犬にかかる飼育費用全体のうち15%は、病気やケガをした際の診療費だといわれています。この記事では、犬種ごとの平均医療費についてご紹介するとともに、丈夫な子犬の見極め方や犬の健康を保つコツも解説します。また、「雑種と血統種、どちらが丈夫か」という問いについても、医療費を比較して検証します。「迎えた犬が、病気やケガをしがちだったらどうしよう」と不安に思う方はぜひ参考にしてくださいね。
犬の年間平均治療費はいくら?
ペット保険のアニコム損保の調査『アニコム家庭どうぶつ白書2020』によると、犬の病気やケガの治療にかかる費用は、犬全体の平均では70,683円となっています。
金額は犬種によって差があり、ミニチュアダックスフンドやパピヨン、チワワといった小型犬の診療費が比較的低く、50,000円台となっています。
参考文献:アニコム家庭どうぶつ白書
犬の年間診療費の目安
毎年リリースされる「アニコム家庭どうぶつ白書」では、犬種ごとに年間平均診療費を発表しており、このデータから各犬種の健康維持にかかる費用の目安を確認できます。人気12犬種の年間平均診療費を見比べてみましょう。
犬種 | 年間平均診療費(0~12歳平均) |
トイプードル | 64,060円 |
チワワ | 58,875円 |
ミニチュアダックスフンド | 55,059円 |
柴犬 | 63,406円 |
ポメラニアン | 75,616円 |
ヨークシャーテリア | 75,597円 |
ミニチュアシュナウザー | 80,651円 |
シーズー | 107,755円 |
フレンチブルドッグ | 141,944円 |
パピヨン | 55,720円 |
マルチーズ | 89,971円 |
パグ | 107,867円 |
混血種(体重10kg未満) | 59,284円 |
犬全体 | 70,683円 |
最も低い診療費となったのが、ミニチュアダックスフンドの55,059円でした。フレンチブルドッグやパグ、シーズーなどの鼻ぺちゃ犬は大人気ですが、鼻の短い「短頭犬種」の診療費は、比較的高めのようです。
さて、ここでひとつわかったことがあります。それは、雑種(混血種)の診療費が最も低い、というわけではないということです。
「血統種=弱い、雑種=強い」とは限らない
「血統種は弱く、雑種は強い」というイメージがありますが、そうとは限らないようです。上記のデータでは、ミニチュアダックスフンドやパピヨン、チワワの平均診療費は、混血種以下になっています。一概に「血統種が弱い、雑種なら強い」と決めつけることはできないのです。
雑種は外飼いの歴史が長く、それほど医療を受ける機会もなかった時代、家庭の残りご飯を与えていたような時代から身の回りにいた犬であることから、丈夫なイメージがついたのかもしれませんね。
個体差も大きい
もちろん治療費がほとんどかからないフレンチブルドッグもいれば、何度も病院のお世話になるミニチュアダックスフンドも存在します。結局のところ、犬が健康かそうでないかは個体差によるところが大きいため、飼い主として愛犬の健康管理をしっかりすることが重要なポイントになってくるでしょう。
犬種別、年間平均診療費と平均寿命
先ほどと同じ「アニコム家庭どうぶつ白書」の資料を参考に、人気犬種の年間平均診療費と平均寿命、疾患の割合として多いものについて見ていきましょう。あくまでも目安としてとらえ、どういった点に気をつけたらいいのかをチェックするといいでしょう。
トイプードル
平均診療費:58,875円
平均寿命:15.2歳
小型犬のなかでも診療費は低く、丈夫な犬種といえるでしょう。疾患の請求割合としては、消化器や皮膚が多いようです。垂れ耳からか、耳の疾患は犬全体の平均よりも多くなっています。
チワワ
平均診療費:64,060円
平均寿命:13.8歳
犬全体の平均診療費よりも低く、消化器と皮膚の疾患の請求割合が比較的多いようです。犬全体の平均よりも多い疾患に、循環器と呼吸器があげられます。
柴犬
平均診療費:63,406円
平均寿命:14.6歳
犬全体の平均診療費を下回っており、皮膚疾患の請求割合が多いです。消化器、耳と続きますが犬全体の平均値よりは低い請求率です。
ポメラニアン
平均診療費:75,616 円
平均寿命:13.8歳
平均診療費は犬全体の平均をやや上回り、消化器疾患の請求割合が最も多く、次いで皮膚、筋骨格疾患が多い犬種です。
ヨークシャーテリア
平均診療費:75,597 円
平均寿命:13.9歳
犬全体の平均診療費をやや上回っており、消化器・皮膚疾患の請求割合が多いです。目の疾患が犬全体の平均値よりやや高い請求率です。
ミニチュアシュナウザー
平均診療費:80,651円
平均寿命:13.4歳
犬全体の平均診療費を上回っており、皮膚、消化器、耳の順に疾患の請求割合が多い犬種です。
シーズー
平均診療費:107,755円
平均寿命:11.0歳
犬全体の平均診療費を上回っており、皮膚疾患の請求割合が最も多く、次いで眼・消化器と続きます。犬全体に比べて眼の疾患の多い犬種です。
フレンチブルドッグ
平均診療費:141,944円
平均寿命:11.2歳
平均診療費は犬全体の平均値の約2倍で、皮膚疾患の請求割合が最も多く、次いで消化器、耳と続きます。
パピヨン
平均診療費:55,720円
平均寿命:14.7歳
犬全体の平均診療費を下回っており、丈夫な犬種といえそうです。消化器の請求割合が多く、次いで皮膚・筋骨格疾患と続きます。
マルチーズ
平均診療費:89,971円
平均寿命:13.3歳
平均診療費は犬全体の平均をやや上回り、皮膚、消化器、耳の疾患が多い犬種です。
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
平均診療費:78,841円
平均寿命:12.9歳
平均診療費は犬全体の平均をやや上回り、皮膚、消化器の疾患が多い犬種です。犬全体に比べて泌尿器の疾患の多い犬種です。
ゴールデンレトリバー
平均診療費:91,397円
平均寿命:11.0歳
平均診療費は犬全体の平均を上回り、皮膚、耳、消化器の順に疾患が多い犬種です。
ラブラドールレトリバー
平均診療費:119,063円
平均寿命:13.1歳
犬全体の平均診療費を上回っており、皮膚、耳、消化器の順に疾患の請求割合が多い犬種です。
健康な子犬を選ぶポイント
犬の健康状態には個体差があるため、迎え入れる際に、健康な子犬を選ぶことが重要です。
ここからは、健康な子犬を見つけるために見るべきポイントをご紹介します。
目
イキイキとした目であれば健康と判断できますが、動きに異常がある場合や、濁りを感じる場合には要注意です。また、涙の量が多い場合や、目やにが多い場合も避けた方が無難です。
耳
耳の場合、においを嗅ぐことで健康状態がわかります。他の犬と比べて明らかに臭いのであれば、ダニが発生している可能性も考えられます。
鼻
鼻の色素が薄い場合、先天的な内臓の疾患を抱えていることがあります。また、紫外線などの影響も受けやすいため、将来的に皮膚ガンなどを発症するリスクも高まります。
肛門
肛門がただれている場合は、下痢が多い子犬である可能性が考えられます。便の様子を見られる場合にはあわせて確認し、問題が見受けられたら避けておきましょう。
皮膚
まずはしっかりと毛で覆われているかどうかをチェックします。脱毛している箇所があったり、湿疹が見受けられたりした場合には要注意です。
遊ぶ様子
最初に歩き方や走り方を確認して、他の犬と比べて不自然な点がないかを確認しましょう。フラフラとした歩き方をしている場合、関節に問題を抱えている可能性があり、警戒が必要になります。元気がなかったり、怖がったりする様子を見せる場合にも、注意が必要です。
ブリーダーから迎えるのがおすすめ
なるべく健康な子犬を迎えたいと考えているならば、ブリーダーからのお迎えがもっともおすすめです。ブリーダーは遺伝病や疾患を考慮したうえで繁殖させているので、子犬は比較的丈夫であるケースが多くなっています。また、親犬の情報を教えてもらえるのは、ブリーダー直販ならではのメリットといえるでしょう。
愛犬を元気に長生きさせるコツ
大切な家族の一員に加わる愛犬ですから、元気に長生きして、愛らしい姿を見せ続けてほしいものです。犬の健康を保ち長生きしてもらうためには、どのようなケアが必要なのか、重要なポイントを解説します。
飼育環境
犬がのびのびと暮らせることを意識し、なるべく清潔な飼育環境を整えましょう。部屋の中をこまめに掃除したり、お世話を欠かさずに行ったりすることで、肉体と精神の両面で健康を維持しやすくなります。また、食事ではしっかりと栄養を取れるように工夫し、年齢に合わせて内容を変化することも考えましょう。
運動量
小型犬でも、原則として毎日の散歩が健康維持のための大切なポイントです。必要な運動量は必ず確保しましょう。悪天候で散歩ができない場合は室内で遊ぶ時間を増やしたり、ときにはドッグランで思い切り走らせたりすることも大切です。
定期的な健康診断
一見して健康そうだとしても、実はどこかに病気やケガが潜んでいることもあるため、定期的な健康診断は欠かせません。肥満や虫歯など、健康診断でコンディションを確認しつつ、問題があれば早めに対処しましょう。
ワクチン・予防接種
病気にかかってから対処するよりも、ワクチンの接種で病気を未然に防ぐことを優先してください。生後間もなくはウイルスへの抗体を持っていますが、時間の経過とともに薄れるため、子犬期からしっかりとワクチン接種をさせなければなりません。
まとめ
ここ30年間は犬の飼育事情や医療事情が格段に改善され、犬の寿命は延び続けています。それに伴い、飼い主の医療費負担も増えているという状況にあります。ただ若い時期からの健康管理で、愛犬の病気やケガのリスクを減らすことは可能です。迎えた犬種の特徴を理解し、なりやすいとされる病気に気をつけながら、日々愛犬の健康管理に気を配ってあげましょう。
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