乳がん検診にかかる費用は、全額自己負担の場合マンモグラフィが5,500円程度、乳腺エコーは4,000円程度です。費用は検査の種類や受診場所で異なるため、事前に確認しましょう。今回は乳がん検診の費用、検診の受診場所などを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
乳がんの概要
乳がんとは、乳腺から発生する、日本人の女性がかかるがんの中でもっとも多いがんです。生涯のうちに11人に1人が乳がんと診断されています。乳がんの患者は年々増加傾向にあります。しかし、早期に発見できれば比較的治りやすい、がんであり死亡数は第5位にとどまります。
乳がんの90%が乳管から発生するもので、乳管がんと呼ばれます。乳管は乳房の中に放射線状に広がる母乳の通り道のことです。乳管の端っこには母乳をつくる組織である小葉(しょうよう)があり、小葉から発生する乳がんは小葉がんといいます。
40代、50代女性の罹患率が高い
乳がんは40代、50代の罹患率が高く、他のがんに比べて患者の年齢層が若いことが特徴です。罹患率はその中でも40代後半がピークです。生活習慣が欧米化したことなどを背景に、乳がんにかかる方は年々増えており、特に40歳から50歳までの層の罹患率はこの20年で2倍に増えています。仕事や子育て、介護などで忙しい時期にかかるがんが、乳がんなのです。
早期発見、早期治療が重要
乳がんは早期発見、早期治療ができれば治る可能性が高いです。早期の乳がんの場合、適切な治療を受ければ90%以上が治り、手術の跡も小さくてすみます。しかし発見が遅れてしまうと、乳房を失うだけでなく、命を落とす原因となります。
乳がんにかかりやすい40代、50代はそれまで大病を患った経験がないことが多い年代です。そのため、乳がんは早期発見が重要と分かっていても、検診を受けるまでにはなかなか至らないのが現状です。厚生労働省が実施した「国民生活基礎調査(平成28年)」では、乳がん検診の20歳以上の受診率は44.9%にとどまっています。欧米の乳がん検診の受診率70〜80%と比べて、かなり低い割合だといえます。
定期的に乳がん検診を受け、超音波検査やマンモグラフィによって早い段階で乳がんを見つけることが重要です。
乳がんの原因、症状
乳がんの原因が何であるのか、はっきりしたことはわかっていません。しかし、エストロゲンという女性ホルモンが関係しているとされています。以下に挙げられる乳がんのリスク要因は、いずれも体内のエストロゲンレベルに影響するものがほとんどです。
- 初経年齢が早い
- 閉経年齢が遅い
- 出産の経験がない
- 授乳経験がない
- 初産年齢が高い
- 閉経後の肥満
- 飲酒習慣がある
- 1親等の血縁者に乳がんや卵巣がんの罹患経験者がいる
- 良性乳腺疾患にかかったことがある
上記以外にも、喫煙やエストロゲンとプロゲスチンを併用したホルモン補充療法の経験がある、経口避妊薬の長期間の服用、糖尿病なども乳がんのリスクを高めるとされています。
【受診場所別】乳がん検診にかかる費用の目安
乳がんは早期発見が重要であり、そのためには定期的な検診の受診が欠かせません。乳がん検診を受診する方法としてはどのようなものがあり、費用がどの程度かかるのか確認していきましょう。乳がん検診を受診する手段としては主に次の4つがあります。
- 自治体の検診
- 職場の検診
- 全額自己負担のレディースクリニックなど
- 症状がある場合は保険診療
それぞれの特徴を知り、居住地の自治体や加入している健康保険の制度などを調べたうえで、受診しやすい方法を選択しましょう。
自治体の検診
自治体が行う検診とは、いわゆる住民検診といわれるもので、対象は当該自治体に住む40代以上の女性であることが一般的です。自治体ごとに自己負担額は異なりますが、費用は概ね無料〜3,000円程度で、検診の周期は2年に1度です。
検査内容としてはマンモグラフィが中心で、希望によって超音波検査(エコー)や視触診検査を追加できるといったシステムが多いようです。自治体によっては30代でも検診を受けることができます。
自治体の検診には、職場検診など他の検診を受ける機会がない、乳がんの自覚症状がない、乳がんの経過観察あるいは治療中でないなどの要件があります。要件をクリアしているかどうか事前に確認しましょう。
職場の検診
会社などが加入する健康保険組合がおこなう職場検診では、健康保険組合の加入者のうち検診を希望した方が乳がんの検査を受けられます。費用は無料か、かかっても1,000円程度のことが多く、費用負担が少ない点が特徴です。自分で超音波検査かマンモグラフィかを選択します。
健康保険組合の中には加入者だけでなく、被扶養配偶者も受けられるところもあるため、専業主婦の場合は配偶者の健康保険組合の制度を確認し、積極的に利用しましょう。
全額自己負担のレディースクリニックなど
自治体の検診や職場検診以外では、レディースクリニックや人間ドックなどで、全額自己負担で乳がん検診を受けるという方法もあります。全額自己負担で受ける場合、超音波検査のみは4,000円程度、マンモグラフィのみでは5,500円程度です。超音波検査、マンモグラフィ、乳房視触診をすべて行った場合は10,000円程度かかります。
人間ドックによっては、一般的な検査に乳がん検査、あるいは乳がん検査と子宮がん検査がセットになった「レディースドック」というプランを用意しています。人間ドック以外の一般の病院(レディースクリニックなど)で検診を受ける場合には、上記の費用に初診料や診察料が加わるため、総額で20,000〜30,000円程度かかると考えておきましょう。
住民検診や職場検診と違い、都合の良いタイミングで検査を受けられる点がメリットといえるでしょう。
症状がある場合は保険診療
ここまでお伝えしてきた、乳がんの自覚症状がない状態での検診費用は保険適用外ですが、乳房に異変を感じて受診し、検査をした方が良いと診断された場合は保険適用の対象となります。基本的に、自己負担は3割です。
保険診療においても、検査として超音波検査かマンモグラフィを行う点はその他の検査方法と同じです。これらの検査で異常が認められたときは、さらに精密検査を受けます。組織検査や細胞検査は保険が適用され2,000円前後、MRI検査は10,000〜15,000円程度かかるとみておきましょう。
【40代以上、ライフプラン別】乳がん検診費用の目安
乳がん検診の受診方法は複数あり、基本的な検査内容は同じですが、それぞれ費用が異なることは既にお伝えしたとおりです。ここからは「専業主婦」「会社員」といったライフプラン別に、受けられる乳がん検診と費用の目安を確認していきましょう。いずれも年齢は40代以上とします。検診を受ける際の参考にしてみてください。
ケース1 専業主婦
40代以上の専業主婦は、自治体の乳がん検診を2年に1度受けることができます。費用の負担は市区町村によって異なりますが、無料〜3,000円程度です。自治体によっては実施しないこともあるため、市区町村のホームページなどであらかじめ確認しておきましょう。
配偶者の勤務先の健康保険組合が行う検診を受けられることもあります。受けられる場合であっても、健康保険組合によって乳がん検診費用を負担してくれるかどうかが異なります。そのため、自治体の検診と配偶者の職場検診の内容や費用を比較して決めると良いでしょう。
ケース2 会社員
40代以上の会社員であれば、自治体が実施する検診と、企業による職場検診のいずれかを選択できるという方がほとんどでしょう。企業や自治体によっては乳がん検診を実施していないこともあるため、実施の有無を確認しておく必要があります。
基本的な検査内容に違いはないですが、負担する費用の違いなどを考慮し選択しましょう。
乳がん検診にかかる費用が手元にないという場合でも対応できるのが、クレディセゾンの「マネーカード」です。入会金、年会費ともに永久無料で、事前にカードを発行しておけばいざというときにも最大300万円までの借り入れが可能です。CREDIT SAISON ATMをはじめ、銀行やコンビニなど提携ATMで利用できる他、パソコンやスマホから即振り込みができるONLINE振込みサービスもあります。
一般的な乳がん検診の3つの種類
一般的な乳がん検診で受ける検査には、次のように3種類あります。
- 視触診検査
- マンモグラフィ
- 超音波検査
年代によって必要な検査は異なります。40代以上であればマンモグラフィと、必要に応じて超音波検査と組み合わせて実施するケースが多いです。医師と相談したうえで決定しましょう。
通常の乳がん検診は、問診からスタートし、医師による視触診検査の後、マンモグラフィや超音波検査などの画像検査がおこなわれます。
ここからは、それぞれの検査の内容について解説していきます。
視触診検査
視触診検査は、医師が乳房を観察してくぼみや変形がないか、乳頭から分泌物がないか、手で触れてしこりがないか、リンパ節の腫れがないかどうか確認します。
触診である程度の大きさのしこりを発見できます。一方でその大きさに至らない、初期の小さな乳がんを見落としてしまう可能性があるでしょう。そのため、マンモグラフィや超音波検査との併用が基本です。
マンモグラフィ
マンモグラフィとは乳房専用のX線検査のことで、乳房をプラスチック製の板で挟み平たくして撮影する方法をいいます。乳腺密度が高い傾向にある40歳代は2方向から、50歳代は1方向から撮影する場合もあります。
マンモグラフィは乳がんの初期症状である石灰化や腫瘍を見つけるのに適しています。乳腺の石灰化が問題になっている方、閉経後で乳腺が萎縮し多くが脂肪に代わっている方におすすめの検査方法です。過去の撮影フィルムと比較することができるため、小さな変化に気づくこともできます。
一方で、デンスブレストといわれる乳腺濃度が高い女性については、乳腺の組織が真っ白に映ってしまい、特に初期の小さな乳がんを見落としてしまう可能性があることに注意しましょう。そのようなケースでは、超音波検査と併用することが推奨されています。
また、デメリットのひとつに放射線被ばくがあります。1枚を撮影することで受ける放射線量は、飛行機で東京からニューヨークまで飛ぶ際に浴びる自然放射線とほぼ同じです。
超音波検査
乳がん検診における超音波検査は、超音波を発する器具を乳房に乗せて動かし、モニターに映し出された画像を見て診断するものです。器具から出る、人間の耳には聞こえない音を臓器に当て、反射の様子をもとに画像にしています。視触診などでは分からない、数ミリのしこりを見つけることができます。
針や放射線を使わないため、身体への負担が軽い点がメリットとして挙げられます。また、マンモグラフィではしこりを見つけづらい乳腺密度の高い方、若い方に対して有効といわれています。
セルフチェックの方法
乳がんの早期発見のために、乳がん検診とあわせて重要といわれているのが月に1回のセルフチェックです。セルフチェックは、自分自身で乳房を触ってしこりがないかどうか確認したり、変化がないかどうか観察したりするものです。習慣化することで、些細な変化に気づけるようになるでしょう。
右の乳房をチェックするときには、右腕を上げて左手の「親指以外の4本の指」を揃え、指の腹で触れてみましょう。つまんでしまうとしこりがあるように錯覚してしまうことがあるため、指の腹で触ることがポイントです。
指にボディソープなどをつけて滑りやすくして、親指以外の4本指をそろえ、くるくると渦巻きを巻くように動かしてしこりがないかを確認します。乳房全体、中心、上下の部分、鎖骨から乳房の間、脇の下と乳房横をそれぞれ触っていきましょう。
乳頭は親指と人差し指の腹で、ギュッと絞るようにします。しこりを感じられなくても、乳頭から血液が混じった分泌物が出る場合、乳管の中に腫瘍ができている可能性があるため、早めに受診するようにしましょう。
セルフチェックのポイント
生理開始後1週間を経過した頃にセルフチェックをすると、しこりなどに気付きやすいとされています。閉経している場合は、毎月1回、決まった日にちに行うと良いでしょう。バスタイム中にボディソープがついた状態で行うと滑りが良く、変化がわかりやすいようです。
また、乳がんが発生する場所は、乳房の外側の上部が全体の47.6%ともっとも多くなっています。乳房の外側の上部は乳腺が多く、乳がんができやすいため、特に注意して確認してください。
しこり以外の変化も確認する
乳がんのセルフチェックというと、手で触ってしこりの有無を確認するイメージが強いですが、乳房や乳首の大きさや形が左右で違いがないか、乳房にえくぼやでっぱり、ひきつれや変色などがないかどうか目で見て確かめることも大切です。
鏡の前に立って両腕を組み頭の上にあげ、上半身を左右にひねるようにしてチェックします。さらに、両手をおろして腰にあて、胸を張るようにして細かく見ていきましょう。
自分と家族のために、定期的に乳がん検診を受診しよう
乳がん検診を受診する方法としては、住民検診や職場検診、人間ドック、レディースクリニックでの受診、症状がある場合の保険診療などがあります。それぞれ費用が異なりますので、自分が受けられる検診の内容と費用を確認しておくと良いでしょう。
全額自費で検査を受ける場合、超音波検査のみの場合は4,000円程度、マンモグラフィのみの場合は5,500円程度かかります。超音波検査、マンモグラフィ、乳房視触診をすべておこなうと10,000円程度かかります。
忙しいと乳がん検診を受けにいく時間をつくるのが大変ですが、乳がんは早期発見ができれば治る可能性が高いのが特徴です。自分の命を守るため、そして家族のために、定期的に乳がん検診を受診しましょう。