所有している不動産を担保として差し入れることで比較的低金利での資金調達が可能な不動産担保ローンですが、借入可能額はローン契約者の与信のほか、担保不動産の評価額に大きく影響を受けます。
不動産担保ローンの借入可能額の目安を把握する際の算出方法や前提となる知識について解説していきます。
1.不動産担保ローンで借入可能額の目安となる計算式
不動産担保ローンは、所有している不動産を担保とすることで使途自由で比較的多額の資金調達が行えます。しかし融資可能額は担保不動産の評価額によって異なるほか、担保不動産の評価額がそのまま借入可能額となるわけではなく不動産価値の下落を見越して担保掛目を乗じて借入可能額を算出するなどの計算が行われています。
このため不動産担保ローンの利用を検討する際には借入可能額の見極めがポイントといえます。
担保掛目は不動産担保ローンを提供している金融機関によって異なりますが、不動産評価額に対して6割〜8割程度の担保掛目を設定していることが多くなっています。不動産担保ローンのおおよその借入可能額は担保不動産の評価額×担保掛目(6割〜8割)に加え、ローン契約者の信用情報などを踏まえたうえで借入可能額を算出しています。
不動産担保ローンの借入可能額=不動産評価額×担保掛目(6割〜8割)
2.不動産評価額を計算する3つの方法
不動産担保ローンを利用する際、不動産評価額は融資条件を大きく左右する要因のひとつです。しかし不動産は同じものがふたつとないため、その正確な価値は実際に売買を行ってみるまでは分かりません。
そこで不動産のおおよその価値を知るための方法として、原価法、収益還元法、取引事例法の3つの算出方法が知られています。不動産担保ローン利用時にも用いられる可能性があるため、それぞれの計算方法の特徴について確認しておきましょう。
原価法
価法は最も一般的な評価方法で、現在の建物を新建した場合にかかる金額(再調達原価)から耐用年数による損耗分などを差し引くことで、不動産価値を積算価格(土地・建物の現在価格を合計した評価額)で算出する計算方法です。
積算価格=再調達原価×残存年数(耐用年数−築年数)÷耐用年数
しかし、この計算式のままでは同じ構造・大きさ・築年数の物件だと同じような評価額となるので、周辺環境や形状などの土地の評価やリフォーム履歴などの建物の評価を加味した価格補正を行う必要があり、そのため計算者の判断によって算出される価格に幅が出る場合があります。
収益還元法(賃貸アパートや区分所有マンション向け)
収益還元法は賃料収入を算出の基礎として用いる算出方法で、主に賃貸アパートや区分所有マンションなどの収益物件の不動産評価額の算出に使用されます。
収益還元法の不動産評価額=1年間の利益(賃料収入−必要経費)÷還元利回り(周辺の類似物件の利回り)
取引事例法(土地や中古物件向け)
主に土地や中古物件の不動産評価額の算出に用いられる計算方法で、周辺の類似物件がどのくらいの価格で取引されているかを基に評価額の算出を行います。
3.土地の評価額を知るための3つの方法
金融機関では主に土地と建物の積算価格から不動産評価額の算出を行っており、建物は原価法、土地は「公示地価・基準地価・路線価」などの算出基準を用いて積算価格を算出します。土地の算出基準について把握しておきましょう。
公示地価
公示地価は国土交通省が定める標準地の1平方メートルあたりの土地の価格を指します。毎年1月1日に評価が行われており、同じ土地を調査するので価格推移を把握しやすいメリットがありますが、標準地は「都市部とその周辺地域」と定められているため、都市部以外の土地価格を知るには不向きです。
公示地価は原価法の土地価格の目安となるほか、固定資産税や相続税などの評価地価の算出基準としても用いられており、社会インフラとして大きな役割を持っています。
基準地価
基準地価は各都道府県が定める基準地の1平方メートルあたりの土地の価格を指します。基準地価は毎年7月1日に評価が行われていますが、公示地価で用いられる標準地と異なり都市部とその周辺地域以外の土地も指定できるため公示地価の補完的な役割を有しており、都市部以外の土地価格を把握するための重要な指標となっています。
路線価
路線価は主に相続税や贈与税などの税金の計算のために用いられる指標のため、国税庁が発表しています。路線価は公示地価や実際の取引事例を参考に土地に面した道路ごとに土地価格が調査されています。
路線価には国税庁が公表している相続税路線価と都市町村が使用する固定資産税路線価があり、相続税路線価は公示地価の8割程度、固定資産税路線価は公示地価の7割程度が目安となっています。
土地の価格は他に同じものがないため、正確な調査には不動産鑑定士による鑑定が必要となるなど費用や時間を要してしまうため、おおよそでも土地の評価額を把握可能な公的な土地価格調査は不動産担保ローンの融資条件を想定するうえで重要な情報となります。
公示地価・基準地価・路線価はいずれも土地価格をあらわしています。しかし、それぞれの算出方法は想定の利用目的にそって行われているため、調査手法や評価額が異なります。それぞれの特徴を把握して土地評価額の見当をつけるようにしましょう。
4.担保掛目とは
不動産担保ローンでは担保価値による一定の元金保全を前提とし、低金利で長期間の返済期間で利用することができます。しかし、不動産の評価額は一定ではなく、築年数の経過に伴い老朽化や設備の旧式化といった価値の低下が生じることになります。
こうした価値の変動を見込み不動産評価額に対し担保掛目を乗じることで、一定の余裕を設けています。
不動産担保ローンの担保掛目は金融機関によって設定が異なりますが、おおよそ6割〜8割程度といわれています。借入希望額がこの掛目の金額を下回ると融資審査がとおりやすくなったり融資条件が有利になるなどの恩恵を受けることができます。逆に上回ると融資審査がとおりにくくなったり金利が上がるなど融資条件が厳しくなるなどのデメリットが生じる可能性があります。
5.金融機関に直接問い合わせるのが最も確かな方法
借入可能額を把握するためには、銀行や専門家に直接聞いてみましょう。土地の値段を知るための情報は、公示価格や基準価格、路線価などがありますが、それはあくまで参考であり、銀行によって別の方法で評価することもあります。
実際にお金を借りるときには、借りる人の年齢や収入、仕事の状況、借金の状態なども考慮されるため、その結果として借りられるお金の額が変わることもあります。
しっかりとした不動産担保ローンの計画をたてるためには、いくつかの銀行を比べてみて、必要な情報を提供して、借りられる額を確認することが必要です。
おわりに
不動産担保ローンでは、不動産評価額が高いほど借入可能額が増加したり、ローン金利が低下するなどのメリットがあります。不動産担保ローンの借入可能額の目安は不動産評価額に対し6割〜8割の担保掛目を乗じた金額となります。
不動産評価額の算出方法は土地と建物などに大別され、土地の価格調査には公示地価や基準地価、建物などの算出方法には原価法、収益物件には収益還元法、また取引事例法がありますが、不動産は2つとして同じものがないため、不動産評価額の算出や担保掛目の割合については金融機関ごとに異なります。
このため、不動産担保ローンの借入可能額などの融資条件については実際に問い合わせを行ってみるしかありませんが、これらについておおよその見込みを持っておかないと提示された融資条件が適正なものか見極めることができないため、不動産担保ローン利用前にご自身で試算してみることをおすすめします。
もし、試算を行うことが難しいようでしたら、信頼性の高い金融機関を選んで問い合わせを行うとよいでしょう。
セゾンファンデックスは不動産担保ローンを20年以上取り扱っており、日本全国のさまざまな不動産を担保とすることが可能であったり、債務超過などの与信に懸念のある場合でも融資を受けることができたなど融資実績も豊富な信頼できる金融機関のひとつです。
住宅ローンが残っていても利用できるなど、借入可能額に関しても適切な査定が期待できるため、不動産担保ローンをご検討中の方は、一度相談を行ってみると良いでしょう。