マンション売却で失敗しないためにも、売却する目的を明確にしたうえでスケジュールを立てましょう。このコラムではマンション売却の失敗例や注意点、売却できない時の対処法について解説します。マンション売却の流れを理解し、丁寧に進めていきましょう。
マンション売却における失敗事例10選
マンション売却におけるよくある失敗事例は以下のとおりです。
- 相場よりも高く設定し売れ残ってしまう
- 相場よりも安いのに気付かず売却してしまう
- 売却期間に余裕がなく買い叩かれてしまう
- 価格の最低ラインを決めていなかった
- 内覧時の第一印象が良くなかった
- 説明不足で売却後にトラブルになった
- 手残り金額で考えていなかった
- 不動産会社に囲い込みをされてしまう
- 査定や売り出し、成約の3つの価格の違いを理解していない
- 引っ越し先が見つからない
それぞれの失敗事例の詳細と、対策について解説します。
相場よりも高く設定し売れ残ってしまう
マンション売却では、相場よりも明らかに高い価格設定をすると売れ残ってしまう危険性があります。マンションに限らず類似した商品があった場合、できる限り安いものを買いたいと考える方は多いのではないでしょうか。
同じマンション内や近隣マンションの売却事例や売却中の不動産と比較し、明らかに高い価格設定になっていないかを事前に確認する必要があります。価格設定が高く、販売が長期化すると売れ残り感が出てしまい、イメージダウンに繋がることもあるため注意しましょう。
対策としては、売却時には複数社に査定を依頼するのがおすすめです。
1社だけの査定ではその価格が高いのか安いのかの判断ができません。所有している不動産を高く評価してもらうのは所有者として嬉しい気持ちもありますが、その価格が適正であるかを見極める必要があります。なかには高い査定額を提示して自社に売却を任せてもらおうと考えている不動産会社もあるため、他社よりも明らかに高い査定額が提示された場合は、価格の根拠を聞いてみましょう。
価格の根拠に納得できる不動産会社に依頼するのが良いでしょう。
相場よりも安いのに気付かず売却してしまう
いつまでに買い替えをしなければならない、いつまでに現金化しなければならないといった特別な事情がない場合に、相場よりも安く売却すると金銭的に損をしてしまいます。
不動産会社の収入源である仲介手数料は成功報酬であるため、すぐに売却できるであろう安い価格であえて査定を行う不動産会社もあります。安く査定されていることに気付かないと、本来であればもっと高値で売却できる機会を失ってしまいます。この場合も複数社に査定依頼をすることで防げるため、1社だけの査定では不安な場合は複数社に相談してみましょう。
売却期間に余裕がなく買い叩かれてしまう
売却しなければならない期限が迫っていると、大幅な価格交渉が入ったとしても売らなければなりません。例えば、買い替え先の引き渡し期日が迫っている場合や、相続税の支払いのためにマンションを売却する場合などです。
売却期間に余裕がある場合は、大幅な価格交渉が入ったとしても強気に応じられますが、売却時期が迫っていると同じような対応は難しくなります。買い叩かれてしまうことを避けるには、余裕を持って売却したほうが良いでしょう。いつまでにマンションを売却して現金化しなければならないのかを明確にし、スケジュールを逆算して考えましょう。
価格の最低ラインを決めていなかった
価格の最低ラインを決めずに売却を開始すると、最終的に必要であった手残り資金を割ってしまう危険があります。マンション売却では不動産会社の担当者と売主が定期的に販売活動の振り返りを行い、場合によっては価格変更を行います。
しかし、販売が長期化して何度も価格変更を行うと、最終的に必要であった手残り資金を割ってしまい、マンション売却の目的が達成できない可能性もあるため注意が必要です。また、大幅な価格交渉が入った場合にも、最低ラインを決めずに同意してしまうと、同様の結果になるでしょう。
マンション売却では、売却を開始する前に価格の最低ラインを明確にし、最低ラインを割る価格変更や価格交渉には応じないと決めておく必要があります。
内覧時の第一印象が良くなかった
内覧時の第一印象が良くないと、購入検討者の購入意欲が下がってしまいます。具体的には以下のような内容です。
- 部屋が汚い
- 部屋が暗い
- 部屋の臭い
部屋が散らかっていたり、水回りが汚れていたりすると購入検討者の第一印象が良くありません。内覧前には必ず掃除、整理整頓をしておきましょう。また、部屋が暗いのも印象を左右する要素です。室内の電気を付けたり、カーテンを開けたりして、室内を明るくするように努めましょう。
さらに、普段の生活では気付きにくいポイントが部屋の臭いです。部屋にはその家庭独特の臭いがあります。不快に感じるかは購入検討者によって異なりますが、内覧前には換気をしておくのがおすすめです。
併せて、購入検討者には丁寧に接するようにしましょう。現在居住中のマンションを売却する場合、内覧時には売主として立ち会うケースが多くなります。その際に購入検討者への対応が悪いと、購入検討者の気分を害してしまい購入検討物件から外されてしまうかもしれません。対応方法について不安な場合は、事前に不動産会社の担当者に相談しましょう。
説明不足で売却後にトラブルになった
設備の不具合などを正確に伝えていないと引き渡し後にトラブルにつながる可能性があります。不動産の取引では、引き渡した物がその種類や品質、数や量について「契約内容に適合していない」と判断された場合、契約不適合責任を負わなければなりません。
例えば、建物の給排水管が故障しているにもかかわらず、故障していないと伝えて引き渡した場合、契約の内容に適合していないため、修繕費用を負担しなければなりません。また、仮に設備の不具合などがない状態で引き渡した場合であっても、引き渡し後一定期間内に故障した場合は売主負担で修繕しなければならないケースもあるため注意しましょう。
設備の状況は不動産会社と一緒に確認を行い、付帯設備表や物件状況等報告書を正確に記入しましょう。また、場合によっては、契約書では、契約不適合責任の免責条項を入れるなど、のちのちのトラブルを未然防ぐよう工夫しましょう。
手残り金額で考えていなかった
不動産売却は売れた金額がそのまま手元に残るわけではありません。仲介手数料や住宅ローンの返済手数料といった諸費用や税金がかかるため、必ず売却にかかる費用、売却後にかかる税金等を踏まえて手残り金額を計算しましょう。
手残り金額を考えていなければ、売却後に新たに不動産を購入する場合などに、資金が不足してしまう恐れがあります。売却を開始する前には一度、不動産会社に手残り金額を計算してもらいましょう。より正確に計算したい場合には税理士に依頼するのもおすすめです。
不動産会社に囲い込みをされてしまう
マンションの売却では、不動産会社に囲い込みをされてしまう危険があります。囲い込みとは物件の情報を他社に渡さないことです。囲い込みは不動産の流動性が下がり、依頼主である売主に不利益を与える行為です。しかし、現在でも囲い込みを行っている不動産会社はあるため注意しましょう。
専属専任媒介契約、専任媒介契約であれば不動産の売却を開始した際には、レインズと呼ばれる不動産会社のみが閲覧できる物件情報サイトに掲載を行う義務があり、不動産会社各社で物件情報を共有します。
しかし、囲い込みを行う会社は、レインズに物件を掲載しない、もしくは掲載したとしてもさまざまな事情で内覧を拒否するなど、他社が介入する機会を与えません。なぜなら、不動産会社は他社の顧客が自社の物件を購入した場合、売主からしか手数料を受領できず、自社で買主を見つけた場合よりも収益が下がってしまうためです。
マンションを売却する際には、囲い込みをされないためにも一括査定などで複数社に相談し、信頼できる不動産会社に依頼するのがおすすめです。また、売却期間中も不動産会社と適宜やりとりを行い、不審な点がないか販売状況の確認をしましょう。
査定や売り出し、成約の3つの価格の違いを理解していない
マンション売却の際3つの価格を理解しておく必要があります。それぞれの価格の違いを理解していないと、「査定価格で売れると思っていた」「価格交渉が入るとは思っていなかった」と、当初の計画が崩れてしまいます。
- 査定価格
- 売り出し価格
- 成約価格
査定価格とは、不動産会社がマンションの査定をする際に算出する価格です。査定の際は同じマンション内の取引事例や、近隣マンションの取引事例などをもとに計算を行います。あくまでも想定成約価格であり、必ずしも査定価格で売れるわけではありません。
売り出し価格とは実際にマンションを売却する際に設定する価格で、売り出し価格を決めるのは売主です。不動産会社が算出した査定価格を踏まえ、いくらで売りたいのかを売主が決定します。
成約価格とは実際に取引が成立した際の売買価格です。マンション売却では売り出し価格に対して買主から価格交渉が入るケースもあるため、必ずしも売り出し価格で売れるとは限りません。このように3つの価格の違いを理解したうえで、売却計画を立てましょう。
引っ越し先が見つからない
マンションを売却する際には、売却活動と同時に引っ越し先を探さなければなりません。売却後に引っ越し先が見つからないと、現在の住まいの引き渡しを延長してもらう必要があります。買主に迷惑がかかることに加え、最悪の場合契約違反となり損害賠償金を支払わなければならないため注意しましょう。
もし引っ越し先が見つからない場合は、一時的にホテル住まいをするなど、対応を考えなければなりません。余計な費用とストレスがかかるため、引っ越し先の目処は早めにつけておきましょう。
マンション売却の流れとポイント
マンション売却で失敗しないためにも、マンション売却の流れを理解して、ポイントを押さえましょう。マンション売却では多額のお金が動くことに加え、流れが複雑なため事前に計画を立てることが大切です。
ここからはマンションの売却前、売却中、売却後の3つの時期に分けてポイントを解説します。一連の流れを理解することで、今後の具体的な計画を立てられるでしょう。
売却前のポイント
売却前のポイントは以下のとおりです。
- 余裕を持ったスケジュールを立てる
- 複数社に相談する
- 手残り金額を踏まえて売り出し価格を決める
- 綿密な販売戦略を立てる
マンション売却は準備が肝心であるため、これから解説する内容を踏まえて計画を立てましょう。特に準備段階では不動産会社だけでなく、売主本人がやるべきことも多くなります。それぞれのポイントについて解説します。
余裕を持ったスケジュールを立てる
マンション売却の際は余裕を持ったスケジュールを立てましょう。
公益財団法人東日本不動産流通機構の首都圏不動産流通市場の動向(2021年)によると、マンション売却にかかる平均日数は74.7日との結果が出ています。なお、この日数はレインズに登録されてから成約(契約)に至るまでの期間であるため、査定などの売り出し前の期間や契約から引き渡しまでの期間を含めると、さらに多くの時間がかかることになります。
仮に買主が住宅ローンを利用する場合、マンションの契約から融資実行までに2週間程度はかかります。いつまでに現金化したいのかを明確にし、その日程から逆算して考えましょう。
複数社に相談する
マンションを売却する際の査定は複数社に依頼しましょう。査定額は会社によって異なることに加え、1社だけの査定額では、その価格が高いのか安いのかの判断ができません。
複数社に依頼することで、マンションの相場を把握できるため、適正な価格設定ができるでしょう。極端に高い金額を提示している会社がある場合は注意が必要です。高値で売却できると売主を期待させて自社に売却を任せようと考えている可能性もあります。その価格の根拠を明確にしましょう。相場よりも明らかに高い価格で売り出すと、いつまでも売れ残ってしまう恐れがあります。
なお、不動産会社に相談した後は、どの会社に売却を依頼すべきかを決める必要があります。不動産会社に売却を依頼する契約を「媒介契約」といいます。なお、媒介契約には3つの種類があるため、それぞれの違いを理解しましょう。
媒介の種類 | 特徴 |
一般媒介契約 | 複数社に依頼可能 |
専任媒介契約 | 依頼できるのは1社のみ。自己発見取引可能。 |
専属専任媒介契約 | 依頼できるのは1社のみ。自己発見取引不可。 |
媒介契約のなかで唯一複数社に依頼できるのが「一般媒介契約」です。複数社に依頼できるため、販売の窓口を増やせるメリットがありますが、成功報酬が収入源である不動産会社にとっては、競合他社がいるとなると物件によっては販売に力を入れてもらえないケースもあるため注意しましょう。
専任媒介契約と専属専任媒介契約の違いは自己発見取引が可能かどうかです。自己発見取引とは、不動産会社を通さずに、自分で買主を見つけた場合の契約を指します。知人や親戚などに売却する可能性がある場合は専任媒介が良いでしょう。
不動産会社によっては、専任媒介もしくは専属専任媒介で依頼することで不動産会社独自のサービスを用意していることもあるため、サービス面についても比較検討するのがおすすめです。
手残り金額を踏まえて売却価格を決める
売却価格を決める際には、必ず手残り金額で考えましょう。マンション売却には以下のように、さまざまな費用がかかります。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 抵当権抹消費用
- 住所変更登記
- 譲渡所得税
具体的な計算方法について解説します。
- 仲介手数料=売買価格×3%+6万円+消費税 ※売買価格が400万円超の場合
一般的に売却する際の諸費用のなかで最も大きい割合を占めるのが仲介手数料です。不動産会社にいくらの報酬を支払うことになるのか事前に把握しておきましょう。なお、上記の計算式は仲介手数料の上限です。不動産会社によっては割引をしている会社もあるため、確認してみましょう。
印紙税とは不動産売買契約書に貼付する印紙代のことです。印紙代についても売買価格によって異なります。
記載された契約金額 | 印紙代 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 60,000円 |
また、上記の不動産売買契約書への印紙に加えて、抵当権抹消登記、住所変更登記を行う場合には、それぞれ1つの不動産につき1,000円ずつ(土地と建物は分けて2つとカウントされます)の登録免許税がかかります。なお、一般的に司法書士に依頼するケースが多いですが、その場合は別途、司法書士報酬もかかると考えておきましょう。
譲渡所得税とは、売却時に購入時よりも利益が出ている場合に発生する税金で、計算式は以下のとおりです。
- 譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額
- 譲渡所得金額×税率=譲渡所得税
譲渡価額はマンションの売却価格、取得費は売却したマンションを購入した際の価格や諸費用の合計、譲渡費用は売却時の諸費用を指します。また、税率は所有期間によって分かれており、所有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得の場合)は39.63%、5年を超える場合(長期譲渡所得の場合)と20.315%です。その5年を超えるか超えないかの判定日は、売却日ではなく、土地や建物を売った年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年を超えるかどうかで判断されます。
このようにさまざまな費用がかかるため、事前にシミュレーションをしておきましょう。
綿密な販売戦略を立てる
マンションを売却する前には、綿密な販売戦略を立てましょう。具体的には以下のような内容です。
- いつまでに売りたいのか
- どのタイミングで価格を下げるのか
- いつまでは価格を下げずに販売するのか
売りたい時期、売らなければならない時期から逆算して考えることで、適切な行動が取れます。販売を長期化させないために、どのタイミングで価格変更をするのかや、逆にいつまで高値での成約を狙うのかなどを考えましょう。
売却中のポイント
売却前のポイントを押さえて売却準備を行ったあとは、ついに売却開始です。売却中のポイントは以下のとおりです。
- 購入検討者に対して第一印象を意識する
- 不動産会社とこまめに連絡を取る
- 売却価格の見直しを行う
売却中には実際に購入検討者と会う機会があるため、細かな配慮が重要です。また、実際に売却活動を行うことで市場のリアルな反応が分かるため、市場の反応を踏まえて売却活動の見直しを行いましょう。それぞれのポイントについて解説します。
第一印象を意識する
マンション売却中は購入検討者の第一印象を意識しましょう。例えば、室内の内覧時には事前に掃除や換気を行う、丁寧な対応を心掛けるなどです。室内の第一印象は購入を左右する大きな要因であるため、掃除や換気は徹底しましょう。また、購入検討者は実際に住んでいる方の声を聞きたがっています。
住み心地はどうか、マンションの住人はどのような方か、日頃の買い物はどこを利用しているかなど、購入検討者から質問があった際には、丁寧に受け答えしましょう。また、不動産会社が作成する販売図面なども事前にチェックしておくのがおすすめです。
購入検討者は販売図面をもとに間取りやマンションの情報を確認するため、売主としても販売図面を確認し、購入検討者がどのような印象を受けるかを考えましょう。販売図面の記載に間違いがないか、分かりやすく作成されているかを確認し、場合によっては修正を依頼しても良いでしょう。
不動産会社とこまめに連絡を取る
売却期間中は不動産会社とこまめに連絡を取りましょう。不動産会社は売主に対して、専任媒介の場合は2週間に1回以上、専属専任媒介の場合は1週間に1回以上、販売活動の報告をする義務があります。しかし、そのタイミングに限らず、気になることがあった際には連絡を取るのがおすすめです。
例えば、新聞に折込広告を入れたタイミングやマンションの価格変更を行ったタイミングなど、購入検討者からの問い合わせがあると予想される場合には不動産会社に連絡をしてみましょう。
問い合わせがあった際には、不動産会社とどのように物件を魅力的に見せるか作戦会議をするのも良いでしょう。また、他社からの問い合わせ状況なども合わせて確認することで、囲い込み防止になります。
売却価格の見直しを行う
売却開始後に成約に至らない場合は、売却前に立てた計画と、現在の問い合わせ状況を踏まえて売却価格の見直しを行いましょう。
特に折込チラシを行った直後に問い合わせがない場合などは、価格を見直すタイミングともいえます。不動産会社はこれまでに内覧した方の感想などもヒアリングしているため、市場の反応を踏まえて売却方法を練り直しましょう。
価格変更を行う際には、売却開始後に近隣で成約したマンションや新たに販売に出てきた競合物件を分析する必要があります。また、価格を変更する際には、週の問い合わせ件数が何件を下回った場合など、条件をつけておくのも良いでしょう。基準を明確にすることで、感情に左右されずに判断できます。
売却後のポイント
無事に売買契約が行われ、販売活動が終了した後も注意が必要です。売却後のポイントは以下のとおりです。
- 手付金はなるべく使わない
- 引き渡し前の室内確認をしっかりと行う
- 契約時の書類は処分しない
無事に売買契約を行ったとしても、引き渡しまでにトラブルが発生すると、契約が解約になったり、違約金が発生したりと、これまでの努力が水の泡になってしまいます。トラブルを発生させないためにも、売却後のポイントを押さえましょう。
それぞれのポイントについて解説します。
手付金はなるべく使わない
マンションの売買契約を行う際に買主から手付金を受領しますが、手付金はなるべく使わないようにしましょう。
契約が完了した後も、買主の住宅ローン審査が否認され契約が白紙解約になるケースがあります。白紙契約になった際には受領していた手付金は買主に返金しなければなりません。手付金を使用してしまうと、万が一の際にすぐ返金できなくなる恐れもあるため、引き渡しが完了するまでは使わずに保管しておきましょう。
引き渡し前の室内確認をしっかりと行う
引き渡し前には室内確認をしっかりと行いましょう。一般的に室内は空渡しになるため、エアコン等も取り外しますが、まだエアコンが新しいものの売主が新居で利用しない場合や、買主が使いたいと意思表示している場合は残しておくケースも多いです。
照明やカーテン、エアコンなど、取り外し可能な家具・設備については、撤去するか室内に残しておくかを契約時に売主・買主で取り決めを行うため、その内容に沿って室内を確認しましょう。取り決めどおりになっていない場合、契約違反になる危険もあるため注意が必要です。トラブルを避けるためにも、余裕を持って準備を行いましょう。
契約時の書類は処分しない
引き渡しが完了しても契約時の書類は処分しないようにしましょう。マンションを売却した翌年には確定申告をする必要があります。マンション売却で利益が出ていない場合、確定申告は義務ではありませんが、損失が出ている場合に利用できる控除もあります。
確定申告書を作成する際に困らないように、契約時の書類は大切に保管しておきましょう。
マンション売却における9つの注意点
マンション売却では9つの注意点があります。
- マンションの価格は変動する
- 勢いで売却を依頼しない
- 物件の問題は事前に伝えておく
- マンションのローンは売却代金で完済する
- 必要書類は早めに準備する
- 査定額で一喜一憂しない
- 信頼できる担当者に依頼する
- 売却前のリフォームは不要
- 確定申告が必要なケースがある
それぞれについて解説します。
マンションの価格は変動する
マンションは現物資産であるため、経済情勢などによって価格が変動します。そのため、査定から時間が経過している場合は、査定当時の価格と変動している可能性もあるため注意しましょう。実際に売却する際には再度査定依頼を行うのがおすすめです。
特に同じマンション内で取引があった場合には、参考にすべき事例が更新されます。マンションの査定価格は近隣の取引事例を参考にして算出するケースが多いため、直近の事例に注目しましょう。
勢いで売却を依頼しない
マンションは勢いで売却を依頼しないようにしましょう。複数社に相談しようと考えていたものの、1社目の担当者と会話が弾み、そのまま売却を依頼をしてしまうといったケースも多いです。しかし、査定価格は複数社の数字を比較しなければ相場が分かりません。また、査定価格だけでなく、各社のサービスや強み、担当者の人柄や実績なども重要です。
マンション売却で失敗しないためにも、複数社に相談したうえで判断しましょう。
物件の問題は事前に伝えておく
マンションの設備などに不具合がある場合は、査定の段階で担当者に伝えておきましょう。マンション売却は戦略や第一印象が重要であるため、不具合がある場合は、不具合があることを前提に購入検討者に紹介しなければなりません。後から不具合があると判明した場合、購入検討者にとって印象が悪いでしょう。
また、物件の問題を隠し、引き渡し後に判明した場合は契約不適合責任を負わなければなりません。修理費用や代金の減額、損害賠償請求など金銭面で損をするため注意しましょう。
マンションのローンは売却代金で完済する
マンション売却時に住宅ローンが残っている場合は売却代金で完済するため、事前に返済する必要はありません。
マンション売却では引き渡し時に買主から振り込まれる残代金で、住宅ローンを完済して、同時に抵当権の抹消、所有権の移転を行います。所有権移転にかかわる一連の流れは司法書士が行うため、引き渡し日にやるべきことは司法書士が用意する書類に署名捺印をする程度です。
注意しなければならないのは、売却代金が住宅ローンの残債を下回るオーバーローンの状態の場合です。オーバーローンの場合は売却代金だけで住宅ローンを完済できないため、自己資金を入れて完済しなければなりません。マンション売却での手残り金額は0円もしくはマイナスになるため注意しましょう。
必要書類は早めに準備する
マンション売却の際には必要書類を早めに準備しておきましょう。書類が不足している状態では、引き渡しが行えず契約違反になってしまうケースもあります。
印鑑証明書など、役所に取りに行く書類もあるため、余裕をもって準備しておくのがおすすめです。また、売却するマンションに抵当権が付いている場合は、借り入れをしている金融機関にも連絡しなければなりません。住宅ローンの繰り上げ返済に関する書類などが自宅に送られてくるため、早めに連絡をしておきましょう。
査定価格で一喜一憂しない
マンション売却で一番最初に行うのが査定ですが、査定価格で一喜一憂しないようにしましょう。査定価格はあくまでも売却の目安であるため、必ずしも査定価格で売れるわけではありません。
査定価格に一喜一憂するのではなく、なぜその価格になるのかという根拠を明確にしましょう。査定価格が高いものの、根拠が不明確な場合は、査定価格の高さをアピールして自社に売却を依頼してもらおうと企てている危険があります。査定価格で一喜一憂せずに冷静に判断しましょう。
信頼できる担当者に依頼する
マンションを売却する際には不動産会社選びも重要ですが、担当者選びも重要です。不動産会社の担当者は1人で営業活動を行っているケースが多く、マンションが売れるか売れないかは担当者にかかっているといっても過言ではありません。
また、不動産の査定から引き渡しまでは数ヵ月に渡るため、合わない担当者の場合、やりとりの度にストレスを感じてしまうでしょう。不動産会社が提供しているサービスで比較するのも良いですが、最終的には会社の看板やサービスではなく、安心して任せられる担当者に依頼しましょう。
売却前のリフォームは不要
築年数が経過して室内や設備の古さが目立ってくると、リフォームをしてから売却した方が良いのだろうかと悩む方も多いでしょう。結論として、売却前のリフォームは不要です。
室内は買主の好みもあるため、不用意にリフォームをしてしまうと、イメージに合わず購入検討の土台に乗らないこともあります。 また、せっかくリフォームをしたにもかかわらず売れない場合は金銭的に損をしてしまうでしょう。
購入してから自分好みのリフォームをしたいと考えている買主も多いため、売却前のリフォームは必要ないでしょう。
確定申告が必要なケースがある
マンション売却では購入時よりも高く売れて利益が出た場合には確定申告をしなければなりません。
売却した翌年に確定申告が必要なため、契約時の書類などは処分せずに保管しておきましょう。また、売却で損失が発生した場合であっても損失分を他の所得と損益通算できるケースがあります。
損益通算を利用する際も確定申告が必要になるため、利益・損失にかかわらず確定申告の準備をしておきましょう。また、利益が出た場合でも居住用財産の3,000万特別控除を利用することで、利益3,000万円までは非課税になります。控除を利用するには一定の要件を満たす必要があるため、要件を満たしているかどうか事前に確認しておきましょう。
マンションが売却できない時の2つの対処法
ポイントを押さえて売却準備を行ったものの、いざ売却を始めてみると、思うように売れないこともあるでしょう。マンションは市況の変化や競合物件の数、住宅ローンの金利などによって購入意欲や購入のしやすさが変わるため、売却できない場合の要素は複数考えられます。
個人の力では対処しようのないこともありますが、マンションを売却できなければ売却後の目的を達成できずに困る方も多いでしょう。ここからはマンションを売却できない時の2つの対処法を解説します。
- 不動産会社に買い取ってもらう
- リースバックで売却する
不動産会社に買い取ってもらう
マンションは不動産会社を通して第三者へ売却する「仲介」と、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」に分けられます。仲介の場合は購入してくれる買主を探さなければならないため、売却までに時間がかかる場合や、いつまでも売れないリスクがあります。
一方で、買取の場合は不動産会社が買主になるため、短期間で契約・引き渡しが可能です。なるべく早く現金化したい場合には買取を検討するのもいいでしょう。しかし、不動産会社が事業として購入するため、仲介での売却よりも価格が安くなってしまう傾向にあります。
早く売りたい、高く売りたいなど、売却の優先順位を明確にして判断しましょう。
リースバックで売却する
マンションを売却したいが、次の住まいが見つからない場合や、なるべく生活環境を変えたくない場合はリースバックを検討しましょう。リースバックとは、不動産を売却後、買主であるリースバック運営会社と売主間で賃貸借契約を結び、売却後も現在のマンションに賃貸物件として住み続ける売却方法です。買主は不動産会社や金融機関であることが多いです。
リースバックを活用することで、売却金を得ながらも現在のマンションに住み続けられるため、生活環境を変える必要はありません。住み慣れた現在の生活を変えたくない方は、リースバックを検討してみましょう。
また、マンションの住宅ローンの返済が滞っている場合や、売却価格が住宅ローンの残債を下回るオーバーローンの場合、金融機関の同意を得て「任意売却」を行うケースがあります。リースバックは任意売却でも利用できる制度であるため、任意売却をする方もぜひ検討してみましょう。
リースバックに興味がある方は「セゾンのリースバック」がおすすめです。「セゾンのリースバック」では、最短2週間で不動産の売買契約が可能なことに加え、賃貸として入居する際の事務手数料や礼金が0円であるため費用を抑えた取引が可能です。
おわりに
マンション売却では、マンションを売却する目的を明確にすることが大切です。マンションを売却する目的によって、いつまでに売却しなければならないのか、いくら以上で売却しなければならないのかといったポイントが明確になります。時期や価格が明確になることで、売却を開始する日程や売り出し価格を逆算できるため、目的に向けたスケジュールを組み立てられるでしょう。
目的がブレると、査定価格で一喜一憂したり、勢いで売却を依頼したりと、計画そのものが台無しになってしまうため注意する必要があります。