高齢化が進む日本では、親や家族の介護を理由に仕事を辞める「介護離職」が深刻な社会問題となっています。近年、介護離職者の増加が顕著であり、収入の減少や再就職の難しさなど、離職後に後悔するケースが多く報告されています。一方で、介護と仕事の両立を支援する制度やサービスも整備されつつあり、離職を回避する選択肢も存在します。
本記事では、介護離職の現状や後悔される主な理由を深掘りし、離職を防ぐために利用できる支援策についてわかりやすく解説します。また、買い物や通院のサポートができる便利なサービスも紹介。介護離職を選択する前に、ぜひ参考にしてください。
- 介護離職後は収入減少や再就職困難、精神的孤立など多くの後悔要因があり、約8割の人が後悔している
- 現在日本では629万人が介護をしており、そのうち365万人(58%)は仕事と両立している
- 介護離職のデメリットが大きい一方で、心身の負担軽減や介護費用の削減といったメリットも存在する
- 介護休業制度やケアマネジャー、地域包括支援センターなど、仕事と介護の両立を支援する制度やサービスが充実している
介護離職とは
親や家族の介護のために職場を去ることを「介護離職」と呼びます。総務省の令和4年就業構造基本調査によると、介護離職者は年間約10万6,000人にのぼります。この数字からも、介護離職が深刻な社会問題となっていることがわかります。
特に注目すべきは、介護離職者の約8割が後悔していると報告されている点です。一度離職を選択すると、再就職が難しくなったり、経済的な問題が生じたりするため、慎重な判断が必要とされます。実際のところ、介護をしている人629万人のうち、365万人は仕事を続けながら介護に携わっています。
年齢別でみると、男性は50~54歳で88.5%、女性は同年代で71.8%が仕事と介護を両立しています。この数字は、適切なサポートや制度を活用すれば、必ずしも離職を選択する必要がないことを示しています。
離職の背景には「仕事と介護の両立が難しい職場だった」という理由が約6割を占め、続いて「両立支援制度の問題や介護休業などを取得しづらい雰囲気」が43.4%となっています。こうした状況から、職場環境の改善や支援制度の活用が、介護離職を防ぐ重要な鍵となっていることが見えてきます。
日本の介護離職の現状は?
高齢化が急速に進む日本では、介護と仕事の両立に悩む人が増加しています。多くの働き盛り世代が、仕事を続けるか介護に専念するかの選択を迫られる状況に直面しています。
日本で介護をしている人数
総務省の調査によると、現在日本の介護者総数は629万人に達しています。このうち仕事をしながら介護を行う有業者は365万人となっており、実に58%の人が仕事との両立を実現しています。
年齢別でみると、男性は50~54歳で88.5%、女性は同年代で71.8%が最も高い割合で仕事と介護を両立しています。これは過去5年間で上昇傾向にあり、介護と仕事の両立に取り組む人が着実に増えていることを示しています。
介護離職の割合は増加傾向にある
過去10年間の推移を見ると、介護離職者数は2012年から2017年にかけて70万人増加し、2017年から2022年にかけては1万人の増加となっています。
中でも注目すべきは、有業者の介護離職で、2017年から2022年の5年間で18万人増加しました。2022年の最新データでは、介護・看護のために過去1年間に前職を離職した人は10万6,000人に上ります。
介護離職の理由とは
介護離職の最大の理由は「仕事と介護の両立が難しい職場だった」というもので、全体の59.4%を占めています。次いで「自分の心身の健康状態が悪化したため」が17.6%、「介護する家族・親族が自分しかいなかったため」が17.3%と続きます。
また、「両立支援制度や介護サービスを知らなかったため」という理由も11.0%あり、制度の周知不足も課題となっています。施設への入所が難しく介護の負担が増えたことを理由に挙げる人も15.0%存在し、介護環境の整備も重要な課題といえます。
介護離職で後悔する4つの理由
介護離職を経験した人の実に7割以上が、離職後に負担が増加したと感じています。厚生労働省の調査によると、精神面、肉体面、経済面のいずれにおいても、予想以上の困難に直面していることが明らかになっています。
介護離職後に多くの人が経験する主な後悔は以下の4つです。
- 収入がなくなる
- 再就職が厳しい
- 介護負担感が増す
- 社会から孤立する
これらの後悔は、介護離職を決断する前に慎重に検討すべき重要な要素といえます。それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
【1】収入がなくなる
介護離職が最も多い50代は、一般的に収入のピークを迎える時期です。この時期の離職は、将来の経済基盤を大きく揺るがすことになります。
当面は親の年金収入で生活できたとしても、親が亡くなれば収入源が途絶えてしまいます。老後の生活資金を貯蓄できる重要な時期に離職することは、自身の将来に大きな影響を及ぼすことになるのです。
【2】再就職が厳しい
介護離職後の再就職は、年齢が高くなるほど困難を極めます。キャリアの中断期間が長くなると、以前と同じような条件での再就職は極めて難しくなります。
正社員としての再就職ができず、契約社員やパートタイムでの就労を余儀なくされるケースも少なくありません。結果として、以前の収入水準を回復できない状況に陥ることが多いのです。
【3】介護負担感が増す
離職して介護に専念すると、かえって精神的・肉体的な負担が増すことがあります。見守りの時間が増えることで、自分の時間が確保できなくなります。
また、親との会話も、親の興味のある話題に限定されがちで、変化のない毎日にストレスを感じやすくなります。こうした状況から、体調を崩したり、精神的に追い詰められたりするケースも報告されています。
【4】社会から孤立する
仕事を辞めることで、職場の同僚との日常的な交流が途絶えてしまいます。介護に時間を取られ、友人との付き合いも減少しがちです。
その結果、親との関係だけが密接になり、社会との接点が失われていきます。このような社会的孤立は、介護者自身のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすだけでなく、介護の質にも影響を与える可能性があります。
介護離職をするメリット
介護離職については、これまでさまざまなリスクやデメリットをお伝えしてきましたが、状況によってはメリットと感じる側面もあります。
介護離職によって得られる主なメリットは以下の2つです。
- 心身の負担が軽減できる
- 介護にかかる費用を減らせる
ただし、これらのメリットを感じられるかどうかは、介護の状況や経済的基盤によって大きく異なります。具体的な内容を解説していきます。
心身の負担が軽減できる
仕事と介護の両立によるストレスから解放されることで、精神的な余裕が生まれることがあります。特に、遠方に住む要介護者の場合、短期間の泊まり込みケアが可能になるなど、柔軟な対応ができるようになります。
また、要介護者と過ごす時間が増えることで、よりスムーズな介護が実現できたという声も聞かれます。
介護にかかる費用を減らせる
仕事をしながら介護をする場合、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどのサービスを利用する機会が多くなります。これらのサービスには相応の費用がかかりますが、介護に専念することで、外部サービスの利用を減らすことができます。
また、日中の時間を有効に使えるため、時間外のサービス利用も抑えられ、結果として介護にかかる総費用を軽減できる可能性があります。
介護と仕事を両立させるための支援策はある?
介護離職を選択する前に、利用できる支援制度や相談窓口について知っておくことが重要です。実は、仕事と介護の両立をサポートするさまざまな制度や専門家による支援体制が整っています。
仕事と介護の両立を支援する主な制度や窓口には以下のようなものがあります。
- 介護休業制度
- ケアマネジャー
- 地域包括支援センター
- 短時間勤務などの制度
それぞれの支援策について、解説します。
介護休業制度
介護休業制度は、家族の介護のために一定期間仕事を休める法定の制度です。対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として取得できます。
この期間中、雇用保険に加入している場合は、休業開始時賃金の67%相当額が介護休業給付金として支給されます。休業中は、介護サービスの利用調整や施設の見学など、今後の両立に向けた体制づくりに時間を使うことができます。
ケアマネジャー
ケアマネジャーは、要介護者のケアプラン作成や介護サービスの調整を行う専門家です。介護保険サービスの利用方法や、仕事と介護の両立についての相談にも応じてくれます。
介護者の相談にも丁寧に対応し、心身の状況に配慮したプランを提案してくれる心強い味方となります。守秘義務があるため、安心して相談できる存在です。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、介護に関するさまざまな相談を受け付ける公的な窓口です。介護保険の申請手続きから、介護サービスの紹介、さらには介護と仕事の両立に関する相談まで幅広く対応してくれます。介護に直面する前の事前相談も可能です。各地域に設置されており、介護に関する総合的なサポート機関として機能しています。
短時間勤務などの制度
多くの企業では、介護と仕事の両立支援策として短時間勤務制度を導入しています。この制度では、1日の所定労働時間を短縮したり、週や月の勤務日数を調整したりすることが可能です。
フレックスタイム制度や時差出勤制度、介護サービス費用の助成など、会社によってさまざまな支援制度が用意されています。対象家族1人につき、利用開始から3年以上の期間で2回以上利用できます。
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介護が必要な家族のために離職することは、深い愛情と責任感から生じる非常に尊い好意ではありますが、決して介護はひとりで抱え込むものではありません。昨今社会問題となっている介護離職は、ここまで述べてきたように離職後に後悔を感じることも少なくありません。
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「介護のために仕事を辞めるしかない」と悩む前に、「親サポセレクト」に相談してみてはいかがでしょうか。
おわりに
介護離職は、一度決断すると取り返しのつかない影響を及ぼす可能性があります。現代では介護と仕事の両立を支援する制度やサービスが充実しており、多くの人が両立を実現しています。介護休業制度やケアマネジャーの活用、さらには介護サービスを利用することで、安定した収入を確保しながら親の介護に向き合うことができます。介護に直面したときは、一人で抱え込まず、まずは利用できる支援制度やサービスについて相談することから始めましょう。介護保険に加えて、「親サポセレクト」のような介護保険外のサービスを活用して適切なサポートを受けることで、介護と仕事の両立という課題を乗り越えることができるでしょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。