更新日
公開日

いつかくる大地震にいま備えておくべきもの

正木 伸城(記事を編むライター)

執筆者
正木 伸城(記事を編むライター)

15,000冊超の読書で得た知識を武器に生活やビジネス上の出来事を言葉にし、思想的に深堀りする記事を編むのを得意としているライター。その他、マーケターやフリーランス広報なども生業にしている。「社会的弱者の方の声を聴診器のようにして聞いて、自身が拡声器となってその声を社会に広げる」が自身のテーマ。

東日本大震災以降、日本はふたたび地震の活動期に入ったともいわれています。昨今も、震度5弱以上の地震が全国各地で起きており、南海トラフ大地震などの巨大地震についても「いつ起きてもおかしくない」と指摘されています。しかし、いますぐ地震が起きたとして、みなさんは防災の準備は万端だといえる状況でしょうか。「備えておかないとな……」とは思いつつも、忙しい毎日のなかで優先順位が低くなったり、備えたくても何をどうすれば良いかが分からなかったりして、どうしても防災対策がおろそかになってしまう。そういった方もけっこういらっしゃるのではないでしょうか。

災害は、いつ起きてもおかしくないという前提で考えておくべきです。ここでは、そんな災害のなかでも「地震」における家庭の防災対策について解説します。

日頃から家族間で情報共有しておくべきこと

防災対策の第一歩として確認したいのが、家族間での共有事項です。災害時に家族が離れ離れであるという事態はよく起こり得ます。そんなケースに備えて、「地震の時にどう動く?」「どこで会う?」「連絡をどう取り合う?」という観点から、以下の内容などを全員で把握しておくことが大切です。

  • 安否確認の方法
  • 災害用伝言サービスの利用
  • 避難場所
  • 緊急地震速報の設定

とはいえ、地震発生時には、「すぐに家族に連絡をとろうとはしない」方が良い場合が多々あります。揺れが収まっても、その後に建物の倒壊や、火災、津波などが発生する可能性があるからです。たとえば、家族からの安否確認の電話をとろうとして、逃げ遅れてしまうという事態もあり得ます。まずは、ご自身の命を最優先に考えて行動してください。

地震時、また地震直後にとるべき対応

次に、地震が実際に起きた瞬間についてですが、物が落ちてこない、倒れてこない、物がズレたり移動しにくいといった条件を満たした場所にすぐに移動して、揺れが収まるのを待ちましょう。この意味で、机の下にもぐりこむことが正解とは限らない状況はかなりあり得ます。また、慌てて外に出ると、落下物で怪我をする可能性があります。揺れを感じたときはどうしても恐怖心から反射的に行動しがちですが、これらの点だけでも押さえて冷静に行動することができれば、安全性はかなり変わってきます。

加えて、地震後の行動にも注意が必要です。背の高い家具が転倒し、ガラスが飛散している場合もあります。東京消防庁によれば、全国で近年発生した大きな地震で怪我をした方のうち、30~50%が家具類の転倒・落下・移動が原因というデータがあります(2021年3月、東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」より)。こうした被害によって、避難が遅れることは避けたいところです。

基本としては、まずは出口を確保し、火元を確認して、窓ガラスや大きな家具、家電から離れるようにして避難してください。また、避難所に移動する際は、暖房などの電化製品の電源を抜いておくと良いでしょう。復旧によってふたたび通電した際に、暖房などがついて火事の原因になることがあるからです。

日常の備え――家具などを固定し備蓄品をそろえよう

大地震における怪我の要因で、「家具類の転倒・落下・移動」が多いということは先に確認しました。背の高い家具を固定するなどの物理的な防災対策はとても大切です。日常から行っておきましょう。東京消防庁が示した具体例を以下に示します。

転倒・落下・移動防止のポイント

  • 転倒防止金具などで固定し、倒れにくくしておく
  • サイドボード、食器戸棚、窓などのガラスが飛散しないようにしておく
  • 本棚や茶ダンスなどは、重い物を下の方に収納し、重心を低くする
  • 棚やタンスなどの高いところに危険な物を乗せておかない
  • 食器棚などに収納されているガラス製品(ビン類など)が転倒したり、すべり出さないようにしておく

具体的な固定方法

  • 二段重ねの家具類は、上下を平型金具などで固定する
  • 柱、壁体に固定する場合は、L型金具とモクネジで家具の上部を固定する
  • ガラスには、ガラス飛散防止フィルムを貼る
  • 吊り戸棚などの開き扉は、掛金などにより扉が開かないようにする
  • 食器棚のガラス製品(ビン類など)が、転倒したりすべり出さないよう防止枠を設ける

参照元:東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック

上記リンク先には、「非常用品として備えておくもの」も挙げられています。飲料水、食料品、貴重品、懐中電灯、携帯ラジオ、衣類、下着、ろうそく、ライターなど、備蓄した方が良いものは多岐にわたりますが、まずは非常用品の項目に目を通すことだけでもしてみてください。みなさんの頭のなかで、地震時の状況に思いを馳せたり、災害シミュレーションを行うことができます。その上で、日ごろから「備えあれば憂いなし」ですので、必要な品をそろえていきましょう。

また、首相官邸のサイトでは、災害後に家で過ごせる場合と、避難所で過ごす場合を想定した備品の一覧やチェックリストも掲載されています。こちらも参照しておいてください。

参照元:首都官邸 災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~

備蓄品を上手にストックする方法

さて、ここまで災害時の備えについて述べてきましたが、備えといっても一筋縄ではいかない、管理が必要なものもあります。たとえば、食料品に関しては、いくら長期保存がきく物であっても消費期限があるため、時期がくれば交換が必要になります。こうした事態に応じる上で有益なのが、「ローリングストック」という考え方です。

ローリングストックとは、日常から食料品を少し多めに買い置きしておき、消費期限の近いものから使って、消費した分だけ買い足し、一定の量を備蓄しておく方法のことです。これにより、常に一定量の備蓄が確保できている状態を保つことができます。ローリングストックを実践すれば、消費期限が長い特別な防災食品を買いそろえる必要性もなくなります。

とはいえ、計画的に実行するのが大変だという方もいらっしゃるでしょう。かつては防災用食品といえば「おいしくない」という印象がありましたが、現在は品質も味もクオリティの高いものが出てきています。そういった非常用の食品を用意しておくことも当然ながら有益ですし、缶詰やレトルト食品、カップ麺、ペットボトル飲料など、日常用・非常用のどちらにも活用できる食品で長期スパンのローリングストックを実施しても良いでしょう。ご自身に合う形で備蓄品をそろえてみてはいかがでしょうか。

災害は突然やって来るものです。耳にタコができるような話かもしれませんが、防災対策を「いつか」に先延ばしにしないことが大切です。家族で災害時対応についての共通認識を持っておくのはもちろん、非常時の備えは必ず行っておいてください。

よく読まれている記事

みんなに記事をシェアする