土地を相続したけれど、相続税額の計算方法がわからないという方も多いのではないでしょうか。土地を相続する際は手続きが多く、土地評価の仕組みを知ってあらかじめ準備しておかないと相続税の申告に間に合わなくなってしまうかもしれません。
この記事では、相続した土地評価の仕組みや評価額の調べ方、相続発生から不動産売却までの流れなどについて解説しますので、相続財産の処分を考えている方もぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- 土地の相続税評価額を調べる方法は路線価方式と倍率方法がある
- 相続税評価額は土地の形状や状態によって変わる
- 相続した不動産を売却するには5つのステップがある
相続税における土地評価の仕組みを解説
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日から10ヵ月以内です。相続税の支払いが必要かどうかは「相続税評価額」を算出しなければなりません。
特に土地・家屋などの不動産は相続税評価額の算出が難しい財産です。
ここでは、相続税における土地評価の仕組みについて解説します。
相続税評価額とは
相続税評価額とは、相続税を計算する際の基準となる課税価格のことです。
相続財産にはさまざまなものがあり、例えば不動産や現金、有価証券、貴金属などが挙げられます。それぞれの財産には評価方法が定められており、その評価方法にしたがって計算した財産の価額が相続税評価額です。そして、相続税評価額をもとに相続税が課税されます。
相続税評価額は固定資産税評価額と異なり、ご自身で計算しなければいけません。そのため、計算方法を理解しておくことが大切です。
相続における土地の評価は算出法が異なる
相続における土地の評価については、国税庁が定める以下2つの評価方法のいずれかを利用して計算します。
- 路線価方式:人口密集地のような市街地に設定されている場合が多い。
- 倍率方式:路線価が設定されていない郊外で採用されている。
路線価方式による相続した土地の評価額の調べ方
路線価方式とは、道路ごとに定められた相続税路線価に土地の面積を掛け合わせて土地の相続税評価額を算出する方法です。
市街地にある土地の相続税評価額を計算する際には、路線価方式を利用するのが一般的です。ここでは、路線価方式による評価額の調べ方を解説します。
路線価方式の具体的な計算方法は、次のとおりです。
路線価は国税庁公表の路線価図で確認
路線価は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
路線価は国税庁から毎年7月に公表され、国税庁のホームページ上に掲載されます。路線価図に掲載される数字は、公表される土地の1月1日現在の土地の評価額です。
路線価図には数字だけでなく記号やアルファベット、斜線・塗りつぶしなどがありそれぞれ意味があるので注意が必要です。
土地の形状によっては各種補正が適用に
土地の相続税評価額を計算する際には、土地の形状によっては各種補正が適用されます。
次のような土地は補正率がかかり、相続税評価額が下がります。
- 不整形な土地:土地の形が三角や多角形、旗竿地など
- 間口が狭小な土地:間口が狭い土地
- 奥行がかなりある土地:奥行きの長さが間口の2倍以上の長さがある土地
- がけ地:平坦な部分とがけ地が混合されている、斜面の上にある土地
これらの土地に対する各種補正は、国税庁の「奥行価格補正率表」で確認できます。相続税評価額を計算するときに補正をしなければならない土地かどうか確認しておきましょう。
土地の面積は登記簿謄本でチェック
路線価の計算で必要な土地面積は、登記簿謄本(登記事項証明書・全部事項証明書)や固定資産税通知書で確認できます。
固定資産税通知書は例年4~6月に送られてくるため、これを利用すると良いでしょう。固定資産税通知書を紛失した場合は、登記簿謄本や固定資産税評価証明書を取得して確認します。
登記簿謄本は法務局にて600円で取得できます。固定資産税評価額証明書は土地の所在を管轄する自治体にて400円前後で取得可能です。
路線価方式で土地評価額の目安を割り出す手順
路線価方式で土地評価額の目安を割り出す手順は、次のとおりです。
- 国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で路線価を確認する
- 基本の土地評価額を「路線価 ×土地の面積」で算出する
- 奥行価格補正率表を用いて各種補正を行う
土地評価額を具体例で計算してみましょう。
例えば、「180D」と路線価図に記載されている場合、路線価図の価格は千円/㎡ですので、1㎡当たり18万円ということを表します。
土地面積が200㎡で補正がかからない場合の相続税評価額は、以下のとおりです。
18万円/㎡ × 200㎡ = 3,600万円
なお、所有している土地に道路が何本も接している場合は、一番大きい数字を利用して計算します。
倍率方式による相続した土地の評価額の調べ方
路線価が設定されていない土地の相続税評価額を調べるためには、倍率方式を利用します。
ここでは、倍率方式による相続した土地の相続税評価額の調べ方を解説します。
倍率方式とは、固定資産税評価額に国が定めた倍率を乗じることによって相続税評価額を計算する方法です。
国税庁ホームページの路線価図に路線価が記載されていない場合は、倍率方式で相続税評価額を計算します。
倍率方式の計算方法は、次のとおりです。
固定資産税評価額は「固定資産税の納税通知書」を確認
倍率方式で相続税評価額を計算するときには、まず固定資産税評価額を確認しなければいけません。
固定資産税評価額は、毎年自宅に送られてくる「固定資産税通知書」に記載されています。固定資産税通知書を紛失した場合は、土地の所在を管轄する自治体で「固定資産評価証明書」もしくは「固定資産公課証明書」を取得しましょう。これらの書類でも固定資産税評価額を確認できます。
倍率は国税庁公表の評価倍率表で確認
倍率は、国税庁ホームページの「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」を利用すれば確認できます。
評価倍率表には地目によって異なる倍率が記載されています。所有している土地の地目を登記簿謄本や固定資産税通知書で確認し、対応する倍率を探してください。
倍率方式で土地評価額の目安を割り出す手順
倍率方式で土地評価額の目安を割り出す手順は、次のとおりです。
1.固定資産税評価額と評価倍率を確認し、基本の土地評価額を算出する
2.課税地積(不動産登記簿に記載されている土地の面積)が実際の土地面積と異なる場合は、基本の土地用価額に「実際の土地面積÷課税地積」を掛けて補正する
例えば、固定資産税評価額1,000万円の土地(課税地積と実際の地積に違いはありません)を所有しており、倍率1.2倍のエリアにある場合の相続税評価額は次のように計算します。
1,000万円 × 1.2 = 1,200万円
相続税の計算において土地評価は時価よりも安くなる
相続税を計算する際に用いられる土地の相続税評価額は時価よりも安く評価されるのが原則です。また、土地の賃貸借の有無や地目などにより、評価額は変化します。そのため、土地評価について詳しく知りたい方は専門家に確認すると良いでしょう。
相続の発生から不動産売却までの流れを確認!
相続が発生してから不動産売却に至るまでには、以下5つの手順を踏む必要があります。
- 遺言状の有無を確認
- 遺産分割協議で分け方を決める
- 相続登記で不動産の名義変更を行う
- 不動産会社に売却を依頼する
- 売却代金を分割し確定申告を行う
それぞれの流れについて解説しますので、相続した不動産の売却を検討している方はぜひ参考にしてください。
ステップ1|遺言状の有無を確認
相続が発生したら、まず遺言状の有無を確認しましょう。遺言状の内容は法定相続よりも優先されるため、遺言状が発見された場合はその記載内容に沿って財産を相続します。
遺言状には、以下の3種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
上記の遺言状のうち、自筆証書遺言と秘密証書遺言が発見された場合、遺言状の有効性を確認するために家庭裁判所による「検認」を受けなければいけません。検認を受ける前に遺言状を開封すると罰則の対象となるため注意してください。
なお、公正証書遺言は公証人の立ち会いのもとで作成されているため、検認の手続きは不要です。
ステップ2|遺産分割の方法で分け方を決める
遺言状が発見されなかった場合は、相続人全員で「遺産分割協議」を行い、相続財産の分配方法を取り決めます。
不動産を分割する方法は、次の4つです。
分割方法 | 補足 |
現物分割 | 土地を分筆してそれぞれの土地を相続人が単独で所有する方法 |
代償分割 | 不動産をひとりの相続人が相続し、不動産を相続した人が他の相続人に不動産の価値分の現金を渡す方法 |
換価分割 | 不動産を売却し現金を相続人で分配する方法 |
共有 | 不動産を相続人全員で所有する方法 |
相続した不動産を売却することが決まっているのであれば、1円単位で財産を分配できる換価分割が、トラブルが起きにくい分割方法といえるでしょう。
ステップ3|相続登記で不動産の名義変更を行う
遺産分割協議が終わったら、相続登記を行い、不動産の名義を変更します。不動産を売却する際に被相続人名義のままでは売却できないため、相続人の名義に変更しなければなりません。
換価分割することが決まっているのであれば、名義は相続人の共有名義にする方が手続きは全員で行うことになりますが、トラブルは回避できるかもしれません。
なお、現在のところ相続登記は義務ではないため、登記申請は必須ではありませんが、2024年4月1日からは相続登記が義務化されます。義務化されると過去に発生した相続登記についても申請しなければなりません。放置しておいてもいずれ登記する必要があるため、相続登記は済ませておくのが賢明です。
相続登記義務化以降は、相続登記をしていないと罰則を受けるため、できるだけ早く登記の専門家に相談しておくことが大切です。
不動産会社に売却を依頼する
相続登記が終わったら、不動産会社に売却を依頼します。
売却を依頼するときには、不動産会社と媒介契約を締結します。不動産会社と締結する媒介契約の種類は、次の3つです。
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介
それぞれの媒介契約の違いは、次の表のとおりです。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
有効期間 | 3ヵ月 | 3ヵ月 | 期間の定めなし |
依頼可能な会社数 | 1社のみ | 1社のみ | 2社以上可能 |
依頼主への報告義務 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | なし |
レインズへの登録義務 | 5営業日以内 (媒介契約締結から) | 7営業日以内 (媒介契約締結から) | なし |
自己発見取引 | 不可 | 可能 | 可能 |
媒介契約を締結する前にそれぞれの違いがあるのか理解しておきましょう。違いが良くわからない場合は、不動産会社に質問し、解決しておくことをおすすめします。
売却代金を分割し確定申告を行う
相続した不動産が売却できたら、相続人全員に売却代金を分配し、全員がそれぞれ確定申告を行います。
確定申告をしなければならないのは、不動産売却によって譲渡所得が発生した場合や、税金の特例・控除を利用する場合です。
確定申告の際は、売却した不動産の関連書類を添付する必要があります。特例や控除を利用する場合は適用要件を確認し、必要な書類も追加しなければいけません。
確定申告の期間は毎年2月15日~3月16日ですが、あらかじめ準備を整え、期日より前に済ませると良いでしょう。
おわりに
相続税の計算に必要な相続税評価額を算出する方法は、路線価方式と倍率方式の2種類です。どちらも計算方法を把握すればご自身で計算できますが、相続した土地がいずれの場合に該当するか確認し、適切な方法で計算しましょう。
また、相続した不動産を売却する際には5つの手順を踏まなければなりません。それぞれの注意点もしっかり把握しておき、スムーズな土地の相続につなげてください。
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