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中国での仕事ってどんな感じ?ー中国生活体験記(その2)

中国での仕事ってどんな感じ?ー中国生活体験記(その2)
深谷 百合子 人を動かすコミュニケーター

執筆者
深谷 百合子 人を動かすコミュニケーター

国内及び海外電機メーカーで技術者として20年以上勤務。工場の「案内人」としてメディア対応、講演、環境教育にも携わる。「専門的な内容を分かりやすく伝える」をモットーに、立場の異なる人同士が理解し、協力し合えるための伝え方を工夫した。2020年に独立。「相手を動かす伝え方」をテーマに講師、コーチとして活動している。また、個人へのインタビューや企業への取材記事執筆を通じて、「知られざるストーリー」の発信を行っている。掲載媒体:WEB天狼院書店、天狼院書店WEB READING LIFEブログ

中国は今や世界第2位の経済大国であり、ビジネスにおいて重要なパートナーです。私は中国で6年半仕事をしましたが、中国での仕事の進め方は日本とは大違いです。良かれと思って仕事を手伝ったら、「それはあなたの仕事ではない!」と激しく叱責され、涙が出たこともありました。考え方の違いを乗り越え、仕事も人間関係も円滑に進めていくにはどうしたら良いでしょうか?今回は、私が経験したエピソードを交えながら、中国で仕事をスムーズに進めるためのヒントをご紹介します。

1.女性の活躍が目立つ中国 

各国の男女格差の現状について、世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数2022」によると、日本のジェンダーギャップ指数は146ヵ国中116位であったのに対し中国は102位でした。さらに、分野別でみると、労働参加率や賃金格差などの指標を持つ「経済」の分野で日本は121位であるのに対し、中国は37位となっており、日本は中国に大差をつけられています。

私はメーカーで技術系の仕事に就いていましたが、日本の職場ではいつも、女性は私一人でした。ところが、中国の職場では部長が女性だったのをはじめ、多くの女性が活躍していました。私は中国で工場の建設に携わりましたが、一緒に仕事をした設計会社の責任者も女性でした。さらに、施工を請け負った会社の中には、女性のプロジェクトマネージャーも多くいましたし、現場監督も若い女性が務めていました。日本とは随分様子が違うのです。ですから、「見た目」で判断すると思わぬ失敗を招きます。

中国企業へ日本メーカーの営業マンが商談に訪れた時のことです。その方は名刺交換の際、客先の女性部長ではなく、彼女の隣に居た年配の男性通訳のことを部長だと勘違いして、先に彼に名刺を差し出そうとしました。周りの人が慌てて、「部長はこちらです」と教えていましたが、日本人営業マンはさぞ驚いたことでしょう。

私自身も、日本から出張してきた方に「日本語がとてもお上手ですね」と言われたことがあります。まさか砂ぼこりの舞う工事現場に日本人女性がいるとは思わなかったのでしょう。私が「はい、日本人ですから」と笑って答えると、目をぱちくりさせていたのが印象的でした。

2.こんなに違う!仕事の進め方

2-1.チャットで瞬時に情報共有

チャットで瞬時に情報共有

今でこそチャットアプリを活用する日本企業も増えていますが、私が日本で仕事をしていた10年ほど前は、仕事の連絡手段といえば電話かメールでした。ところが中国の職場では、上司からの指示も、会議の連絡も、業務連絡は全て「Wechat」というチャットアプリを介して行われていました。そのため、個人のアカウントを開設して職場のメンバーと「友達」になり、部門や業務毎に立ち上げられたさまざまなグループチャットに参加する必要がありました。

電話だと会議中は出ることができなかったり、メールはすぐにチェックできなかったりしますが、チャットはいつでも確認できます。特に、関係者全員が同時に情報を共有できる点が便利だなと感じました。

例えば工場で停電や水漏れなどのトラブルが起きた時、日本では電話で情報をやりとりしていました。しかし、電話だと状況を把握するのは簡単ではありません。それに、話し中でつながらなかったり、夜間や休日など、人手が少ない時には電話対応だけでてんてこ舞いです。

でも、チャットなら皆がばらばらな場所にいても、同じ情報を得ることができます。しかも、動画や写真も送受信できるので、現場の状況を把握しやすいのです。さらに、どんなやり取りをしたのかが残るので、次に同じようなトラブルが起きた時、参考にすることができるというメリットもありました。

私たち日本人にとっても、「情報が文字で残る」というのは心強いものでした。中国語が聞き取れなくても、文字ならば辞書を引いて確認することができます。「Wechat」には翻訳機能もついていますから、正確ではなくても大体の意味を理解することができます。また、こちらから何か意思表示をしたい時も、筆談感覚でコミュニケーションをとることができ、とても助かりました。

このように、「Wechat」は日常生活はもちろん、仕事には欠かせないツールでした。ゆえに、スマートフォンを忘れて出勤してしまうと、全く仕事になりませんでした。

2-2.50点ならやる中国、100点の確証が無いとやらない日本

50点ならやる中国、100点の確証が無いとやらない日本

仕事の進め方で一番衝突したのが、「リスク」に対する考え方でした。

私たちは何か新しいことを始める時、今までのやり方を変える時、とんでもなく高い目標を掲げた時など、「本当にそれで上手くいくだろうか?」と考え、慎重に物事を運ぼうとしませんか?

私はメーカーに勤めていたので、新しい技術を取り入れていこうとするときには「安全性に問題はないか?」「技術的に欠陥はないか?」「その技術を取り入れることで、どのような不良が出る可能性があるか?」など、起こりうるリスクを挙げて検証するのが一般的でした。

けれども、中国では日本人の私たちから見ると、「見切り発車なのでは?」と思ってしまうことがよくありました。そんなとき、「こんな不良が出るかもしれないから、もう少し検討をした方がいいのでは?」などと言うと、「どうして? やってみなければ分からないじゃないですか?」と言われたものです。

できない理由ばかりを挙げていると、「どうしてできないことを前提に考えるのですか?」と言われ、「日本人は挑戦することを避けている。消極的だ」と受け取られてしまうこともありました。

中国では、「どうしたらできるか?」を考え、多少のリスクがあってもスピードを重視していたように思います。一方、日本では「考えられるリスクはできる限り少なくしよう」という考えで動いていることが多いようです。中国側からは「早く!」と急かされ、日本側からは「まだこの状態では回答できない」と言われ、板挟みになって悩んでいる日本人駐在員の話をよく聞きます。

どちらがいいとか悪いという話ではありませんが、「やってみて、上手くいかなかった経験」を積めば積むほど、より良い成果を出せる場合もあります。半歩でも前に進もうとする中国のスピード感は、見習いたいところです。

2-3.仕事の責任分担が明確

仕事の責任分担が明確

中国で仕事をし始めて、最初に戸惑いを覚えたのが「それは私の仕事ではありません」というセリフです。

中国では各自に与えられた仕事の責任範囲が明確に分かれています。従って、自分の仕事は責任をもって取り組みますが、他の人がやっている範囲の仕事に対しては首を突っ込みません。私にも苦い経験があります。

工場建設の仕事が山場を迎えていた頃、急な設計変更が発生したのです。私は設計者の仕事の負担を軽くしてあげようと思って、自分なりに対応策を考えて設計者に伝えました。ところが、「それはあなたの仕事じゃないでしょう!」と激しく叱責されたのです。私は良かれと思ってしたことなのに、なぜ怒られるのか訳が分かりませんでした。

でも後になって、その設計者からこう言われたのです。「設計は私たちが責任を持ってやります。あなたにやって欲しいのは、今回みたいに設計の変更が必要な時、その情報をできるだけ早く正式なルートで書類を出すように関係部門に働きかけてもらうこと」

私はその時初めて「あなたの仕事じゃないでしょう!」と言われた意味が分かりました。設計変更の対応策を考えるのは、設計者がやることで、設計者ではない私が考えることではなかったのです。仮に設計者ではない私の案を採用して、その後何か問題が起きても、私には責任をとることができません。「あなたの仕事じゃない」という言葉は、私を守ってくれる言葉でもあったのです。

このように、仕事の責任範囲が明確で、自分の責任はきちんと果たそうとする中国人ですが、他の人の責任範囲とのつなぎ目の仕事をどちらがやるのか、はっきりさせておかないと、誰もやらずに放置されるという事態も起こります。

例えば水道の配管工事をするとき、屋外の配管はA社、屋内の配管はB社がやるとします。そのとき、屋外と屋内の配管をつなぐ仕事は誰がやるのかを決めておかないといけないのです。そういう「仕事のつなぎ目」での抜け漏れをチェックする「横串の役割」は、日本人の強みを発揮できるところではないかなと感じています。

3.仕事をスムーズに進める5つのコツ

仕事をスムーズに進める5つのコツ

3-1.こちらから積極的に挨拶をする

人間関係の基本は、やはり挨拶。「おはよう」「お疲れさま」など、中国語で声をかけてみると、相手との距離が縮まります。仕事の基本「報連相」も、待っているよりこちらから積極的に声をかけていく方が、「いつ報告に来るんだろう?」とイライラせずにすみます。積極的な声かけは、人間関係をつくるための第一歩ですね。

3-2.会食や行事などに誘われたら参加する

「今日の夜、ご飯を食べに行きましょう」と突然誘われることがあります。大体、お誘いはいつも突然です。面食らうこともありますが、「異国で寂しい思いをしているのではないか」との気遣いから誘ってくれていることが多かったりします。ですから、喜んでお誘いに乗ると、相手も面子が立ち、喜んでもらえます。一緒に何かをするという経験は、人間関係を深めるチャンスです。

3-3.専門スキルを磨く

これはずばり、「相手にメリットを与えられる存在になる」ということです。仕事の場では、「この人は何ができる人なのか?」をシビアに見られていたなと思います。信頼を得るためには、自分の専門スキルを磨き、結果を出すことが求められます。また、スキルアップやキャリアアップに関心の高い人が多いので、新しい視点や気づきを与えられる存在になると頼られるようになります。その結果、入ってくる情報量が増え、仕事も進めやすくなります。

3-4.キーマンを把握する

中国では人間関係で仕事が進む場面が多くあります。問題が起きて困った時、情報を得たい時など、「あの人に頼めば何とかなる」というキーマンが必ずいました。問題解決能力の高い人は誰なのか、よく観察していると分かってきます。そうしたキーマンと日頃から良い関係を築いておくことが大切です。

3-5.中国人上司に頼る

「もっとこうしたらいいのに」と思うことがある時、私は中国人上司に相談し、上司から部下に指示をしてもらうようにしていました。日本人である私が直接指示するよりも、中国人同士に任せた方が上手くいくと思っていたからです。中国人は面子を大事にしています。特に業務改善など、成果につながるような仕事は、アイディアだけ渡して、後は中国人同士に任せるくらいの気持ちでいると、皆が気分良く仕事に取り組めるのではないかと思います。

おわりに

国が違うだけで、中国人も日本人も同じ人間同士です。現地で実際に仕事をしてみて、「相手を尊重する」という気持ちを忘れないことが良い人間関係を築く一歩だと感じました。まずは違いを受け止めたうえで、譲れないことは理由を添えてはっきり主張すれば、お互いを理解するきっかけになり、相手との距離はグッと近くなるはずです。これは国の違いだけでなく、同じ日本人同士でも世代や性別による違いを感じる場面で共通することかもしれません。

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