経営者にとって、「資金繰り」は、事業活動が円滑であってもそうでなくても、頭を悩ませる要素のひとつです。特に、経営が厳しい状況であれば、早急に改善策を考えなければなりません。
この記事では、資金繰りに苦しむ会社の特徴を知ったうえで、そのときに避けるべき行動、乗り切るための対策、資金調達の手段について詳しく解説します。
(本記事は2023年12月27日時点の情報です)
- 資金繰りに窮する会社では、経理担当者に任せきり、損益計算書をもとに考えている、そもそも売上に対する利益率が低いことが多い
- 資金繰りが苦しくても、税金の滞納やビジネスローンの借入れ、融通手形に頼るのは避けるべき
- 厳しい資金繰りを乗り切るためには、具体的な数字を把握することが先決
- 資金調達方法には、銀行融資、補助金活用のほかにも選択肢がある
お金がない会社の特徴
経営者にとって、事業を継続させることは大きな課題です。利益を生み出し、事業活動が円滑であれば何よりですが、社会情勢や経済状況も影響しますし、時代の流れから変化を余儀なくされることもあります。どんな業界・事業であれ、上手くいくことばかりではありません。思ったように売り上げが伸びない中、費用の支払いに悩む経営者は多いです。
では、資金繰りが苦しいのは何が原因なのでしょうか。まずは、お金がない会社の特徴について考えてみましょう。きちんと管理ができていると思っていても、根本的に間違っていたり、表面的であったりするなど問題があるケースもあります。
経理や資金の管理を担当者に任せきりにする
資金繰りが苦しい状態であることには気づいていても、入ってくるお金と出ていくお金の流れや金額を把握していない会社は多いです。
経理担当者はあくまでも資金の流れを追っているにすぎず、資金繰りを考えるのは経営者の責務です。問題が生じていることに気づかず、担当者に任せきりという状態はいわゆる「自転車操業」であり、日々の事業活動は乗り越えられても、将来的な発展は望めないでしょう。
経営者自身がプレイヤーであり、売上を作りながら経理もやらなければいけないという会社の場合、資金管理まで手が回らないかもしれません。作業的分野については、外部に委託する方法もあります。
また、創業間もない時期であれば、売上が安定しないことを想定しつつも、広告費や備品代、オフィスの賃料等さまざまな費用の捻出が必要なため、より余裕を持った資金を準備しておきたいところです。
損益計算書をもとに資金繰りを行っている
資金繰りに悩む経営者、お金のない会社の特徴として、損益計算書頼みとなっていることが挙げられます。
損益計算書は、売上から費用を差し引いたもので、利益を知るためには有効ですが、現実的な数字を示しているわけではありません。損益計算書上では利益が出ているように見えても、資金繰りに窮するケースも多いです。
売上の数字には未入金のお金が含まれるため、売上代金が入金されていないと支払日にお金が足りなくなる事態に陥りかねません。倒産した企業の半数近くが、帳簿上は黒字であるにもかかわらず、手持ちの資金不足から支払いや返済ができず倒産する、いわゆる「黒字倒産」なのは、こうした資金繰りが要因といえるでしょう。
売上げに対する利益率が低い
当然ながら、入ってくるお金よりも出ていくお金が多ければお金は底をつきます。資金繰りが苦しくなる要因を探ると、以下のとおりです。
- 入ってくる金額が少ない
- 入ってくるまで時間がかかる
- 出ていく金額が多い
- 出ていくまでの時間が短い など
これらが複数重なると、より資金繰りが厳しくなるでしょう。
また、そもそも価格設定や仕入れ値、人件費などが適正でない場合には、利益率が悪くなり資金繰りに苦労することになります。
資金繰りが厳しいときでも経営者としてこれだけは避けたいNG行動
資金繰りが厳しいときこそ、冷静に状況を把握し、適切な解決策を検討したいところです。焦りが生じるとその場しのぎの対策に陥りがちですが、さらに資金繰りが悪化し、立て直しが難しくなるため注意しなければなりません。
【経営者としてこれだけは避けたいNG行動】
- 税金を滞納する
- ビジネスローンなどから借り入れする
- 融通手形を発行する
それぞれについて解説します。
税金を滞納する
税金や社会保険料の支払いは直接的には事業活動に影響しないため、取引先への支払い等を優先し、後回しにするケースが見られます。
しかし、督促状が来ているにも関わらず納めないでいると、通帳や会社の財産を差し押さえられる可能性が高いです。結果として従業員や取引先の信頼を失い、会社の存続に影響を与えることになりかねません。
ビジネスローンなどから借り入れする
ビジネスローンは便利ですが、金利が高いため避けなければなりません。「貸してくれるところがあればどこでもいい」という認識は誤りです。利息額が雪だるま式に増え、返済できずに資金繰りがさらに苦しくなります。
また、「銀行から融資が受けられない会社」と判断されれば、借り換えたくても銀行や公庫などから融資を受けることは難しくなります。
融通手形を発行する
融通手形とは、取り引きがないにもかかわらず振り出される手形のことです。金融機関から借り入れできないときなどに、利用する(融通してもらう)ケースが多いですが、期日までに返済ができないとトラブルになることがあるため、注意しなければなりません。
厳しい資金繰りを乗り切るためにとるべき方法とは
多くの経営者が資金繰りに悩み、資金繰りの改善に向けて対策を模索しているのが現実です。その場しのぎの対策ではなく、現状を把握したうえで原因を探り、長期的な視点で資金調達や適切な取引を考えたいところです。
【厳しい資金繰りを乗り切るためにとるべき方法】
- 買掛金の支払時期を変更してもらう
- 削減できる経費がないか見直す
- 資金調達できるものがないか検討する
- 経営計画を見直して事業規模を縮小する
買掛金の支払時期を変更してもらう
お金が出ていく期間の見直しもひとつの方法です。手元にキャッシュがある状態を作るため、買掛金の支払時期の変更は資金繰りの改善に効果があります。
ただし、仕入れ先や取引先の資金繰りに影響を与えるため、信頼関係があることが前提条件です。いきなり期日を延ばしてほしいという申し出は了承を得られない可能性が高いですが、継続的な取引先であれば、支払時期の見直しにより双方納得のうえで資金繰りを安定化させることができるでしょう。少なく見積もっても2~3ヵ月前には通知する必要があります。
削減できる経費がないか見直す
出ていくお金の金額の現状を把握したうえで、削減できる経費がないか見直しを検討することも大切です。
賃料や光熱費、人件費などの固定費の見直しは、見直し効果が継続的に得られるため、資金繰りの安定に繋がります。広告費は、集客や会社の存在を知ってもらうためにも必要な費用ですが、効果を検証することが大切です。顧客層や会社のイメージ戦略、時代の流れに合致しているかなど踏まえて、必要であれば費用をかけて刷新させることも長期的な発展につながるでしょう。
設備投資(新設備やオフィスの移転など)も同様であり、検討したうえで、必要であれば投資すべきです。その判断をするのが経営者の本来の役割であり、手腕でもあります。
資金調達できるものがないか検討する
経営判断を行うにあたっては、手元にキャッシュがある状態とともに、ある程度の余裕資金を確保しておく必要があります。自転車操業状態で支払いに追われる毎日では、適切な経営判断は難しいでしょう。
まずは、手元資金を確保するために、回収できる売掛金がないか、無駄な経費を払っていないか、不要な資産はないか、売却して資金化できないかといった検討をしたうえで、金融機関からの融資を検討したいところです。
なお、売上金の回収にあたっては、取引先とトラブルにならないように慎重に行わなければなりません。入金がないからといって、よく調べずに問い合わせしたところ、請求書の送付をしていなかったという事例もあります。担当者から問い合わせした方が良い場合、経営者が直接伝えた方が良い場合など状況にもよるので、最適な判断と対応を心がけてください。
経営計画を見直して事業規模を縮小する
経営状態を改めて把握をしてみると、これまで気づかなかったことや無理・無駄なこと、課題が浮き彫りになるはずです。経営計画の甘さや事業拡大の方向性や規模、資金調達の手段、取引先などさまざまな面で改善を検討していきましょう。
経営計画を見直し、事業規模を縮小することもひとつの方法ですが、これは決して諦めではなく今を乗り越え、今後を見据えて行う経営判断です。採算がとれない事業をやめる、停止させる、売却するなど手段と対策はさまざまですが、資金繰りが安定した時に再開させることを決めることも選択肢に入ってくるでしょう。
また、資金繰りが課題ではありますが、従業員の処遇についても慎重に検討する必要があります。従業員とその家族の生活、将来を考えた時、どういった対応が最適なのか考えてみてください。真摯に向き合い、専門家のアドバイスなどを参考にしながら対応することが大切です。
資金繰りに困ったらやるべき資金調達法
資金調達の方法はさまざまですが、赤字回避の短期的資金を目的とするのか、将来を見据えた資金なのかなど、目的やその会社の状況に応じて適切な資金調達は異なります。
また、金融機関では、融資可能かどうかの判断は基本的に提出された企業財務情報に基づいて行うため、思いどおりにならないこともあるでしょう。企業財務情報を磨き上げることも、経営者の手腕の見せどころです。
【資金繰りに困ったらやるべき資金調達方法】
- 銀行で融資を受ける
- 政府系金融機関から公的な融資を受ける
- 国や地方公共団体による助成金や補助金の制度を利用する
- ファクタリングを利用する
- ビジネスローンを利用する
銀行で融資を受ける
銀行融資は金利が低めで、必要な資金であれば大きな金額でも借りられる点がメリットです。ただし、審査が厳しく融資決定までの時間がかかることに注意しなければなりません。そのため、資金繰りが厳しい、赤字をなんとかしたいという状況においては難しい選択肢でしょう。
企業経営において、銀行との取引は重要な意味をもちます。それだけに、メイン銀行をつくり、長く継続的に付き合いたいところです。そのためには、担当者とのコミュニケーションも欠かせません。
メガバンクであれば取引先や顧客からの高い信頼度が得られますし、地方銀行や信用金庫は地域に根差した金融機関であるため、金融取引だけでなく顧客の紹介やお得な情報を得られるメリットがあります。
付き合いが長くなると、財務状況が良いときも悪いときも知っている取引銀行であれば理解が得られ、融資が可能となる事例も多々あります。
政府系金融機関から公的な融資を受ける
公的融資といわれるのが、政府系の金融機関からの融資です。中小企業や個人事業主でも低い金利で融資を受けられるため魅力がありますが、提出書類が多く手間や融資決定までの時間がかかる点には注意してください。
国や地方公共団体による助成金や補助金の制度を利用する
助成金・補助金は国や地方公共団体等でなどから支給されるお金です。基本的に返済不要のため、うまく活用できれば有効な資金調達の手段となるでしょう。
ただし、採択されるためには申請や審査があり、申請にあたっては一定の要件をクリアしなければなりません。創業時や創業間もない時期であれば助成金・補助金の種類は多く、審査も緩やかなため、ぜひ活用したい制度です。
助成金や補助金は、要件に合うものを探すより、要件に合わせて事業を設計した方が採択率が上がるでしょう。
ファクタリングを利用する
資金調達方法のひとつとして、売掛金(債権)を専門のファクタリング会社に売却して資金を調達する「ファクタリング」が挙げられます。
ファクタリングとは「債権買取り」のことであり、ファクタリング会社に手数料を支払うことで、売掛金の支払期日よりも前に資金化できるため、資金繰りの改善が可能です。借入れ(融資)ではないため、負債が増えないことも魅力といえるでしょう。
ファクタリングには、ファクタリング会社との契約で成立する「2社間ファクタリング」と、取引先を含めた「3社間ファクタリング」があります。
「3社間ファクタリング」の場合、取引先の同意を得たうえで成立し、支払期日には取引先はファクタリング会社へ支払いを行います。最近ではオンラインでの契約書締結などが増えてきましたが、手間や時間がかかり、不備等によっては資金化が遅れることに注意が必要です。
ビジネスローンを利用する
「ビジネスローン」は、銀行や消費者金融、クレジットカード会社などが提供する、事業資金の貸し付けに特化した金融商品です。連帯保証人不要で、早ければ即日入金が可能な場合もあります。
利用限度額の範囲内であれば、何度でも借入れ可能や赤字決算でも無担保で連帯保証人の必要もなく借りられる商品もあります。金利は金融機関によって異なり、借入金額によって大きな幅がある点に注意してください。
担保も審査も連帯保証人も不要ということで手軽に借りられると思いがちですが、長期的視点での資金調達としては根本的な解決策にはなりません。借入れ元本の減少とともに高い利率が適用され、利息負担に窮することは容易に予測できるでしょう。資金調達手段として事業用ローンを検討するなら、より負担の少ない方法を選びたいところです。
負担の少ないビジネスローンなら「事業者向け不動産担保ローン」がおすすめ
セゾンファンデックス 事業者向け不動産担保ローンは、不動産を担保に融資を受けられるローンです。法人が保有する不動産だけでなく、代表者やそのご家族・ご親族が保有する不動産を担保にすることができます。抵当権の順位は問いません。担保を入れることで評価額をもとに審査が行われるため、より有利に融資を受けることが可能です。
セゾンファンデックス 事業者向け不動産担保ローンの詳細はこちら
おわりに
経営者が資金繰りに悩むのは、決してお金がない時ばかりではありません。上手くいっている経営者ほど、常に資金繰りについて把握し検討しています。経理担当者に任せきりでは今後の事業活動の方向性を見極めることは難しいかもしれません。今がどんな状態で何ができて何ができないのか、できない原因はどこにあるのか向き合うことが大切です。より事業を発展させるためには、対策はひとつではないため、さまざまな選択肢を準備しておきましょう。