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世帯年収1,200万円の40代共働き夫婦「贅沢していないのになぜ?」…貯蓄が増えないワケ【FPの助言】

世帯年収1,200万円の40代共働き夫婦「贅沢していないのになぜ?」…貯蓄が増えないワケ【FPの助言】
川淵 ゆかり(川淵ゆかり事務所 代表)

執筆者
川淵 ゆかり(川淵ゆかり事務所 代表)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士。国立大学行政事務(国家公務員)後にシステムエンジニアとして、物流・会計・都市銀行などのシステム開発を担当。その後FPとして独立し、ライフプランやマネープランのセミナーのほか、日商簿記1級、CFP、情報処理技術者試験の合格経験を活かして、企業や大学での資格講座・短期大学や専門学校での非常勤講師としても勤める。

世帯年収1,200万円と平均よりも裕福なはずのA夫婦。しかし、特段贅沢しているつもりはないのになぜか貯蓄は一向に増えない……。一体なぜなのでしょうか?

本記事では、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の川淵ゆかり氏が、A夫婦のマネープランについて助言する。

なかなかお金が貯まらないAさん夫婦

なかなかお金が貯まらないAさん夫婦

メーカーの営業職の43歳のAさんは、アパレル企業で正社員として働く40歳の妻と5歳と3歳の息子の4人家族です。夫婦ともに明るく仲が良く、都心にマンションを借りて生活していますが、子どものことも考えて、一戸建ての購入を検討して相談に来られました。

※ご本人の了解を得て、一部脚色して記載しています。

Aさん夫婦は家計簿を付けておらず、お互いの収入のなかから生活費を出し合っており、それぞれが貯蓄をしていると思っていたのですが、家のことについて話し合ったときに2人とも5年前からほとんど貯蓄が増えていないことが判明しました。

 夫「十分に生活費を渡しているじゃないか!なぜ貯金しないんだよ」

 妻「貯金できるほどもらってないわよ!あなたのほうが収入多いでしょ。何に使ってるの?」

と、喧嘩まで始まる始末です。

Aさん夫婦の貯蓄が増えないワケ

Aさん夫婦の貯蓄が増えないワケ

Aさんご夫婦の貯蓄が増えない理由は、次の2つが大きな原因です。

貯蓄の目的と目標額が決まっていない

貯蓄が増えない人の多くが、貯蓄の目的と目標額が決まっていないことが挙げられます。はっきりとした目標がなければ、どうしても人間は意志が弱くなってしまうもの。明確な目的と目標金額がなければ、貯蓄は増えません。

Aさん夫婦はどちらも十分に収入がありますから「そのうち貯まるだろう」という気持ちもあって、お金のことは深く考えずに今まで過ごされてきたようです。

ですが、すでにお2人とも40代。子ども2人にはこれからはお金もかかってきますし、老後資金を貯めることも考えないといけません。これからは住宅ローンも抱えることにもなるので、貯蓄やお金の使い方にもう少し意識を持っていきましょう

無駄遣いが多く、収支状況がわかっていない

Aさん夫婦のように貯蓄ができない人は、無駄遣いが多く、家計の収支状況を把握できていないケースが多いものです。無駄な出費や衝動買いが多かったり、固定費の割合が高かったり、といった傾向があるのですが、本人はそれほど自覚がありません。Aさんのケースで問題だったのは、家計簿も付けておらず、毎月の支出状況がよくわかっていないところです。

Aさんは営業回りのせいかグルメで着るものもおしゃれな方で、趣味もゴルフとお金がかかります。奥さんもアパレル企業にお勤めですから、ほかのご家庭に比べて洋服やバッグなどの小物を多く購入されるようで、子どもたちにも良いものを着せているようです。

ほかにもお話を伺って、支出を減らせる部分は次のとおりであることがわかりました。

①外食が多い

外食が多いのも気になりました。Aさんは帰りが遅く、夕食はほとんど家では食べないようですし、休日になると子どもを連れて家族で外食をしています。また、仕事場でのお昼も夫婦ともに外食したりお弁当を購入したりと、その都度お財布の口を開けています。外食を減らすだけでもかなり効果がありそうです。

②海外旅行が多い

海外にも年に1~2回は家族で旅行しているようで、これも十数年続けばかなりの金額になります。しかし、小さい子どもを海外に連れて行ってどのくらい理解できるのかはわかりませんし、1番問題なのは、海外に行きたくなったときに行けない状況になることです。

例えば、「海外の大学に行きたい」とか「海外で仕事がしたい」と子どもに言われたときに、お金を理由に諦めさせざるを得ない状況にならないかどうか、ということです。

日本は今後も人口減少は加速しますし、経済成長も期待はできません。増税や社会保険料のアップもあるでしょうから、10年後や20年後のことを考えると、成長した子どもが「海外で勉強したい」「海外で仕事がしたい」と言い出さないとも限りません。

「子どもの頃はよく海外に行ったのにどうしてダメなのか?」と言われないためにも、海外旅行の計画や子どもの教育資金計画は慎重に行う必要があります。

特に今後も円安傾向が続くと海外にもなかなか行きにくくなります。海外移住を考える資産家の方も増えてきましたので、収入のある方でもマネープランは重要になります。「海外旅行を止めましょう」とまでは言いませんが、間隔を空けるなど工夫をしてみましょう。

③習い事が多い

Aさん夫婦の場合は子どもの習い事も多いのが気になりました。

上の子どもだけでも、水泳に英会話、スポーツクラブと月に2万円は超える金額になっていました。習い事で問題なのは、月謝以外にも教材やユニフォームなどのお金がかかることです。さらに大会への参加や、飲食も含めた集まりなどがあるケースもあり、その都度出費が必要になる習い事もあります。

上の子どもに習い事をさせるのであれば、下の子どもにも同じ習い事をさせたいでしょうし、差別してしまうと兄弟間や親子間で亀裂ができてしまうケースもあります。

中学生や高校生になったら塾や家庭教師などさらにお金がかかってきます。いまさら辞めさせるのも大変でしょうが、あまり興味を持たなかった習い事であれば辞めさせてしまいましょう。子どもが中学生や高校生になるころには、Aさんは50代も半ばですが、世の中では「役職定年」で収入がダウンしてしまう人もいる年頃です。

子どもに「いつ、どのくらい」お金をかけるのか、を一度考えてみましょう。

④家賃が高い

おしゃれなAさん夫婦のお住まいは、結婚当初から住んでいる賃貸マンションです。場所も都心なので家賃も管理費などを含めて22万円程度かかっています。家賃なども立派な固定費です。

今回、Aさんご夫婦は、住まいの取得を考えていらっしゃるとのことなので、住宅ローンのシミュレーションをしてみました。Aさんの年齢を考えて、20年ローンとしています。

■住宅ローン試算
①借入額:4,000万円 金利1% 20年ローン (ボーナス時返済なし)
 毎月の返済額:約18万4,000円(総返済額:約4,415万円) 
②借入額:3,000万円 金利1% 20年ローン (ボーナス時返済なし)
 毎月の返済額:約13万8,000円(総返済額:約3,312万円) 

毎月の返済額は現在の家賃よりも減らせますから、固定費のカットとなります。このシミュレーションを参考に、お二人でいまの貯蓄額から頭金をどのくらい出せるかを話し合っていただき、建築場所や家の大きさを考えていただくことにしました。

住まいの金額が決まってから住宅ローンを考えるご家庭が多いですが、まずは住宅ローンを試算してみて確実に返せる金額を決めたあとに住まいの購入金額を決定したほうが失敗しません。

貯蓄できない人の天敵「固定費」

貯蓄できない人の天敵「固定費」

貯蓄ができない人は、毎月の支出のなかでも「固定費」が大きいことが問題です。Aさんの前述の支出だと、習い事や家賃(住宅ローン)が固定費になります。ほかにも固定費は、保険料やスマホ代やインターネット料金、水道光熱費の基本料金などがあります。

「なんとなく」で大きくなる出費

固定費は「なんとなく」で大きくなってしまうので、注意しましょう。たとえば、

注意すべき固定費

  • サブスク料金(映画やドラマといった動画配信への複数加入)
  • フィットネスやトレーニングジムの料金
  • 高額な習い事やセミナー代
  • エステや美容院の料金

といったものもあります。本当に自分に必要かどうかを考えて、不要であれば解約するのはもちろん、ほかに安い所を探したり、回数を減らしたりという方法でも節約は可能です。月額1,000円程度のサブスクでも「塵積も」ですから、貯蓄に回すようにしましょう。

ほかにも、合計してみると結構な金額になっているのがコンビニの利用です。毎日のように寄ってしまう人も多いですが、なんとなく買ってしまうお菓子や飲み物などありませんか?コンビニはついつい衝動買いをしてしまう場所ですから注意しましょう。コンビニに行く回数を減らしたり、ドラッグストアで金額を決めてまとめて購入したりすることでも節約になります。

衝動買いというとネットショッピングやテレビショッピングもそうですね。「これ、安い!」と思って「我先に」と購入ボタンを押してしまったり、電話をかけてしまったり、という人も多いです。本当に必要かどうか考えてから購入を決めましょう。

まずは「先引き」貯蓄の方法で、貯蓄優先の家計に

まずは「先引き」貯蓄の方法で、貯蓄優先の家計に

Aさんは、節約も重要ですが、年齢的にも貯蓄を増やすことが大切です。「収入が低くて毎日の生活がやっと」という人は難しいでしょうが、サラリーマンなどある程度の収入のある人は、前述の見直し方法で貯蓄に回せる金額を増やすことができます。

給料やボーナスが入ったら、まず最初に一定の金額を差し引いて貯蓄してしまいましょう。その後、残りの金額で家計をやりくりします。つまり、「収入-貯蓄=家計支出」で考えることです。

資産作りには、まず目標金額を決めることから始めましょう。目標額が決まれば、毎月の積立額や運用利率も見えてきます。一番悪いのは、目標も決めずなんとなく積み立てていくことです。物価が上がり、これからも人手不足や食料不足などで家計は厳しくなっていくと思われます。どのくらいのリターンが得られるのか、得られたのかを定期的に判断して運用していくようにしましょう。

Aさん夫婦が25年後に3,000万円貯めるには?

たとえば、Aさん夫婦が老後資金作りとして、60歳直前の25年後に3,000万円を作ることを考えてみましょう。前述のように20年後には住宅ローンも終わる計画ですし、子ども2人も大学を卒業しますから、25年という期間でのシミュレーションとしてみました。

Aさん夫婦の資産作りシミュレーション
■目標額:3,000万円 期間:25年
■年利率
  年1%の場合、年間の積立額 105万円(毎月の積立額:8万7,500円)
  年3%の場合、年間の積立額  81万円(毎月の積立額:6万7,500円)
  年5%の場合、年間の積立額  63万円(毎月の積立額:5万2,500円)

積立の金額と運用利率が決まったら、金融商品を選んでいきます。ただし、この金額は、税金も手数料も考慮していませんので注意が必要です。特に手数料についての説明をよく聞かずに金融商品を選んでしまい、「思ったより増えなかった」と思ったときは手遅れになっているケースもよくあります。また、運用成績は毎年変わってきますので、定期的な確認が必要です。

Aさんは家計の見直しにより、最低でも毎月10万円の積み立ては可能になりましたので、3,000万円の目標金額は楽に達成できそうです。

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