資産運用の種類には、株式投資や債券投資、投資信託などがあります。それぞれの特徴をよく理解したうえで、ご自身に合ったものを選ぶことが、資産運用では重要です。
このコラムでは、これから資産運用をはじめようと考えている方に向けて、運用方法の種類や失敗しないためのポイントなどをご紹介します。
この記事を読んでわかること
- 資産運用は、資産を預貯金や投資などに配分して効率良く資産を増やすこと
- 資産運用には「預金・外貨預金」「債券投資」「株式投資」「投資信託」「ETF」「REIT(不動産投資信託)」などの種類がある
- 資産運用の失敗を防ぐためのポイントには「少額から投資をはじめる」「余剰資金を投資する」「過度な利益を求めない」「目的をはっきりさせる」などがある
資産運用とは?
資産運用とは、ご自身が持っている財産を預貯金や投資などで効率的に増やしていくことです。資産運用には、守りを重視した「預貯金」と積極的に増やすことを目的とした投資があります。
初心者は資産運用しないほうがいい?
「資産運用はやめておけ」「初心者は資産運用に手を出さない方がいい」といった意見を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
結論をいえば、投資の経験にかかわらず資産運用ははじめた方が良いといえます。
2024年1月現在でも、日本は歴史的な低金利にあり、預貯金口座にお金を預けていても利息収入はあまり期待できません。
また、資産のほとんどを預貯金で保有していると、インフレの影響を受けやすくなります。インフレでモノやサービスの値段が上昇すると、相対的にお金の価値は減少するためです。
インフレに対処しながら、将来に向けた資金を準備するためには、資産運用をして資産を増やしていくことも重要となります。
資産運用で得られる2種類の利益
資産運用の利益には「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」があります。運用方法を選ぶときは、利益の種類や期待できるリターンの大きさを押さえることが重要です。
インカムゲインは、投資対象を保有し続けることで得られる利益です。預貯金の利息や株式の配当金、投資信託の分配金、不動産投資の家賃収入などが該当します。
キャピタルゲインは、投資対象を売却して得られる利益のことです。ほとんどの金融商品は、キャピタルゲインを得られる可能性があります。ただし、投資対象を売却するまで、いくらのキャピタルゲインを得られるのかは確定しません。
9種類の代表的な資産運用
まずは、数ある資産運用の中で代表的なものを9つご紹介します。
預金・外貨預金
銀行などの金融機関にお金を預ける預金は、収入や資産に関係なくはじめられるため、もっとも身近な資産運用といえるでしょう。
また、普通預金や定期預金などは、預け先の金融機関が破綻したとき、預金保険制度により、預金者ひとりあたり1,000万円までの元本と破綻日までの利息が保護されるため、安全性も高いです。なお、預金保険制度の対象外である預金もありますので予め確認しましょう。
ドルやユーロなどで預金をする「外貨預金」という選択肢もあります。日本よりも金利が高い国の通貨で預金をすることで、円建ての預金よりも高い利息収入が期待できます。
ただし、口座のお金を引き出したときに円高になっていると、損失が発生することがあるため、外貨預金をする際は仕組みやリスクをよく理解することが大切です。
株式投資
株式投資は、企業が資金を調達する際に発行する「株式」に投資をする方法です。株式に投資をすると、利益の一部を配当金として還元してもらえることがあります。将来的に企業が成長し、株価が上昇したタイミングで売却して利益を得ることも可能です。
国内企業の株式に投資をすると、自社製品の詰め合わせや優待券、割引券などの「株主優待」を提供してもらえることがあります。
ただし、企業の業績悪化や不祥事の発覚などで、株価が大きく下がって元本割れとなることもあるため、株式投資はハイリスク・ハイリターンといわれています。
債券投資
債券は、投資家からお金を借りて資金調達をする際に発行される有価証券です。国が発行する「国債」や、企業が発行する「社債」などがあります。
債券を保有している間は、発行先から定期的に利子を受け取れます。また、満期を迎えると額面金額(債券の券面に記載された金額)が戻ってくる仕組みです。
発行元の業績や財務状況などを確認し、破綻リスクが低いと考えられる債券に投資をすることで、安定的なリターンが期待できます。
投資信託
投資信託は、投資家から集めた資金を、運用のプロが商品(ファンド)の運用方針にしたがって株式や債券などに投資する仕組みの商品です。投資先から利益を得られたときは、その一部または全部が分配金として投資家に還元されます。
また、投資信託の価格が上昇しているときに売却して、売却益を得ることも可能です。
資金の運用先である銘柄の選定は運用のプロに任せられるだけでなく、商品によっては数百円や数千円で購入できるため、投資の初心者でもはじめやすい商品といえます。
ETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)とは、証券取引所に上場している投資信託のことです。通常の投資信託とは異なり、株式と同様に日々価格が動いており、リアルタイムで取り引きできます。
また、ETFの多くは日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの指数と連動するように運用されるため、値動きがわかりやすいというメリットがあります。
REIT(不動産投資信託)
REIT(不動産投資信託)は、出資された資金をひとつにまとめて、オフィスビルや商業施設、マンションなどに投資をする商品です。投資先の不動産から家賃収入や売却益などを得られた場合、投資家は分配金を受け取れます。
REITであれば、数十万円程度で購入できるため、通常の不動産投資よりも少ない資金ではじめることが可能です。また、不動産の運用・管理もプロに任せられるため、不動産投資の初心者でもはじめやすいといえます。
貯蓄型の生命保険
貯蓄型の生命保険は、死亡や所定の高度障害状態に備えながら、将来に向けた資産形成もできる商品です。
例えば「終身保険」に加入すると、一生涯にわたって万が一に備えながら、資金が必要になったときは、途中で解約して解約返戻金を受け取れます。
他にも、老後の年金を準備できる「個人年金保険」や、子どもの教育資金を準備することに特化した「学資保険」などがあり、運用目的に応じて商品を選ぶことができます。
iDeCo
iDeCoは、掛金を支払って投資信託や生命保険などで運用し、将来の年金を準備できる制度です。積み立てた資産は、60歳以降に老齢給付金として受け取ることが可能です。
iDeCoの掛金は、全額が所得控除の対象であるため、所得税や住民税の負担を軽減する効果が期待できます。
また、運用益に課せられる約20%の税金が免除されることに加え、老齢給付金を受け取るときは、受取方法に応じた控除も受けることも可能です。
資産運用の目的が老後資金の準備なのであれば、iDeCoを活用すると良いでしょう。
NISA
NISAは、非課税枠の範囲内で購入した商品から得られた利益が非課税になる制度です。
株式や投資信託などから得られた配当や分配金、売却益には、通常20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で保有する商品については利益に税金がかかりません。
2024年1月から「新しいNISA」が始まり、1年間で新規投資できる金額(年間投資枠)は旧制度よりも増額されました。また、商品を非課税で運用できる期間(非課税保有期間)は無期限に延長され、より非課税メリットを受けやすい制度となりました。
関連記事:NISAが生まれ変わる!新NISAの概要と移行手続きについて解説
初心者が資産運用の商品を選ぶときのポイント
続いて、初心者が運用する商品を選ぶ際の押さえておきたいポイントをご紹介します。
運用コストを確認して選ぶ
資産運用では、手数料がかかることがあります。例えば投資信託では、商品を買い付けるときは「購入時手数料(販売手数料)」、商品を保有しているあいだは「信託報酬(運用管理費用)」が発生します。
手数料がかかる分、運用益は減ってしまうでしょう。運用方法を選ぶ際は、手数料の金額や種類、決まり方などを確認・比較し、コストに見合うだけのリターンが得られるかどうかを考えることが重要です。
分散投資できる商品を選ぶ
分散投資は、投資対象や地域などを分散する手法のことです。
ひとつの投資対象に集中投資すると、投資先の価格が下がったときに保有資産の全体が大幅に減少してしまいかねません。
複数の商品に分散投資をすると、ひとつの投資先が値下がりしても、他の投資先の価格が維持・上昇していれば、保有資産全体の減少を防げます。
株式は債券などに複数投資するためにはまとまった資金が必要ですが、投資信託やETFであれば少ない金額から分散投資が可能です。資産運用をはじめるのであれば、こうした分散投資が容易な商品を選ぶのが良いでしょう。
資産運用で失敗しないためには?
最後に、資産運用での失敗を防ぐために知っておきたいポイントを解説します。
少額からはじめる
最初からまとまった資金を投資することに抵抗がある方は、少額から金融商品に投資することをおすすめします。投資金額が数百円や数千円と少ないのであれば、損失が発生しても規模は小さくて済むでしょう。
少ない資金で資産運用をはじめるのであれば「投資信託」が主な選択肢となります。投資信託であれば、100円や1,000円から購入できるだけでなく、資金の運用先の選定をプロに任せられるため、投資の経験があまりない方にも向いています。
余剰資金を使う
日常生活に必要なお金や、近い将来に使う予定があるお金を積極的に運用してしまうと、現在や将来に支障が生じてしまうかもしれません。
そこで、資産運用で積極的に利益を狙いたいのであれば、当面の間に使う予定のない余剰資金で投資することが大切です。余剰資金を投資していれば、元本割れが発生したとしても、日々の生活や将来のライフイベントに影響が及ぶ心配はないでしょう。
長期投資をする
長期投資とは、投資した商品を10年や20年など長期にわたって保有し続ける運用方法のことです。商品を長く保有することで、価格変動リスクを抑える効果が期待できます。
また「複利効果」の恩恵を受けやすくなるのも、長期投資のメリットです。複利効果は、投資先から得られた利益を元本に加えて再投資すると得られる効果です。
短期的に売買を繰り返すのではなく、長期的に資産を保有することで、複利効果によって利益がさらに利益を生み、資産が雪だるま式に膨らんでいきやすくなります。
積立投資をする
積立投資とは、毎月や毎日などの決まったタイミングで商品を購入する手法のことです。積立投資であれば、商品や積立額、買い付ける頻度などを決めると、あとは自動的に取り引きされていくため、売買のタイミングで悩みにくくなるでしょう。
また、購入する金額を一定にすると「ドルコスト平均法」によるリスク軽減効果も期待できます。ドルコスト平均法では、商品の価格が高いときは少なく、価格が安いときは多く買うため、商品の値動きに左右されにくくなります。
過度な利益を求めない
投資信託や株式などの金融商品には元本保証がなく、損失が発生するリスクがあります。また、期待できるリターンが高い商品は損失が発生するリスクも高い傾向にあります。
過度な利益を求めて、FXや先物取引などのハイリスク・ハイリターンな投資を選んでしまうと、大きな損失が発生してしまうかもしれません。
そこで、資産運用をする際は、ローリスク・ローリターンまたはミドルリスク・ミドルリターンの商品を選び、長期的な目線でコツコツと資産を育てることが重要です。
目的をはっきりさせる
資産運用をはじめるときは「老後の生活資金を準備したい」「子どもが大学に進学するときの資金を準備したい」など、運用目的を明確にすると良いでしょう。
目的が明確であれば「いつまでに資金を準備する必要があるのか」や「目的を達成するためにはいくらが必要なのか」を具体的に決めやすくなります。
準備期間や目標金額が決まっていれば、商品や運用方法を選びやすくなります。将来に向けて資産運用をはじめるときは、投資先を選ぶ前に目的をはっきりと決めることが大切です。
資産運用をはじめる方法
株式や投資信託などで資産運用をするときは、証券会社で証券口座を開設する必要があります。証券会社には大きく分けて、店舗型とネット型の2種類があり、それぞれ異なるメリットがあります。
店舗型の証券会社であれば、運用方法や毎月の積立額などを、相談窓口で担当者と対面で相談が可能です。
一方の、ネット型はインターネットから簡単に証券口座を開設することができるだけでなく、売買手数料が安い傾向にあります。不明点はコールセンターに相談することもできるため、迷ったときはネット証券で口座を開設すると良いでしょう。
おわりに
低金利の現代において、将来に向けてより効率的に資産を増やしていくためには、預貯金だけでなく、投資信託をはじめとした金融商品にも投資することが大切です。
資産運用の経験があまりないのであれば、まずは少ない金額で金融商品を購入してみると良いでしょう。また、資産運用の目的をはっきりと決めることで、ご自身に合った商品を選びやすくなります。