毎日便が出なくても「ただの便秘だから」とそのまま放置していませんか?便秘は慢性化することでほかの疾患につながる可能性もあるため、早めに解消するのが理想的です。今回は、便秘の原因や便秘におすすめの食材、即効性が期待される対処法などについてまとめています。デリケートな問題で家族や病院になかなか相談できない方はご一読ください。
便秘が起こる原因とは?
そもそも、便秘とはどのような状態を指すのでしょうか?まずは、便秘の基準や便秘の種類、原因、症状など基本的な点について確認しましょう。
便秘の症状としくみ
日本内科学会では、3日以上の排便がない状態、または、毎日排便をしても排便しきれていないような残便感がある状態を便秘と定義しています。
便秘であると自覚している割合は女性が多いです。ただし、80歳を超えると性別に関係なく便秘を訴える人の割合が増えています。高齢になるにつれ便秘が増える理由としては、食欲や筋力の低下、常用薬の副作用、加齢に伴う直腸の感覚の低下による便意の感じづらさなどが挙げられます。
それでは、便秘の症状を見ていきましょう。
便秘の症状
- 食欲がない
- 吐き気がある
- 何日も排便がない
- お腹が張って苦しい
- お腹の痛みがある
- 便が硬い
- 小さなコロコロの便が出る
- 便が溜まっている気がするが、いきんでも排便されない
- 下剤を飲まないと排便できない など
ひとつでも当てはまる項目がある方は、便秘である可能性があります。では、排便の仕組みを簡単におさらいしていきましょう。
口から胃まで
通常、人が食べたものを排便するまで約24~72時間かかるといわれています。食べものは口でだ液と混ざりあいながら咀嚼され、食道を通って胃に運ばれます。胃酸や消化液に消化されながら、十二指腸や小腸へ流れていくのです。
小腸・大腸
小腸ではドロドロの液状になった食べものから、約8時間かけて栄養素を吸収し、吸収されなかったカスはそのまま大腸へ運ばれます。大腸では水分が吸収され便となり、直腸へ運ばれます。
直腸から排便まで
直腸に便が溜まると、大脳へと指令が送られて便意が起こる仕組みです。以上が排便の仕組みとなりますが、便秘の場合、さまざまな要因で便が溜まった状態となります。排便がスムーズに行われないため、排便の回数が少ない、排便してもすっきりしない、不快感が残るといった症状があります。
便秘の種類と原因
続いて、便秘の種類と原因を見ていきましょう。
便秘の種類1.直腸に便が溜まっている直腸性便秘
便が直腸に運ばれているにもかかわらず、大脳へ指令が送られないために、直腸に便が溜まっている状態です。便意を我慢しがちだと、直腸の神経が鈍くなり、便意を感じにくくなります。直腸内で大量に便が溜まり、水分が吸収されるため、硬くなった便がフタをした状態となるのです。
便の状態:便は硬く大きい、いきまないと出ない
生活習慣:便意を我慢することがある、残便感がある
便秘の種類2.大腸の運動機能が低下している弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)
大腸のぜん動運動の機能が低下しているために、大腸内に便が溜まっている状態です。筋力の衰えや運動不足などが原因とされており、大腸内で水分が吸収されすぎるために、便が硬くなります。
症状:便は硬く太くコロコロ、便意を感じづらい
生活習慣:加齢や運動不足により筋力が落ちた、ダイエットなどで食事量や食物繊維が減った、常にお腹が張っている
便秘の種類3.大腸の過緊張によるけいれん性便秘
ストレスなどにより、副交感神経が興奮しすぎたり、自律神経が乱れたりすることで大腸が過敏になっている状態です。大腸が緊張することで便がスムーズに運ばれなくなります。そのため、うさぎのフンのような、コロコロの便となるのです。どちらかというと若年層に多く見られ、腹痛を伴うケースも少なくありません。
便の状態:うさぎのフンのような小さなコロコロ
生活習慣:ストレスを感じる、突然激しく便意を感じる、下痢と便秘が交互に出る、下腹部に張りや痛みを感じる
便秘を解消して腸内環境を整えるメリット
便秘によって引き起こされる不快症状としては、肌荒れやにきび、口臭、肩こり、頭痛、イライラなどがあります。また、便秘の状態が続くと、感染病から守ったり、腸内の汚れを取り去ったりする善玉菌の数が減り、反対に悪玉菌が増えます。悪玉菌は発がん物質をつくったり、感染性腸炎の原因となったりするため、腸内環境を整えることが重要です。
便秘を解消して腸内環境を整えると、代謝機能が活発になるため、不快症状が改善され、ダイエットにもつながります。体調が良くないと思ったら、便秘が原因だったというケースもあるでしょう。
便秘を解消せず放置した場合のリスク
「ただの便秘だし、そのうち治るでしょう」と慢性的に便秘の状態を続けるのは大変危険です。便秘の状態が長期化することで以下のようなリスクを引き起こしかねません。
腰痛
便秘症状がひどくなると、腰痛になる可能性があります。腸内に便が留まると、便の腐敗が進み炭酸ガスを発生させます。炭酸ガスが腸内で膨らみ、腹部や背骨の神経が圧迫され、腰痛につながるのです。また、運動不足による便秘の場合、腹筋をはじめ筋肉が硬直しているため、腰痛の原因ともなっているといわれています。
痔(じ)
便秘によって便が硬くなると排出時に肛門の出口が切れてしまい、痔となるケースも少なくありません。肛門の出口あたりにある皮膚が切れた切れ痔は女性に多く、慢性化して悪化する傾向にあるのです。切れ痔は痛みが強いことから、排便を我慢してしまいます。便を我慢し続けると便秘となり、悪循環となるのです。
鼠径(そけい)ヘルニア
鼠径ヘルニアとは、腸管や脂肪などが体外に飛び出した状態のことで、脱腸とも呼ばれています。左右の太もものつけ根部分に発生するヘルニアの総称でもあり、腹部のヘルニアのおよそ8割は鼠径ヘルニアです。便秘が直接的な原因というよりも、排便時のいきみや加齢による筋膜の衰えなどにより起きるとされています。
便秘解消法その1|食生活の改善
便秘解消には、バランスの良い食事と栄養摂取が大切です。
便秘の解消に食生活の改善が必要な理由
便秘の解消には、腸内環境を整える必要があります。便秘は、腸内に悪玉菌を増やし、血行不良やむくみの原因となります。さらに便秘が続くと、前述したようなさまざまな悪影響が身体に起きます。そのため、身体にとってプラスの働きをしてくれる善玉菌を優勢な状態に保つことが大切です。排便を促し、腸内環境を整え、食生活を改善することで便秘解消につながります。
効果的な食べ物や飲み物
ここからは、便秘解消につながる食べ物と飲み物の特徴を紹介していきます。
水溶性食物繊維
特徴:便をやわらかくして排泄を促す
代表的な食べ物:こんにゃく、昆布、わかめ、ひじき、果物など
不溶性食物繊維
特徴:便量を増やす
代表的な食べ物:根菜類、緑黄色野菜、きのこ類、穀類、芋類、豆類など
乳酸菌
特徴:腸内の悪玉菌を抑え、腸内の環境を改善する
代表的な食べ物:味噌、ヨーグルト、糖漬け
ビタミンE
特徴:腸の血流を増やすことで、腸の働きを促す
代表的な食べ物:アーモンド、卵黄、たらこ、マーガリン、落花生、植物油など
ビタミンB1
特徴:自律神経を刺激することで、腸の働きを調整してくれる
代表的な食べ物:玄米、ごま、大豆、うなぎ、豚肉など
便秘解消に期待できる飲み物
特徴:水分を摂ることで、便をやわらかくする
代表的な飲み物:水、白湯、麦茶などのお茶、牛乳(けいれん性便秘にはホットミルク)など
おすすめのレシピ
便秘解消に効果が期待できる上に、美味しく、作り置きにもぴったりな「食物繊維がトップクラスのごぼうとひじきのレシピ」を紹介します。
用意する材料
- ごぼう 1本
- にんじん 1/2本
- 乾燥した芽ひじき 5g
- ごま油 適量
万能だれのレシピ
- 酒 大さじ2
- みりん 大さじ2
- 砂糖 大さじ1
- しょうゆ 大さじ2
- 塩こしょう 少々
- すりおろししょうが 1片分
【作り方】
1.斜め薄切りにしたごぼうを水に10分ほどさらし、ザルにあげて水気を切る。
2.万能だれを作る。
3.ごま油をひいたフライパンを中火に熱し、ごぼうを加えて炒める。やわらかくなったら、皮をむいて細切りにしたにんじんと、水で戻したひじきを加えて炒める。
4.万能だれを加え、強火で煮詰める。
5.粗熱がとれたら完成。好みでいりゴマをかける。※2~3日であれば冷蔵庫で保存可能。
便秘の解消をサポートするサプリも
便秘にはさまざまな原因があるため、便秘解消に良いとされる食べ物や飲み物を摂っていても、改善されないこともあります。なかなか便秘が解消できないときは、バランスの良い食事とともに、便秘解消を補うサプリを取り入れてみるのもひとつの手です。数あるサプリのなかでも、食物繊維やオリゴ糖、酸化マグネシウムといった成分が含まれた商品は、便秘解消が期待できるでしょう。サプリを選ぶ際には、以下のポイントをチェックすると安心です。
【便秘解消のためのサプリの選び方】
- トクホ(特定保健用商品)のマークがある:健康性の維持促進につながる効果があると消費者庁長官が許可している食品に表示される。
- 機能性表示食品の表記がパッケージに記載されている:科学的根拠に基づいて商品の安全性や機能性などを消費者庁長官に届け出ている食品に表示される。
便秘解消法その2|運動を取り入れる
体力や筋力が下がることで便秘につながることも。ここからは、便秘解消を目指せる運動について紹介していきます。
便秘の解消に運動を取り入れる理由
腸が収縮したり、拡張したりするぜん動運動は、排便の際の大切な動きです。年齢を重ねたり、運動量が少なかったりすることが原因で、腹筋や腸周辺の筋肉が衰えることが便秘につながるケースも少なくありません。身体の外側から腸のぜん動運動を刺激し活性化するためにも、運動は大切です。
効果が期待できる運動
便秘解消につながる腹筋を鍛える運動として、以下の方法が効果的です。
【排便力を高める腹筋】
1.仰向けになり、両ひざを立てて、お腹に力を入れ上半身を起こす。
2.おへそを見るイメージでゆっくりと頭を起こし、10秒ほどキープ。
3.頭を静かに戻す。5~10回くり返す。
【腸の働きを促す全身運動ウォーキング】
1.目線をあげて背筋を伸ばす。
2.ゆったりとした呼吸を心掛け、軽く汗をかく程度のスピードでウォーキングを行う。
3.目安は30分ほど。
即効性が高いマッサージ
腸を直接刺激できるマッサージは、排便をより促せます。
【腸を刺激するマッサージの方法】
1.仰向けになり、ひざを曲げる。
2.おへそのまわりを時計まわりにゆっくりとマッサージする。
便秘解消の効果が期待できるツボ押し
便秘解消の方法として、ツボ押しも試してみる価値はあります。ゆっくりと痛くない程度の強さで押しましょう。ツボ押しは、1回6秒ほどが目安です。
【手にあるツボ|合谷(ごうこく)】
便秘の他に頭痛を抑えることでも知られているツボ。親指と人差し指のつけ根の骨が交わるところにある。
【足にあるツボ|三陰交(さんいんこう)】
くるぶしの内側にある骨から、指4本分上がったところ、骨と筋肉の間にあるツボ。
注意:食事の前後や飲酒後1時間以内、妊娠中や出産直後などのツボ押しは控えるようにしましょう。
便秘解消のための生活習慣ポイント4つ
最後に、便秘解消のために、普段からできる生活習慣を紹介していきます。できることから無理なく続けることで、便秘解消を目指しましょう。
決まった時間にバランスの良い食事を摂る
毎日、決まった時間に食事を摂ることで腸が活発になります。特に朝ごはんは、体内の老廃物などを体外に排出させる重要な役割があるため、少量でも朝ごはんは摂るようにしましょう。また、決まった時間に食事を摂ることで暴飲暴食の予防にもつながります。
トイレに行く時間を決める
朝が忙しいからと便意を我慢していると、便が滞留します。便意を我慢する日々が続くと便が固まり便秘の原因になるのです。そのため、便意を優先するとともに、毎日、決まった時間にトイレに行くことで排便の習慣をつけるようにしましょう。
水分をこまめに摂る
便をやわらかくするためには、水分をこまめに摂ることが大切です。朝、起きがけに水や白湯を飲むことで、腸に適度な刺激を与えられます。
リフレッシュする時間をつくる
ストレスが多いと自律神経が乱れ、大腸や胃など消化系の内臓の働きを邪魔してしまうケースがあります。充分な睡眠や趣味などリフレッシュする時間をつくることで、ストレスを溜めないようにしましょう。
おわりに
便秘の原因や症状をはじめ、便秘解消に効果が期待できる食べ物や飲み物などについてお伝えしました。便秘にはさまざまな原因があり、人によって便秘タイプが異なります。今回ご紹介した便秘解消法を、無理のない範囲で試していただき、少しずつご自身に合う方法を探してみましょう。それでも、長期間にわたって便秘が続いたり、体調不良になったりする場合は、専門の医療機関を受診することも検討してみてください。
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