近年、少子高齢化による「人口減少」が取り沙汰されています。加えて、政府は効率の良い行政サービスを提供するため、「コンパクトシティ」への施策に注力しています。
人口密集地は地価が高くなり、居住環境の効率化が必要です。現在では、必要以上に面積の広い住宅は避けられ、最低限生活できるコンパクトな住宅が好まれています。近年は自宅以外にトランクルームを利用する方も増えてきました。
このコラムでは、近年注目が集まるトランクルーム経営について、費用や成功のコツ、利益などを詳しく解説します。
トランクルーム経営とは
トランクルーム経営は、専用施設の収納空間を貸す事業のことです。特徴としては、収納を目的とするため、契約に借地借家法が適用されません。トランクルームには、ビルやマンション、専門施設の部屋内に設置される「屋内型」と、コンテナハウスを利用する「屋外型」の2つがあります。
屋内型は温度や湿度などの空調管理を整えることで、多種多様な荷物に対応可能です。また、屋外型は必要な設備がコンテナのみですので、初期投資が少なく、手軽に経営を始められます。屋外型は、最近では二輪自動車や軽車両などの保管に人気です。
トランクルームの経営方式は大きく分けて2種類
トランクルームの経営には、以下のとおり2種類の方法があります。
- 一括借り上げ方式
- 管理委託方式
一括借り上げ方式は、建物の持ち主(貸主)がトランクルーム事業者に建物全体を貸し出し、事務や管理までを含めて代行してもらう経営方式です。サブリース(転貸)方式とも呼ばれ、建物の設置費用や購入費用といった初期費用以外は費用がかかりません。そのため、トランクルームの経営で多くの方が選択されている方式です。
費用以外の利点としては、使用状況にかかわらずトランクルーム事業者から一定の賃料が保証されているため、収益が安定する点です。しかし、運営に手間がかからない反面、トランクルーム事業者がエンドユーザーとの間に入るため中間コストがかかり、管理委託方式より収益が低くなります。
もう一方の管理委託方式は、貸主が直接借主と賃貸借契約を行い、管理事務のみをトランクルーム事業者に委託する方式です。この方式は、借主からの賃料を直接受領できるため、一括借り上げ方式よりも収益性が高いです。しかし、借主の有無が収入に直接関係するため、収益が安定しません。
近隣にマンションやオフィスビルがあるような土地が向いている
トランクルームの経営は、使用率が大きく影響します。立地は、コンテナハウスを利用することで、駅から遠い場所や面積が狭くても経営が可能です。しかし、トランクルームの経営で利益を出すためには、できるだけ多くの方に利用してもらうことが重要となります。
一般的に、トランクルームは人口密度が高い場所ほど需要が高く、郊外や地方では需要が低い傾向にあります。よって、トランクルームの好立地とは、近くにマンションやビルがある土地、あるいは駅や国道沿いなどの人通りが多く、アクセスが良い立地とされています。
トランクルーム経営ができない土地もある
トランクルームは、保管のための建物を建設する必要があります。また、建設には建築確認申請が必須。建築確認申請は建築や修繕などの建物に関する工事の際、着工前に自治体もしくは民間の指定確認検査機関に書類を提出し、建築確認の手続きを申請することです。
また、建築確認とは、構造や敷地内の配置といった建築計画が建築基準法などの安全基準を満たしていることを、専門機関や建築主事(建築に関する検査や事務を行う公務員)に確認してもらうことを指します。
建築確認申請で建築計画が承認されないと、着工に入れません。また、建築基準法では地域ごとに建築する建物の用途が制限されており、トランクルームは「倉庫業を営まない倉庫」に分類されます。
倉庫業を営まない倉庫は、第一種および第二種の低層住居専用地域と、第一種の中高層住居専用地域での建築が制限されています。加えて、市街化調整区域と呼ばれる市街地の拡大を抑えるための区画での建築も制限されています。
トランクルーム投資における利回り
投資には、経営状況や収益性を表すさまざまな指標があります。その多くには、名目上の数値と実質的な数値の2種類が存在するため、注意が必要です。その数値の本質を理解していないと、思っていたように収益が得られないことにもつながります。
トランクルーム投資における利回りの計算方法
投資物件で得られる収益をもとに計算する際、「利回り」という言葉を使用します。利回りは投資物件の比較のために、指標としてよく使用されます。
多くの場合、広告に記載される情報は細かな費用項目を排した表面利回りです。しかし実際のトランクルーム投資では、仲介手数料や固定資産税などの費用がかかります。よって、収益を正確に予測するためには、より現実に即した実質利回りが重要です。
ここからは、以下の設定で利回りの計算方法を解説します。
- 1年間の家賃収入「500万」
- 物件価格「1000万」
- 1年間にかかる運営経費「100万」
- 物件購入にかかる費用「200万」
表面利回りの計算式は、「1年間の家賃収入」/「物件価格」×「100」です。上記の条件であれば、(500万/1000万)×100より、50%と計算できます。
実質利回りの計算式は、(「1年間の家賃収入」-「1年間にかかる運営経費」)/(「物件価格」+「物件購入にかかる費用」)×「100」です。上記の条件であれば、((500万-100万)/(1000万+200万))×100より、約33%と計算できます。
上記の設定では、実質利回りと表面利回りの差が大きいです。表面利回りは、実際にかかる費用を計算時に考慮していないため、表面利回りの収益を期待している場合、予測と異なる収益になってしまいます。
トランクルーム投資の利回りは不動産投資と比べて高い?
以下は、東京都内にある「投資物件の利回り」の目安です。下記は東京都内のみですが、全国的に不動産投資とトランクルーム経営の利回りでは、トランクルーム経営の利回りが高い傾向にあります。
- 3.6~4.0% 賃貸住宅(ワンルーム)
- 4.0~4.5% 賃貸住宅(ファミリー向け)
- 15.0~20.0% トランクルーム
上記で紹介した計算方法では、「1年間の家賃収入」を500万円としました。ここでは、大型のトランクルームを想定して、以下の設定を加えます。
- 1人当たり、月額2万円
- 利用者は20人
- 途中で解約した利用者はいなかった
この場合、1年間の収入は2万×20×12より、480万円です。また、利用者が10人の場合1年間の収入は240万円となり、利用者数が収入に大きく影響することが分かります。
トランクルーム経営で必要な初期費用やランニングコスト
トランクルーム経営には、初期費用と、持続的にかかる運営費用(ランニングコスト)があります。
初期費用 | 相場 | 屋外型 | 屋内型 |
整地費用 | 1万円/坪 | 必要 | |
コンテナ代 | 100~150万円/基 | 必要 | |
インフラ(水道・電気)工事 | 30万円 | 必要 | |
看板設置料 | 20万円 | 必要 | 必要 |
監視カメラ設置費 | 20~30万円 | 必要 | 必要 |
パーテーション | 10万円/坪 | 必要 | |
建物建設費 | 大きさによる | 必要 |
上記で紹介した一括借り上げ方式と管理委託方式の場合、建物が必要です。施設規模や地価によりますが、初期費用は建物建設費とその他の運搬費や基礎工事費、確認申請費などを含めて400万〜700万円かかります。
運営費用 | 管理委託方式 | 一括借り上げ方式 |
光熱費 | 必要 | |
設備使用料 | 必要 | |
業務委託費 | 必要 | |
保険加入 | ||
人件費 | 必要 | |
固定資産税 | 必要 | 必要 |
設備維持費 | 必要 | 必要 |
トランクルーム経営には、万が一に備えて資金を準備しておくことが重要です。他にも急な支払いや税金の支払い、開業資金などに備える必要があります。資金繰りでお悩みの方は、セゾンファンデックスの「不動産担保ローン」をおすすめします。
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トランクルーム経営で成功するためのポイント
トランクルーム経営を成功させるためには、集客や設備投資への対策が必須です。また、盗難や料金滞納などのトラブル対応を考慮して運営をしなければいけません。
集客戦略を複数考える
トランクルームの利用者は競合他社とサービスを比較する際、アクセスが立地などの利便性と価格設定を重視します。よって、競合他社に負けないメリットが提示できるか否かが、トランクルーム経営成功の鍵です。
トランクルーム経営では集客が大切です。しかし、トランクルーム自体の知名度が低いため、他の不動産投資に比べて集客対策に多く力を割く必要があります。トランクルームの集客は、看板による宣伝だけでなく、Webサイトやポスティング、口コミなどさまざまなチャネルへの働きかけが重要です。
初期費用をかけるバランスを考える
トランクルーム経営の利点として、賃貸住宅に比べて地理的制約が少なく、駅から離れた立地や地方の郊外といった利用価値の薄い土地を活用できるという点があります。また、賃貸住宅は利用者が代わるたびに、内装や設備の修繕が必要ですが、トランクルームは利用者が入れ替わったときに修繕が必要ありません。
また、トランクルームは、経営を始めてから収益が出るまでにタイムラグがあります。一般的に、施設の規模が大きいほど「満室稼動」には時間がかかります。収益を出すためには稼働率を高めることが必要です。そのためには、周辺地域の潜在顧客に認知してもらう必要があります。
つまり収益化にはある程度、時間がかかることを認識しておきましょう。最初から初期費用をかけすぎてしまうと、回収まで時間がかかりすぎてしまいます。どこまでかけるかバランスが重要です。
競合対策を事前に考える
トランクルーム経営はメリットが大きいため、新規参入者が多く、競合他社が多いです。そのため、集客には自社サービスの差別化が非常に大きな役割を持ちます。
自社サービスの差別化は、以下の項目によって行えます。
- 価格(安さや種類)
- アクセスのしやすさ
- 容積
- 警備や監視の有無
- 対応している荷物の種類
- 管理の緻密さ
- 顧客満足度
アクセスのしやすさは、できるだけ大きい道路(県道や国道)や、利用者数の多い駅から近いなどです。多様な顧客ニーズへ対応できるように、容量の違うトランクルームを用意する必要があります。
トランクルーム事業者は複数の候補を挙げておく
トランクルーム事業者の手を借りて運営する場合、事業者選びが重要です。知名度の高さで、事業者を選ぶのはやめましょう。知名度の他に、サポートの充実度や事務代行料はいくらか、賃料設定はいくらかといった点に着目することが必要です。
滞納・盗難対策を事前に用意しておく
トランクルーム経営では、盗難や料金滞納が発生します。
盗難を避けるためには監視カメラの設置や定期的な警備員の巡回が効果的です。また、建物の所有者と管理を委託しているトランクルーム事業者との間で損害が発生した際、誰が責任を負うのかということや責任の範囲などを、契約書に明記することが重要でしょう。
また、決済方法を自動引き落としや保証会社の利用を必須にすることで、代金の催促などの仕事を省けます。
おわりに
トランクルーム経営は、他の不動産投資に比べて利回りが高いことが特徴です。このコラムでは、一括借り上げ方式と管理委託方式の2種類の経営方法を紹介しました。
一括借り上げ方式は、事務を会社に委託するため、運営費用以外はかかりません。加えて、報酬が経営状況に左右されないため、収益が安定しています。もう一方の管理委託方式は貸主が直接借主と契約を行い、管理事務だけをトランクルーム事業者に委託する方法です。
トランクルーム経営で収益を高めるためには、顧客の需要を考え、競合他社と差別化することが重要です。