残してくれるはずです。不審な電話は、録音を嫌がって切れてしまう可能性が高いため、被害を未然に防ぐことができます。
固定電話にナンバーディスプレイやナンバーリクエスト機能を付ける
NTT東日本・西日本では、70歳以上の契約者、または70歳以上の方と同居している契約者を対象に、特殊詐欺対策として電話機能の無償化サービスを提供しています。ナンバーディスプレイで相手の電話番号を確認でき、ナンバーリクエストでは非通知の電話に対して、電話番号を通知するようガイダンスで要求します。
現在使用している電話機に後付けできる通話録音警告機や迷惑電話撃退機能付きの電話機も市販されています。これらの機器は、電話がかかってくる前に「この電話は振り込め詐欺被害防止のために録音しています」と警告を発することで、犯人からの電話を未然に防ぐ効果があります。
情報収集し手口を把握しておく
特殊詐欺の最新の手口や対策について、テレビや新聞、自治体の広報などから情報を収集することが大切です。特に以下のような常套句が使われた場合は要注意です。
- 「携帯電話を落として電話番号が変わった」
- 「会社の電話でかけているからこの番号をメモして」
- 「会社の金を横領した」
- 「誰にも言わないでほしい」
- 「今すぐ金が必要」
- 「暗証番号を教えてほしい」
- 「キャッシュカードを預かる」
これらの言葉を電話の近くに掲示しておくことで、不審な電話に気づきやすくなります。
家族と連携を取る
普段から家族間でコミュニケーションを取り、町の会合などにも積極的に参加することが望ましいです。特に、親族を名乗る人物から「携帯電話の番号が変わった」という連絡があった場合は、すぐに信用せず、いったん電話を切って、元の番号に確認の電話を入れましょう。
また、お金に関する電話があった場合は、即座に判断せず、必ず家族や親族に相談するようにしましょう。一人で判断を迫られると冷静さを失いがちです。
キャッシュカードやクレジットカードは見せない
警察官や市区町村職員などを名乗る人物が、キャッシュカードやクレジットカードの提示を求めることは絶対にありません。見知らぬ人物が訪問してきた場合は、身分証明書の提示を求め、不審に感じたら警察や市区町村役場に確認を取りましょう。
カードの交換や暗証番号の変更が必要な場合は、必ず金融機関の窓口で行います。自宅でカードを預かることはないため、不審な要求には応じないようにしましょう。
自分は大丈夫と過信しない
加齢とともに認知機能は低下するため、「自分は騙されない」と過信せずに、常に注意を払うことが大切です。判断力や記憶力に不安を感じ始めたら、早めに自分の財産がどうなっているのかを子どもや信頼できる専門家と共有しましょう。
もし不審な電話や訪問があった場合は、一人で抱え込まず、すぐに家族や警察に相談することが被害を防ぐ最も確実な方法です。
高齢者の詐欺被害対策は万全ですか?
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おわりに
特殊詐欺から高齢者を守るためには、家族ぐるみの対策と継続的な見守りが不可欠です。手口が巧妙化し続ける現代において、早期の対策と家族間の連携が重要となります。留守番電話の設定やナンバーディスプレイの活用、定期的な情報収集と共有、そして「親サポセレクト」のような専門のサポートサービスを活用することで、大切な家族の安全な生活を守ることができます。自分は大丈夫と過信せず、今日から具体的な防犯対策を始めることで、特殊詐欺の被害を未然に防ぎ、安心して暮らせる生活を実現することができるでしょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。